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全力で不謹慎です
「で、なんで死んだの?」
「えっ、あ、えっと、あんまり面白い死因でもないんですけど」
くるりと瞳を巡らせて、天使候補は言いよどんだ。
「別に、面白さは求めてないから」
「あ、ですよね。いやー、お恥ずかしながら、馬に蹴られて……」
「それで面白くない死因って、きみは死因になにを求めてるの。それともなに、騎馬戦全盛期に騎馬兵でもやってたのきみは」
馬が当たり前に戦争で乗り物にされていた時代なら、なるほど馬に蹴られて死ぬこともままあっただろう。だが、あいにくと現代、馬は兵器としての役目をほぼ退いている。
「普通に落馬したって言いなよ。変に面白さ出そうとしないでさ」
「いやあの、落馬はしてないんですよ」
「は?」
面接官の冷たい視線を受けて、天使候補が苦笑した。
「んー、なんと言うか、あの、俺、じゃない、私は普通に実験室で卒研のデータまとめてたんですけどね、突然馬の被り物した奴が乱入して来たと思ったら、『ひとの恋路を邪魔する奴は死ぬが良い!!』って叫んで、私のことを蹴飛ばしたんです」
天使候補は至って真面目に話している様子だが、聞かされる面接官の方は次第に微妙な顔になって行く。
「で、蹴られた拍子に倒れた先に、別の学生が実験に使う予定だった冷凍の豆腐が置いてあって、まだカチンコチンだった豆腐の角に頭をぶつけて、当たり所が悪くてそのまま……」
「なんでそれで面白い死因じゃないって思ったの」
m(_ _)m