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その危機感は持ってる

 

 

 

「死因は地震?」


 少し疲れた顔をした面接官に、天使候補は頷いた。


「地震です。大きかったですねー」

「らしいね。……死者が多くてこっちはてんてこ舞だよ」

「それは、ご愁傷さまです?それとも、ご迷惑お掛けします?」

「あ、いや、試験を受けるのは死者の権利だし、気にしないで。ごめん、不謹慎だったね」

「いえ。うーん。まあ、僕の場合は自業自得なんで」


 天使候補が苦笑して頬を掻く。


「自業自得?どうして?」

「いやー、慣れって怖いですね」

「うん?」

「ほら、数年前の震災、あったじゃないですか。僕、ちょうどその前後に大学在学でそっちの方に住んでたんですよね。もう、震度3とか4とか日常で」

「ああ、余震で?」

「そうです。余震で。震災直後はしょっちゅうだったし、暫く経っても、まあ、月一くらいで震度3くらいは揺れるし、いちいち騒いでらんないんですよね。良くも悪くも若くて柔軟だから、すぐ動揺しなくなって」


 住んでたとこ鉄筋コンクリートのアパートだったし、大学は耐震設計だしで、あんまり危険もなかったですしね。

 天使候補が苦笑いを深める。


「当たり前になっちゃうと、もう、対策とかも良いかなってなっちゃうんですよね。危機感もないし、寝てても起きたりしないくらいで。震度3とか4とかでも、あー、3くらい揺れてるけど、まー大丈夫っしょーみたいな。海からも、離れてましたしね」

「でも、今回の地震は」

「ん。大きかったですね。僕、ちょうど直撃地に居たみたいで、どおんって衝撃と、揺れと。でも、あーいつものかーって、思っちゃって。馬鹿ですよね。もう僕、学生じゃないし、居る場所だって違うのに」


 天使候補の笑みに、かすかな痛みが混じる。


「はじめ余裕ぶっこいてて、あれ?でかくね?ってちょっと不安になって、で、やっとやばくね?って思ったときには建物倒壊。僕は瓦礫の下敷きに」

「即死?」

「んー、どうだろ。しばらく生きてたんじゃないですかね。でも、生き残れる気はしなかったですね。完全に潰されてましたし。……せめて、トイレかお風呂にでも逃げ込んでれば違ったかもしれないし、揺れた時点ですぐ外に出てれば、潰されなかったかもしれなかったのにね」

「危機感が、なかったから?」

「ですね。手遅れになっちゃって。まるで、狼少年ですよね」

 

 

 

m(__)m

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