1、アルトの旅立ち
「大変だ! ケルベロスが町を襲っている!!」
「え!?」
町の人々の叫び声でアルト達は目を覚ました。
「アルト、隠れていなさい!!」
「父さん、母さん!! 僕、表を見てくる!!」
アルトが外に出ると、町の隣の森が燃えていた。
「はやく家に入りなさい!! アルト!」
「うん……」
大きな音がして、家の壁が崩れた。
父親がアルトをかばい、怪我を負った。
しばらくして、スオロの町から人の気配が消えて静かになった。
「……アルト、大丈夫か?」
「父さん、母さん、僕は大丈夫。でも、父さんの腕、酷い怪我だ……」
アルトの父、レオは無理矢理笑った。
「俺は大丈夫だ」
アルトの母のリサが嘆くように言った。
「エリクサーがあれば、このくらいの怪我でも治るんだけど」
「エリクサー?」
アルトの問いかけに、リサは悲しそうに頷いた。
「エリクサーは、こんな辺境の町じゃ手にはいらないしねえ。王都まではずいぶん遠いし」
アルトは少し考えた後、立ち上がっていった。
「僕が王都まで行って、エリクサーを手に入れてくる!」
「アルト!?」
「大丈夫だよ、父さん、母さん。冒険者ギルドに言って、パーティーに入れて貰う」
レオが心配そうにアルトに聞いた。
「お前は剣術も魔術も使えないだろう? どこのパーティーが入れてくれると言うんだ?」
アルトの決心は固かった。
「努力するよ。だから、父さんと母さんはここで待ってて」
アルトは父の使っていた古い防具と剣を装備すると、隣町の冒険者ギルドに向かって走り出した。