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専門家でないので知識不足はスルーして下さい
「どうして死んだんです?」
「うっかり」
「うっかり?」
「避け損ねて」
天使候補はそっと、眉を下げた。
「結構、第六感?がある方で、危ないとか避けなきゃとか、わかる方なんですよね。それで運良く助かったこととかも、結構あって」
「確かに、いますね、そう言う方」
「今回も直前に、ああ、避けないと死ぬな、って、思ったんですよね。あの棚、こっちに倒れて来るなぁって。案の定、倒れて来て」
天使候補の言葉に、面接官は頷く。
「でも、避けられなかった?」
「そうなんです。なんでだろう。避けないと死ぬけど、避けなくても良いかって、思っちゃったんですよね」
「避けられなかったんじゃなくて、避けなかったんです?」
「なんだかんだ、勘に従って良い方に行って来てたので、信じちゃったんですよね。直感で、そうだと思った方を」
それで死にましたと、天使候補は苦笑した。
「結局、運が良かった」
それから続けられた言葉に、面接官は唖然とする。
「え……?」
目を見開く面接官へ、天使候補は微笑んで見せた。
「うっかり死んでしまったけど、それで良かったんです」
「死んだん、ですよね?」
「はい。棚が頭に当たって、脳死です。後ろ頭はひどく打ったし、ほかにも打ち身とか骨折とかあったみたいですけど、顔はきれいなままで、脳以外は五臓六腑傷付けず」
「脳死は」
「臓器提供意思表示カードには、脳死でも移植をと。娘が心臓を、妹が膵臓を悪くしていたんですよ」
面接官の言葉を皆まで聞かず、天使候補は言った。ふふふと、笑って見せる。
「運良く、有情なコーディネーターさんで、無事、娘と妹にわたしの臓器が渡りました。拒絶反応もなくて、無事、定着したそうです」
天使候補が目を閉じて、両手を胸に置いた。その口許は、やわらかく弧を描いている。
「出来るなら、もっと生きたかったですよ?せっかく綺麗に死んだのに、使える臓器は全部抜かれちゃいましたしね。でも、どうせ死ぬなら大切な子たちを守りたいでしょう?あと少し早くても遅くても、この組み合わせはなかった。心臓が止まっていたなら、娘は救えなかった」
だから、運が良いなって、思っちゃったんです。
天使候補は目を開けると、困ったように言った。
m(__)m




