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起きてログインせず、朝の行動を済ませてからログインします。
離宮で消耗品……教会に持って行く物や、ソフィーさんに渡す物を補充をしてから、訓練場へ。
「ラーナ、検証したいので腕を切り飛ばしてくれます?」
「まあ、構いませんが……」
ラーナにいつもの……と言っていいのかはあれですが、左腕を切ってもらいます。
切られた腕が触手に戻り、床でビチビチしてから溶けるように崩れ、地面に吸収されるように消えます。
断面部分は欠損時の透明の腕に合わせて、1本の触手がニョキッと生えて、先端が5本指に別れて腕に擬態。勿論袖部分なども復活です。
「なるほど、欠損ペナルティが特にありませんね」
「良い感じにモンスターしてますわね」
《異形の神の幼生》の検証はこれで良いでしょう。他は自動回復の効果ですからね。
《狂気を振りまくもの》の検証はここでは無理ですね。これはフィールドモブで試しましょう。
無効系は掲示板に情報出てましたし検証はいらないでしょう。そもそも検証できるかも怪しかったですが。
《魂狩り》は検証するまでもないとして、お待ちかねの《座標浮遊》でしょうか。
「そう言えば、ラーナって飛べるんですか?」
「飛ぶというよりは浮くですが、可能ですよ。これでも霊体系なので」
やっぱりラーナも浮遊持ちですか。私もチャレンジしましょうかね。
《座標浮遊》は案外安定感があり、移動は意識するだけで良い。空中にも地面があるような感じで動ける。空中で逆さに歩けたり、斜めに歩けたり。
ただ、評価がEだけあって速度があるわけではない……と。空中で戦う事は可能ですが、航空戦……戦闘機などのドッグファイトは不可能ですね?
直立から微動だにせず滑るように移動が可能。とてもシュール。ネタキャラになるつもりはないので、この動きは基本封印しておきましょうか。
さて、問題は括弧内が不明と言うことですね。
んー……可能性を考えるならば、《空間魔法》の引力と斥力が弄れる【グラウィタスマニューヴァー】ですかね。
ただし、燃費と操作性の難易度は考えないものとする。
とりあえず【グラウィタスマニューヴァー】を……おや、発動キーがいらない?
脳内3Dマップの自分の周囲に、下向きの矢印が表示されましたね。矢印の向きが変えられたので変えると、ズリズリと引きずられます。
なるほど。引力で引っ張られる方向を変えられると。斥力は……お? 無重力化というべきでしょうか。
つまり……《座標浮遊》と【グラウィタスマニューヴァー】両方を組み合わせろと言うことですね?
無重力状態で地面を軽く蹴ると一定のスピードで上に上がり続けます。
「あだっ」
見えない壁に頭ぶつけました。これ以上はエリア外だぞっと。
おっと、ヤバい。MPが切れる。ただ浮くだけなら消費の無い《座標浮遊》一択ですね。《座標浮遊》に切り替え無重力を解きます。
《座標浮遊》のみでの移動でも降りることは可能ですが、その状態で引力を下に出せば……うん、速いですね。
「おや、お戻りですか」
「大体分かりました。使いこなせるかはまた別ですが」
《座標浮遊》のみではE。そこへ《空間魔法》の【グラウィタスマニューヴァー】も重ねればAなのでしょう。
魔法だけでは全身を引っ張られるので、姿勢制御ができません。そこは《座標浮遊》で補い、速度を魔法で補うと。
つまり《座標浮遊》をメインに姿勢制御をして、飛行速度面は魔法で調整すればいい。
無重力状態で地面を蹴った方が速度自体は速いけど、これは直進し続けMPも消費し続ける。使い勝手はいまいち。
引力操作で重力の向きを変える方がよく使うでしょう。
飛行速度だけならフェアエレンさんのエクレーシーを超えそうですが、戦闘を考えるとエクレーシーの方が優れてそうですね。戦闘機が私なら、フェアエレンさんは戦闘ヘリでしょうか。
問題があるとすれば、スカートということでしょう。ワイバーンもいることですし、あまり飛ぶことは……いや、ダンジョンならありですかね。スイッチ式のトラップはスルーできますか。
普段から使ってないと、いざという時確実に忘れるんですよね。一応積極的に使っていかねば。
とりあえず上げるスキルは《縄》と《聖魔法》でしょう。《縄》を2次にするのが優先か。
《聖魔法》に関しては、敵に殴られながら回復する作業。自動回復系や防御系スキルも上がるので、悪くはない。フルダイブ型でやると絵面が問題ですが、始まりの町のインスタンスダンジョンでは敵が弱すぎますね。
戦闘系は大体40台から上がりづらいらしいので、とりあえず魔法以外をそこまで持っていきましょうか。
おや、装備のセット効果が変わっていますね。そう言えばここ見てませんでしたか。
セット効果
02 自動回復:大
03 被ダメージ軽減:大
04 反応速度強化:大
08 《魔力収束 Ⅱ》
12 《自動防御 Ⅱ》
2箇所装備で自動回復、3箇所装備で被ダメージ軽減、4箇所装備で反応速度強化、8箇所装備で《魔力収束》、そして12箇所……全箇所装備で《自動防御》が発動。
《魔力収束 Ⅱ》
ダメージ軽減効果はないが、魔法被弾時に魔力の一部を保持する。
被弾後の自身の魔法攻撃に、保持魔力を上乗せする。
《自動防御 Ⅱ》
一定確率で全ての攻撃を自動的に軽減する魔法障壁が発生する。
物理攻撃は赤。遠距離攻撃は緑。魔法攻撃は青の障壁エフェクトが発生。
発動した場合は1割の被ダメージカットと、怯みを軽減する。
スキル強化が消えましたが、効果よく分かってませんでしたしそれは良いとして。
《魔力収束》と《自動防御》は中々良い感じですね。ただ、《自動防御》の怯み軽減は……時と場合によりますね。
さて、《偉大なる術》による《死霊秘法》への影響も確認しましょう。
効果は《死霊秘法》のキャパシティが、時間によって増えていく。使用キャパシティの減少と、下僕死亡時キャパシティ消失減少……でしたね。
えー……っと、変わってないどころか劣化してませんか? してますよね? 使用キャパシティ変化してないし、死亡時のキャパシティ消失増えてますよ?
死亡時1~2割の浄化時2~4割が、死亡時4割の浄化時7割になっているのですが。スキルレベルか? スキルレベルが低いせいですか。上げねば……。
時間によるキャパシティの増加は寝る前にメモして朝チェックしましょう。
あれ、そう言えば……ああ、やっぱり。アンデッド系統じゃなくなったので、浄化無効が消えてますね。つまり下僕が浄化される可能性がある。……困りましたね。
ん、エイボンさんが呼んでる? まあ、《直感》が反応しているだけですけど。
〈《偉大なる術》に新たな力が追加されました〉
そっちにですか。
《偉大なる術》
スキルレベルに応じて、召喚した下僕に自身が持つスキルを与える。
《死霊秘法》のキャパシティが、時間によって増えていく。
《死霊秘法》の使用キャパシティ減少、下僕死亡時キャパシティ消失減少。
《死霊秘法》で肉を使った異形のもの、蠢き集うものが使役可能となる。
肝心の詳細がありませんね。《死霊秘法》の方で見れるでしょうか。
えーっとなになに……? 召喚初期コストは(召喚者レベル×10×2)×10ですか。微妙に違いますね。
上乗せが不可能で、召喚者……つまり私のベースレベルに依存する。
評価は筋力:A 器用:F 体力:A 敏捷:F/E 知力:E 精神:Eであり、とても高い耐久性と回復能力を有している。
なんか、随分特殊ですね。持たせるスキルは……とりあえず召喚して、見てから考えましょうか。
空間の裂け目から赤黒い蠢く塊が、のたうつように波打ちながら動いて零れ落ち、水たまりのように広がる。その広がった物が集まって浮かび上がり、不規則にサイズや形を変えながら泡立つ。
このユニットは肉塊の浮遊要塞と言い、名前の通り浮遊移動する耐久性の高い肉塊。この肉塊の浮遊要塞から、分裂するように肉塊の落とし子がポップする。ポップした肉塊の落とし子は、敵に集まり自爆する……と。
できることは移動と落とし子の生成、そして触手による反撃。この子自体は要塞なので、ウリは耐久性。この子を落とさないと要塞からワラワラと落とし子が出てきて、敵に特攻かますわけですね。
ユニットと言っているのはこいつだけSLGっぽいからです。特攻ユニットを自動生成する、浮遊要塞ユニット。
要塞というだけあって、サイズはかなりのものですね。サイズ部分のコストが10倍だっただけはある。普通に私より大きい。と言うか乗れるのでは?
現状で召喚コスト8000なだけはありますね。ワイバーンですら初期コストは3200だと言うのに。
「これまた面妖な」
「と言うかこれ、中身一号なんですかね」
要塞から触手が伸びてフリフリしているので、一号なのでしょう。どうやら落とし子の方も一号らしい。落とし子一号達は突っ込むだけで良いので、楽そうですね。
落とし子達の見た目は小さい球体です。肉塊の浮遊要塞が一軒家ぐらいだとしたら、落とし子達はバレーボールぐらい。
生まれた落とし子は肉塊の浮遊要塞の周りを、衛星のように回っています。
「ところでサイアー。化身という事は人以外にもなれるのですか?」
「はて、どうでしょうね?」
むむむむ…………おっ?
「なれるようですよ」
「なんというか、球ですわね……」
分離した直後の肉塊にもなれるようですね。姿制限制のスキルとか持ってませんので、ぶっちゃけなる必要はありませんが。むしろ《古今無双》が使えなくなる。
「それにしてもこの球、地味に大きいですね?」
「人の姿より確実に大きいかと。いったいどこにしまっていたのでしょう」
「しまえる場所と言えば……胸……ですかね……」
「サイアーは確かに大きいですが……無理があるかと……」
「考えられるのは密度の違いではないでしょうか? そもそも、その辺りの常識が通用しない存在の可能性が高いですが」
「それもそうですわね」
ちなみにラーナも十分大きいですけどね。剣姫と……姫が付いていただけあって、見た目はとても整っていますよ。
まあそれはそうと、イベントも終わった事ですから、北と東以外にも行ってみましょうかね。
一号を送還して……あ、そうだ。先に深淵へ飛んで古城へ向かいます。
「さて、聞きたいことがあるのですが、ニャル様はどこにいるのでしょうか……」
おや、来てくれましたね。
「くだらない事だったら蹴り飛ばすぞ」
「大丈夫です。とても重要な事なので」
「ほう?」
「外なるもののルールを教えてください」
「ふむ……確かに。良かろう。しかし、実は特に細かい決まりがない」
1つ、女神のお心のままに。
2つ、各種族エリアへ無断での立ち入りを禁ずる。代表者の許可を得る事。
3つ、喧嘩をしない事。全員と仲良くしろとは言わない。干渉しなければ良い。
4つ、他種族間での立場は対等。ただし役職持ちの指示は不当でない限り従う事。
5つ、契約違反他、理由なき地上への干渉を禁ずる。
「このぐらいだ」
「4つ目を詳しく」
「ふむ。基本的に各種族には代表がいる。ティンダロスの大君主にして個体名、ミゼーア。ルルイエの主、クトゥルフ。忌々しい燃え盛る変態、クトゥグア。私も宰相の役職を持っている。その役割に関係する事なら大体は聞く」
やはりクトゥルフいますよね。クトゥルフいるならハスターとかもいますよね?
クトゥグアに関してはスルーしましょう。突っ込みませんよ。ぶっちゃけ本音な気がしないでもないですからね。
「お前はまだ新人だからな。行動次第でいずれ役職が与えられよう。唯一の存在は特に可能性が高い」
「同種がいない、もしくは優れるからですか。契約違反に対する行動は?」
「それはその時が来れば分かる」
ふむ、UIに通知でも来るのでしょうか。
「では5つ目、私は地上へ行っても問題ないのでしょうか?」
「特に言われていないから良いのだろう。その化身も地上レベルまで落とされているようだし、そういう事がお前の役目なのかもしれんな」
流石にプレイヤーの行動をそこまで縛りませんか。助かりますね。では遠慮なく。
知りたいことは知れたので、おさらばしましょう。ニャル様にお礼を言って、今度こそ地上へ。
さて、まずは……教会行ってみましょうか。
「わぁ……お姉ちゃんなんか出てるー……」
妹ではなく、住人の少年に捕まりました。
「実は触っても平気ですよ」
「あ、ドレスのお姉ちゃん?」
「ええ、イメチェンしました。お友達に教えておいてくださいね」
「分かった!」
少年を見送り、教会へ。
立場が下の人に言うより上の人に言った方が早いので……あの人にしましょう。聖職者の身分の違いはローブの色ではなく、刺繍の色。
「ルシアンナさんとソフィーさんはいますか? 冥府からお届け物です」
「は、はい。こちらへどうぞ」
話は通っているようですね。姿が変わっていた事による戸惑いぐらいでしょうか。
よく分かりましたね……レベルには変わったと思うので、特に何も言いませんよ。
一室に案内されてしばし待機。
するとまずソフィーさんがやってきました。
「おぉ、イメチェン……どころか進化してる?」
「はい。外なるものに仲間入りしましたが、冥府は継続しますので問題はありませんよ」
「……問題しかない?」
「はて?」
そこへルシアンナさんがやってきて、ソフィーさんがルシアンナさんへ説明。聞いたルシアンナさんは眉間がよっていますね。
ついでにこちらでも補足をしておきます。
「外なるものと言えば神々の使者とも言えるので、神殿からすればまあ問題はありませんかね……」
「神子の最高峰と言えなくもない……。中身が変わったわけじゃないのだから、問題はないはず……」
「そうですね……とりあえず、状況は把握しました」
「特にどうこうしろと言うのはありませんので。あ、これ補充ですよ」
「助かる……。少なくなってきたところ」
クリスタルロータスとホーリープニカをルシアンナさんへ。それと追憶の水、清浄の土をソフィーさんに。
「そうだ、ソフィーさん。【グラウィタスマニューヴァー】はご存知ですか?」
「勿論。ただ、使うことはほぼない……」
「やはり燃費ですか?」
「うん。燃費が悪すぎる……。落ちた時は【落下制御】で良いから……」
「【落下制御】ですか?」
「知らない? 落下速度を下げ、落下ダメージを軽減させる魔法……」
「初めて聞きましたね」
「《超高等魔法技能》で覚えるよ……」
ほほぅ……《高等魔法技能》の次スキルですか。
重力操作系なので、高難易度と言う事でしょうかね。落下速度を低下させるだけなので、機能が制限されている分、【グラウィタスマニューヴァー】より燃費がいいと。
とりあえず、ソフィーさんからしても燃費が悪いというのが分かりました。少なくとも箒より悪いのでしょう。私の場合種族補正もありそうですね。
「アナスタシアさん、その服装は……」
「ステルーラ様に貰った……と言うよりは借りているでしょうか?」
「やはりそうですか。職業に聖職者はありますか?」
「あります。幽世の支配者と兼業ですが」
「ふむ……。では、聖水の作り方をお教えしましょうか……」
「聖水ですか?」
「ええ。簡易聖水なら、聖職者でしたら誰でも作れますので。少々お待ちを」
ルシアンナさんがレシピを取りに部屋から退出。
その間にソフィーさんから聖水の事を聞いておきます。
「基本的に聖水と言われる物が簡易聖水……。魔力を含んだ綺麗な水に、祈りを捧げて作成する……。簡易じゃない聖水は儀式が必要になるから、大事な式典とかで使用される……」
「儀式は1人ではできないものですか?」
「できなかったはず……。私は聖職者ではないから、詳しくは知らない……」
「私は教会に所属している訳ではないのですが、大丈夫なんでしょうか」
「大丈夫……。外なるものって女神に一番近い者達だから、聖職者達からしたらある意味憧れの存在。ただ、彼らは見た目がヤバいから、望んで精々不死者……」
存在的にも距離的にも、一番近いというのは確かですね。そう考えると聖職者からしたら羨ましい立場なのでしょうが……どちらもある意味隔離されます。それなら見た目がマシな不死者の方が良いという事でしょう。
見た目はヤバいですが、いい人達なんですけどね。とは言え、人間どうしても見た目は重要ですか。中身を知る前に、見た目の時点でドロップアウト。実に悲しい。
ルシアンナさんが戻ってきましたね。
「お待たせしました。こちらをどうぞ」
「ついでにこれ、ネメセイア用……。つまり冥府素材でのレシピ……」
〈特殊レシピ『簡易聖水』を覚えました〉
ルシアンナさんから受け取ったレシピが登録され、ソフィーさんから冥府素材を使った聖水の……手前の水のレシピを貰いました。
「聖水は作れないけど、聖水にする前の水はよく作る……」
「私が頼んでいますからね」
「なるほど」
追憶の水を、清浄の土でろ過して……祈りを捧げるですか。随分楽ですね?
「ちなみに、清浄の土じゃないと色々手順が必要……。土自体が浄化作用を持っているからとても良い……。追憶の水の魔力量も申し分ない……。聖水にするにはこれ以上ないぐらいのとても簡単な素材……。何工程か飛ばせて高品質を維持できる実に良い物……」
この素材だからこその手順と言うことですか。
本来は水も土も、色々やって綺麗にした後聖別をし、それから祈りを捧げる。ただ冥府の素材は環境自体が特殊故に、それらをぶっ飛ばせるようです。
どうも綺麗にする工程が、【洗浄】ではダメらしいですね。面倒なので、作るなら冥府品使いましょう。
「おっと、聖職者が持つ力はご存知ですか?」
「聖職者の持つ力……?」
「聖職者は神秘の力を使用して、祈りで聖別や聖水の作成が可能になります。それと《聖魔法》系統全般に補正が入りますね。具体的には《聖火魔法》……聖なる火と、【聖歌】……聖なる歌辺りでしょうか」
「聖なる火と聖なる歌は初めて聞きましたね」
「《聖魔法》と《火炎魔法》、《聖魔法》と《吟遊詩人》で派生しますよ」
「教会所属の騎士、聖騎士達がよく使う……」
「対アンデッド特効魔法ですか?」
「うん……」
《火炎魔法》は《火魔法》の2次スキルで、《吟遊詩人》は確か……《呪歌》と《呪奏》の統合でしたね。《呪歌》も《呪奏》も《風魔法》からの派生だったような……つまり。
「どちらも私は取れませんね。光と闇系統しか種族的に覚えられないのですよ」
「あら、そうなのですね」
「ステルーラ様の信仰だから……?」
「関係あると思います。火、水、風、土系統が封印されまして。逆に光と闇系統は強化されています。勿論派生の聖と影、それと空間も」
「火と風が必要なので、確かに無理ですね。《聖魔法》を《神聖魔法》、《空間魔法》は……《時空魔法》でしたか?」
「うん……時空になる……」
「そちらを極めた方が良さそうですね」
「神聖に時空ですか。光と闇、影は何になります?」
「《閃光魔法》は《極光魔法》になりますね」
「《暗黒魔法》は《混沌魔法》……。《影魔法》は《冥魔法》になるけど、我々みたいな存在を除いて、3次スキルまで行ける者は少ない……」
ふむふむ。中々いい情報を貰えました。ルシアンナさんとソフィーさんからの情報なら、確実でしょう。魔法の内容自体は今後の楽しみとして聞かないでおきます。
住人は3次スキル到達者が少ない……と。ただ、ソルシエールのような不老の存在は普通に持っているわけですね。レベルから考えてもソフィーさんは余裕で持っているでしょう。
戦闘スキルは2次の40から上がりづらいようです。結果2次スキルの40台、いって50台で体の老いが来て冒険者などを引退、組合員などになると。
3次スキル到達者が大体ランクBやAなので、所謂ベテラン組らしいですよ。そして3次スキルをフルで使いこなす連中が英雄クラス、Sランク達。
ちなみにソフィーさんはSランクだそうです。……ですよね!
中々有益な情報を貰いまして、お昼になるのでお暇しましょう。
ルシアンナさんとソフィーさんに挨拶をして、教会を出ます。
お昼をのんびり済ませまして、午後のログイン。
さて、何をしましょうか。《縄》上げしながら東の第四エリアか、北西か西ですかねぇ……。
冒険者組合でクエストはやってますが、町の人から受ける……所謂お使いクエストをやってないんですよね。その辺りやってみるのもありかもしれません。
つまり、選択肢はいくらでもあるわけです。悩ましいですね。実に悩ましい。
……ポータル、先に開けましょうか。その方が後々便利ですからね。と、なると……まず東の第四を開けましょう。
いや、待てよ。先に組合に行って、リーナの言っていたイベントの確認ですね。そうと決まれば組合へ。
「あ! アナスタシアさん、こちらへ!」
「はい」
無事発生しましたね。条件クリアしていたようで何よりです。
組合カードを預け、帰ってきたら組合ランクがCになりました。
〈ベースレベルが40になり、冒険者ランクがCになりました。これであなたは一人前です。様々な国を行き来でき、あなたの世界が広がる事でしょう。しかし、人類未開の地やダンジョンへ行くにはまだまだ足りません。世界を見てみましょう。きっと、あなたをワクワクさせる物がどこかにあるはずです〉
〈特定の条件を満たしたため、『称号:一人前の冒険者』を取得しました〉
一人前の冒険者
組合ランクがCになった者に与えられる記念称号。
自他ともに認める一人前の冒険者。しかし、頂は遥か遠く。
「これからのご活躍を組合員一同、心待ちにしております」
「はい、ありがとうございます」
「ところで……随分お変わりになられましたね?」
「不死者から外なるものに昇進? しましたので、先程教会のルシアンナさんに報告をしてきたところです」
「そ、そうでしたか……外なるものに……」
HAHAHAHA! 笑顔、引き攣ってますよ。
特に突っ込みませんけどね。
「ではこれで失礼しますね」
「はい、またのお越しを」
せっかくなので、師匠のところにも顔出しましょうかねぇ……。メーガンさんも補充が必要かもしれませんし。
「こんにちは」
「ああ、お前さ……誰だい?」
「ご挨拶ですね師匠」
「その声やっぱお前さんか。随分変わったもんだねぇ……」
「外なるものになりましたよ、褒めてください」
「そりゃ普通に凄いけどねぇ……不死者はともかく、外なるものは祝って良いもんかねぇ……? 生きづらいだろうに。と言うか、お前さん普通に来たね。深淵はどうしたんだい」
「これ化身です。本体は深淵にいますよ。異人なので特に気にしないでください」
「……まあ、お前さんが良いなら良いさね。ルシアンナには?」
「お届けついでに先程行ってきました。メーガンさんは素材の補充必要ですか?」
「ああ、欲しいところさね。補充しとくれ」
せっせと補充してから、メーガンさんのお店を後にします。
では今度こそポータルの開放に向かいましょう。
東の第三バルベルクへ転移して、第四フィンフェルデンを目指します。
馬やワイバーンではなく、《座標浮遊》からの【グラウィタスマニューヴァー】です。こっちの方が速い。つまり振り切ってしまえば良かろうなのだ。
東門を出て数メートルだけ浮き、真っ直ぐ東へ加速させます。
高さ的には馬に騎乗状態より少し高いぐらい。地上からも空中からも微妙に距離がある高さで振り切ります。
風が邪魔ですね……ああ、わざわざ前を向く必要はありませんでしたね。人間ミサイルと言うか……直進だからロケットですかね。
わー……すごーい。はやーい。
お、もう壁が。予想通り直線だと良い速度ですね。……あ、とてもピンチなのでは? 止まれますかねこれ。
体を起こして重力を逆側に引っ張りつつ、足でズサー。
「お、おい! 大丈夫なのかー!?」
門番の人が謎の飛行物体――まあ私ですけど――に反応して出てきていたようですね。しかし、返事する余裕はありませんよ!
門を通って人にぶつからないよう、少し進路を逸らして壁コースへ。この速度で突っ込んだら2人して何かになる気がします。
あ、ダメですね。減速しきれません。球体になって壁にメチョ……。
「うわぁ…………」
よし、体力残りましたね。死な安死な安。
壁に広がった体を戻して、人の形に戻ります。スライムみたいなものですからね。
「ふぅ……危うく化身がダメになるところでした。……お騒がせしましたね。異人の外なるものです。通っても?」
「ん゛ん゛ー…………まあ、町中では気をつけてほしい。あんなの見せたら子供が泣く」
「飛ぶのは初めてだったもので、減速を忘れていたんですよ。今思えば高度上げれば良かったですね。次からそうしましょう」
「そうしてくれ。何はともあれ、ようこそフィンフェルデンへ! 外なるものに会えたのは光栄だ!」
「まだなりたての新人ですが」
「ところで、何かこの町で問題でも?」
「いえ、今は転移先を増やすためにもお散歩中です」
「なるほど、それは良かった。どうぞごゆっくり」
無事……まあ無事でいいでしょう。終わり良ければ全て良しと言う言葉もありますからね。
フィンフェルデンへ到着したので、早速中央広場へ行きポータルを開放します。
東側のネアレンス王国は教会本部があり、他には農業とワインが盛んな国です。つまり、東側の町はどこも畑が沢山。ついでに花なんかもですね。
建物は石造りの白系が多いですね。信仰系のイメージ色でしょうか? 町並みは綺麗ですが、お掃除が大変ですね。
さて、一度攻略板をチェックしましょう。
んんー……ふむ。王都まで行けましたか。正規ルートは40台までのようですね。それであのシステムメッセージですか。
これで王都まで行けることが分かりましたが……先に開けて回るか、のんびり用ができたら行くか……。
よし、今日は東を王都まで行きましょうか。
女の子がこちらを見てますね。知ってるかな? 聞いてみましょう。
「こんにちは。ここから王都までどのぐらいか分かる?」
「こんにちは! えっとね……隣の隣!」
「東にずっと?」
「うん!」
「そっか。ありがとう。これお家の人と食べて」
ホーリープニカしか手持ちがありませんでしたが、良いですよね。
女の子と別れて東へ向かいます。後は門の人に聞けば良いでしょう。
「王都が隣の隣と女の子に聞きましたが、あってますか?」
「あってますよ。ここをまっすぐ行けばビデミンスターに着きます。更に東へ向かえば王都ネアレンスです」
「感謝します。行ってみますね」
「良い旅を!」
ええ、事故らないように祈っていてください。
所謂重力魔法、あれ理屈考えようとしたらあかんな。
《自動防御》はマビノギで言うヘビスタ、ナチュラル、マナリフ。
主人公の意思とは関係なく確率なので、多段ヒット系で発動すると……。
国の名前と王都の名前は紛らわしくないように同じで。
その代償に『ネアレンス王国の王都ネアレンス』になるけど気にするな。
セーラ タミル語 集まる。
スクアーム Squirm スクァーム 身をよじる、身もだえする、もじもじする。