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切実
「どうして、お亡くなりに?」
「地震……」
「はい?」
「地震が、あったんです」
面接官が、そんな派手な地震があったろうかと首を傾げる。
「震度は、3、くらいですね。その時ちょうど俺は、自宅のアパートでトイレに入っていて、ガターンって、ものが倒れる音がして」
「はい」
「でも、大したことないだろうと思ってそのまま用を足して、外に出ようとしたら、ドアが開かなかった」
「ドアが……」
「想像するに、キッチン前に置き去りだったスーツケースが倒れて、トイレのドアとキッチンの間にはまったんです」
「うわあ……」
面接官が絶望混じりに呟いた。
「独り暮しのトイレ。窓はなし。三階角部屋で、トイレの壁を叩いても聞く者はいない。下は空き部屋。食料なし、外部との連絡手段なし」
「うん……あー、誰かが心配して見に来たり」
「大学生、バイトなし、春休み。彼女もなければ友達と遊ぶ予定もない。あえて言うならオンラインゲームにログインするくらい」
「アッハイ」
老人ではないが、孤独死するには持って来いの状況だった。
「気分はリアル脱出ゲームですよ」
「リアル脱出ゲーム」
「脱出出来なかったからここにいるんですけど」
「デスヨネー」
天使候補は乾いた笑みを浮かべて言った。
「世のぼっちたちに助言したい。トイレ前の廊下に物を置かない。トイレに行くときは携帯を持って。ぼっちなんだからいっそ扉は全開で」
「最後はちょっと……」
「お風呂とトイレにも窓が付いた物件を選べ!!」
「アッハイ」
m(__)m




