83 クレス教
明けましておめでとうございました。
私の年末は大掃除とPCの組み立て。そしてPCのセットアップ年越しでした。
そして15日に4KとフルHDのデュアルにしました。良いね実に良い。
これで設定のtxt達を見ながらエクセル開いて続きが書ける。
なお、ディスプレイ2枚で7万ちょい飛んだ模様。たかぁい!
「お帰りなさいませ」
「なにか問題は?」
「特に報告はありません」
「分かりました」
お決まりのようにとりあえず聞きますが、冥府で発生する問題って何でしょうね。まあ……良いか。
まずはハウジング品の収穫。そうしたら蘇生薬と属性金属の生産。料理の方はジャーキーの他に気分で何かを作ります。
そしたら一旦ログアウトして、朝食やらを済ませてから再びログイン。
さ、今日の行動開始です。ここからが本番。さっきのはテンプレ行動……つまりここ最近の日課です。金策とも言う。
メイン装備がお金使わないので、ハウジングにでもつぎ込むべきか。全自動連続式蒸留機でも買っちゃいますか? 蒸留水は勿論、ウィスキーなんかも作れますね。いや、えっと……最低でも3年熟成? ゲーム仕様でどこまで短くなるか……。
自分では飲めないので、本腰入れてやる気にはなりませんからね……。仕込むだけ仕込んでおいて、後は放置できると考えればある意味ありですかね?
おっと、ワインどうなりましたかね。部屋に放置したワインの樽が……。
……あれ? やたら発酵が進んでいますね。原因はなんじゃろな? 環境orスキルでしょうか。侍女達が主人の物に無許可で触るとも思えませんし。
となると、まずチェックするのは料理掲示板ですね。
原因はスキルでしたか。25で覚えた【短縮処理】が漬けや発酵、熟成などに影響があり……恐らくスキルレベル÷10倍っぽい……ですか。今私の《料理人》は34なので、約3倍で進むわけですね。とても優秀なアーツだ。
ということは、ジャーキーのチクタク時間もっと減らせますね。MPの節約になりますか。正直作るのは町中なので、言うほど問題はありませんが……。
この倍速具合……腐らせるorやり過ぎるが問題になってきますね。
[飲料] 追憶の蜂蜜酒 レア:Le 品質:A
追憶の水と軍隊魔戦蜂の蜂蜜で作られた、魔力をふんだんに含むお酒。
アルコール度数は低めだが、吸収がとても早く、酩酊しやすい。
少しの間、MPが徐々に回復する状態になる。
追加効果:運が5%上昇する。
効果時間:6時間
調理製作者:アナスタシア
またピーキーな物ができてしまいましたね……。MPリジェネレートはとても魅力的ですが、酩酊ですか。私とスケさんには関係なさそうなので、重宝しそうですね。スケさんは【魔化】が必要ですけど。
そして品質がA級。バフ効果が6時間になっていますね。バフ効果を選べましたが運しかありませんでした。というか、運は隠しステですね? 基礎ステータス評価にもいませんでしたし。効果は謎ですが、多分レアドロ。
ん? 単純にはちみつレモンでも作ればいいのでは? 追憶の水と軍隊魔戦蜂の蜂蜜を使用すれば良いんですよね。蜂蜜にレモン、そして塩。これを素として、水で薄めれば完成。
[飲料] 追憶のレモネード レア:Le 品質:A
魔力をふんだんに含んだ素材で、人が吸収しやすい分量で作られた飲み物。
少しの間、MPが徐々に回復する状態になる。
状態異常:脱水を回復させる。
追加効果:運が5%上昇する。
効果時間:6時間
調理製作者:アナスタシア
ほっほう……経口補水液配合の効果ありましたか。というか、脱水症状が状態異常にあるんですね。掲示板では……結構早い段階で見つかっていると。
こちらもバフ効果を選べましたが、運1択。
最大の問題は、数値の書かれていないリジェネ効果が同等かどうか。とか思いましたけど、絶対同等なわけがありませんよね。片方デメリットありで、もう片方デメリット無しです。これで同等なら蜂蜜酒側がとても悲しいですが……嗜好品という意味ではありなんですかね。
とりあえず、魔力を含んでいる食材なら魔力回復系になりえる?
ワインは主原料であるブドウが魔力無し。水だけ追憶に変えて回復するか怪しいですね。
蜂蜜酒は大きな入れ物で、仕込みだけしておきます。放っておけばできるので楽といえば楽ですが、レモネードより時間が必要なのは確か。顧客の狙い目はミードさん。
委託に流す主力商品としては、レモネードになりそうですね。まあ、売り物にする前にアイテムの検証しますけど。優秀なら軍隊魔戦蜂を増やす事も考えましょう。蜂蜜の採取量を増やすにはそれしかありません。
厨房へ移動し、全自動連続式蒸留機を150万で設置。ポットスチルと棚段塔が出現します。うん、大きいですね。ガラスをセットすればポーション瓶も自動生成してくれます。
蒸留水だけで150万の元を取るのは結構かかるでしょうが、アルコール方面にも手を出せばマシにはなるはずです。リアルならまだしも、ゲームなら自作の方が安く、品質も上がるでしょうからね。
早速試運転。
出てきたUIに素材をセットします。中央辺りの注ぎ口に水。下の出口部分にガラス。下の燃料部分に魔石を置けるようですね。魔石は無くても可。魔石を入れておくと運転効率が良くなる……多分できるまでの時間短縮でしょう。
オートだと素材が入り次第自動的に精錬を開始。マニュアルだとボタンを押す必要があると。まあ、オートで良いでしょう。やはり魔動式だと稼働音が静かですね。強いて言うなら少し眩しい。
とりあえず【飲水】と追憶の水で試してみましたが、生産キットで蒸留水を作るよりは品質が上昇。ただし追憶の水は蒸留をかけるとただの蒸留水に。魔力が飛びましたね。
悲しい事と言えば……西で汲んだ品質Bの水を蒸留かけるより、追憶の品質Aを蒸留かけた方が、品質の高い蒸留水ができる事。
不純物(魔力含む)を取り除く。荒業にも程がある。ただ、冥府の不死者は間違いなく、現段階だとこれが最高効率でしょう。
師匠やソフィーさんに話したら間違いなく呆れられるはずです。
せっかく厨房来たので、腸詰めなんかも作っておきましょうか。
庭師の回収しておいてくれた蜂蜜も蜂蜜酒として仕込み、レモネードにする用の素も作っておきます。
あれ、レモネード毎回バフが選べますね……全部に付くのですが? 品質A級はバフ確定ですかね。そして《料理人》の【マジカルセレクト】で選べると。そう考えると素材の品質を上げる価値はありそうですね。
ワインは……ブドウを買ってこないとですし、樽も作ってもらった1個しか無いので今は不要でしょう。とりあえずダンテルさんが試飲したいとか言ってた気がするので、ログインしたら持っていってみましょう。
味噌はむしろキットに戻して、時間を止めておきましょう。これ以上発酵されても困りますからね。いや、魔法の調味料セットあるのでむしろ売りますか。料理人さんが有効活用してくれるでしょうからね。
さ……て、良い時間になりましたし、生産は終わりにしましょうか。始まりの町へ飛び、商業組合で委託に流してから、ダンテルさんのお店へ向かいます。
「ごきげんよう」
「いらっしゃいませ」
店員さんに名前を伝えてダンテルさんを呼んでもらいます。
「おっす、どうした?」
「仕込んでいたワインの試飲を……と思いまして」
「お、ついにか」
早速保存樽から注いで飲んでもらいます。
「どれどれ…………うん、ちゃんとワインになってるな。味を求めるならもっと寝かせたいところか?」
「作ってみたかっただけですからね。味の追求はワイン好きがやってくれるでしょう。そう言えば全自動連続式蒸留機買いました」
「あれか……。あれも良い値段するよな」
「150万でしたね。蒸留水と料理用のブランデーなどを考えるとあっても良いかな……と」
「確かサルーテが重宝してたぞ。全自動が楽だとか」
「瓶詰め作業ですよね」
蒸留水作るより、ポーション瓶にできた蒸留水を詰める作業が面倒という。あのハウジング施設は水を入れれば蒸留して、瓶詰めまでしてくれますからね。蒸留水入りのポーション瓶として、大量に持っているでしょう。
「あ、そうそう。こんなアイテムもできましたよ」
「んー……? ほう! 回復量は?」
「できたばかりなのでまだ未検証です」
「軍隊魔戦蜂か…………あれ、俺出てないな」
「ミツバチは?」
「蜂がいないわ」
「花畑ありましたっけ?」
「ないわ。解放条件それか」
「恐らくそうでしょうね。ミツバチが花畑。それに加え魔力濃度でしょうか」
なんだかんだで前提条件が必要だったりするんですよね。置く部屋よこせ。無いなら増築しろって選択肢もありますし。ガッツリお金持ってかれますけど。場合によっては土地買えとか言われるんですかね。
ミツバチ系なら蜜を集められる花が必須と。
「うーむ……まあ、うちには不要か」
「私は回復量によっては増やしますかね。魔力回復薬はきちょ……う?」
「なんだ?」
「そう言えば今外なるものでした。ポーション使えないんですかね?」
「ああ、なるほど。試す価値はあるんじゃないか?」
「あ、手持ちにポーションありませんね」
「使わないもん持ち歩かんか。ほら」
ダンテルさんからポーションを受け取り実験。そしたらなんと、使用可能でした! とは言えリジェネ系も無駄にはならないので、検証は必要ですね。ポーションとは違う回復系統ですから。
受け取ったポーションの代わりに蜂蜜酒をプレゼント。レモネードよりお酒を選びますか。
「使えることは喜ばしいですが、ポーション用意しないといけませんね……」
「自分で作れるだろう?」
「必要な材料が少し多いですが可能ですね」
「多少多くても、多分安上がりだぞ。需要が沢山だからな」
「プレイヤー多いですからね……」
「おうよ。良いことだな!」
MMOの天敵は過疎ですからね。多いに越したことはありません。
〈〈無制限開放から一定の時間経過を確認しました。これよりクロニクルクエストが解放されます。詳しくはヘルプをご覧下さい〉〉
「なんだと?」
「おやおや? ヘルプが更新されましたね……長っ」
※クロニクルクエストとは
ワールドクエストとは発生条件が違いますが、間違いなく世界に影響を与えるであろうクエストが、クロニクルクエストになります。
簡単に言ってしまえばストーリークエストが近いでしょう。クロニクルクエストの場合、クエスト情報枠が豪華になります。
受けられるのは個人、または受注者からの招待。
発見さえできれば誰でも受注可能なクエストですが、『最高の結果』でクリアした場合のみ、ワールドへ適用されます。その際、公式サイトまたはゲーム内の『クロニクル』にプレイ動画が『自動的に』追加され、プレイヤー全員が見ることが可能です。
『最高の結果』でクリアされたクエストは再受注が不可能になります。逆に言えば『最高の結果』でクリアされない限り、何度でもリベンジが可能です。頑張って試行錯誤しましょう。
『クロニクル』には発見者と達成者の名前が記され、『最高の結果』だったプレイ動画が追加されます。有名人の仲間入りですね。
クロニクルクエストの内容、難易度はとても様々です。村、町、領地、はたまた国。影響範囲に大小あれど、世界に変化が現れるのは間違いありません。
討伐、生産、調査、はたまた種族、もしくは立場なども。受注条件、発生条件も様々です。お使いクエストからクロニクルへ……?
世界を見て回りましょう。
例1:討伐:○○を狙う○○の群れを討伐してくれ!
例2:生産:魔物に壊された○○を大至急修理しなければならない!
例3:調査:領主の不正の証拠を掴め!
例4:護衛:貴族の馬車が襲われている!
「なるほど、ストーリーが近いと」
「クロニクル……年代記ですか」
「所謂攻略組はこれが目標になりそうだな?」
「でもこれ、確実に戦闘一辺倒では不可能そうですよね」
「無理だろうな。基本的には発見者がソロかPTでクリアしていくだろう。それでも無理なら掲示板に情報を出す……かもしれんな。発見者の名前も表示されるようだし」
「まあ、いろんな人にチャンスがありそうなのは良いことです」
〈契約違反の断罪を執行なさい〉
『違反者の断罪』
ミニマップに示された、女神との誓いを破りしものに断罪を与えろ。
発生条件:外なるもの
達成報酬:???
「お? おおっ? クロニクル……ではない……」
「なんだ?」
「種族クエストが唐突に始まりました」
「ほう? 進化じゃない種族クエストか」
「契約違反をしばき倒してこいと」
「ああ、うん。外なるものな……。アホやったプレイヤーか?」
「場所的に恐らくそうでしょう。この町にいるようですし」
クエストに開始ボタンがありますね。これを押すと……なるほど、対象者の場所へ転移できるようです。終わり次第元の場所に戻されると。
「では行ってきますね」
「見てみたい気もするが可能か?」
「可能か不可能かで言えば可能でしょうけど、私は転移させられるので……」
「なるほど、面倒だな。てらー」
ダンテルさんに見送られ、断罪クエストを開始します。
演出どうなるんですかね。
〈断罪を開始します。限定的にステータス制限が解除されます〉
えっフルパフォーマンスを発揮すると?
とりあえず正面の空間に出現した黒い楕円形を通過しましょうか。これ転移ポータルでしょうし。
「「えっ?」」
ポータルを出ると人間男のプレイヤーが2人いましたが、マーカー付きは1人だけです。装備的に3陣でしょう。恐らく掲示板で外なるもの関連でも見て興味本位か。でもそんなの関係なし。私の標的は首輪付きのみ!
「ごきげんよう! そして貴公の人間性も限界と見える……」
「ええっ!? あーっ!」
挨拶からの触手バインドからのアサメイで串刺し。当然貫いたのは心臓。強制クリティカルと貫通による継続ダメージで即死です。
死んだことによりバインドが解除され、うつ伏せで床ペロ中。……そう言えば見かけた外なるものは……。
「ふぅ……またつまらぬものを……追加攻撃!」
「ぐえーっ!」
「『まさかの死体蹴り』」
再び上から首をアサメイで貫いておきます。
グリッとしたらポリゴンになって消えました。
「冥府募金毎度ありがとうございます」
本人もういませんけど。
〈よくやりました〉
お褒めの言葉を頂いてクエストが終わりました。うん、まあ……いいか。
「ま、町中は安全地帯じゃ……?」
「うん? 掲示板で外なるものの情報を見たのでは?」
「でもプレイヤーじゃ……?」
「なるほど。プレイヤーですが外なるものなので、断罪時は関係ないようですよ」
対象が3陣だったため、いまいち制限解除状態が不明でしたね。帰りますか。
UIから帰還を押すとダンテルさんのお店に帰ってきました。
「終わったのか?」
「ええ、格好からして3陣でしたね」
帰ってきましたがダンテルさんへの用は済んだので、撤退します。
さて、次はどうしましょうかね。
クロニクルを探して探索も良いですし、いつも通りスキル上げに狩り行くのも良いですし、東以外の王都を目指すのも良いですね。
「あ、いました! アナスタシア様!」
「おや、教会の。どうしました?」
「お時間がある時に教会へお越しくださいとルシアンナ様が」
「では今から行きましょうか。用事も済んだところなので」
探しに来たシスターと教会へ向かいます。
一般開放されている教会……部屋的には一番大きな礼拝堂ですね。基本的に教会と言えば礼拝堂です。お祈りをするところ。それ以外の部屋は聖職者以外用はないでしょう。というか、よくある関係者以外立ち入り禁止だと思います。
まあ、基本的に部外者は正面玄関的な意味でも、礼拝堂から入ります。
「あ、ルシアンナ様。来てくださいましたよ」
「捕まえられたのですね、ご苦労さま。突然お呼びして申し訳ありません」
最初はシスターに、続いて私にですね。
「構いませんが、どうかしましたか?」
「アナスタシアさんに……いえ、ネメセイア様に教会本部よりお手紙です」
おや、ついに来ましたか。ネメセイアに対するコンタクトが。差出人はクレス教教皇、ジャスミン・フォースターと書かれていますね。そう言えば、名前知りませんでした。
教会本部はネアレンス王国の王都にありましたね。まあ、手紙を見ましょう。ペーパーナイフなんか無いので、アサメイでスッパリやりまして。
「…………ふむ」
「本部はなんと……?」
私に渡す前に手紙をチェックするわけにもいかないでしょうが、ルシアンナさんも内容は知らないんですかね? 内容的に見せても問題は無いので、手紙を渡してしまいましょう。
ちなみに物凄いかたっ苦しい挨拶から始まってました。立場を考えるとまあ、こうなるか……って感じでしたね。
「なるほど……つまり、品質に応じた金額を払うので、各主要都市にある教会にクリスタルロータスとホーリープニカを納品して欲しいと」
「そうなりますね。ここだけじゃなくて、他にも欲しいという事でしょう」
「私としては本部の気持ちがよく分かりますが……それなりの数になりますし、可能ですか?」
「可能か不可能かで言えば……可能でしょうけど、配達がかなり面倒ですね」
各町に1個教会があるとして、配達がかなり面倒ですよ。それだけで数時間取られそうですから、正直避けたいところですが……おや……クエスト発生しましたね。
『冥府の異人達へ通達』
常夜の城にいる宰相に、教会からの願いを伝えよう。
宰相から異人の冥府到達者へ通達される。
発生条件:冥府到達者
成功報酬:次のクエストへ
詳細に宰相と面会するための手順みたいなクエスト案内がありますが、全てぶっ飛ばして宰相に伝えろになってますね。
まあ、王家ならこんな手順は不要だからでしょう。
「他の異人達を巻き込みましょうか。少々待ってもらえますか? 宰相に伝えてきますので。報酬は配達した異人に渡して貰えればそれで良いので」
1人なら面倒ですが、冥府に到達してる他のプレイヤーを巻き込めるなら問題ないでしょう。
「ではそのようにお伝えしておきます」
「ああ、教会本部でしたね。直接話しても良いのですが……教会のトップは教皇ですか? 流石に予定が詰まってそうですよね……」
「はい、教皇ですね。ジャスミン・フォースター様になります。発言力は大国の王と同等レベルはあります」
大国の王と同等レベルの教皇ですか。
理由を聞いたところ、宗教が1個……クレス教というらしいです。それしか無いようなので、無視するには信者が多い……と言うか、多分王本人もそうでしょうね。
信仰対象は4柱。クレアール様、ステルーラ様、ハーヴェンシス様、シグルドリーヴァ様。聖職者達の服装から分かる通り、全員でも1柱でも、誰を信仰するかは自由であり、他者の信仰も認めろという方針らしいですよ。
つまり宗教の組織自体はクレス教1個だけど、同じクレス教の聖職者でも信仰対象が違う場合がある。大司教であるルシアンナさんは神々を信仰していますが、特に誰が……というのはありませんからね。
聖職者の見分け方は至って簡単。修道服の布の色と刺繍の色です。布の色で信仰する神を、刺繍の色で聖職者としての身分ですね。
問題は聖職者ではない一般の人達ですが、大体はハーヴェンシス様。冒険者や騎士はシグルドリーヴァ様。職人はクレアール様。商人はステルーラ様が多いとか。
「冒険者や騎士、職人はよく分かりますが……商人がステルーラ様なのと、大体がハーヴェンシス様というのは?」
「商人達は契約を守れ、大事にしろという事ですね。大体がハーヴェンシス様なのは豊饒の女神でもあるからです。やはり慈愛と成長、自然と休息は人気ですね。農家は特に。属性も水と土ですから」
商人達はステルーラ様の契約と断罪の顔を信仰しているわけですか。確かに、商人といえば信用商売ですからね。
基本的に慈愛の女神と言われていますが、属性や自然の部分を見ると豊饒の女神でもあるわけですか。
「それに人は作物がなければ生きていけませんから」
「なるほど、切実ですね。豊作祈願のハーヴェンシス様ですか」
「収穫祭などはハーヴェンシス様にお祈りしますよ」
基本的に祈りは『神々』と特に決めずにお祈りらしいですが、やはり何かと理由をつけて特に誰々に……とかしているようですね。
収穫祭など作物関連はハーヴェンシス様に。戦い前など戦闘関連はシグルドリーヴァ様に。新年祭など誕生日はステルーラ様に。そして全ての始まりであるクレアール様は日頃から。
「ステルーラ様は……時空と運命の顔ですね?」
「そうです。死者に対する祈りもステルーラ様です」
「輪廻の女神ですね」
それぞれの顔……まあ権能とも言うのですが、合うと思う神に祈れば良いわけですね。
「実は神託で祈れと言われているわけではありませんし、祭典をしろとも言われていません。我々が勝手にしている事ですが、特に怒られてはいませんね」
教会の始まりは神託を受けた者の保護と、その神託を広める集まりが元だとか。神子を守るには武力が必要で、聖騎士の誕生。広めるには協力者が必要で、信者を増やす。そして国家に潰されないためにはある程度の権力も必要になる。聖騎士という武力だけではダメだから。更に人が増えれば纏め役がいなければならない。あーだこうだと試行錯誤した結果が、今の世界的宗教……クレス教。
「過去に信仰の押し付け合い……宗教戦争をした結果、神託が2世代途絶えたらしいですね」
「なるほど、神々の怒りはそこに出るわけですか。ところで、神託とはどのような内容なのでしょう」
「基本的には災害に関する事でしょうか? 確実ではありませんが、旱魃や飢饉、疫病などを事前に」
「それは……とても助かりますね」
「ええ、本当に。事前に分かれば対処が可能ですからね。それらを伝えるのが我々の役目。その後どうするかは国の役目です」
普段は礼拝堂の掃除や立像の管理、孤児院の経営にアンデッドの討伐だったりをしているようですね。
神託が来たらそれを偽り無く伝え、神子の代わりに愚かな権力者をあしらい、魔物や犯罪から保護する組織である……と。
ルシアンナさんと礼拝堂の椅子に座って、教会に関して教えてもらいました。教皇の発言力から脱線しましたが、そろそろクエストも進めなければ。とりあえず宰相と話してからですね。
「では、まずは宰相と話してきますね」
「はい、よろしくお願いします」
マイハウスである離宮へ転移して、宰相のいるお城へ向かいます。
「宰相ー」
「なんですかな?」
「教会からロータスとプニカを……読んでください」
「どれ…………ふぅむ。我々は動けませんが、異人達なら可能でしょう。通達すればよろしいですかな?」
「ええ、それでお願いします」
「ではそのように」
宰相と少し話しまして、ルシアンナさんへ伝える事を決めておきますよ。その間に宰相が何やらサラサラと書いていた物を、別の人を呼んで渡していました。
宰相と話を済ませたら地上へ。勿論出るのは転移前の礼拝堂です。
「お帰りなさい」
「戻りました。宰相と話してきましたが……」
内容としては、冥府に到達した異人達に指示を出し、持っていかせる。料金は持ってきた者に直接渡して貰えば良い。ただ、異人達がどこに持っていくかは不明なため、届かない場所もあるかもしれない。
教会からのお願いは品質がC以上であることなので、問題はありません。
「では本部に連絡して全教会へ通達してもらいます」
「お願いしますね」
私が冥府へ行っている間に用意された手紙にサラサラと要件を書き、誰かに渡す……と思いきや。
「【天を翔けゆけ】」
「おぉ? おー……」
「この魔法、知りませんでしたか?」
「初めて見ました」
手紙が鳥っぽくなり、物理的に羽ばたいていきました。実にファンタジー。
そして教えてもらいました。分類的には生活魔法になるようですが、使える人はそんな多くないらしいですね。飛行速度はかなり早いらしいですが、天候注意だとか。これを使えるとお小遣い稼ぎができるようですよ。まあ、私が使うことは恐らく無いでしょう。自分が転移すればいい話です。
教えてもらったり話したりしていると、手紙が飛んできました。
「金額はこれで問題ありませんか?」
品質別の金額と貸し出す際の金額が表記されていますが……これ、良いお小遣い稼ぎになりますね。というか、この辺りは住人のAIに任せるしかないでしょう。ぶっちゃけクエストで、決まってるのでしょう?
結構いい値段していますが……貸し出す金額を見る限りプラスにはなるでしょう。
「レア度を考えると安い気もしますが、今後を考えるとこのぐらいでしょう」
「冥府には沢山咲いていますからねぇ……。継続取引ですし、構いませんよ」
再びサラサラと手紙が書かれ、飛び立っていきました。
また少し話していると手紙が帰ってきます。
「各教会に指示を出すとのことです。こちら契約書になります」
「では少々冥府へ行ってきますね」
転移して宰相のところへ行き、契約書をチェックしてもらいます。1人で見るより確実でしょう。
それからサインをしておきます。
「ではこちらでも通達しておきますぞ?」
「ええ、頼みます」
『教会からのお願い』
教会に冥府で採れるクリスタルロータスとホーリープニカの納品。
品質は最低C以上であること。
自分で採取するか、常夜の城へ行きアイテムを受け取ろう。
発生条件:冥府到達者
成功報酬:納品品質によって変動
永続クロニクルクエスト
おぉ……枠が豪華なクエストが発生しました。永続クロニクルクエストですか……お、クロニクル一番乗りー。定期便みたいなものなので、永続系なのでしょう。
それはそうと、ヘルプには書いてなかった種族クエストかつ、納品クエストもクロニクルにあるようですね。あれ、動画がある。クリアしてませんが何が動画に?
実際に見るのが早いということで、離宮に戻ってからチェックします。……なるほど、ルシアンナさんからクエスト発生の今までが動画になっているんですか。これ間に別の行動してたらカットされるのでしょうか。油断なりませんね……。
UIは枠だけ、音声はあり、目線はあり、一人称が左下……動画系のテンプレ設定と同じですね。
お? 別のクロニクルもクリアされましたね。私と同じように、クロニクル発生寸前まで行っていたのでしょう。
さて、レベル上げとキャパシティ増やしでも行きましょうかね。飲み物系の検証をしなければ。良さそうなら委託行きで。
Tips
『冥府の異人達へ通達』は、受けた人の立場で流れが変動する。
目的は宰相に報告し、宰相から冥府到達者である不死者組プレイヤーに通達。
つまり、一般は冥府の常夜の城へ行き宰相との面会のあれこれが必要。
主人公は王家なので、面倒な部分を全てぶっ飛ばして宰相直行。
一般が主人公に伝え、主人公から宰相へ……も可。
達成すると永続クロニクルクエスト『教会からのお願い』が発生。
冥府到達者の不死者系は、常に納品クエストを受けている状態へ。
主人公がルシアンナさんに配達していた一般納品クエストが、教会本部からの種族に対するクロニクルクエストへ発展。
クリスタルロータスとホーリープニカは消耗品なので、永続納品クエスト化。