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病は気から

 

 

 

「死因を聞かせて貰えますか」

「はい」


 あらかじめ、覚悟していたのだろう。天使候補は落ち着いた態度で頷き、口を開いた。


「沼地で、足を滑らせて落ちて、溺れました」

「沼地で。救助は?間に合わなかったのですか?」

「ひとりだったので。もしかしたら、自殺かと思われるかもしれませんね」

「なにか、自殺する理由が?」

「……夫が、亡くなったんです」


 天使候補がそれまでの冷静な表情を崩す。


「いつも、ふたりで散歩に行っていた沼地で、だから、気付いたら足が向いていて。しばらく黙って見ていたんですけど、沼の端の方に、大きなカエルがいるのを見付けて」


 しんみりした空気で話す天使候補の言葉を、面接官は黙って聞いていた。


「夫は、生き物好きで。だから、そんなカエルがいたらきっと近付いただろうなって思ったら、足場が悪いのも忘れて沼に近付いていて。本当に、大きなカエルでした。直径がわたしの顔くらいありそうな。大人しく座っていたから見ていたら、突然、おっきな声で、モ゛ォォォって」

「モ゛ォォォ」

「ええ。モ゛ォォォって。ウシガエル、だったんでしょうね。わたしったら、その声にびっくりして足を滑らせてしまって。沼に落ちて、足がつかなくて、パニックになって」


 天使候補は視線を下げて悲しげに頬笑む。


「そんなドジをやるのはわたしじゃなくてあのひとなはずなのに。あのひとだったら、沼に落ちてもはにかんで、どろどろで上がって来てくれたでしょうに。……駄目ね、わたしには、あのひとがいないと」

「せっかくちょっと良さげな話なのに、なんなの?ウシネタを挟まないと死んじゃう病なの?」

「え?」

「いや、こっちの話です」

 

 

 

m(__)m

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