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太陽が照らす街の道をキョウヤは一人、歩いていた。
キョウヤはまたもアリシアに部屋を追い出されてしまった。アリシアのことを思い出し、髪の毛を掻きむしった。
「ああ、この封印さえ解ければ、理不尽な仕打ちをしてくるアリシアの元から離れて自由になれるのに。どうして、俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ。アリシアは一体、自分のことを何様だと思っているんだ。俺は召使いじゃない。こんな封印…………」
キョウヤは腕にはまったブレスレットを力技で思いっきり引っ張るが、びくともしない。
「はぁ、やっぱりダメか。魔術に詳しい魔女でさえ、解除できなかったんだ。本当にどうやって解除できるんだよ? やっぱり、アリシアにしか解除できないのか?」
「――ふふ、困っているみたいだね」
「誰だ?」
キョウヤが振り返ると、そこには着物にミニスカートという装いの少女がいた。腰には刀をぶら下げている。殺気はなく、ニコリと微笑んでいた。
「助けてあげようか?」
「おまえは、広場で魔女と戦っていた、鬼…………あれ? でも、角がない。人違いか?」
「あのときの鬼だよ。角はね、鬼の力を開放したと現れるもの。鬼の力を使わなければ、見た目は普通の人間と同じ。あっ、自己紹介がまだ、だった。私はサクラ。よろしくね」
サクラはペコリと頭を下げた。
キョウヤも礼儀として、名乗った。
「俺は、キョウヤだ。で、俺に何か用か?」
「ふふん、私、その封印を解く方法を知ってるよ」
「マジか?」
「マジだよ」
サクラが自慢げに胸を張っていた。
「教えてあげてもいいけど、条件がある」
サクラが本当に封印の解除方法を知っているかは怪しいが、今のキョウヤは藁にもすがる気持ちだった。罠かもしれないが、封印が解除できる可能性が一%でもあるなら、その可能性に賭けたい。
「それで、条件っていうものは?」
「おっ、話が早くて助かる」
サクラが両手を合わせて、満面の笑みを浮かべる。
「条件は、私と勝負して勝つこと」
「勝負?」
「そう。勝負の内容は…………ぐっ…………」
いきなりサクラがお腹を抱えてその場に倒れた。
キョウヤはサクラの隣に膝をついた。
「おい、大丈夫か?」
「もう、限界かも…………」
「なんだ? 病気か? 封印の解除方法を知っているとか言っておきながら死ぬなんて許さないぞ」
「お、お腹が…………」
「お腹が痛いのか。なら、治療できる施設に運んでやる」
キョウヤはサクラの背中と地面の間に手を入れて、サクラを持ち上げる。サクラは想像していたより軽かった。アリシアよりも軽い。
先ほどの会話をしていた元気が嘘であったかのように、サクラは衰弱していた。
サクラがキョウヤの袖を掴んで、元気のない声で告げた。
「お腹が……空いた……」
「わかった。じゃあ、食事処に…………って」
キョウヤは持ち上げたサクラから手を離した。
サクラが地面に打ち付けられ、
「痛っ」
と声を上げた。
「ひどい、か弱い女子を落とすなんて」
「何が、か弱い女子だよ。昨日、魔女とあれだけの戦いをしておいて、よくそんなことが言えるな」
キョウヤはサクラに背中を向けた。
「じゃあな」
「――待って!」
キョウヤのズボンの裾をサクラがつまんでいた。
「お願い、見捨てないで。昨日の昼から何も食べてない。お腹がペコペコで。この通り」
サクラはキョウヤを拝むように手を合わせる。
キョウヤは悩んだ。封印を解除する手がかりはなく、このまま、街を歩いていても何の成果も得られないだろう。鬼の持っている情報が封印を解除する手がかりになるかもしれない。可能性は低いが、このまま何の進展がないよりはマシだ。
キョウヤは溜息をついた。
「しょうがないな。飯をおごってやるよ。ただし、封印の解除方法を知っているっていうのが嘘だったら、承知しないぞ!」
「大丈夫。それは知っているから」
サクラはビシッと親指を立てるが、全く信用できなかった。




