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102-B

ないない

 

 

 

「どうして、死ぬことに?」

「……外に、出られなくて」


 天使候補はうつむいて、消え入りそうな声で答えた。


「外に?災害や、事故ですか?」

「いえ、あの、なにか、どうしても出られない外的要因があったわけじゃなくて」


 面接官は、ぱちり、とまばたきひとつすると、静かな声で言った。


「事情を、話して頂けますか?ゆっくりで構いません。あなたの速度で。ここには、いくらでも時間がありますから」


 緩慢に顔を上げた天使候補は、ゆらり、と瞬いて、とろりと頷いた。

 しばらくしてから、ぽつり、ぽつり、と、ひとつ、ひとつ、絞り出すように話し出す。


「ウシが、恋しくなって」


「仕事してても、恋人といても、友だちといても、ウシのことばかり考えてて」


「仕事はミスばかり、恋人には浮気を疑われ、友だちには上の空だって怒られて」


「仕事も、恋人も、友だちもなくして」


「外に出る必要もなくなったから、一日中、ウシのことだけ考えていて」


「それで……」


 言葉が続かなくなった天使候補に、困惑顔の面接官がそっと問い掛ける。


「ええと、それで、外に出られなく?」


 天使候補は、のそり、と頷いた。


「ウシ以外のことを考えたくなくて、だから、もう、外にも出なくなって、食べることも寝ることもやめて、気付いたら死んでいました」

 

 

 

m(__)m

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