5、実家
アルトとすらすけは、アルトの実家があるテッラの町に戻っていった。
町は魔物にあらされた後が生々しい。
「すらすけはスライムだから、攻撃されちゃうかも……」
「ぷるんっ」
アルトは手に入れたばかりのスライムマスターのスキルに、何か丁度良いものがないか考えた後、すらすけに手を当てて集中してみた。
『スライムマスタースキル、スライムの小型化を実行しますか?』
空中に光る文字が浮かんだ。
「よし! これならすらすけを町の人に会わせずにすむぞ!」
すらすけに手を当てて、アルトは言った。
「実行!スライムの小型化」
すると、すらすけはポケットに入るサイズまで小さくなった。
「よかった。すらすけ、ちょっとの間だからポケットで大人しくしていて」
アルトがすらすけを大きめの上着の横ポケットにいれると、すらすけは震えていた。
「大丈夫。家に帰ったら、ちゃんと説明するからね」
「ぷるんっ」
アルトは家に帰ると、両親が出迎えてくれた。
「アルト! 大丈夫だったかい?」
「母さん、父さんの具合は?」
「怪我は酷いけど、落ち着いているよ」
アルトは奥の部屋に寝ている父親の元に移動した。
「父さん、大丈夫」
「アルトか。冒険者のパーティーには入れなかったのか?」
アルトは緊張しながらも、背筋を伸ばして父親と母親に言った。
「僕は、スライムマスターとして、スライムと冒険することにしたんだ」
「何を言ってるんだ? 恐怖でおかしくなったのか? アルト?」
布団の中から父親が心配そうに言った。
「そうだよ、スライムと冒険なんて、何の冗談だい?」
母親は父親に寄り添うように座ると、アルトをじっと見つめている。
「ちょっと見てて。証拠に、ほら、スライムのすらすけ! 初めての仲間だよ!」
アルトはポケットからすらすけを手のひらに出すと、床にそっと置いた。
「ぷるんっ」
「なんだい? このちいさなスライムは!」
母親が父親の陰から、すらすけを観察している。
「すらすけって言っただろ? 今、一緒にクエストに挑戦しているんだ」
アルトはすらすけに手をかざして言った。
「元に戻れ、すらすけ!」
「!!」
両親の目の前で、すらすけが大きくなった。
「ね、僕はスライムマスターになったって分かった?」
「スライムごときと一緒に戦っても、敵に勝てるわけないじゃないか!」
父親が吐き捨てるように言うと、母親もため息交じりに言った。
「そうよ、もう危険な真似は止めてここで、ひっそりと生活しましょうよ、アルト」
「父さんと母さんなら、分かってくれると思ったのに……」
「アルト……」
アルトは両親を抱きしめてから、家を出た。
「僕とすらすけを信じて、父さん、母さん」
アルトとすらすけはテッラの町を出て、すぐそばの森に入っていった。