すきま
名前にはならない
瑕のついたまいにちを
ちいさなてがみにしたためている
ささいな暮らしのまちがいと
たっとい夢の断片を
いちまいの紙に住まわせる
わたしの在りようは
たまにふたしかになる
細胞 それから組織 器官へとかわり
遺伝子のいざこざと
神様の気まぐれで
わたしはかたちを手に入れた
その在りようが霞むのは
ひとへにことばがはがれおち
心理の鍵をなくすせい
それでも ちいさなてがみは
わたしのまいにちをことばにかえる
わたしのまわりをかたちづくる
そしてわたしさえも
わたしの在りようは
たまにふたしかになる
うしなったピースがところどころある
なくしたものは目に見えないし
そのことにすら気づかない
そうやってできた心理のすきまに
知らないことばが入りこむので
わたしはまだ わたしでいられる
まちを歩く
午後の景色はまだ浅くて
奇跡が彩る鮮明な
日差しのすきまでわらっている
そういうふうな
ことばもある
満たされることなく
決して欠けることもないで
平凡な身体でたましいを養っているよ
あまり尖ってない縫針は
やさしく布をつなぎあわす
やはりあたたかな糸で
ぶかっこうな縫い目をつけながら
てがみを
ちいさなてがみをしたためる
コギト・エルゴ・スムというか
ことばを疑えない