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記念すべき(?)49話
「死因をお聞かせ下さい」
「自殺です」
「えっ」
「自殺です。実家の私室で、手首をざっくり」
「ざっくり」
「ええ。ざっくり。研ぎたての牛刀だったので、よく切れましたよ」
面接官はそうですか、と頷いたあとで言った。
「自殺の理由を訊いても?」
「ええ」
天使候補は目を細めて、頷いた。口の端をかすかに吊り上げて、呟く。
「大学に合格したので」
「それはお気の毒……に?んん?合格、ですか?」
「ええ。合格です。防衛医科大学校に、現役で」
「すごいじゃないですか」
「そうですね」
謙遜することなく、天使候補は頷いた。
「だから、自殺したんです」
「……どうして」
「母が私を、自慢出来ないように」
天使候補の言葉に、面接官が固まる。
「それは、なぜ?」
「嫌いなので。母が」
天使候補はにっこり笑ってのたまった。
「役者になりたかったんです。私」
「……反対されたんですか?」
「いいえ」
「それなら、」
「反対なんて。口にすることすら、許されなかったんですから」
笑みを浮かべたその顔の、目だけが冷めきっていた。
「医者になりなさい。あのひとはそれしか言わないし、私の意思なんて聞きません。お金があるわけでもないのに、医者になりなさいって。防衛医大単願ですよ、それ以外を受けることも、受けて落ちることも選択肢になかった」
「なにか、思い入れでも?」
「自慢したいだけですよ。金持ちの友人や、姉に、親孝行で優秀な娘って」
「……だから?」
「だからです」
ふふっと、天使候補は笑いをもらした。
「だから、あのひとの歓喜の瞬間を、ぶち壊してやろうって」
清々しい顔で、天使候補は語る。
「アクセサリーじゃなくて、レッテルになってやったんです。あー、すっきりした」
m(__)m




