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6-4

長い廊下を進むと、キョウヤの前に巨大な扉が現れた。

キョウヤが扉に触れると、ブレスレットが反応して光り、扉が自動的に開いた。

 ゆっくり時間をかけて開いた扉の向こうは礼拝堂だった。

 一度に何千もの人が祈りを捧げられるような広い場所だった。天井のステンドグラスから光が差し込み、幻想的な雰囲気を醸し出している。

 最奥にあるステンドグラスの前に十字架が立てられ、そこにアリシアが鎖で縛られていた。

 体の表面が黒い模様に覆われ、疲れ果てたかのように眠っていた。


「アリシア!」


 キョウヤはアリシアの元へ走った。


「今、助けてやるからな」


 アリシアの足の鎖を砕き、腕を縛る鎖を引きちぎった。鎖がジャラジャラと音を立てて床に落ちる。

十字架から自由になったアリシアをキョウヤは受け止めた。その体は思ったより軽かった。キョウヤの腕の中で眠るアリシアに向かって静かに声をかける。


「アリシア、聞こえるか。おーい。助けに来たぞ」



「んん…………キョウヤ…………」



「よかった。無事で…………その黒い模様は何だ?」



「ああ…………これ? さすがに、気づくわよね…………もう、隠しきれないか…………」


 アリシアがキョウヤの腕に抱かれたまま、自分の手を目の前に持ってくる。その手首には金色のブレスレットが輝いていた。キョウヤと同じものだ。


「これは、私が最も忌み嫌う邪神の力が、体の表面にまで現れたもの。不完全な封印では、抑えきれなくなったみたいね。今まで隠していて、ごめんね」



「そんなことはどうでもいいっ! 邪神の力を取り除く方法はないのか? 俺にかけられた封印をアリシアに戻せたら…………」


 アリシアが静かに首を横に振った。


「この体に邪神の力が宿っていることを自覚したときから、こうなることは覚悟してたわ。これ以上、犠牲を増やさないためにも私はここで死ぬべきだと思う…………」



「――ふざけるなっ! 悲劇のヒロイン気取りかっ! 自ら死を選ぶなんて、俺は許さないぞっ!」



「ふふっ…………死を望まれることはあっても、生きることを望まれるなんて、なかった。キョウヤ、あなただけよ。私のことをそんなふうに想ってくれるのは…………でも、それは幻想。私があなたにかけた封印? 呪い? 夢? この際、なんでもいいわ」



「そんなことはないっ! 俺は俺の意志でここまで来た。アリシアを助けためにここへ来たんだ!」



「そう思っているだけよ。あのね。召喚主は召喚時に一度だけ、召喚された者に命令をすることができるわ。持続期間は短く、命令を果たせば、それで終わってしまう契約。だから、キョウヤが私のことを一度でも助ければ、契約は終了。あなたは自由の身だった。でも、契約終了後もキョウヤは私のことを守ってくれた。まさか、心にまで影響を与えてしまうとは思わなかったけどね」



「一度だけ? だけど、俺は何度もアリシアを守るように体が勝手に動いたぞ」



「だから、それは、そう思っているだけよ。キョウヤにかけた封印術式――レーギャルンのせいで、離れられない、まだ命令は続いていると錯覚し……うっ、ゴホッ……」



「大丈夫か、アリシア?」



「うん、まだ、なんとか」


 アリシアは苦しそうに咳をしていた。邪神の力がアリシアの体を蝕んでいるのだ。平気でいられるはずがない。

 今すぐにでもアリシアを連れて、礼拝堂を脱出した方がよいだろう。


「もう話すな。ゆっくり休んでいてくれ」


 キョウヤは歩きだそうとして、足を止める。アリシアがキョウヤの服の裾を引っ張ったからだ。


「待って。聞いて欲しい話があるの」



「そんなのは、ここを脱出したら、いくらでも聞いてやるよ」



「ダメなの! 今、聞いて欲しいの!」


 アリシアがキョウヤの上着を掴んだ。


「…………お願い」


 アリシアの口調には切羽詰まったものを感じた。

 正直、アリシアの話を聞いている時間はないが、キョウヤは折れた。


「街に帰ったら話を聞く約束だしな。聞いてやるよ」



「約束…………覚えていてくれたんだ」


 アリシアが指をいじり、こそばゆそうにしていた。


「じゃあ、話すね」



「ああ」


 アリシアがゆっくりと深呼吸をした。


「あれは、十年前のことだったわ――」


 アリシアが目を閉じ、ゆっくりとした口調で語りだした。まるで、心の奥底に閉ざされた思い出という扉が、音を立てながらゆっくりと開いていくみたいだった。



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