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キョウヤがマリアの額に手をおくと、マリアの頭から盛大に湯気が吹き出した。
「おいおい、これは尋常な体温じゃないな」
キョウヤはマリアの体を支えていた。
「なんで、こんなに幸せそうなんだ。気味が悪いな」
「――コラッ、お姉さまから離れろ!」
走り寄ってきた神官の少女がキョウヤを蹴飛ばした。キョウヤは地面に間抜けなこけ方をした。
いつの間にか目を覚ました神官の少女二人組がマリアを支えていた。
「――お姉さまかに近づくな! この不審者、ケダモノ!」
「お姉さま、大丈夫ですか? ここは、退却しましょう」
「あふううう…………………………」
マリアは幸せそうな表情を浮かべたまま意識を失っていた。心配そうに見つめる神官の声は届いてなさそうだった。
神官二人組はキョウヤのことなど無視して、マリアを運んで広場から一目散に消えていった。
「あの神官の二人組、ゴミをみるような目で俺のことを見てたな。もしかして、俺って、一般人からはそんな人物に見えているのか? マリアとかいう神官も俺のことを鬼だと決めつけていたし。はぁ、先が思いやられる…………」
キョウヤはアリシアの元へ移動した。腰を落とし、アリシアを優しく抱えあげる。
「こいつは、俺のことをどう思っているんだろうか? もしかして、俺のことを怖いとか思っているのか?」
アリシアはすやすやと眠っているだけだった。
「こうして、黙って寝ていれば、かわいいんだけどな…………いやいや、これは、偽りの感情だ。アリシアに
「助けて」
と命令された影響だ。好きだと勘違いしているだけだ」
キョウヤはふと、自身の頬に触れた。マリアの柔らかな唇の感覚が残っていた。
「くそっ、マリアのせいで、余計にアリシアのことを意識してしまった。全てはこのブレスレットが原因だ。俺の心を縛る忌々しい呪いめ。絶対に解除して、俺は自由になる! アリシアが泣いて頼んでももう一緒にいてやるものかっ!」
キョウヤはイライラを晴らすように、地面をドンドンと叩きつけながら歩き出した。でも、アリシアを抱いた手は優しかった。