100
あなたが100人目
「死因はなんでした?」
「それが、100人目なんですよー」
「はい?」
脈絡の掴めない返答に、面接官が頭を傾ける。
「あ、今わたしの国で、シリアルキラーが現れてて問題になってるんですけど」
「ああ……知ってる知ってる」
迷惑なんだよねーと言う空気を隠さずに、面接官は答えた。
「そのシリアルキラーの、100人目の犠牲者になったんです!」
「え、でもあれ、一気に数人殺す感じの犯人だったんじゃ?」
「記念だから今回は一人だけって」
「……会話したの?」
「ええ。偶然ばったり出会って」
びっくりしましたと言う天使候補に、面接官は災難だったねと言おうとして、
「だって、ちょうど飛び降りしようと思ってたとこだったので」
「……え?」
続けられた言葉に絶句した。
「ちょ、ええ?」
「いやー、わたし、難病にかかっちゃったらしくてー」
昨日タマゴが安かったとでも語るくらいの軽さで、天使候補が語る。
「治療費掛かるけど、ウチ、そんなもん払ってる余裕ないって言うか……まあ、あの、アレなもんで、でも、生きてたら治療受けさせないわけにも行かないじゃないですか。だから」
「……いっそ一思いに死んでやれと?」
「平たく言えば」
頷いた瞬間だけ、天使候補の表情にやるせなさを示すような苦みが差した。
「それで、まあ、投身自殺しようと深夜病院の屋上に上がったんです。あ、病院って行っても、なんと言うか、複合施設的なところで、その、ビルの屋上、ですね。で、よっしゃ飛び降りるぜ、と、柵を乗り越えようとしたところで、屋上の扉が開いて」
「そこにいたのが、シリアルキラー?」
「ええ」
頷いた天使候補が、くすっと笑う。
「もう、可笑しいんですよー。あのひと、殺人鬼のくせに大慌てで留めようとするんですもん」
可笑しくてたまらないと言いたげに、天使候補が口許を片手で隠す。
「なんで死のうとしてるの馬鹿なの死ぬのって言われて、事情を話したら、それなら自分が殺してあげるからって。確かに、自殺じゃ保険が下りないから、他殺の方がありがたかったんですよね」
「それで殺して貰った?」
「いや、最初は断ったんですよ。自分のために他人を殺人犯にするほど、自分勝手じゃないですし。でもそしたら、向こうも身の上を話してくれて、それで、相手が噂のシリアルキラーだって知ったんです。ちょうど100人目を探してたところだったから、特別だって。そう言うことなら殺して下さいって」
「いや、普通はそうはならなくない!?」
渾身の突っ込みを入れた面接官へ、天使候補は首を傾げて見せる。
「えーでも、win-winだから良いかなって」
「そこは、これから殺されるかもしれないひとのために、通報とか」
「いやいや、自殺しようとしてる人間が、連絡手段携えてると思います?」
「思わない……!」
「でしょう?」
そうだけど!でも!と頭を抱える面接官を、天使候補は楽しげに見ていた。
m(__)m




