72
方言は雰囲気で
「死んだんはなんで?」
「くも膜下出血らしいです」
「突然か」
「そうですね。全然、死ぬとか思ってなかったです」
「兄ちゃんまだ若ぇもんなぁ。家族もおったっぺ?びっくりしたんでねぇか?」
「でしょうね。まあ、死亡保険かけてあったのが、まだ救いですかね……」
溜め息を吐く天使候補に、面接官が同情的な目を向ける。
「子供は?まだ小せぇんか?」
「はい。……次男の、入学式だったんです」
天使候補は、堪えきれなかったように声を震わせた。
「式の途中で、倒れてしまって、せっかくの、晴れ舞台なのに、オレが、台無しに……」
天使候補の目から、ぽたりと滴が落ちた。
面接官が、そんな天使候補の肩を叩く。
「病気は兄ちゃんのせぇじゃねぇっぺ。兄ちゃんがそんな泣いてっと、嫁さんや坊主はもっと泣いちまうぞ」
天使候補が歯を食い縛って、頷いた。
「そうですよね。遺された方がずっと辛いのに、オレが泣いてちゃ……」
「駄目じゃねぇけど、度が過ぎりゃ情けねぇな。ほどほどにしとけよ」
「駄目じゃない、ですか?」
顔を上げた天使候補に、面接官が頷いて見せる。
「泣くのだって、たまには必要だっぺ。我慢してっと、ぶっ壊れちまうかんな。たまになら、思いっきり泣いたって良い」
ぱんぱんと、面接官が天使候補の肩を叩く。
「まだ若ぇのに、可愛い嫁さんと子供遺して死んじまやぁ、悔しっぺ?今は、思い切り泣いとけ」
見開かれた天使候補の目から、ぼろぼろと大粒の涙がこぼれ落ちた。
「オレ、もっと、生きたかった。アイツにも、親にも迷惑掛け通しで、なんも、返せてない」
「ほーか、ほーか」
「子供にだって、全然、良い父ちゃん、してやれなくて」
「悔しかったな」
面接官の言葉に大きく頷いて、天使候補はしばらく、静かに涙を落とし続けていた。
m(__)m




