5-3
先頭を走っていたサクラが立ち止まって、前方を指差した。
「いた! これが巫女をさらった植物の正体」
そこには、巨大な食虫植物の魔獣がいた。
胃袋のような巨大な袋から数十本のつるが出ている。それが触手のように蠢いていた。それに加えて、獲物を食べる口があった。人間一人をまるごと飲み込めそうなほど大きい。
似たような一回り小さな食虫植物が周りに五、六体はいる。
狼の魔獣達が恐れていた正体が、この植物型魔獣だった。
キョウヤは虚空からレーヴァテインを取り出した。
「今すぐ、灰にしてやる!」
「キョウヤ様、待ってください」
茂みから身を出そうとしたキョウヤをマリアが止めた。
「それでは、捕らえられたアリシアさんまで灰になってしまいます」
「それはまずい…………じゃあ、どうしたらいいんだよ」
「アリシアさんは、おそらくあの一番の大きな植物が持つ袋の中にいるでしょう。アリシアさんの救出を第一優先とし、アリシアさんの救出後、魔獣を討伐するのがよいと思います」
「アリシアの奴、面倒をかけやがって。とりあえず、アリシアを捕らえている植物以外は燃やすか。雑魚が何体いようが楽勝だ」
「油断は禁物ですよ。あれは、植物型魔獣カーニバルです。捕らえた獲物を袋の中にある消化液で溶かして養分を吸収します。ですが、これほど大きなものは見たことがありません。《混沌》の影響かもしれませんね」
キョウヤは鼻を鳴らした。
「植物相手に負ける気がしないな」
「強力な酸を吹きかけてくるので注意が必要してください」
「ああ」
キョウヤは剣を強く握りしめた。
「アリシアをさらっただけでなく、消化しようとしているなんて許せない。燃やし尽くしてやる!」
サクラが鞘から刀を抜いた。
「マスター、私も援護する」
サクラも準備万端だった。
「よし。それじゃあ、開幕の火蓋を切らせてもらう!」
大剣レーヴァテインが炎に包まれる。その炎をキョウヤは勢いよく植物型魔獣カーニバルに解き放った。
アリシアが捕らえられているであろう大きな植物から狙いを外し、周りにいた一回り小さなカーニバルに炎弾が命中した。
小型のカーニバルが炎に包まれる。苦しそうに触手を振り回すが、炎は消えず、力尽き枯れた小型のカーニバルが地面に倒れた。
キョウヤはガッツポーズを決めた。
「よしっ。まずは、一体」
キョウヤ達に気づいたカーニバルが一斉につるを伸ばしてくる。だが、そのつるはキョウヤ達にまで届かなかった。
サクラの刀に斬られ、つるが途中で切断される。
「マスターには、指一本、触れさせない」
カーニバルが耳障りで奇声を上げる。サクラに向けて、口から液体の塊を吐いた。
サクラが避けると、液体の塊が地面にべちゃっと着弾した。そこに生えていた植物が無数の気泡に溶かされ、跡形もなく消え去った。
「あの液体はヤバそうだな。アリシアは生きているのか? もしかして、もう消化液に溶かされていたりして」
「それは大丈夫」
サクラが自信たっぷりに応える。
「マスターのブレスレットが解除されていないのがその証拠」
キョウヤの左手首には金色のブレスレットが未だにまとわりついていた。
キョウヤはブレスレットを見てほっとした。
「ん? どうして、俺、安心してるんだ。このブレスレットを外したいはずなのに…………」
「マスター、危ない!」
カーニバルがつるを針のように尖らせてキョウヤに攻撃してきた。サクラは刀で触手を切り捨てる。
「ぼーっとしていたら、危ないよ」
「すまない」
途中で切断された触手がものの二、三秒で再生する。
カーニバルが攻撃をサクラに集中させる。数十本もの触手の槍が四方八方からサクラに襲いかかる。
一本一本の触手は大した威力ではないが、その数が問題だった。
サクラがどれほど触手を切り捨てても、すぐに再生し、再び襲いかかってくる。
サクラは息をつく間もなく刀を振り回し、場所を移動していく。カーニバルの本体に近づくほど、触手の勢いが強くなっていた。
サクラがカーニバルから距離を取るように後退した。
「そう簡単に近づけさせてくれないか。この魔獣、思っていたより手強いかも」
サクラの死角から一本の触手が突き出された。サクラがそれに気づいたときには、首元に鋭く尖った触手が迫っていた。
サクラが刀を動かす。けれど、刀が間に合わない。
「――しまった…………」
一発の銃声が鳴り響いた。
サクラに迫っていた触手は勢いをなくし、地面に倒れた。
「もう、何をしているんですか! あれほど、油断はしないように忠告しておいというのに」
マリアが手を腰に当てた。その手には銀色に輝く銃があった。
「一人で突っ切るなんて無茶です。もう少し、周りをよくみて…………ん?」
マリアが立っている地面から触手が顔を出していた。その触手がマリアの片足に巻きつくと、触手が一気に地面から伸び、マリアの片足を持ち上げた。
「きゃあああああああああああああああ!」
マリアが宙吊りにされる。触手に片足を持ち上げられ、あられもない姿を晒す。
スカートが重力に引かれ、白い太ももがあらわになる。下着が見えそうというところで、マリアがスカートを手で押さえた。
「なんてことをしてくれるのですか! このエロ植物! 降ろしなさいっ!」
マリアの周りを炎が駆け抜けると、マリアの足から触手が外れる。
キョウヤは落下してきたマリアをキャッチした。マリアの膝と肩を支え、マリアをお姫様抱っこのような格好になる。
「ったく、油断してるのはどっちだよ」
「いやぁん、キョウヤ様」
マリアはキョウヤの腕の中で赤くした頬に手を当てていた。
キョウヤが助けなければ、マリアを取り囲んでいた触手の槍に貫かれていたというのに、マリアは現状を満喫していた。
キョウヤがマリアを地面に下ろすと、マリアは残念そうな顔を浮かべる。
「もう少し、抱っこされていたかったです。助けられるというのも、たまにはいいですね」
「何を言っているんだ」
キョウヤは後ろを振り返らずに、後ろに炎を放った。キョウヤに襲いかかろうとしていた触手が灰となる。
「そんなことを言っている暇があるなら、魔獣の討伐方法を考えろよ」
カーニバルから伸びるは触手の数は戦闘開始時から減らないというより、増えている。時間が経てば経つほど、触手の本数が増え、威力が強くなっている。
「早く、アリシアを助けなければならないっていうのに、これじゃ、本体に近づけない」
「では、私の出番ですね」
「何をするんだ?」
「まぁ、見ていてください。私の愛の力を」
マリアが一歩、カーニバルに近づいた。小型のカーニバルに向けて銃弾を放つ。桃色の銃弾が見事、本体に命中した。
触手がマリアに襲いかかってくるが、マリアは特に防御も回避もしようとしない。ただ、じっとしていた。
襲いかかってきた触手のどれもがマリアに触れることはなかった。触手が絡まり、マリアへ近づくことはなかった。
キョウヤは目を疑った。マリアの銃弾を受けた小型のカーニバルから伸びた触手が他の触手を絡みとっていた。まるで、マリアを守るかのように行動していた。
「何が起きたんだ?」
「ふふん、これが愛の力です。愛の力を受けた者は、私を傷つけようとする存在から守ってくれます。たとえ、魔獣であっても例外ではありません」
「だったら、アリシアを捕らえている魔獣に銃弾をぶちこめば、勝ったも同然じゃないか」
「ですが、弱点があるとすれば…………」
マリアがその場から飛び退いた。
遅れてマリアが立っていた地面に触手の槍がいくつも突き刺さる。
「持続効果が短いことですね。それに、魔獣相手、混沌の影響を受けた黒き魔獣となるとさらに効果も薄く、持続時間も短いです」
「そっか。残念だが、他の方法を考えるか」
マリアによる愛の銃弾を受けたカーニバルは既に正気を取り戻していた。
キョウヤは炎を地面に放って、触手を一掃した。だが、地面からつるの触手が次々と生えてくる。
「ちっ、やっぱり本体を倒さないとダメみたいだな」
「私に任せて。マスターの道は私が切り開く」
サクラが普通にカーニバルに近づいた。当然のようにサクラに集中的に触手の雨が降り注ぐ。
サクラは目を閉じ、刀を持っていない方の手を胸に当てる。
「――鬼呪解放!」
サクラを中心に風が巻き起こった。風の刃がサクラの周囲にあった触手を切り刻む。
サクラの額から生える二本の角。それに、サクラから溢れ出す闘気。サクラは鬼の力を解放した。
「一気に決める!」
サクラがカーニバルに向かって走り出した。
何十本という触手が一斉にサクラに突き出される。
サクラは目にも止まらぬ速技で、迫り来る無数の触手を斬り捨てる。
全ての触手を斬るわけでなく、避けられる触手は避け、針の穴を通すように華麗に避けていく。動きがさっきまでと全然違う。身のこなしが軽く、俊敏性が段違いだ。
斬っても斬っても再生を続ける触手相手に、サクラは後退することなく、着実にカーニバルとの距離を詰めていく。
カーニバルとの距離が近づくにつれて攻撃の激しさが増していく。
吐き出される消化液を避け、小型のカーニバルを一刀両断する。噴き出した消化液が手にかかり、サクラは顔を歪める。
サクラにできた一瞬の隙をカーニバルは見逃さなかった。
防御に使っていた触手を含めて全ての触手が攻撃に転じた。
サクラが腰を低くし、刀を構えた。
「咲き乱れろ! 百花繚乱!」
幾千の線が触手やカーニバル本体を切り刻む。
キョウヤが息を呑むほど美しい刀舞だった。
そのあまりにも綺麗な剣筋に、様々な色の花が舞っているかのような幻覚が見えた。
巨大なカーニバル一体を除いて、無数に切り刻まれたカーニバルが地面に倒れる。残されたカーニバルも触手を失い、無防備だった。
触手が再生するまでにできた僅かな時間、それさえあれば大丈夫だった。
サクラがカーニバルの胃袋のような袋を切り裂いて、アリシアを助けることができる。
カーニバルは口を上に向けた。また、消化液を放とうとしていた。
サクラは臆することなく、カーニバルに近づいた。動体視力の強化されたサクラであれば、消化液の塊など止まって見えることだろう。避けることなど簡単だ。
カーニバルが放ったのは消化液ではなかった。キラキラとした粉だった。
サクラの動きが止まった。ガクガクと膝が震え、地面に片膝をついた。着物の袖で口元を覆った。
「これは、痺れ粉、いや、睡眠粉…………」
「サクラ!」
キョウヤは急いでサクラの元へ走った。
鬼の力で嗅覚も強化されているかもしれない。その場合、粉の効果が強く出てしまう。
残るカーニバルは一体。そのカーニバルの切られた触手が再生を始めている。
剣のように尖った触手が、動けなくなったサクラに狙いを定めた。
サクラは立ち上がろうとするが、すぐにふらついて、再び地面に膝をつけてしまう。
「油断した。まさか、睡眠作用のある粉を持っているとは。警戒しておくべきだった。身体能力の強化が裏目に出るなんて…………」
触手が今にもサクラに襲いかかろうとしていた。
キョウヤが炎を放ってもサクラの救出には間に合わない。
サラク上体が揺れ、手を地面についた。
「もう、だめ…………意識が…………ん、地面が冷たい…………」
触手の動きが一瞬、止まった。触手の表面に白い霜がついていた。
キョウヤは地面を蹴って、サクラを飛び越えた。
「待たせたな」
キョウヤは炎が宿った剣をカーニバルに向けて振り下ろした。灼熱の劫火がカーニバルを切り裂いた。
カーニバルが地面に倒れ、無数の触手も力なく地面に横たわる。
サクラが地面に腰を下ろした。
「ごめん、マスターの足手まといになった」
「何を言ってるんだ?」
キョウヤはサクラに手を差し伸べた。
「サクラがいなければ、こうして魔獣を倒すことはできなかった。サクラのおかげだ」
「マスター………………」
サクラはキョウヤの手をとり、立ち上がった。
キョウヤの背後で燃え尽きたカーニバルから煙が上がっていた。
「植物が黒焦げだけど、よかったの?」
「あっ、やばい。アリシアのこと、忘れてた」
キョウヤは慌てて黒焦げのカーニバルに駆け寄り、袋を剣で切り裂いた。袋の中からアリシアが姿を現した。
「アリシア…………大丈夫か?」
「…………んん、あれ? キョウヤ? なんで、こんなところに…………」
アリシアが目を覚ました。巫女服の所々が破けていた。だが、体に傷はなかった。
アリシアが姿勢を低くし、頭を守るように手で覆った。
「はっ! 気をつけて。上から消化液が…………」
「何を言ってやがる?」
キョウヤはアリシアの頭を小突いた。
「まだ夢を見ているのか?」
「えっ…………………………」
アリシアは地面に倒れたカーニバルを見て、状況を察したようだ。
「キョウヤが助けてくれたの?」
「もちろん」
キョウヤは視線をアリシアから外し、頬を指で掻いた。
「まぁ、助けたのは俺だけじゃないけどな」
アリシアはキョウヤの後方にいるサクラとマリアを見た。
サクラは鬼の闘気を消し、人間の姿に戻っていた。
「無事で何より」
「怪我などされてなくてよかったです」
マリアは心から安堵したような表情を見せた。
「これにて、アリシアさんの救出完了と同時に、魔獣退治も完了です。皆さん、協力ありがとうございました」
マリアが深々と頭を下げた。
「今回の魔獣退治の報酬として、気持ち程度ですが、教会から報奨金があります。街に帰ったら、お渡ししますね」
「えっ、本当?」
サクラが目を輝かせていた。
「そのお金でお肉がどれだけ食べられる?」
「お腹がいっぱいになるくらい食べられますよ」
「やったー。私、お腹ペコペコ。もう帰って休みたい」
「日も暮れてまいりました。街に帰って、ご飯にしましょう。神官一押しのお店を教えてあげましょう」
マリアとサクラはご飯の話で盛り上がっていた。
キョウヤはアリシアを足先から頭の先までよく見た。アリシアに特に異常は見られない。
元はといえば、植物型魔獣にアリシアがさらわれそうになったとき、アリシアの手をキョウヤが掴みさえできていれば、こんなことにならなかった。
キョウヤの炎を以てすれば植物型の魔獣など一撃で葬り去れた。それに、今頃は街に戻っていただろう。
アリシアがキョウヤのことを怪しむような目で見ていた。
「何よ。人のことをじろじろと見て…………もしかして、破けた服の隙間から私の素肌を見ているんじゃ…………」
「そ、そんなことないっ! 俺は、ただ、好きな人が無事だったことにホッとしているだけだ!」
キョウヤは意地になって大声を出してしまった。
アリシアは顔を地面に向け、頬を淡いピンク色に染める。
キョウヤはアリシアに告白したみたいな雰囲気になっていることに気づいた。慌てて否定する。
「アリシアには無事でいてもらわなければ困るだけだ。この封印を解除できるのは、今のところ、アリシアしかしないんだからな。言っておくけど、好きっていうのは言葉の綾だからな。本当はアリシアのことなんて………………」
アリシアが前かがみになり、キョウヤの瞳の中を覗き込む。
「私ことなんて、何?」
「アリシアのことなんて…………」
キョウヤの心の中に二つの感情が渦巻いていた。
一つは、アリシアのことが嫌いだという感情。キョウヤにレーギャルンという封印をかけ、心を捻じ曲げる呪いをかけたことへの恨みの感情。
もう一つは、アリシアのことが好きだという感情。けれど、この感情はアリシアに矯正された感情だ。断じて、キョウヤ自身の感情ではない。それなのに、キョウヤはアリシアのことを見つめていると、心からわけのわからない感情が湧き出てくる。
それは、全てにおいて優先される感情。心が暖かな何かで満たされていく。自分や世界のことなんてどうでもよくなる。
この消えることがない感情が呪いなのだとキョウヤは思っていた。キョウヤを縛る忌まわしき封印だ。
「――大っ嫌いだ!」
キョウヤはアリシアに向かって、ストレートに感情をぶつけた。
アリシアの頬を伝って一筋の輝きが流れた。
「あれ? 私、どうして……目にゴミでも入ったかな……おかしいわね。なかなかゴミが取れないわ」
「ごめん……そんなつもりで言ったわけじゃ…………」
「何を言ってるのよ…………キョウヤにどう思われていても、私は構わないわ」
アリシアは目をゴシゴシと擦って涙を拭う。目が少し赤く腫れているが、涙は止まっていた。
アリシアはキョウヤの胸に指を突き立てる。
「第一、助けるのが遅すぎるわよ。もうちょっとで、植物に消化されてしまうところだったわ」
「アリシア………………」
「ああ、疲れた。こんなことなら魔獣退治なんて協力しなければよかった。デーモンが出たって言うから……おっと……」
アリシアが上体のバランスを崩した。キョウヤがアリシアの体を支えると、抱き合っているような状況になってしまった。
キョウヤは慌てて、アリシアの体から手を放した。
「あっ、こ、これは、わざとじゃなくて、その、急に倒れてくるから仕方なく…………」
「それぐらい、わかっているわよ。倒れそうになった私を助けてくれたんでしょ」
アリシアがキョウヤに感謝するような笑顔を向けていた。今のアリシアは珍しく素直だった。
急にアリシアの態度が変わってしまったことに、キョウヤは違和感がした。アリシアの正気を疑ってしまう。
「アリシア、どうしたんだ? いつもと調子が違うじゃないか? 植物の変な粉の影響を受けたのか? 熱でもあるんじゃないか?」
キョウヤがアリシアの額に手を置いた。手からアリシアの熱を感じる。それほど、熱はないと思ったが、次第に熱が上がっていく。
アリシアが耳まで真っ赤にして、キョウヤの手を払い除けた。
「熱なんてないわよ。キョウヤのバカ!」
「いや、でも…………」
「私のことは私が一番わかっているわ。はあ、今日はひどい目に遭った。体がヌメヌメして気持ち悪いし、早くお風呂に入りたいわ」
キョウヤは安心した。やはり、いつものアリシアだった。
「マスター、疲れたよ。早く帰ろう」
サクラがキョウヤの片腕に抱きついてきた。遅れて、もう片方の腕にもマリアが抱きついてくる。
「サクラさん、ずるいです。キョウヤ様の隣は私の特等席なんですよ」
「おまえら、いい加減にしろよ!」
「ええええ! いいじゃないですか? 実は、こうしてキョウヤ様にくっついていると怪我の治りが早くなるんです」
「嘘をつけ。マリアはどこも怪我をしていないじゃないか!」
「あっ、今、心が傷つきました。キョウヤ様、癒やしてください」
「だから、いい加減に………………」
ふっとアリシアが小さな笑い声を漏らした。その後、あはははは、と大声で笑いだした。
キョウヤはアリシアがこんなに笑っているのを初めて見た。さすがに心配になってきた。いつもと調子が違う。自分に正直というか、素直というか、特別な力を持った巫女ではなく、ただの少女だった。肩に背負っていた重みを手放したかのように、心がそのまま行動に表れていた。
「アリシア…………本当に、大丈夫か?」
「うん。大丈夫っ!」
アリシアは迷いが吹っ切れたような清々しい表情をしていた。遠い過去を思い出すように空を見上げた。
「なんか、あなた達を見ていると、昔を思い出すわ」
アリシアが踊るように歩きだす。
「過去や未来のことを考えず、今だけを生きていた純粋な日々を。私がこんなにも頭を悩ませて来る日も来る日も答えを探しているのに、答えなんてどうでもよく思えてくる眩しさだわ」
「何を言っているんだよ」
「えっ?」
「――アリシアも自由に生きればいいじゃないか」
風がアリシアの髪を優しく撫でた。
「…………それができれば、苦労しないわ。理想と現実はあまりにもかけ離れている。その溝は埋めることができないほど深い」
「じゃあ、橋をかければいい」
「え?」
「可能性は一つじゃない。色々試してみたらいい。何回、失敗してもいい。最後に成功すればいいんだから」
アリシアが瞬きもせず、キョウヤのことをじっと見つめてきていた。
キョウヤは自分で言っておいて、恥ずかしくなった。
「俺はただ、自分がしたいことをしているだけだ。この世界の事情なんて知らないし。世界が滅びるとか言われても、話が大きすぎて、実感がわかない。昨日までの記憶がないことは不安だが、別に自分が誰であっても構わない。だって、俺は俺だからな。俺が誰であったとしても、今のこの瞬間が嘘になることはないからな」
「あっ…………」
アリシアは小さく口を開けると、ニッと笑って白い歯を見せる。
森の出口に向かって軽やかな足取りで進むと、キョウヤに背中を向けながら話す。
「キョウヤ…………街に帰ったら、聞いて欲しい話があるわ。それも二人きりで。とっても大事な話よ。聞いてくれるかしら?」
「ああ、聞いてやるよ。その代わり、話すって言った以上、最後まで話せよな。中途半端なのは嫌いだ」
アリシアが勢いよくキョウヤの方を振り向いた。
巫女服の袖や長い髪が踊るように翻る。
「約束よ。破ったら、許してあげないんだから」
アリシアは約束を結ぶように可愛らしく小指を立てた。
言葉はいつも通りきついが、その声音には小さな喜びが感じられた。
「魔獣は倒したし、さぁ、早く街へ戻るわよ!」
アリシアが元気よく拳を天に向けた。
キョウヤの隣でマリアがニヤニヤとしていた。
「キョウヤ様、いつの間にアリシアさんとラブラブな関係になっていたのですか? 数時間前まではあんなにも仲が悪そうだったというのに」
「俺とアリシアが? いやいや、そんなことないだろう。今のアリシアは何か調子がいつもと違うだけだ」
「ふふふ、そうですかね? 男女が二人だけでする話といえばアレしかありません」
「アレって?」
「そう、恋の話です。きっと、アリシアさんはキョウヤ様に恋してしまったんでしょう」
「そんなバカな…………」
「照れなくてもいいじゃないですか? キョウヤ様の魅力は私が一番よくわかっています。アリシアさんもキョウヤ様の魅力にようやく気づかれたというだけの話です」
「そう、マスターの強さは鬼のお墨付きだよ」
サクラもキョウヤにフォローを入れてくる。
女の子二人に褒められて悪い気分はしなかった。
アリシアの話は恋の話ではない気がしていた。もっと、アリシアに関係するような、それこそ、今の関係が変わってしまうかもしれない重大な話のような気がしていた。話の内容を考えても時間の無駄だ。どうせ、街に帰ったらわかることなのだから。
キョウヤの隣にいたサクラが険しい顔をした。
「………………………………っ! マスター、何か来る!」
「ん? 何が………………」
アリシアがキョウヤ達の方を振り返って、大きく手を振った。
「三人とも、早く来なさい。日が沈まないうちに街に帰れなくなるわ――」
アリシアが発言した直後だった。アリシアの体を植物のつるの束が貫いた。
つるは地面から突如現れた。アリシアの背中から体を貫き、鮮血を辺りに散らし真っ赤な花を咲かせた。
キョウヤは腹の底から叫んだ。
「アリシアァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
アリシアは口から赤黒い血の塊を吐いた。
「う、そ……………………冗談、だよね………………」
アリシアは自分の身に起こったことが信じられないようで、真っ赤に染まった手を震える瞳で見つめていた。
アリシアの体からつるの槍が引き抜かれ、つるは地面に消える。
キョウヤはアリシアを攻撃した魔獣の方を振り向いた。
キョウヤに斬られたはずの植物型魔獣カーニバルが再生していた。切られた断片から新しい芽が出て、つるが伸びる。周りにいた小型のカーニバルを取り込み、成長していた。
「貴様あああああああああああああああああああっ!」
キョウヤの隣にいたサクラがマリアを掴んで地面に転がった。直後、キョウヤから豪炎が立ち上った。
怒りで気がおかしくなってしまいそうだ。溢れる炎を止められない。炎はキョウヤの怒りを体現しているかのように荒々しく、轟々と音を立てて燃え狂っていた。
キョウヤは剣を掲げる。豪炎が渦を巻き、剣に吸収されていく。
「――燃やし尽くせ! 燃え盛る炎の大地!」
キョウヤが剣を地面に突き刺すと、カーニバルがいた場所を中心に巨大な火柱が上がった。炎は衰えることを知らず、植物型魔獣だけでなく、周りの木々も包み込んだ。
炎が消えると、マグマの大地に燃え尽きた灰だけが浮いていた。カーニバルの地下に伸びていた根も同様に燃え尽きただろう。
キョウヤはレーヴァテインを虚空に消すと、真っ先にアリシアの元へ向かった。
「アリシア!」
マリアが傷口に手をかざし、治療をしていた。淡い光の球体がアリシアの傷口を優しく包み込んでいた。
「ダメです。出血の量が多すぎます。このままでは…………」
「私も協力する。傷口を圧迫して、これ以上、血が失われないように…………」
マリアとサクラは必死でアリシアの応急処置をしていた。
キョウヤはその場に膝をつき、四つん這いになった。拳を地面に叩きつける。
「くそっ。何が約束だ。俺はアリシアを守る約束すら果たせてないじゃないか」
キョウヤは自分の無力さを思い知った。魔女に魔術で勝り、鬼に怪力で勝り、神官に恩恵で勝っているにも関わらず、たった一人の少女も守れない。キョウヤの力とはその程度のものだったのだろうか。
魔獣討伐には成功したが、その代償はあまりにも高かった。
マリアがアリシアの治療を止めた。
「そ、そんなことが……アリシアさん、あなたは…………」
マリアが立ち上がり、アリシアから距離をとっていた。
サクラも目を見開いて、アリシアの変化をただ見ていた。
サクラとマリアの怯えるような態度に違和感があった。
キョウヤはアリシアの容態を確認する。
アリシアのお腹にあった風穴がみるみる修復されていく。ものの数秒で傷は完治する。アリシアの白い肌をつるの槍が貫いた跡はなかった。
アリシアは意識をまだ失っているが、自然と呼吸をしていた。
「何が起きたんだ? 俺は夢でも見てるのか?」
「その黒き刻印は…………」
マリアがアリシアの腹部を指さした。そこには黒い模様が描かれていた。描かれるというより、体に刻まれているかのように消えない跡だった。
「《黄昏》…………邪神の力を持つ、異端の者」
「どういうことだよ。マリア、わかるように説明してくれ」
マリアは動揺していた。目を閉じて心を落ち着かせると、静かに語りだした。
「その黒き刻印は《黄昏》――邪神の力を持つ者の証。アリシアさんが《黄昏》だとすれば、色々なことに納得がいきます。ここ最近の魔獣凶暴化の被害拡大、私の恩恵である愛の無効化、植物型魔獣がアリシアさんだけを狙ったわけ。魔獣がアリシアの体に秘めた邪神の力に引き寄せられたのだとすれば、全ての辻褄が合います」
「アリシアが邪神の力を持っている…………そんなの嘘だ! アリシアは邪神復活を阻止するために行動してた。邪神の力を望んで手に入れるわけない」
「マスター、邪神の力は望む、望まざるに関わらず、宿ってしまう」
「そう、邪神の力は本人の意志とは関係ありません」
マリアは銃を取り出し、銃口をアリシアに向けた。
「《黄昏》に選ばれた者に罪はありません。ですが、その邪神の力は放置できません。残念ですが、アリシアさんには、ここで死んでもらいます」
「待ってくれ」
キョウヤは両手を広げて、マリアの前に立ち塞がった。
「冗談だよな? まさか、本当にアリシアを殺すなんてしないよな…………」
「キョウヤ様、申し訳ございません。マリアだって、好きで殺したいわけではありません。殺さないで済む方法があれば、そっちを選びます。《黄昏》は存在自体が許されていません。放置すれば、さらなる災厄を呼び寄せます。今ならたった一人の犠牲で済みますが、時間が経てば数百人、いえ、数千人規模の無垢な命が犠牲になるかもしれません」
マリアは辛そうな顔をする。
「たとえ、キョウヤ様がアリシアさんを見殺しにしても、責める人は誰もいません。だから…………」
「だとしても、ダメだ」
アリシアが死ねば、キョウヤにかけられた封印が解除され、当初の目的が達成されるというのに、キョウヤの心がそれをよしとしない。
アリシアに歪められた感情が理由ではない。もっと純粋な感情が
「アリシアを助けたい」
と言っている気がした。
「もし、アリシアを殺すというなら…………」
キョウヤは虚空からレーヴァテインを顕現させる。
「俺を倒してからにしな!」
「キョウヤ様………………」
マリアの瞳が揺れていた。
マリアの人々を救いたい気持ちは本当なのだろう。だが、そのために、誰かを犠牲にする方法に迷っているように見えた。
キョウヤはマリアに手を伸ばした。
「マリア、一緒にアリシアを助ける方法を探そう。誰かを犠牲にするなんてやり方は間違っている。俺にはマリアが必要なんだ。持っている知識や技術を貸してくれ」
「ですが、私は神官。救える多くの命を犠牲にするなんて…………やっぱり、できません」
「じゃあ、神官としてのマリアではなく、ただのマリアとしてはどうしたいんだ?」
「神官ではなく、ただの私ですか…………それは、もちろん、全ての人に救済の手を差し伸ばしてあげたい。ですが、それは夢物語です。両方を選ぶことは許されません。無理に両方を選べば、両方とも救うことはできず、滅ぼしてしまいます」
「――その通りじゃ」
木の陰から魔女のクロが姿を現した。
気配を断っていたのか、キョウヤはそばにいたことに気がつけなかった。
「何かを望むなら、選択しなければならない。選択するということは、何かを選ばないということ。つまり、何かを犠牲にするということじゃ」
クロの持っていた杖が光を放ち輝く。
アリシアの上空に全長二メ―トルほどの氷の塊が出現した。
キョウヤが振り返ったときにはそれがアリシアに向けて落下していた。
「――しまった」
氷の塊がアリシアに直撃する直前、粉々に粉砕された。
サクラが抜刀していた。
「マスターが悲しむようなことはさせない」
「これだから、鬼は嫌いなのじゃ。感情ではなく、理屈で動けないのか」
クロはやれやれと頭を横に振った。
「世界の命と一人の少女の命、天秤にかければ、どちらを選ぶかは明白じゃろ。それに、本当に邪神の復活阻止を望んでおるのなら、その巫女も死んで本望であるはず。《黄昏》に選ばれた人間を全て世界から消せば、《混沌》の闇は消え、邪神を復活させようとする力も消える。世界の秩序は保たれる」
サクラが刀を魔女に向けた。
「じゃあ、なんで、私を助けたの?」
「助けた? 魔女である妾が鬼を? 笑えぬ冗談じゃ」
「誤魔化さないで。私が魔獣にやられそうになったとき、魔獣が一瞬、動きを止めた。あれは魔女の魔術。そうでしょ」
「気づいておったか。別に鬼の娘を助けたわけではない。巫女が《黄昏》かどうかを見極めるための行動じゃ。まだあの時点では、巫女が《黄昏》である確証はなかったからの」
クロが顎に手を当てる。
「それにしても考えたものよな。邪神の力を封じる術式。なるほど、邪神の力を隠すにはもってこいじゃな、キョーヤ」
キョウヤは首を傾げた。
「どういうことだ?」
「その手首にはまっているブレスレットは邪神の力を封じるもの。けれど、キョウーヤからは邪神の力を感じなかった。なのに、妾との魔術比べで見せたあの黒い炎は紛れもない邪神の力じゃった。問題は、どこから封印を超える邪神の力が来たのかじゃ。妾はブレスレットがもう一つあることを予想した。もう片方のブレスレット所持者から邪神の力が伝わってきたとすれば説明がつく」
「アリシアがブレスレットを常に身につけていた理由って…………」
「うむ、己の持つ邪神の力を隠すためじゃろな。だから、言ったじゃろ。お主は騙されているかもしれないと」
「…………そうかもしない」
「やっと、わかったか。では、巫女を…………」
「アリシアは《黄昏》であることを俺に隠していた。でも、それは仕方がないことだった。《黄昏》は世界の人から忌み嫌われているらしいから、口外することはできない。アリシアは世界の全てを敵に回しても、生きることを選んだ。だったら、俺はアリシアの願いを叶えてやりたい。アリシアは俺が守る」
「はぁ? 《黄昏》を守るということは、邪神を復活させる行為と同じじゃ。わかっておるのじゃろうな」
「ああ、上等だ。世界だろうが、邪神だろうが、相手になってやる。かかってきな」
「よい眼をしておる。強い覚悟を感じるのじゃ」
クロが杖を構えた。
「そこまで言うのなら見せてもらおう。その覚悟を」
キョウヤとクロは互いに武器を構えた。もはや、言葉など不要だった。
互いの覚悟が対立したのだ。より強い覚悟を持つ方が勝つ。
世界の命運――一人の少女の生死をかけた勝負が始まろうとしていた。
クロが氷を出現させ、キョウヤが炎を出現させる。互いの魔術が放たれそうとした瞬間だった。
空から巨大な何か降ってきて、地面に衝突した。
衝撃波が辺りの木々をなぎ倒し、地面が砕ける。
空から飛来してきたのは一体の魔獣だった。
巨大な体躯をした黒い魔獣。その体は分厚い皮膚に覆われている。背中には大きな翼が生え、頭には鋭く尖った角が二本あった。長い尻尾をゆらゆらと揺らしている。
明らからに他の魔獣と違う。黒い魔獣に似ているが、放たれる邪悪なオーラの質が違う。光をも黒く染めてしまいそうな黒い気を漂わせていた。
マリアが震える足で一歩退いた。
「デーモン…………まさか、邪神の力を持つ魔獣が本当にいたとは…………」
「――逃げるのじゃ!」
クロが叫んだ。それと同時に十数本の氷の槍がデーモンに向けて放たれる。
氷の槍はデーモンの厚い皮膚に阻まれ、傷をつけることはなかった。
デーモンがクロの方を向くと、口から火を噴いた。
クロは氷の壁で防御するが、氷の壁を打ち破られ、後方に吹き飛ばされる。マリアが飛ばれてきたクロを受け止めて、地面に腰をつける。
その頃、サクラがデーモンに向かって飛びかかっていた。
「――咲き乱れろ! 百花繚乱!」
デーモンの体から黒い血が噴き出した。
デーモンの低い咆哮が森に響く。
サクラは満足そうに微笑んだ。けれど、デーモンは倒れなかった。
キョウヤはサクラに向かって叫んだ。
「サクラ、後ろだ!」
「――んっ? ぐはっ…………」
キョウヤの叫びも虚しく、サクラはデーモンの手に捕まった。デーモンの手はサクラの体ほどあり、サクラが人形のように見える。
サクラがデーモンに与えた傷が修復していく。あっという間に元通りになった。
デーモンが怒りの火を灯した眼でサクラを凝視した。サクラを握るデーモンの手が強く握られると、サクラが狂気の悲鳴を上げた。
めきめきと何かが砕けるような不気味な音が聞こえた。
サクラが必死にデーモンの手から抜け出そうとするが、デーモンの方が力は上だった。鬼の怪力を超えるほどのパワーをデーモンは持っていた。
キョウヤは剣を持ってデーモンに向かった。
「このやろう!」
キョウヤに気づいたデーモンがサクラを持つ手を上げると、キョウヤに投げつけてきた。
キョウヤは猛スピードで突進してきたサクラを体全身で受け止めた。衝撃を殺しきれず、サクラを抱えたまま地面を転がった。
受け止めたサクラはひどく衰弱していた。体を動かすと痛むのか、顔を歪める。
「ごめん、マスター…………足、引っ張っちゃた……ゴホッ、ゴホッ……」
「いいから、しゃべるな」
デーモン。なんと強力な存在なのだろうか。魔術では魔女を上回り、パワーでは鬼を上回っている。おまけに、再生能力まで持っている。邪神の力とはそれほどに強力なものなのか。
デーモンが地面に転がったアリシアを拾い上げた。
「アリシア!」
アリシアの意識はまだ戻らないようで、キョウヤの声に応えない。
デーモンが大きな翼を広げると、突風を起こして空高く舞い上がった。
キョウヤは舌打ちをした。
デーモンがアリシアという人質を持っている限り、キョウヤはデーモンに炎を放つことができない。
デーモンはすぐに立ち去らず、空中でホバリングしていた。
クロがマリアと一緒にキョウヤの元へ来た。
「やつ、魔力を集中させている。強力なのが来る」
クロが言ったようにデーモンに魔力が凝縮されていく。大気を震わせ、その振動が大地にまで伝わってきていた。
逃げるにしても、もう遅い。デーモンの一撃はキョウヤ達のいる森ごと消し去るだろう。それができるくらいの圧倒的な力をキョウヤは感じていた。
「どうするんだこれ? 防ぐことができるような攻撃じゃないぞ」
「妾に策がある。近くに寄れ。鬼の娘もじゃ」
「アリシアを殺そうとしたクロのことを信じろと?」
「今はそれどころじゃない。一旦、休戦じゃ。巫女を助けらなくてもいいのか?」
キョウヤはアリシアのことをなんとしても助けたい。
正直、アリシアを殺そうとしたクロのことは信用できないが、命が惜しいのは互いに同じだった。
「あ、わかった」
キョウヤはサクラを連れて、クロに近寄った。マリアもキョウヤに続く。
突如、空が光った。それは、デーモンによる攻撃だった。
森一帯を消し去ってしまうような巨大なエネルギーを秘めた破壊そのものだった。
キョウヤの目の前が真っ白に染まり、世界から音が消えた。




