第十二話 いつものじゃれあい
チリリリリ……という音が聞こえる。
私は、瞼を開けて、身体を起こして、近くにある目覚まし時計のボタンを押す。
そうすると、先ほどまでのベルの音は消えた。
目覚まし時計が鳴ったってことは……今は11時か。
ベッドから離れて、カーテンを開けると、それなりの光が部屋を照らす。
今日は、雲が薄いらしい。
……さて、登校するか。
適当に身支度を整えて、ライフルバックを背負って部屋を出る。
髪が所々跳ねていたり、ブレザーのボタンをしてなかったりしているが、いつものことか。
所々、弾痕が残っていたり、ヒビの入ったままになっている部分のある道路を歩く。
この時間、歩いている生徒はもちろん、大人や子供もほとんど歩いていない。
時おり、巡回している国防軍の兵士とすれ違うくらいだ。
……まぁ、一般人は地下で暮らしてるだろうから当然か。
「あの、宵月さん」
「ん?」
後ろから聞き慣れた女子の声がした。
振り返ると、そこにはポニーテールにした黒髪に赤い瞳を持つ少女……胡桃が立っていた。
「おはよ、胡桃」
「はい、おはようございます、宵月さん」
「にしても、貴女も基礎科目免除勢だっけ?」
「はい、私ってほら……特殊じゃないですか」
「あぁ、まぁそりゃドラゴンライダーにはあんま関係ないわね、基礎科目」
彼女は、特定のドラゴンを召喚して、そのドラゴンに乗って戦うドラゴンライダーだ。
そんな彼女が、ドラゴン乗りながら小規模な魔術をペチペチ撃つ絵面はもはや滑稽だ。
普通に、ドラゴンに火のブレスでも吐いて貰った方がよっぽどいいだろう。
「まぁ……そういう事です。ところで、今日もやるんですか?」
あぁ、アレのことか。
別に私はやりたい訳ではないのだけど……相手がやる気満々だし、私も他にやることがあるわけでもないから結局付き合ってるんだよね。
「ま、やるんじゃない? 恵梨香次第だけどね」
「なるほど……じゃあ、今日もパンですか」
「学食のパンになるだろうねぇ」
私たち2人は、学園の校舎に入り、自分達の今日の扉を開ける。
すると、何かが私の方に飛んでくる。
あれは……学食で売っているたまごサンド!
それを、潰してしまわないように丁寧に掴む。
これが今日のお昼ご飯か。
「やっほー、瑠奈」
「おはよ、恵梨香。はい、これ」
そう言って、私は恵梨香の手のひらに硬貨を何枚かを握らせる。
「ん、250円丁度だね。胡桃もおはよ、はいこれ胡桃の分」
そう言って、胡桃にアンパンを手渡す。
……なんで、私には投げるのかしら?
「あら、恵梨香ちゃん、ありがとうございます。こちらが代金ですね」
「さて、2人とも……もう、やることは分かってるね」
「校庭に行くんでしょ?」
私は、たまごサンドを食べながらそう言う。
「その通り。じゃあ、模擬戦やるぞー!」
私たちは、校庭へと歩いていった。
4大財閥
日本連合皇国では、第三次世界大戦後に四つの大企業(月詠重工、桜木証券、岡崎造船、秋風コーポレーション)が連合皇国内で非常に強い権力を持つようになった。いずれの企業の社長も魔術師である。




