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たまに魔が差しそうになる
「死因は?」
「轢死です」
天使候補はにっこりと微笑んで答えた。いと爽やかな微笑みだった。
「車ですか?」
「車です。一時不停止の車にぶつかられて、自転車ごと車道に弾き飛ばされ、運悪く通りがかった車に轢かれてそのまま」
「それは……不運でしたね」
交通事故はよくある死因だが、建前上はとお悔やみを告げた面接官に、天使候補はとんでもないと首を振った。
「幸運でしたよ」
思いがけない答えに、面接官が目を見開く。
「それはまた、どうして?」
「一時不停止常習の糞婆に、一生消せない汚点を刻んでやれたので。どちらかと言うと、婆の巻き添えで俺を轢いてしまったミニの運転手が可哀想ですよ。自転車とぶつかったら車も無事じゃ済まないだろうし、とばっちりで過失致死傷罪にすら問われるかもしれないなんて」
「……加害者、お知り合いで?」
面接官の問いに、天使候補は首を振った。
「いや。ただ、前にも同じ婆に当てられたことがあっただけです。あの婆、他人を怪我させたくせに反省しやしねぇ。あん時もっと、大事にしてやっとけば良かった」
剣呑な顔をして、天使候補は語る。
「来春から妹が同じ学校に通うんです。ちょっと抜けたとこある奴だし、被害者になりゃしねぇかって心配で……俺の犠牲で犯罪者をとっちめられたなら、運が良い。まあ、氷山の一角でしょうけどね」
一時停止線がなんのためにあるのかもわからねぇ能無しが、殺人兵器なんか持つんじゃねぇよ。
吐き捨てられた言葉に肯定も否定も返せず、面接官は曖昧に微笑んだ。
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