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ひとの話は聞きましょう
「死んだときの状況を教えて下さい」
「ええと……」
目を泳がせて、天使候補は口ごもった。
「言いにくいことですか?」
「そう、ですね」
「そうですか」
一度頷いてから、面接官が口を開く。
「それで、死因は?」
「あ、やっぱり訊くんですね」
「ルールですからね」
「デスヨネー」
天使候補は苦笑を浮かべ、くるりと瞳を回すとため息を吐いた。
「嫁に、刺されまして」
「それはまた、物騒ですね。なぜ、そのようなことに?」
「浮気したから、と」
「したんですか?」
「していませんよ」
天使候補はめっそうもないと首を振った。
「確かに、指摘されていたときに女性(?)と会ってはいましたけど、浮気じゃないです」
「なんですか、女性(?)って」
「いやあの、うーん……」
天使候補が困ったように笑って、うろりと目を迷わせる。
「兄……です」
「え?」
「うちの、兄が、すっげぇ女顔なんですよ。中学から瑞西に住んでて、そっちで就職も結婚もしてたんですけど、この前十数年振りに帰国して」
「それで、会ってたんですか?でも、兄なら兄と説明すれば」
「……うちの父、再婚していて」
天使候補が額を押さえて言う。
「俺も兄も父の前妻の子なんですよね。で、再婚した後妻にも連れ子がいて、義兄と義妹で、あと、後妻と父の子もいて。俺は父似なんですけど、兄は母似なんですよね。瑞西人の、母そっくりで」
「……へぇ」
「実母はすごく美人で、後妻、俺の義母ですね。義母が、比べられるのが嫌だって、兄の話を嫌がって。だから、嫁にも実兄の話はしていなくて。……義母にばれないように、こっそり連絡を取り合ってはいたんですけどね」
まさかそのせいでこんなことになるなんて……と天使候補はうなだれた。
「信じて、貰えなかったんですね?」
「声聞きゃ完全に男って、わかったはずなんですけどね」
m(__)m




