9、ゴブリンキング
アルト達が町に帰ろうとしていると、誰かが助けを求める声が聞こえた。
「誰か!! 力を貸してくれ!!」
今日の朝、聞いたばかりの声だ。アルト達は振り返った。
「ユーナさん!? その傷は!? それに仲間はどうしたんですか!!」
「……アルト君……イザベル達は逃げたよ。アルト君も逃げた方が良い……」
ユーナはそれだけ言うと、草原に倒れ込んだ。
「ヒール!」
すらみがユーナに回復魔法をかける。
「……キミは敵だった私を助けるのかい?」
「……アルトナラ、タスケルデショ」
「うん、すらみ。ありがとう」
アルトはすらみに向かって微笑んだ。
「で、その傷と仲間が逃げ出したこと理由は一体何ですか? ユーナさん」
アルトはユーナに尋ねた。
「ゴブリンキングがいたんだよ」
「え!? ゴブリンの巣に!? こんなに町の近くに現れるなんて!?」
「ああ……。私のパーティーじゃ歯が立たなかったんだ……」
「ユーナさん……」
アルトは黙り込んだユーナを見つめた後、ゴブリンの巣の方を向いた。
「すらすけ、すらみ、ゴブリンキングを倒しに行こう!」
「ぷるん」
「アルト、ソウイウト、オモッタ」
「アルト君、ゴブリンキングを甘く見ちゃいけない! やめるんだ!!」
ユーナは立ち上がって、アルトを止めようとした。
「大丈夫です。ユーナさんはここで休んでいて下さい」
「アルト君……」
アルトとすらすけ、すらみはゴブリンの巣へ向かっていった。
ユーナはアルト達の背中を見送った。