96 VSフェアエレン
94話にある《時空間認識能力拡張》のスキルレベルを修正してあります。
具体的には37レベから28に。
ふーむ……。セシルさんがやっていたクロニクルがリストに登録されてますね。つまり運営の想定した最高の結果で終わったわけで。魂滅は決定事項か。
私以外の外なるものだった場合、帝国側の裁判関係なく消して去ってそうですね。誰かにもよるでしょうが……。ワンワン王以外は望み薄か。しかしワンワン王クラスがそうそう来るとは思えない問題。私からするとお助けキャラみたいになってますが、ティンダロスの纏め役ですからね。ミゼーアは大君主ですよ大君主。
外なる神とは少し違うのに、ヨグ=ソトースと殴り合えるワンワンですよ。《識別》によると下級の支配種族ですが、確実に詐欺です。
そう言えばリジィの本体……というか魂。リーザですが、ちゃんと村の人達と会えていたようです。
冥府軍……正確には幽世軍ですが、冥府と奈落のパトロールもありますからね。その時に会ったようです。
感動の再会! なお死後。まあ、再会には違いない。
んー……お、拡張できますね。
異人達の死に戻り場所へ行きましょう。
今現在異人達の冥府募金は平屋です。そこから1段上げると、ログハウスのような見た目になりました。
相変わらず玄関部分は賽銭箱ですが、こじんまりした平屋から、別荘のようなログハウスへ。豪華になっていきますね。
では次、常夜の城へ行き拡張します。
お城が光った後に綺麗になって出てきました。中はどうでしょうね。少し見て回りましょうか。
中が綺麗――埃がない的な意味で――なのはいつも通りです。メイドさん達がお掃除してますからね。そういう意味ではなく、素材的に綺麗になりました。
おや、あんな装飾品ありましたっけね? 微かなひび割れなどが少しずつ綺麗になるだけでなく、豪華にもなっていくんですかね。
マップ的な変化はありませんね。流石に増築などはされませんか。
おっと、これは……軍の施設がアップグレードされていますね。どれどれ……ほう、ほうほう。これは良いですね。ゲームセンターにでもありそう。行かないので知りませんが。
えっと……詳細設定。人数はソロ、モードは時間耐久。3分間、被弾回数4回以上で失敗。レベル帯は同格。射撃タイプで、数は4ぐらいでしょうか。配置は位置、距離、範囲ともに全てランダム。攻撃頻度は……まず普通で。私の移動可能範囲は中央の……このぐらいで十分でしょう。許可スキルは所持スキルから……《古今無双・一刀流》。禁止スキルは……許可スキル以外っと。
設定はこんなものでしょうか。
〈戦闘シミュレーターの設定が完了しました。選択された戦闘モードはカスタムです。許可エリア内に入り開始を意識するか、UIからスタートで始まります〉
中央へ移動してアサメイを空間……んー? 時空属性になりましたか。空間での効果は武器攻撃力減少、武器防御行動に補正。アサメイに持たせる主力効果でしたがまあ、上位属性でしょう。演出もより綺麗になっていますね。深い青に星を思わせる白い点々だったのに加え、光の屈折か少し揺らめいて見えます。
まあそれは良いとして、設定したシミュレーターを使用しましょう。
開始を意識するとカウントダウンが始まり、0になると敵扱いのビットが出現。数は前1後ろ1左2の合計4。設定した通りの数ですね。出る場所は位置も距離も方向もランダムに設定したので、場合によっては偏ったりもしますか。
設定したので射撃攻撃をしてくるわけですが、見慣れたラインが4本表示され……いや、見慣れてませんね。とりあえず飛んできた4発を弾きます。
ビットはこちらに攻撃してから少ししたら動き出し、止まると再び攻撃してきました。攻撃したビットから動き出していますね。勿論ビットはバラバラの方向へ移動します。移動速度も移動距離も違うので、攻撃する順番も変わるわけですか。
〈フェアエレンがログインしました〉
〈フェアエレンが訪問してきました〉
ん……ああ、蜜ですか。
そして《危険感知》……今だと《天啓》によるシステムアシストのラインですが、ラインが赤だけではなく、カラフルですね?
赤、緑、青に……オレンジでしょうか。赤1緑2青3橙4と番号が振られており、色が濃くなっていきますね。
色が順番、濃さがタイミング。濃さ以外にもゲージが付いてるので、そっちの方が確実でしょうか? 問題はこの濃さもゲージも、案外信用ならないと言うことです。たまにラグったようにゲージが一気に減るんですよね。スキルレベルが低く、精度が悪いのでしょう。
来る順番がはっきり分かるだけでも上々か。囲まれた場合の生存率が上がりますね。タイミングは今まで通り頑張るしかありませんが。
とりあえず……ビット4個では足りませんね。遺跡ダンジョンの方が弾幕が濃いです。もう少し数を増やさないと楽しくありませんね。
……っと、終わりましたか。流石にこれでスキルレベルは上がりません。主にPS鍛え用ですね。PT連携確認にも使えますし、敵を使ってのスキルの確認もできますか。
もっと早くこちらを拡張すべきでしたが……まあ、こればかりは仕方ありません。
お城の拡張なので、冥府所属の不死者プレイヤーなら利用が可能でしょう。順番待ちになるのか、インスタンスになるのか分かりませんけど。
これからは型稽古の時間を少し減らして、これ使いますかね。
確認はしたので、離宮に行ってみましょう。見に行かなくても、クリスタルロータスを使用して、妖精の蜜を生産中だと思いますが。
離宮へ戻ってくると、軍隊魔戦蜂を刺激しないように混じって、採取に勤しんでいますね。
「ごきげんよう、フェアエレンさん」
「やはー」
フェアエレンさんは相変わらずエクレーシーですね。青白くバチバチしている雷系妖精種。
「そういえばねー。この間キャバリシーの人に会ってきたのー」
「確かタンク系の妖精種でしたか」
「そうそう。飛行方法は特殊浮遊で、ステータスも近接よりみたい。設定的には魔力の運用法を変えたとかなんとか」
「設定やステータスは良いとして……特殊浮遊ですか?」
「タンクだから、浮遊状態でも踏ん張れるらしいよ?」
「なるほど、吹っ飛ばされてたら困りますからね」
恐らく私の持つ《座標浮遊》と同じ効果の、別名スキルでしょう。私のは空間操作系による浮遊技術ですからね。
レアそうに見えてもレアスキル判定じゃないので、そんなものでしょう。気になるとすれば、完全に同じ効果なんですかね?
「ある程度の検証はしましたよね? 逆さや斜めになったりできるのですか?」
「一応可能だけど、気球とか風船のフワフワ感だから激むず」
「そういえば浮遊系は多少上下に動いてましたね」
どうやら完全に同じ……と言うわけでは無いようですね。浮遊形式としてはかなり高性能なのでしょう。安定性的な意味で。
「そういえば、姫様の浮遊スキル上下移動無いね?」
「私は地上に立っているようなものなので、安定性は抜群ですよ。その分速度遅いですけど」
「飛行系って案外種類あるんだよねー……」
まず大きく分けると《飛行》と《浮遊》の2種類。それぞれにMPを消費するタイプと、しないタイプがある。
鳥は消費しないタイプの《飛行》を持ち、妖精は消費しないタイプの《浮遊》を持っています。
同じ《浮遊》を持つ妖精種でも、種族によって浮遊感が違う。風のフェアリーは飛ぶようで、水のニクシーなんかは浮かぶようで、光のスプライトなんかは漂うに近いとか。
イーグルとかのタイプは、通常飛行はMP消費しないけど、MP使えば急激な加速や、走るような感じで最高速度を上げたりと、多少不自然な飛行が可能だとか。
「体傾けてMP使った羽ばたきすると、クイックブースト的な動きができるって」
「Gヤバそうですね」
「調子乗ってると上下分からなくなって熱い抱擁交わすってね……」
「飛行系の宿命ですかね……」
「姫様は大丈夫?」
「私はドッグファイトしませんからね……。飛び回る必要がありません。視界も特殊ですし」
「そっかー。運動会でも戦えてないし、姫様と空中戦してみたいなー?」
「別に構いませんが……戦闘機のようなドッグファイトは不可能ですよ?」
「それはホークとかイーグルで嫌でもするから……」
「ああ……。空中戦なんてそんなやる機会ありませんし、構いませんよ」
「ここじゃできないよね?」
「無理ですね。どこかのフィールドでないと」
ここ特殊フィールドですからね。フェアエレンさんの行動可能範囲は、私のプライベートエリア扱いの離宮のみ。それ以外に行くためには、冥府への試練をクリアした不死者である必要があります。
「よっし、こんなもんかなー。はい、今日の取り分」
フェアエレンさんから受け取った妖精の蜜を、近くの侍女に渡してキッチンで保管してもらいます。
「そういえば追憶のレモネードは知ってますか?」
「うん、愛用……愛飲? してるけど」
「あれ軍隊魔戦蜂と追憶の水ですが、妖精の蜜でも作れますよ」
「効果検証はー?」
「多少妖精の方が回復量が多いかな……程度ですね」
「手間考えると微妙かな……」
性能だけで判断すれば妖精の蜜を使ったレモネードですが、蜜の入手法を考えると妖精の蜜で作るのは微妙ですよね……。
妖精の蜜を使うとしたら、フェアエレンさんの場合は蜂蜜酒に回しそうです。デメリット出るほど飲まなければ、回復量が多いですから。
「よーし! 姫様、始まりの町!」
「分かりました」
庭に置いているミニ立像から転移して行ったので、私も転移します。
平日とはいえ始まりの町。人は沢山います。しかし決闘モード……PKではなく、申込みからのPvPだと、攻撃の当たり判定は対象にしか出ません。
決闘モードも設定は結構細かくできますね……。
決闘範囲に勝敗条件、ハンデ設定に賭け設定などなど。
範囲はそのまま出たら負けになる場外設定。ドーム状から町中や、最大だと始まりの町周辺までとかできるようですね。要するに兎さんとウルフがいる平原までで、ポップの変わる森などに入る手前まで。無しにすると場外による負けが無くなる。
高度の設定などもできるようですね。地上何メートル以上行ったら負けとか、逆に地上何メートル以下に落ちたら負けなど。
「勝敗条件どうする? 全損orレッド」
「デスペナとか無いんですよね?」
「無いねー」
「なら別に全損で良いですね」
勝敗条件はそのまま、勝ち負けの決定条件。基本的にはHPがどこまで減ったか……ですね。それに加え決闘範囲を設定すれば場外もプラスされます。
設定範囲は0から99で1単位。基本的には0の全損か、3割のレッドですね。99でやれば1でも受けたら負け。
今回は『始まりの町上空』で、勝敗ルールは全損。
UIでは町を囲う壁の範囲で、建物より上に円柱の枠がプレビューされています。実際の方もされているはずですが、私の視界では見えませんね。
「お、録画もあるんだっけね」
「定点とプレイヤー……チェック方式ですか」
「撮ってみて良いー?」
「まあ、構いませんが」
「定点8箇所……見上げるのと見下ろすのを端に置いとけば良いか。プレイヤーは……姫様どうする?」
「私、視覚ですらないのですが、どう映るんですかね……」
「やっぱ飾りじゃなくて見た目通りなんだ? スキルは適用するか選べるけど……あれ、スライムみたいな感じ?」
「確認してみますか……」
三人称に変化はありませんが、一人称が少々不自然ですね。
そう言えばスライムとかは種族的に特殊でしたね。私もスキルには触れずに種族的な問題で良いのでは?
三人称が無くなりますね。常に一人称で、私を中心にして円形。私の意識しているところが軽く色付いていますね。
「こんな感じです」
「おー、スライムに近いけど……姫様これ、外側は一切見えないね?」
「見えませんね。例えるなら、暗闇の中に全方位の明かりを置いてる感じです」
「どっちが良いかは人によるかな……」
スライムはドーム状で、途中から目が悪くなったかのようにボヤける。はっきり見える部分は私よりも狭いようですが、視覚と同じように見えはするようですね。
正確にはドーム状……180度よりは狭いみたいですが、スライムは地面を這っているので、似たようなもんか……と。
私の今現在、半径409メートルです。《時空間認識能力拡張》になってからまた計算式変わった気がするんですよね。いったいどこまで広くなるんですかね?
正直、あまり広くなりすぎても困るのですが。
「じゃあ全部録画ね」
「それで良いでしょう」
とりあえず設定はこんなものですかね。
設定完了を押すと、設定画面がReadyの文字に変わり、戦闘開始とキャンセルボタンになりました。
まず私達が開始エリア内に入らないと戦闘開始が押せませんね。でないと始まった瞬間に場外で両方負けるので、当たり前ですが。
という事で、2人で空へ行き向かい合います。
「よーし、行くよー?」
「ええ、構いません」
戦闘開始を2人で押すと、決闘範囲の中央に文字が出現しました。
Ready
3
アサメイを手に呼び時空の光剣を、栞は浮いて本になります。
2
1
Fight!
開始と同時に即座に詠唱を開始し、フェアエレンさんから飛んできた【トニトルスアロー】を反射します。
……避けすらしませんね。そういえば妖精の同属性は無効でしたか。狙って反射する必要が無いと思えば楽か。
プレイアブルでは飛行適正がほぼ最強と言えるエクレーシーが相手です。その飛行適正を使いこなせるかは中の人次第ですが、フェアエレンさんですからね。ベータの時から飛び回っているので、ボールやアローはまず当たらないでしょう。ジグザクに飛ばれるだけで、偏差のシステムアシストが機能しません。
詠唱していた6個の【ノクスマジックミサイル】が本から放たれます。
流石にフェアエレンさんは移動を開始。加速も飛行速度もかなりのものですね。飛びながらも私の方にアローやらランスが飛んできます。私は飛び回らないので、その辺りの魔法で良いのでしょう。
まあ、弾きますけど。
私とフェアエレンさんにより、光、闇、雷、風が飛び交います。
「【トニトルスプロード】!」
「【マジックバリア】」
古き鍵の書のページが前に来て、前方に膜を張り、雷の奔流を防ぎます。流石に全部は防げませんが、結構なものですね。
「思ったより通ってない!」
「バリア系は精神依存ですから」
……雷もしっかり被ダメージ増えてるようですね? 複合は増加分のみ計算でしたっけ。光と闇以外は基本増えると思って良いですね。
「【ソニックラッシュ】」
「んひーっ!」
む、残りましたか。プチッと行くかと思いましたが、クリーンヒットしませんでしたね。残念です。
普通に振っただけでも鞭の先端は音速を軽く超える。それに加えゲーム要素である【ソニックラッシュ】の使用で、私の持つ最速の攻撃だったり。
アーツの説明は『即座に敵に衝突し、刺突ダメージとノックバックを与える』ですが、挙動としては単体指定で、指定した敵に向かって突っ込んでいくだけのシンプルなアーツです。
ただし、振られた鞭の先端が……なので、ただでさえ音速を超える先端が、アーツによって加速し敵に突っ込むため、これが中々の使い勝手。
正直偏差云々という速度ではないので、当てるのは楽です。問題は遠距離である魔法に比べ、剣と鞭の統合である蛇腹剣は中距離です。
つまり射程不足! もう寄っては来ないでしょうね。
「分かってたけど当たんねー!」
「それはお互い様です」
フェアエレンさんは私に弾かれて当たらない。私は避けられて当たらない。
「ならば!」
「む……」
フェアエレンさんは私の正面で左右に動いていたわけですが、ついに私の周りをグルグルし始めました。速度を活かして全方向からポンポン飛んできますね。
検証班のWikiに、40から同属性の詠唱速度上昇効果が増える……とか書かれてましたっけ。流石魔法特化種族と言うべきか。
私の種族って体力と回復力によるしぶとさが最大の売りですが、防御系効果なわけで。被弾しなければ意味無いんですよね。そんなメインより、触手を出せて《未知なる組織》を塗りたくれる方が嬉しいという。
「こっちならどうだ!」
「ほいっ」
「まじかよひっめ……」
空中戦ということは、三次元移動が可能なわけで。
私の正面から下を通り背中へ向かうフェアエレンさんが、真下の時に魔法を撃ってきました。
当然その状態でパリィはできず、回避行動を取るのが普通でしょう。しかし、私の《座標浮遊》はとても優秀なのです。中心を固定したまま、回ってしまえばいい。
私は視界も自分を中心とした円なので、くるくるしたところで《天啓》による攻撃ラインを見失う事はありません。
むしろ気にしないといけないのは《古今無双》による型ですね。常に【水面の型】は維持したいですから。
「安定性は抜群だと言ったでしょう?」
「無重力みたいな動きしよる。でもスカートがヤバイね」
「そうですね……。実際に無重力ではありませんから……」
「でも攻撃はやめない!」
重力はそのままなので、逆さになると丸出し状態になりますね。ちゃんとインナーパンツ履いているとはいえ、それはそれ。
それにしても、この魔法合戦……実に不毛では? お互い当たらない。どちらかといえば、私の方が有利ですね。オワタ式のフェアエレンさん、ミスしたら死にますからね。
エクレーシーはバインドを振り切るんですよ。逆に向こうのバインドは古き鍵の書と【マジックバリア】で、バインド中に倒される事はありません。その後、弾きながら《聖魔法》で回復すればいい。
お互い倒す決定打が無いと言うか……そろそろ触手を解禁しますかね? フェアエレンさんの天敵だと思うんですよ。突然出てくる触手。あのスピードに合わせるのはそれはそれで大変ですが、壁として出して突っ込んでもらえば……。
「これで……どやっ!」
「おおっ? おー……」
6個の【トニトルスマジックミサイル】が、1個ずつ別方向から飛んできます。
1個1個をバラバラの位置に出現させ、あらぬ方向に打ち出す事で、誘導効果を利用して囲うように攻撃する……と、なるほど。
私のようにほぼ動かないか、的が大きかったりすれば有効な撃ち方ですね。逆に冷静に動かれると、弾同士がぶつかって消滅する撃ち方です。
しかし私は別の対処法をしましょう。これで倒せると良いのですが。攻撃魔法でないなら、古代神語学はむしろ詠唱に時間がかかる。
アローやらランスは弾き、ギリギリまでミサイルを引き付け……。
「【ショートジャンプ】【Mey Persepho ……」
「んえええええ!?」
飛んでるフェアエレンさんの後ろに転移し、古代神語学による詠唱をしながら剣を振りましたが、避けられました。
「…… Herja】」
「【マジックバリア】」
流石の対応力ですね。剣をどう逃げられても良いようにバーストを選択したのですが、【マジックバリア】で軽減されましたか。
しかし距離が空きましたね。
「【ソニックラッシュ】」
「ぐえーっ!」
妖精は小さいからクリーンヒットさせるのが難しいですね。微妙に残りましたので……触手でペシン。
「おぅふ……」
「私の勝ち。なんで負けたか明日までに考えといてください」
「ぶはっ! ここでそれか……! ムカつくー!」
「言うなら今かな……と」
「確かにそうだけど!」
普通に煽りなので、仲の良いネタが通じる人じゃないと使えませんよね。
「姫様戦闘中に転移したよね?」
「《超高等魔法技能》と《空間魔法》30で覚えた【ショートジャンプ】ですね」
「短距離転移魔法!」
「ええ。私で1割持ってかれます」
「相変わらずの燃費よ……」
「特定属性系のMP消費減らすようなアクセとか無いんですかね」
「ありそうだけどねー」
しかしそれで《空間魔法》系を装備するか……と言われると、ぶっちゃけ微妙ですね。どう考えても闇か光、または聖が優先でしょう。アクセだと装備枠を使うわけなので、装備可能数が決まってますからね。
「新鮮な空中戦だったけど、やっぱ姫様と1対1はダメだな!」
「純魔や弓などは私の得意分野ですからね……」
「最初から触手使われるだけで相当つらたん」
「フェアエレンさんが相手だと、触手を壁にするだけで良さそうですよね?」
「あー……突っ込むね。間違いなく突っ込む。ウォール系は空に出せないし」
理想は進行方向からのなぎ払い直撃ですね。まあつまりバッティング。1番ダメージがあるはずです。しかし確実に回避行動取るので、掠めるだけでしょう。
「正直、1対1の近接の方が悲惨な気がしますね……」
「そうなの?」
「近接攻撃に確率で反応する自動反撃があるんですよ。受け流してるだけで触手による反撃と、状態異常によって死ぬでしょうね……」
「わぁ……」
触手自体は威力低いですが、状態異常にできるパリィタンクだと思えば十分でしょう。触手の威力はともかく、《未知なる組織》による状態異常は強力です。
それはそうと、終わったので地上へ戻ります。
そして動画のチェック。自分と戦っている人視点というのも新鮮で面白いですね。
「カメラの切り替えとか、画面分割再生とかできますね……」
「これ拡張子なんじゃろ……あー、これか。固定8個と2人で10個の動画をファイル名で関連付けてるわけだ」
容量を食いますが、便利なのは確かですね。固定カメラがある方へ行ってないとかなら、そのファイル消して関連付けてるファイル名弄れば節約できますし。
10個あってもPvP1回の戦闘時間を考えると容量は……40ギガですか。残しても良いかなー感はありますね。
「問題はねー……この形式を再生できる動画サイトが無いんだこれが」
「あー……確かに動画サイトでは聞きませんね。その場合編集して1個にして上げるんですかね?」
「それが一般的だねー。後はもう、全部纏めて圧縮してダウンロードさせるぐらい。再生できるアプリはあるからね」
「定点はこれ、範囲広くてろくに映ってないのでいらないでしょう」
「姫様全然動いてねー」
「じゃあそれぞれの視点上げれば良いですね」
「良いべよ。自分の視点だけ保存して上げよ」
自分の視点の動画を保存して、アップロード作業を進めます。
……そう言えば、学校でふと思った事を確認しましょうかね。
一号を肉塊の浮遊要塞で召喚します。
「一号、その体って形変えられますか? 可能なら○、ダメなら×、条件付きなら△で」
一号の返答がありませんが、段々体が波打ち始めました。その後少しして触手で三角の合図が。
「条件付きですか。まあ、サイズ的に細かい事は無理そうですが……慣れがいる……かな?」
正解ですか。
あの素体は浮遊要塞だけあって浮遊で移動ですから、体を動かす必要がありませんでしたからね。反撃手段として触手を伸ばす事はできてるので、やっぱり形を変えられますか。
つまり、やっぱ肉塊の浮遊要塞に乗るべきですね? サイズが大きいので無意識に除外してましたが、ジャイアントやゴーレム、アラクネなどがいる世界ですから……今更な気もします。
「一号、上を椅子のように凹ませることは可能?」
上の方がうねうねしているようなので、そこへ行ってみます。
今のところ私以外にこれの召喚はいないはずなので、一目で分かるのは間違いないでしょう。
プルプル波打ちながら変わっていきますが、歪ですね。座り心地は……いまいち。
「そういえば一号、その素体……触手は何本出せるのです?」
……数えるのが面倒なぐらい出てきました。
という事は、触手で椅子を作らせた方が良さそうですね。……見た目のヤバさはいまさらなので、気にしないものとする。
「座面と背もたれ、肘置きがあれば良いでしょう」
足の部分などは触手になるので、気にしなくて良いでしょう。一号、もう少し座面の角度を……ええ、良いですね。
「うん、間違いなく悪役だね?」
「やっぱりそうなりますか。モヒカンさんとも話しましたが、要素的にどうしてもダークファンタジー寄りになってしまいまして」
肉塊の球体の上部が触手だらけで、そこに座っているため中々の絵面ですね。普通なら間違いなく悪役でしょう。しかも裏面とかの。
浮いてきたフェアエレンさんは肘置きのところに座りました。
「正直出番が少ないのが問題ですね。転移とか亜空間移動するので……」
「良い目印になるから町中はこれでいるべき。素晴らしいインパクト!」
やっぱりインパクト目当てなら、骨よりこっちですよね。
アップロードは……終わったようですね。フェアエレンさんの動画も別視点としてシェアしておきましょう。
「フェアエレンさんこの後は?」
「んー……土曜にはイベントくるし、レベル上げかなー?」
「シティシナリオとか言ってましたね」
「サブタイトルからクトゥルフ臭がするよね」
「生臭そうですね」
「ではなく」
「ハロウィンと考えると、シュブニグラスでしょうか。というか、豊饒云々はシュブニグラスしか知らないのですが」
「私もそれぐらいかなー。後はシュブニグラス関係で黒い仔山羊?」
ヨグ=ソトースと並ぶ神格の1柱。シュブ=ニグラスですね。こちらも有名かと。
外なる神のシュブ=ニグラスの称号である、千匹の仔をはらみし森の黒山羊。
そして上級の奉仕種族である黒い仔山羊。
まあ、繋がりが無いわけもなく。親と仔であり、親の素晴らしさをせっせと広めているわけですね。
「まだシュブニグラスっぽい情報得てないんですよね。簡単に考えればハーヴェンシス様ですが……」
「ハーヴェンシス様って慈愛でしょー? 無くない?」
「ステルーラ様という前例があるので、無いとは言い切れませんね。神々が沢山いない場合、複数の権能を抱え込む事になり一貫性が無くなる……」
「ふむ。つまり頭がおかしいだけ……と」
「まあ…………あいたーっ!」
まあ……と言った瞬間空から光が降ってきて私を貫きました。
〈ステルーラに叱られました〉
神罰が物凄い気軽にやってきた……!
「何ぞ……?」
「頭おかしいに『まあ……』と返したため、同意と取られましたかね……」
「私痛くなかったなー」
フェアエレンさんは肘置きに座っているので、光には巻き込まれてましたが、何もなかったようです。
「信仰者ではないからでしょう」
「なるほど?」
「はっ……もしや繋がりが深くなればなるほど気軽に神罰が飛んでくる……?」
「南無三!」
「何ということでしょう。日本人御用達愛想笑いが許されないとは……。神にお仕えしている以上、しっかり否定しておけということですかね」
「この世界が身分社会ってのもあるかもねー」
「となると、私が神だ! …………来ませんね。ネタ発言は許してくれる……と」
「住人とかの前だとダメじゃね」
「……ロールプレイが捗りますね?」
「美味しいね。さー……狩りでも行くかなー」
飛び立って行くフェアエレンさんを見送りまして……どうしましょうかね。平日なので、今からダンジョンに篭もるのは……微妙か。
ハロウィンキャンペーンで採取量が増えてるおかげで、日課の生産に割と時間食われましたからね。しかしMPポーション系は作っておきたいので、生産は必須。
……キャパシティ増やしでもしますか。
学校から帰ってログインしまして、型稽古後に戦闘シミュレーターで遊び、畑と大鉱脈から採取して生産。《料理》と《錬金》をじわじわ上げます。
お決まりの行動が終わったら……今日はフラフラと始まりの町の教会へ行って、お祈りでもします。肉塊で行くと入り口があれなので、骨ですね。
お祈りする時は勿論降ります。
レベル上げか、生産か、クエスト求めて町でも歩くか……。
どうしましょうね、ステルーラ様。
〈町も大事よ。貴女の知名度を上げるためにね〉
……まさかお返事があるとは。しかし知名度ですか。んー……権力や立場は相手に知られてこそ……という意味ですかね。
ネメセイアは知っていても、それがイコール私になるかはまた別の話? 服装である程度は察せそうですが、顔を知らないと意味がない……ですかね。
顔がどのぐらい知られているか……が知名度で、住人にどれぐらい好かれているか……が好感度?
そういう事にしておきましょう。マスクデータなので、こっちには分かりませんからね。
帝国での反応からすると、身分が上ほど情報収集しているでしょうから、町のおばちゃま達にも知れ渡ればほぼ完璧と言えますかね。
知名度を上げるには……一号に乗って練り歩くのが1番ですかね。好感度上げるならクエストやるのが1番でしょうけど。
セシルさんのようなクロニクルを他の人も見つけてくれれば、私の知名度が上がりそうなのですが。
とりあえず他の王都、開けましょうか……イベント終わったら!
一号で移動しながら、土曜のイベントまでレベル上げますか。
イベントまでに《閃光魔法》と《暗黒魔法》が3次になるでしょう。
この時代だとコーデックも良くなってるだろうし、SSDとかの容量もペタとか行ってそうよね。今もIntelが出してると言えば出してるし。そもそもSSDじゃない可能性もあるけど!
次はイベント。
色々考える事があるので、次も遅くなる事でしょう。