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安心するのはまだ早い
「死因はなんですか」
「クロイツフェルト・ヤコプ病です」
「ん?なんて?」
ぽそり、と言われた言葉を聞き損じて、面接官は、ぱちくり、と目をまたたいた。
天使候補が、ゆっくり、はっきりと、言い直す。
「クロイツフェルト・ヤコプ病、です」
「くろいつふぇるとやこぷ病」
「……BSEの方が、通りが良いですか?」
「びいえすいい」
どうにも要領を得ない面接官に、天使候補が困り顔になった。
「あの、ええと、牛海綿状脳症、わかります?」
「ウシ海面上農場?」
「……」
やばいこいつ話通じねぇ、と言う顔をしたあと、天使候補は思い付いて言った。
「狂牛病です、狂牛病」
「ああ!狂牛病!」
得心が行ったと頷いたあと、面接官は、はて、と首を傾げる。
「でも、問題になったのって、かなり前だったはずじゃ……」
天使候補がどこか自嘲を含んだように、うっそりと微笑んだ。
「そうですね。実際、危険性が騒がれ対策が取られてから、十年以上経っています。潜伏期間は約十年と言う話ですから、もう過ぎた病と言われてもおかしくありません」
ですが、と、天使候補は静かに続けた。
「類縁疾患であるクールー病では、四十年以上もの潜伏期間を経て発症した例が、存在するようですよ?」
m(__)m




