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ウシを使った拷問
「死んでしまった理由をお聞かせ頂けますか」
「……お金がなかったんです」
天使候補はうつ向いて言った。
面接官が首を傾げる。
「え?」
「お金がなくて。でも、お金が必要で」
「はい」
「だから、売ったんです。自分を」
続いた発言に、面接官が瞠目した。
「……え?」
「売られた先は、金持ちのための娯楽場でした。わたしは、わたしは……」
きゅ、と握られた手は、小さく震えていた。
「……そこでは、残虐刑を再現する見せ物が人気で。そのなかの刑に、車裂き、と言う刑がありました」
「車裂き」
「ええ。独逸式でした。両手足と腰の骨を砕かれて、車輪に括り付けられて。三日間、三日間生き残ったら解放されると言われました。運悪くか、運良くか、生き残って、解放されて」
そこで天使候補は一度言葉を切り、息を吐いた。
「言われたんです。亜細亜人なんだから、車裂きも亜細亜式でないと、と」
「亜細亜式、ですが」
「ええ。牛裂き、とも言われますね。八裂きと言った方が、わかりやすいでしょうか。四頭のウシそれぞれに、右手、右足、左手、左足を括り付け、それぞれ別の方向に走らせるんです」
「八裂き」
「亜細亜式の牛裂きですから、ウシを走らせるためにウシの背に藁を括り付けて、燃やすんです。ウシは慌てて走って。あっという間です、人間の四肢が千切れるのなんて」
うつ向いたまま天使候補は首を振る。
「それは……」
「殺されるのは構わなかったんです。それを承知の取引で、その分、わたしが一生掛かっても得られないような大金を対価に貰えましたから。助かるなんて、思っちゃいなかった。わたしはなんとしても、お金が欲しかった。でも牛裂きはないでしょう。牛裂きは」
どんっと、天使候補が膝を叩き、顔を振り上げた。
「ウシが可哀想だ!!」
「え」
渾身の怒鳴り声を浴びた面接官は、呆然と呟きました。
「そっち……?」
m(__)m




