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祖母の家族愛

作者: 有馬れい

「今年のいかなごのくぎ煮も美味しいね!」毎春私が祖母に向けて言う言葉である。私が物心ついた頃から、祖母は毎年必ずいかなごのくぎ煮を炊いている。例え自分が治らない病気になっても。


悲しい現実を突き付けられたのは、一昨年秋のこと。市の健康診断の結果を聞いてくる、と言って家を出た祖母が帰ってきた時の顔色は、見たことも無い程に真っ青であった。祖母は、慢性腎不全に陥っていたのである。祖母は泣きながら、実は何年も前から腎臓が悪かったことを家族に告げた。1人で隠し続け、辛かったであろう。祖母は、もう少しで人工透析をしなければならないレベルの腎不全にまで陥っており、常に貧血状態であると主治医から私に話があった。祖母は、立っているだけでもフラフラしてしんどい状態であったのに、それを家族に隠し続けていたのである。


そんな祖母が決して辞めないこと、それが、毎春必ず行う【いかなごのくぎ煮炊き】である。いかなごのくぎ煮は、目を離せない料理である。立っているだけでも辛い祖母が、何十分もかけて、いかなごのくぎ煮を炊くのだ。どうして立っているだけでも辛いのに、炊くのをやめないのかと訪ねたことがある。すると祖母は、「みんなが美味しいねって言ってくれるのが嬉しいんだよ。」と笑顔で話してくれた。


祖母は、いかなごのくぎ煮を炊いても自分で食べることは無い。自分が食べると、家族が食べる分が減るからだそうだ。いかなごのくぎ煮は、祖母の家族への愛が詰まっている。私は、いかなごのくぎ煮を食べる度に涙がこぼれそうになる。【いかなごのくぎ煮】という料理ひとつで、こんなに家族の愛が感じられるなんて、私は幸せ者である。


祖母の想いを受け継ぐ為に、今年から祖母のいかなごのくぎ煮の炊き方を学んだ。私がこれから、祖母の想いを引き継いでいく。いかなごのくぎ煮は、私達家族を繋いでくれる、とても大切な料理である。


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