表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイドル戦国時代  作者: バッハ
1/1

第1話 憧れのアイドル

西暦 20xx年 6月23日 私立尾張高等学校


キーンコーンカーンコーン

「じゃあこれで今日の授業終わり! ちゃんと明日宿題やってこいよー」



終業のチャイムが鳴ると同時に教室はさっきまでの授業中の静けさが嘘の様に雑談の声が行き交う



「ねえねえ、お通昨日のザ・ベストアイドル見た?」


「さくら当たり前じゃない!見たに決まってるじゃん!昨日の信長様のソロパート超ヤバくなかった?」


「あれはマジヤバイ!信長様ってルックス良くて歌も上手くてダンスも上手いしあんな完璧なアイドル他に居ないわよ!」


「ほんとそれよね!次回予告で来週サジタリウスから重大発表もあるって言ってたし早く来週ならないかな〜」



クラス中の女子は皆んな昨晩の大人気番組ザ・ベストアイドルの話で持ちきりだ。

ザ・ベストアイドルとは毎週アイドルグループが何組か出演してライブをし、どのグループのパフォーマンスが1番良かったかを会場にいる観客やSNSによる投票で決めるテレビ番組である。



その中でも現在6週勝ち抜きをしている五人組人気ナンバーワンアイドルグループサジタリウスの織田信長は圧倒的な人気があり女子だけでなく男子にとってもカリスマ的存在である。



「クラスにあんな男子居たら私ももっとダイエット頑張るのになー」


「そうよねー多分このクラスって学年1ダサい男子の集まりよね」


「特に木下とか休み時間になったらいっつもイヤホンしてスマホいじってるし、そんなに聴きたい曲なんてある?って思うんだけど」


「えーお通知らないの?あいつめちゃくちゃサジタリウスのファンでいつもサジタリウスの曲聴いてるんだよー」


「え!うそーあいつもサジタリウス好きなの!?全然キャラと違うじゃーん」


「しかも木下の推しメンも信長様らしいよ」


「マジ最悪なんだけどー木下の推しメンが信長様とか信長様が可哀想だよー」



ザ・ベストアイドルの放送があった次の日の放課後は大抵このように信長様の話題でクラスの女子達は盛り上がる。その中に若干混ざりたい気持ちがありつつもバカにされてる上に極度の人見知りである僕はいつもの様にイヤホンをして帰路に着くのであった。



僕の名前は木下藤吉郎。私立尾張高等学校に通う高校二年生である。身長は175cmで体重は52kgの痩せ型体型だ。部活はバドミントン部に入ろうと思っていたが人見知りである僕は仮入部に行けず今は帰宅部である。自信を持って友達呼べる人も片手で数えきれるほどしかいない。



そんな僕の唯一の楽しみがサジタリウスの曲を聴いたり、サジタリウスが出ていたテレビを見る事である。毎日、授業が終わるとすぐ街外れの一軒家に自転車を飛ばして帰り、ドアを開けると大きな信長様のポスターが目に入ってくる自分の部屋にこもって一日中サジタリウスの鑑賞をしている正真正銘のヲタクである。



そして、今日も独り言をつぶやきながら昨日リアルタイムでも見たザ・ベストアイドルを見返していると部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。



コンコン



「藤吉郎帰って来てるの?」


母の声である。どうやら、ただいまも言わずに自分の部屋に直行した僕が帰って来てるのか確認しに来たようだ。



すると、母は僕が返事をする前に扉を開けてザ・ベストアイドルが映っているテレビを見ながら呆れた様子で僕に言った。



「ちゃんとただいまくらい言いなさいよ。後あんたも来年高校三年で受験があるんだからテレビ見るのも良いけどちゃんと勉強しなさいよ」



これは、母のお決まりの台詞である。いつも、この台詞を言って母はリビングに戻りソファーに座って韓国ドラマを見るのである。しかし、今日はこれにプラス一言加えられた。



「このアイドルの人達だってあんたと年齢は大して変わらないのにこんだけ頑張ってるんだから、あんただって家でダラダラしてないで本気で何か頑張りなさいよ」



そう言って母は扉を閉めリビングに戻って行った。母がいつもの台詞に加えた一言は、自信を持って自分の長所と言えるものがない僕の心に鋭く突き刺さった。



〜〜〜翌週〜〜〜


西暦 20xx年 6月29日 私立尾張高等学校



母に言われた一言が若干心に引っかかったまま6日を過ごした。しかし、今日はザ・ベストアイドルの放送日なのでそれを見れば気が晴れるだろう。



キーンコーンカーンコーン



終業のチャイムが鳴り教室が騒がしくなり始める。


「さくら!今日ザ・ベストアイドルの日だよ!」


「もうわざわざそんな事言わなくてもわかってるよ〜。 見るに決まってるじゃん。それに先週の予告でサジタリウスから重大発表あるって言ってたしめちゃくちゃ気になるよね〜」


「ほんとそれ!重大発表って何なんだろうね! 誰かの卒業発表とか解散とかだったら私見てられないよ」


「ちょっとお通そんな縁起の悪いこと言わないでよ!誰かの卒業発表とか解散なんて絶対嫌なんだけど!」


「ごめんごめん、でも重大発表って言うくらいだから悪い予感しちゃって」




先週の予告でサジタリウスからの重大発表が今晩されるとあってファンは皆んな重大発表とは一体どんな内容なのか気になってソワソワしている。当然重度のヲタクである僕もその中の一人である。一週間今日のザ・ベストアイドルの放送が待ち遠しくて仕方なかった。



僕は授業が終わるといつもの様に家に帰りサジタリウスの動画を見ていつもより早めに夕飯を済ませザ・ベストアイドルの放送を待った。そして、夜8時になった。



ザ・ベストアイドルという字がテレビに大きく映し出され放送が始まった。現在6週連続で勝ち抜いているサジタリウスは最後にパフォーマンスをするので8時45分あたりに出演する事になっている。サジタリウスの前の4組のパフォーマンスが終わり8時45分になり、ようやくサジタリウスがステージに現れた。僕は、この45分間がとてつもなく長く感じられた。



そして、サジタリウスが先週に引き続いて圧巻のパフォーマンスを披露した後cmに入った。このcmが明けるときっと重大発表がされるのであろう。僕はソワソワした気持ちが止まらなくてcm中なぜか腕立てをしながら重大発表を待った。体を動かしていないと精神を保てないと思ったからだ。そうして、腕立てが21回目に差し掛かる時にcmがあけた。



mcが早速サジタリウスに重大発表の話を振る。


「さあ、今夜サジタリウスから重大発表があると告知されていましたが、それは一体何なのか織田信長さんに発表して頂きましょう!」


「はい、それでは発表させて頂きます。あちらのスクリーンをご覧下さい!」



信長様が指した先には大きなスクリーンがあり、そこにはサジタリウスの過去のライブ映像が映し出されていた。まるでその映像は今までの集大成の様な映像になっており僕の脳裏には一瞬「解散」という2文字がよぎったその時スクリーンの真ん中に大きく文字が映し出された。




サジタリウス新メンバー募集オーディション開催!!




会場では一瞬の静寂が起こりその直後に大きな興奮と歓声に包まれた。






この作品はフィクションです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ