85 10月アップデート
「問題は?」
「ありません」
「じゃ、レベル上げてきます」
「行ってらっしゃいませ」
冥府の離宮から東の第八エリア、ディンセルヴ砦へ飛びます。
クエストが……発生してますね! まだ体力残ってるでしょうか。急いで砦を出て戦場へ向かいます。
敵は……ブルータルタイガーですか。まだ始まったばかりのようですね。良かった良かった。
後方の魔法師団に合流し、一号達を霊体系で召喚。
「手伝いますよ」
「あ、助かります!」
前衛を騎士達に任せ、後ろから魔法と触手でペチペチする作業。一号も空からペチペチするので、実に美味しい。
〈《縄》がレベル30になりました。スキルポイントを『2』入手〉
〈《縄》のアーツ【バインドサイクロン】を取得しました〉
〈《縄》が成長上限に到達したので《鞭》が解放されました〉
〈特定の条件を満たしたため、《蛇腹剣》が解放されました〉
「協力、感謝します」
隊長のいつもの言葉を聞いてクエストクリアです。
【バインドサイクロン】
対象に絡まった後使用可。対象を振り回す。
フリフォで使ってる人がいましたね。スペースは必要ですが、威力補正は高めだとか。
そして気になる《蛇腹剣》ですが、《刀剣》《鞭》《高等魔法技能》で解放されるようですね。基本的に《刀剣》と《縄》を同時に取る人がいないので、見つかっていなかったようです。物好きにもほどがある? そもそも《縄》が……。
これは掲示板に流してしまいましょう。正直な話、これ武器の用意ができるのか怪しいですが……。まあ、なんとかするでしょう。
《蛇腹剣》取れば、アサメイ君が対応してくれそうですが……私の場合触手で十分ですよね? 気になるのは、触手君が《蛇腹剣》系統アーツを使用できるのか。使用できるなら取るのは《蛇腹剣》ですね。確実にこちらの方が攻撃的でしょう。
SPは6なので、2次の通常武器スキルですね。うーん……《高等魔法技能》を要求している以上、魔法系統のはずなので……アサメイ君にかける? それなら触手が対応してなくても無駄にはなりません。
《揺蕩う肉塊の球体》には、『《縄》系統のスキル補正を受ける』と書いてあるんですよね。攻撃力などにスキル補正が入るけど、アーツが使えると書いてあるわけではありません。とても悩ましい……。
今の所有SPは117。しかしレベル50に乗っているスキルがちらほら。《言語学》と同じなら3次スキルのSP要求は10。
特殊そうなのを除き、3次まで行きそうな所有スキルは30個以上……。つまりSPが300以上必要。6とは言え、無駄にするわけには……。
神頼みですかね? いえ、既にプログラムされてる事を頼まれても困ると思いますが……人は、祈らずにはいられない。
〈《蛇腹剣》を取得しました〉
〈『恩寵のアサメイ』が持ち主に適応しました〉
よしよし……! 装備を確認しましょう。
《高等魔法技能》
短剣から両手剣サイズまで伸縮自在。
《蛇腹剣》《高等魔法技能》
鞭のように伸縮可能で、《縄》系統アーツの使用が可能。
上の《高等魔法技能》単品から、下の《蛇腹剣》と《高等魔法技能》になったようですね。
強いて言うならサイズの変更ができなくなりましたが……使ってなかったので別に良いでしょう。
【クイックリターン】
伸ばした物をすぐに戻せる。
これは……《鞭》と同じですね。とても有用。むしろ無いと辛い。
さて、肝心の触手の方を確認せねば。アサメイが適応したので無駄にはなりませんが、《縄》系統スキルは触手の方で使うのがメインですからね。
【クイックリターン】を使用するとすぐ引っ込んで消えるので、使えているのでしょうが……このアーツは《鞭》と同じなのでなんとも言えませんか。
とりあえず使えそうだ……という事で一安心。触手使って《蛇腹剣》スキルが上がれば使えると思って良いでしょう。
では次。騎士に的を貸して貰い、アサメイを鞭状にして何回か攻撃するのを録画。この動画とスキルのSSを掲示板に上げておきます。
これで情報に関しては十分でしょう。おっと、ついでに《空間魔法》の50で覚えた魔法も載せておきましょう。
【クリエイトラウムセーフティ】
インスタンスセーフティーエリアを生成。戦闘中使用不可。出ると消滅。
回復に便利……と言いたいところですが、クールタイムはリアルタイムで30分。入れるのはPTのみ。大体緊急離席用やトイレ休憩用ですね。
さて、折角なので少し森に入ってみましょうか。
こう、たまに全ての能力を使用して格上と戦いたくなりますよね。レベル上げはレベル上げでも、格上では経験値効率……時給が微妙でしょう。目的はそちらではなく、中の人……プレイヤースキル、つまりPSのレベル上げが目的です。
まあそんな事より、思いの大半は全力で戦いたいだけですが。アクションゲームです。そんなものでしょう。本来PTで戦うボスを、ソロチャレンジするのと同じです。このゲームは再戦できるボスが今のところいないので、普通に格上の敵を狙いますよ。
一応騎士に言ってから、砦から多少離れた南にいる……単体のハイオーガガードの前に降り立ちます。空から滅多打ちでは意味ありませんからね。
ハイオーガガードは片手剣と盾を装備しているオーガの50台バージョンですね。装備とレベル帯でこの辺りのネーミングにルールがありそうです。確か初期は剣がソルジャーで、槍はランサーですが盾はディフェンダーだったはずですね。
アサメイはいつも通り空間属性で挑みますよ。アサメイによる武器防御行動に補正。格上相手では余計に外せません。
それはそうと、50レベにもなるとAIはそれ相応に賢い……というよりは、それっぽいAIが積まれているのでしょうか。
このハイオーガガード、騎士系? 私が前に立っても見てきますが、それだけです。アサメイを構えると向こうも構えました。
ハイオーガガードはオーソドックスな片手剣に盾。2メートルほどのムキムキな鬼が、片手直剣にカイトシールドを持ったスタンダードスタイルです。
いざ、尋常に!
触手でべシーン。
いや、うん……済まない。私別に剣士ではないんですよ。というか格上なので、出し惜しみなんてしませんよ。
ラーナに教わった【水鏡の型】で迎え撃ちます。攻撃は主にショットを使用して削りましょう。その間にできる限り触手での攻撃も加えていきます。後は受け流し時に反撃が発動する事を祈りましょう。
ハイオーガガードの剣による攻撃をアサメイで受け流します。隙があるようならそのまま跳ね上げ、アンバランス状態にしてガッツリ削らせて貰います。
問題があるとすれば、それでも全然HPゲージが減らないということでしょうか。そして、受け流してる私に微妙にダメージが入っているのも問題です。
相手がパワーファイターなので、受け流されようがお構いなしにブンブン振ってきます。その代償としてモーションが分かりやすいので助かりますが……正直押され気味ですね。格上なので当然とも言えますが。
ん……? ん!?
「グッ……!」
シールドバッシュもするんですか! ガードは間に合いましたがノックバックとは! 流石鬼。馬鹿力にも程がありますね。
すくい上げるように斜め上へ飛ばされたので、流れには逆らわず《座標浮遊》で回りつつ木に着地します。背中から行ったら相当なダメージを受けるでしょうね。
しかしガードしたとは言え、シールドバッシュ本体をガッツリ貰っているので、《聖魔法》で回復しておきます。追撃を防ぐため、触手で噛み付いてバインド。地面に降りつつ回復します。
さて、仕切り直しです。相手は後6割。こちらのMPは後7割。ギリギリですね。被弾回数次第でMP切れもありえますか。
そして姿勢を落として踏み込んでくるモーションは要注意ですね。
それに、触手によるバインドは効果時間が微妙でした。鬼相手に筋力抵抗は愚策ですね。やるなら【シャドウバインド】か。
《狂気を振りまくもの》もさっぱり効いていない。正直進化前の毒や猛毒の方が使えた気がしますね。これは別の状態異常スキルを取るべきか。《魔素侵食》スキルも取ったことですし、その方が良いですかね。
シールドバッシュを警戒しつつ剣を逸らして、ひたすら魔法で削ってゆきます。
……気のせいですかね? なんか……なんか……んんー? なんか強くなってませんか? 私も戦闘時間で回復性能上がりますが……君も?
バーサク系……とは違いますね。防御力は減ってる気がしません。東のボス熊とは確実に違うタイプでしょう。となると……スロースターター系? 戦闘時間云々の《活性細胞》もこれに入るでしょう。
まあ、まだ知らないスキル沢山あるでしょうから、スキル名は分かりかねますが。
いや……この感じあれでは? こいつまさか残りHPの……背水系? 削れば削るほど辛くなるタイプなのでは? 明らかに強くなってますよね。どうせなら騎士達に詳しく聞いておくんでした。
ハイオーガの持ってる剣が赤くなったという事は……攻撃アーツ! 刀身が揺らっとブレました。非常にまずい。よりによって【朧月】ですか!
いつも通り斬撃を受け流したら、《危険感知》が6本のラインを表示しました。追撃の6本を順番通りに受け流し……できるわけもなく。【朧月】の追撃は【ディレイスラッシュ】と違って速いしランダム箇所なんですよ。
そして右腕が斬り飛ばされました。とてもまずい。斬撃にとことん弱いですね! エイボンの書は最初から浮いているのが救いか。
「【Mexa Pers=eh Pogn】」
ハイオーガを【シャドウバインド】で足止めします。腕の部分に触手が生えて擬態したところで、腕と一緒に飛んでったアサメイを【念動装着】します。
そして回復もしておきますよ。
さて、再び仕切り直……ん? んん!?
バインドが解除されたハイオーガの刀身が再び赤く光ったと思ったら、目の前にいました。今度は【アサルトブレイド】ですか! 一瞬で距離を詰め、斬りつけてくるアーツですね。よく言う縮地とセットになったアーツです。
受けなが……せましたね! って流れるようにシールドバッシュ!? ジャンプしつつガードします。
盾に乗るように後ろへ飛ばされましたが、最初よりかなりダメージが低いですね。触手の本数がもっと増えれば、セーフティーネットにもできそうですか。自分を捕まえればブレーキにもなりますが……咄嗟系はやはりマクロが欲しい。
それにしても、楽しいですね。実に楽しい。格下を豪快に一掃するのも爽快で良いですが、ジャイアントキリングも良いものです。格上相手にガッツリアクションゲームするのはとても楽しいですね!
〈《本》がレベル30になりました。スキルポイントを『2』入手〉
〈《本》のアーツ【ミラーキャスト】を取得しました〉
〈《蛇腹剣》がレベル5になりました〉
〈《蛇腹剣》のアーツ【グランスラスト】を取得しました〉
〈《高等魔法技能》がレベル55になりました〉
〈《魔法技能》の【念力】【遅延発動】が強化されました〉
〈《聖魔法》がレベル15になりました〉
〈《聖魔法》の【エリアヒール】を取得しました〉
私の右腕を斬り飛ばしてくれたハイオーガガードが地に伏せました。
うーん……HPはともかく、MPがすっからかんですね。残り1割ちょっとですか。やはり格上は倒せるけど、狩りにはなりませんね。効率が最悪です。
まあ、元より経験値稼ぎではなく、アクション楽しみたかっただけなので、良しとしましょう。
ん、近くにいますね。今のMPだと間違いなく死ぬので【リターン】ですよ!
「おや、陛下。お戻りですか」
「戻りました。ハイオーガガードは倒せましたが、MPがすっからかんになりましたので、他のに見つかる前に【リターン】で」
「無事に倒せましたか。素晴らしいですね。異人は成長が早いらしいので、とても楽しみです」
「ではこれで。また来ます」
「はい。おもてなしはできませんが、いつでもお待ちしております」
砦の騎士に挨拶してから離宮へと飛びます。
しかし、いつの間にか私の事がしっかりと通達されていますね。劇的ではありませんが、微妙に態度……というより雰囲気というべきですかね。それが変わっています。一般向けの、恐らく威圧感などを与えないための軽めの雰囲気が、引き締まりましたね。
まあ、砦の騎士達の微妙な変化は置いときまして、スキルの確認をしましょう。
ベース経験値はともかく、スキル経験値は十分美味しい……と言えますかね。格上だと戦闘時間が長くなりますし、そういう意味では悪くはない? 問題は集中力が続くか……と、増援が来た瞬間詰むのがなんともですか。
【ミラーキャスト】
自身の使った魔法を複製する。
【グランスラスト】
地上を薙ぐように振るう。地上の敵にボーナス。
【エリアヒール】
自分を中心として光の輪を展開し、中の人達を回復させる。
地上にボーナス、範囲回復と特に言うことはないですね。
問題は《本》のアーツでしょうか。これだけではよく分かりません。掲示板を確認しましょう。
えーっと……いや、これは25で覚えた方だから違いますね。
【ミラージュキャスト】
自身が覚えている魔法の見た目だけを模倣する。攻撃力は皆無。
微妙にMP使いますが、少量で魔法によるフェイントができるようになるアーツです。今のところPvP用です。
名前が似てますが今見たいのはこれではなく……ほほう?
直前に使った魔法を複製してもう1回使える。消費MPは同じ魔法を普通に使うよりは安いためとても有用。ただし、クールタイムが長く180秒……3分ですね。
使用できる状態ならとりあえず使っておけば良さそうです。
《蛇腹剣》のレベルの上がりを見た感じ、ちゃんと触手でも良さそうですね。まあ、外に出て実際アーツを使用して確認。……発動したので問題無いでしょう。触手を横薙ぎに振るうだけですが、範囲は結構なものですね。ある程度高さは変えられるようなので、敵のサイズに影響される事はなさそうです。
ちなみに、アサメイで試しても鞭のように伸ばして薙ぎ払うだけです。
さて、今度は何しましょうか。たまには違うことでもしたいですね……ラーナに型を教わるのも良いですし、RP用に宰相やラーナから王侯貴族のマナーを聞いても良いですね。このAIなら教えてくれる気がします。
《古今無双》のクエストも進めたいですし、生前が公爵夫人というのを考えると……やはりラーナですかね。ラーナと修行して寝ましょう。あ、錬成陣を弄るのも良いですね。まあ、それは別の日にしましょうか。
アプデももうすぐ来ますし、10月のイベントはなんでしょう。
授業も終わり、帰宅時間になりました。早速智大と傑がやって来ます。エリーとアビーは最初から横にいるので。
「パッチノートが更新されてたぞ」
「帰ってからゆっくり見ようか」
「おう」
という事で、お迎えに来たエリーとアビーの車に便乗。実に楽です。
まだメンテ明けまでもう少し時間あるので、我が家のリビングに集まりのんびり。飲み物片手にテレビでパッチノートを見ます。全員で見れますからね。
「んー……気になるのは『マクロ』と『オリジナル装備機能の拡張』かなー」
「目玉としてはその2つと……『動作リプレイ』に『個人の日記ページ』、『生産依頼システム』かね」
リーナとしては、マクロとオリジナル装備の機能拡張が一番恩恵あるのでしょう。全体で見れば智大の言う3つ込みで、5個が今回のアプデの目玉ですかね。
「マクロは自由に組み合わせ、アーツコンボも可能だが、当然各アーツ毎にクールタイムが入るため、その点は注意……と。まあそこは当たり前だから良いとして、見た感じかなりカスタム性がありそうだな……」
「こればっかりは実際中で弄ってみるしかないな」
「だなぁ……」
智大と傑が言うように、挙動などを確認しながら弄るしかないでしょうね。とりあえずログインしたら弄ってみましょう。使えそうなら本格的に組みたいですし。主に触手関係で。
「動作リプレイ機能の追加。所謂変身シーンの再現は可能……だろうが、当然無敵時間は発生しない……だって」
「まあ、当たり前だよね」
「敵の大技回避に使えちゃうからね……」
「間違いなく使う」
「「知ってた」」
柳瀬さんが読み上げ、松兼さんが反応。妹の断言に反応する2人……と。
基本的に空いた時間はゲームする組ですから、まあ使うでしょうね。
「ドラゴンのブレスに時間合わせてモーション組めば完璧じゃね?」
「ブレスの中から無傷でポージングして出てくるのか……」
「ドラゴンだと多分レイド戦だし、ポージング集団だよな」
「そんなんされたら笑うわ」
「ドラゴン激おこしてステータス上がりそう」
とてもシュールな戦場ですね。果たして腹筋が持つか……。
「日記ページはまあ、検証班がゲーム内Wiki作るとか言ってましたが……自分で使うことはないですね」
「あ、マジで?」
「調べスキーさんが言ってたよ。この間、教会に関して情報提供しておいた」
「そう言えば、マギラスがお店に来たって言ってたわね」
「提供ついでに調べスキーさんにごちそうになりましたよ」
恐らく、大体のプレイヤーがお世話になりそうなところでしょう。掲示板を漁らずに情報探せますからね。まあ、纏め終わるまでしばらくは探すことになるでしょうけど。
「最大の目玉、オリジナル装備のテコ入れか」
「ボーンまで! しゅごい!」
これ……洋ゲー……装備MOD……うっ頭が……。
やってる事は同じだし、思い出すのは当たり前ですか。
「ボーンは課金またはドロップか」
「ドロップあるだけ凄くね。確率知らんけど」
ドロップ率は敵のレベル帯依存。ロットには入らず、本人のインベ直行。判定は倒した瞬間なので、一部の人もご安心下さい……ですか。私やスケさんがその一部の人にピンポイントですね。死体取り込んでしまいますから。
何種類かあるが、一番上は課金か超高難易度イベントまたはレイドのみ。
「ところで、ボーンって何かしら?」
「分からないです!」
まあクリエイターならともかく、普通ならあまり気にしない部分ですからね。妹と2人でエリーとアビーに説明します。
「言葉通りの骨だと思って構いません。ゲームだとモーションなどの動き部分を司る骨組みですね」
「筋肉を1本1本動かす……なんて現実的じゃないし、やる意味がない。骨を動かせば体は動くからそれで良いんだよ」
「ああ、なるほどね」
とあるキャラクターの片足を上げたい場合、太もも部分の骨を持ち上げてあげれば良いと言うわけですね。
設定次第ではつま先が地面にくっついたまま、太ももが上げられると脛が伸び、ヒエッとなるのはあるあるではないでしょうか。
「それが装備だとどうなるです?」
「一番分かり易いのはマント?」
「かな? 一番動くし」
「マントが風で靡く……あのパタパタがよりリアルに、滑らかになります」
「ボーン数が増えると純粋に、判定……動かせる部分が増えるんだよ」
「おー……なるほどです!」
そう考えると私のあの外套、かなりのボーン数ですね。というか、今にして思えば住人の冒険者達、彼らのマントというか……ローブにも違和感を感じてませんね。
元々ゲーム内に用意されている装備は、結構なボーン数があるんでしょうか。そう考えると、実は余程拘らない限り不要ですかね? まあ、そういうところに拘るのがプレイヤーというものですが。
「ボーン数増えると負荷がかかるもんな。ストレートに金要求してきたな」
「痛いが、払えなくもないいやらしい値段設定だ……」
「まあ、俺らは遊びだが向こうは商売だからな……」
アイテム生産時に使用する消耗品ですね。
装備品を作る時にボーン数を選択。ボーンを設置後、今まで通り生産を開始。その工程が終わっても未完成品として止まり、ボーンのアイテムを要求される。最初に選んだボーン数に合ったアイテムを、課金なりドロップで用意して完成。
つまり、気に入らない性能の物ができたら、ボーンのアイテムを用意せずに破棄。生産に使用したアイテムは消えますが、ボーンアイテムは消費せずに済むわけです。
「うん、温情だ。とても温情だ」
「で、生産依頼システムってどんなんだ?」
んー……簡単に言えば、素材を渡さずに生産してもらい、完成品も直接インベに入るようですね。作るたびに制作費も渡せると。
その際、自分でボーンやらテクスチャを設定しておけば、ボーンアイテムを使用直前の状態で返ってくる……と。
「依頼書と設計図?」
「かねぇ。自分でデザインしたやつを、生産者に作って貰えるシステムっぽいな」
「お父さんに軍服風デザインして貰おうかな……」
「それは……ガチすぎないか?」
ただでプロを動かせる、娘という最強手段ですか……。お父さんなら確実にやってくれるでしょうね。
「そういや、南の大陸のSS見たか?」
「見た! 行こうか悩んでるところ!」
むむ? 私見てませんね。気になるじゃないですか。傑と妹が見てるなら、2人のPTは見てますね。私とエリー達が見てませんか。見ましょう。
「えっと、これがディナイト帝国」
「あれは……コロッセオ?」
「ベータの武闘大会で使ったやつだね!」
「やっぱ帝国に置かれてたんだね」
「でね、帝国の町並みは置いといて、これがその問題のSS!」
表示された画像は実にファンタジーな物でした。
「浮遊大陸です!?」
「何か浮いてるのは確かね」
「地上も水晶の森ですか? あれは……遺跡ですかね」
「サイバーパンク……というよりSFかしら?」
「とてもファンタジーしてるです!」
始まりの町がある北の大陸は中世ヨーロッパがベースでしょう。まあつまり、あまりファンタジーの大冒険感は無いんですよね。ディナイト帝国も似たようなものです。まあ、人の居住エリアなだけにそんなぶっ飛んではいません。
しかし、SSに映っている外の部分がかなりファンタジーしていますね。
「なんか、南の大陸は敵が強いらしいな」
「そうなの?」
「純粋にステータスが高いようで、連携もしてくるし、状態異常とかも普通に飛んでくるとか」
「へぇ……そろそろ東以外も開けるべきか……」
「むしろまだ東だけだったのか……」
「現状特に困って無くて……。ああでも、ポーション使えるようになったから、北西開けたい気はする」
「北西はエルフだったか。確かティアレン魔導国だったな。自然と共に暮らし、魔法や魔法薬に力を入れて水が美味しい」
らしいですね。よって魔法薬に使用する魔草の産地でもあるとか。
正直な話、自分で作るより素材をサルーテさんに持ち込んだ方が良いのですが、自分で作っていかないとスキル上がりませんからね……。
「あ、そう言えば《錬金》で思い出しました。アビー、ドールコアなる物のレシピが手に入りましたよ?」
「ドールコアです? 気になるです!」
「なんでも自動人形のコアだそうですが、3次スキルじゃないと作れませんね」
「自動人形! でも今《錬金》も上げるのは辛いです……」
「当面は共同作業になるでしょうね。言ってくれれば《錬金》面は手伝いますよ」
「やったです!」
生産スキル2個は辛いですからね。自分で取るにしてももう少し後になるでしょう。おかげでスケさん達に比べるとレベル低いんですよね、私。その分生産スキルによるステータス補正が入っていますけど。
《錬金》は他の生産スキルと相性がかなり良いでしょうが、私が持っているのは《料理》なんですよねぇ……。ケミカルクッキング……? ヤバそう。
「む、そろそろメンテ終わるか?」
「だな。よし、帰ってパッチ当てるか」
皆を見送ってから、こちらもパッチを当てておきます。
そして、メンテ明けでログイン。
早速訓練場でマクロの確認をしましょう。
UIは勿論、カスタマイズ性と的を使用しての挙動チェックです。近接コンボなどは不要なので、主に触手面での挙動を確認します。
使う本数……触手の出現場所……攻撃方法……ふむ。マクロ使えばだいぶ楽になりそうですね。
必要なのは……通常のひたすら敵を引っ叩く単体攻撃用のマクロと、2種類のバインド用マクロ、更にセーフティーとしての網目マクロですかね。
掲示板で他にも検証している人達がいるので、それに混ざりつつ試行錯誤していきます。
「おや、サイアー。反復練習ですか」
「ラーナですか。折角触手が出せるので、効率化を図れないかと検証中ですよ」
「良いことですね。力は使いよう。使いこなせない力に意味などありませんから」
全くもってその通りです。
マニュアルよりはマシですが、セミオートでも1個1個は面倒なことに変わりありません。かと言ってオートは全てランダムになるので邪魔です。出現箇所や攻撃方法、攻撃角度などですね。突然目の前から触手が出てきて、敵を殴るって事もあります。敵のサイドに出て、横薙ぎに振るうから私まで……みたいな事も。
よって、残念ながらオート使用はありえません。かと言ってマニュアルは面倒過ぎてほぼ不可能。一番実用的なのがセミオートでの使用です。
「サイアーは2段階目である【Ex2 白兵の型】、【Ex2 水鏡の型】どちらも覚えました。よって【Ex3 修羅の型】、【Ex3 水面の型】をお教えする事が可能ですので、空いている時間で是非」
「【水面の型】は早めに覚えたいですね。しかし、まずは触手です。これが成功すれば、戦闘時に触手に思考を割く必要が無くなりますから」
「お心のままに。いつでもお待ちしております」
良い部下……部下? まあ、部下なのでしょう。優秀な部下がいるのは良い事ですね。AIに捨てられないように、私も頑張らねばなりません。捨てられたら数日へこみそう。
ラーナ協力の検証の結果、2つのスキルで分かった事が少し増えました。型のついでと言うか、なんというか。
《揺蕩う肉塊の球体》と《狂える無慈悲なもの》ですが、スキルの上がり方的に、『触手使用』が経験値条件。しかしこれら、『触手の本数』は共有ではなく独立。
《揺蕩う肉塊の球体》はスキルレベルで反撃確率が上がる。より具体的に言うと、スキルレベルが上がると特殊エフェクトの球体が増える。体からうにょんうにょんするあれですね。その球体が増えると反撃確率が上がっている……と思います。多分10レベ毎に増える。5レベではないはずです。
《狂える無慈悲なもの》ですが、これは純粋に空間から出せる触手の本数が増えます。これも10レベ毎。15では増えていないので、20で増えるはず……です。素直に10レベで増えていけば、最終的には11本ですね。マクロ使わないと、まず使いこなすことは不可能でしょう。マクロ使っても11本全部は恐らく邪魔ですけどね。
『触手の本数』は共有ではなく独立という事で、現在上限である2本の触手でバインド中に攻撃されても、触手での反撃は行われる。これは恐らくですが、反撃は化身ので、触手は本体の……だからだと思われます。
まあ、理屈辺りはどうでもいいのです。『共有ではない』というのが全てです。つまり、マクロでの触手攻撃中に反撃が発動しても、DPSは下がらない。更にスキルの優先度も考える必要がない。上限である触手2本で攻撃してるから、反撃が不発しました……とか考えないで良い。実に楽です。
後ろから邪魔にならない角度で殴らせるとして……戦闘開始から対象が死ぬか、止めるまで。後方180……いえ、120度ぐらいに出現位置を組んで……と。
バインドは四足と二足で分けた方が確実ですかね。巻き付きと噛み付きで計4個。
セーフティーに関しては網目構造だけ作ってもらえば良いでしょう。
うん……こんなものですか。後は狩場に合わせて作るなり、手動ですね。
では、【水面の型】を教えてもらいましょう。
「【水面の型】は今までお教えした防御系の統合です。水面のように全て元に戻る。衝撃を受け流し、遠距離を反射する。これも型そのものより、実戦での使用が難しいタイプですが、期待しております。では始めましょう」
さ、頑張って覚えましょう。
私、水面覚えたら狩りに行くんだ……。
Tips
DPS=Damage Per Second
秒間火力。ゲームだと、戦闘開始から終了までに叩き出したダメージ。
あなたはこの戦闘で、合計○○○のダメージを与えました。DPSは○○です。
・チャージ系で大きいの。10秒チャージで1回100ダメ。
・塵も積もればなんとやら。10秒で5回20ダメ。
どちらも与えたダメージは100である。DPSは同じ。
当然高いに越したことはないが、『計算上』と実際にするのでは大違い。敵も動くし攻撃してくる。当然防いだり避けたりでその間は攻撃できない。
ちなみに個人で出すDPSと、パーティーで出すDPSもある。タンクやヒーラーが個人DPSを気にしたところでしょうがない。
タンクの仕事はアタッカーが殴りやすいようにするのが役目だ。タンク本人がDPSを優先する必要はない。
死んでる間は当然ダメージは0じゃ。ヒーラーは床ペロさせないためにいる。ちなみにアクションだといくらヒーラーが頑張ろうと、死ぬやつは死ぬ。
床ペロマン「回復して!」
ヒーラー「(#゜д゜)避けろカス」
????「パーティーの生殺与奪は私が握っている」