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たまに失踪したくなります
「どうして死んだの?」
「普通に」
「普通に?」
天使候補はぱちりとまばたきをした。
「富士樹海に迷い込んで、遭難して、そのまま」
数秒間、その場に沈黙が落ちた。
「……自殺?」
「べつに死のうとは。しばらく生きてたし」
「そうなの?」
「たぶん、4ヶ月くらいは。寒くなって、食べるものが見つからなくなって、それで死んだ」
そんなに生きられるものなんだねと呟いてから、面接官は問い掛けた。
「でも、自殺じゃないならなんでまた樹海なんかに?登山しようとして遭難?」
「いや」
首を傾げた天使候補が言う。
「なんとなく?」
「なんとなく?」
「なんか、文明から、逃げたくなって?」
首を傾げた面接官が、ぱちぱちとまばたく。
「文明からは逃げられたの?」
「電子機器と貨幣からは。ナイフと鉈にはお世話になった」
「そう」
頷いたあとで、面接官は、でもと続けた。
「それ、普通の死に方かな?」
「普通じゃない?」
「普通じゃない」
こてん、と頭を揺らして、天使候補は、なら、と呟いた。
「普通って、なに?」
m(__)m




