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デジャ・ビュ

 

 

 

「どうして死ぬことに?」

「……少し、嘘臭い話でも良いですか?」

「嘘でなければ」


 面接官の答えに頷きを返して、天使候補は語り出す。


「俺、よく、正夢を見るんですよね。つっても、予言みたいなことは出来なくて、ただ、その瞬間になったときに、あ、ここの夢だったかって、思い出すくらいの、役には立たないやつ」

「デジャ・ビュ、ですか?」

「そんな感じですね。それで、でも、その瞬間になればわかるから、たまに、未来でも見えてるんじゃないかって行動を取っちゃうことがあるんですよ。たとえば、友達が吊橋渡ろうとした直前に、その橋は崩れるから渡っちゃ駄目だって言ったり、母親が買い物に行くときに、事故が起きるから30分待ってって言ったり、祖父と電話してるときに、電話向こうの揚げものの鍋から火が出てるって言ったり」

「それで、本当に?」

「友達は渡るのをやめて、そのあとに来た犬が落ちたし、母親は買い物に行く途中で事故渋滞に捕まったし、祖父が台所を見に行ったら、祖母がトイレに行くのに火を消し忘れてあわや火事寸前でした」

「それは……」


 面接官は一呼吸言葉に迷ったあとで、


「すごいね」


 小さく呟いた。


「それが、普通の反応なんですよね」

「え」

「気味悪がったり、反応に困ったり、疑ったり、怖がったり。身内でさえそうだったし、だから、隠すようにしてたんです。ただ、ひとり、幼馴染みだけは、すっげー!って言って、気味悪がりも疑いもせず、純粋に称賛してくれて、信じてくれて。だから、俺にとって友達って、ほんとに思えるのはそいつだけなんです」


 天使候補が、ふっと、笑う。


「あいつ、ほんと、ばかで」


 笑っているのにどこか泣きそうな顔で、天使候補は吐き捨てた。


「疑わないんです。俺のこと。ちっとも」


 ぐっと、目を閉じて、天使候補が唇を噛み締める。


「どっから、漏れたんだろうなぁ。変なやつらに、あいつもろとも捕まって、水の入ったコップ、ふたつ、出されて、片方ずつ、飲まないと、殺すって。右の水に、無味無臭の、即効性の致死毒が、左の水に、市販の風邪薬が、それぞれ、溶かされてたんです。俺は、幼馴染みに、右を、飲めって」


 固く閉じられた天使候補の目尻から、ひとつぶ、滴が落ちた。


「あいつは、疑いも、せず、右の水を、飲んで、死に、ました」

「それ、は」

「だって、あいつ、喰わないん、ですよ」


 天使候補の握り締められた拳に、ぽたり、ぽたりと、滴が落ちる。


「死んだ、俺の肉を喰えば、殺さないって、言われてんのに、友達を喰えるかって、言う通りにすれば、生き残れるから、従えって、俺が言い遺しても、どんな、ひどい目に、遭っても、絶対、喰わない、んです」


 あの、ばか。


 天使候補が、吐き捨てる。


「普段は俺の言う通りにするくせに。そんなときだけ。ほんと、ばか」


 どん、と、天使候補が自分の膝を叩く。


「だから、恨まれても、嘘吐きって思われても、もう、友達じゃないって、思われるとしても、あいつは、俺が殺してやろうって。俺が、生き残ろうって」

「でも、」

「あいつが喰わないのに、俺が喰えるはず、ないじゃないですか」

 

 

 

m(__)m

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