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ウシがいた
「なんで死んだの?」
「ウシが、」
「ウシブームなの?」
「え?」
「あ、いや、ごめん、こっちの話。続けて?」
「アッハイ」
頷いた天使候補が言う。
「ウシがいて」
「ウシがいて」
「びっくりして、思わず逃げて」
「ん?どこにいたの、ウシ」
「仕事場の近く、ええと、都内です。山手線沿線のオフィス街」
「それは驚くね」
面接官は、うんうんと頷いた。
「びっくりして逃げて?」
「逃げたら、追って来たんです」
「それは怖いね」
「ええ。怖くて。必死で逃げようとしたんですけど、追い付かれて、刺されて」
「刺された?」
「はい」
「ツノで?」
「いえ、ナイフで」
「んん?」
面接官が首を傾げる。
「ウシに、だよね?なんでナイフ?どうやって?」
「え、手に持って」
「手に持って?え?ウシだよね?」
「はい。ウシのフルフェイスマスク被ったひとが」
「あ、ウシ(本物)じゃなくてウシ(偽者)か」
それなら都内に居てもおかしくない。面接官は頷いて言った。
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