76 第三回公式イベント開始
平日飛ばしーの土曜日。
おや? 運営からメールが来てますね……。
姫様へ。
こんにちは、FLFO公式イベントチームです。
このメールは一部の該当するプレイヤーの皆様にのみ、送信されています。
第三回公式イベントの特設フィールド内で、姫様の”ミニキャラ”の使用許可を頂きたくご確認のメールを送信しております。
このミニキャラは……プレイヤー、そして住人の知名度ランキングによる上位プレイヤーが対象となっております。そのため対象はトップ層のみではありません。
このミニキャラは本人の言動のログを読み取り、AIが動かすことになります。よって、多少言動の違いが出ることはご了承ください。
イベントの最中、全員参加型突発イベントとして”ミニキャラを捕まえろ”を開催する予定です。この際、捕まえたチームの全員に『捕まえたミニキャラの”フィギュア(家具)”と”ぬいぐるみ(家具)”』のプレゼントを考えております。
よって、”ミニキャラの使用許可”と”フィギュア(家具)の配布許可”と”ぬいぐるみ(家具)の配布許可”の回答をお願い申し上げます。
勿論、御本人にはフィギュアとぬいぐるみは先行配布させて頂きます。このメールに添付されているはずですので、実際の物を見てご判断ください。ミニキャラのサンプル映像も添付されているはずです。
そして、できる限り他のプレイヤーの皆様には内緒でお願い申し上げます。突発のサプライズイベントですので。しかし、皆様にはネタバレ状態になってしまって申し訳ありません。
ちなみにこのメールを読んでいる皆様は、”ミニキャラを捕まえろ”イベントを特等席観戦が可能になりますので、そちらもメールでご回答頂ければそのようにいたします。
イベント開始前に添付アイテムをご確認の際には、クローズドのマップで実体化するようご注意ください。
例:マイハウス。生産施設の小部屋。宿で借りた部屋。
回答例
ミニキャラ使用許可:OKorNG
フィギュア配布許可:OKorNG
ぬいぐるみ配布許可:OKorNG
捕まえろイベント:参加or観戦
または全て許可or全て拒否。
以上、よろしくおねがいします。
P.S:妹ちゃんこと、プレイヤー名”アキリーナ”にもこのメールは送信されています。
……ふむ、つまり妹とは別に話しても問題はないと言うことですか。
武闘大会の優勝、準優勝であるセシルさんや妹は勿論でしょうし、有名所ギルドマスターのこたつさんやムササビさん、ルゼバラムさんなんかもいそうですね。後は生産者のエルツさんグループですか。
下手したらモヒカンさんもいそうなのがなんともあれですね。まあ『知名度』においてキャラの濃さは重要でしょう。そういう意味では強いかと。
後は掲示板で情報を与える人達……名前出している事が前提ですが、調べスキーさんなんかもありえますか。でも住人もカウントされているようですし、そういう意味では微妙でしょうか? 住人から見たら検証班は悪い意味で有名かもしれませんが。『何してんだあいつら?』的な意味で。傍から見ると危ない人達。
それはそうと、動画やらをチェックしましょうか。
『ごきげんよう私。こんにちは私』
おー……体が小さい分、声が少し高く修正されていますね? うん、可愛い。自分というのがなんとも言えませんが、デフォルメされたミニキャラは可愛いですね。
フィギュアとぬいぐるみは、『私が元になったミニキャラが元』なので、デフォルメが更にデフォルメされていますね。
…………チラッ……黒ですか。私も黒でしたね。
ふんふん……まあ、これなら良いでしょう。all right by meと返信。イベントは観戦で良いでしょう。
よし、予定通りの行動をしましょう。
ワンワン王を呼び、時間単位で《古代神語学》を教えてもらい、残りの微妙な時間で鉱脈の回収や属性金属の制作。
これで平日が潰れましたね。
という事で、公式イベント当日の土曜日でございます。
起きてからログインせず、さっさと朝食やらを済ませてからログインします。実は時間的余裕がありません。午前中みっちりやって丁度カンストするはずなんですよね。イベントは13時からなので、上がり次第お昼にして始まるまで確認作業。
今日のお昼はインスタント確定です。
〈《古代神語学》が成長上限に到達しました〉
〈特定の条件を満たしたため、『称号:古代言語学者』を取得しました〉
「ふむ、こんなところか」
「はい、ありがとうございます」
予定より微妙に早い……とは言え数分なので誤差の範囲ですね。
「これで言語は終わりだ。レベル上げに励むと良いぞ」
「とりあえず今日のイベントで頑張ってきますよ」
「異人が何かやるようだな。まあ頑張れよ。余は戻る」
「はい」
ワンワン王を見送り、予定通りログアウトして先に昼食を済ませてしまいます。
イベント特設フィールドは既に開いていますが、まだ移動しません。離宮でやることがありますからね。
それはそう……念願のエイボンの書解読です。あっ、システムに制御を奪われましたね。イベントだこれ。
〈超古代の魔導書、Book of Eibon の解読を開始……〉
〈大気に漂う魔力……”マナ”を扱うより効率的な術が授けられます〉
〈《魔導の深淵を覗きし者》が《窮極の魔術》へ置き換えられました〉
〈『称号:Book of Eibonの所有者』が『称号:Book of Eibonの完全解読者』に置き換えられました〉
〈超古代の魔導書、Book of Eibon の能力が開放されました〉
開いて持っていたエイボンの書のページがバラバラに浮き、私の周囲を回った後本へと戻り、閉じました。
体の制御が戻ってきたので演出が終わったのでしょう。重要なのはデータの方なので、称号とスキル、装備を確認します。
エイボンの書は……全ての補正が極大になっていますね。どうせ制限かかっているんですけど。
古代言語学者
遥か昔に地上で忘れられた言語を知る者に与えられる記念称号。
Book of Eibonの完全解読者
超古代の魔導書を完全に解読した。エイボンの書が本来の力を発揮する。
《窮極の魔術》
禁断の知識が込められた超古代の魔導書の解読者。
より原始的な魔法の深淵、魔術を効率よく扱う術を知っている。
最大MPとMP回復速度に極大の補正を加える。
全ての魔法の判定を知力+精神依存にする。
装備と称号は良いとして、スキルですが。知力+精神とかぶっ飛んでいるのでは……と判断するには早いですよ。計算式、言ってみ? な状態ですね。知力の何割と精神の何割を足すのか言ってみようか。
ゲームの説明文なんてフレーバーテキストのようなものですからね! ぬか喜び待ったなし。
とりあえず、ラーナのいる訓練場へ行きましょう。距離までは分かりませんが、的だけはありますからね。
「おや? ごきげんよう、サイアー」
「ごきげんようラーナ。少し的を借りますよ」
「ではあちらをお使いください」
ラーナに示された的の前に陣取ります。
さて、肝心の魔術ですが……これ私が覚えないといけないのでは? メモして視界端に置いておきますか?
「【Mea Persepho Arte】」
なるほど。これで【ダークアロー】が発動すると。
さあ、イベント開始まで検証のお時間です。使いそうな魔法を覚えておかねば。
微妙にエフェクトが違いますね。魔術の方がちょっと綺麗と言うか、豪華?
とりあえず《窮極の魔術》は普通に使う分には威力下がりますね。おのれ運営。これ確実に精神の方が補正大きいですよ。私は精神より知力の方が高いので、結果的に弱くなります。最大MPと回復速度上昇はとても美味しいですが、威力低下はとても悩ましいですね。
まあこれは、『普通に』魔法を使った場合ですが。《窮極の魔術》の最大の特徴は"魔術"を使用できるようになる事です。
魔術に関しては近くにいた霊体Aさんに聞いてみました。
ざっくり言えば、『自分の持つ魔力だけで魔法を使うより、周囲に魔力が沢山あるんだから、そこからエネルギー貰えばよくね?』だそうです。
言うだけは楽ですが実際にやるとなると、外部エネルギーに呼びかけるための問題があるため、ぶっちゃけ人類にはかなり厳しいとか。
周囲のマナを集めて魔力回復力を促進させる、【瞑想】の発展型技術とも言えるでしょう。
それはそうと、ゲーム的に言えば消費MPが減り、威力が増える。欠点は発動キーが古代神語で固定であり、覚える必要がある事でしょうか。そのうち発動キーの不要な無詠唱とかが来るのかもしれませんけど。
結果的に《窮極の魔術》を外して普通に使うより、スキルを付けたまま魔術で発動すると同じぐらいになる。この事から、精神の補正が知力よりもかなり大きいのだと思います。魔術の補正が思ったよりしょぼいと言う可能性も捨てきれませんが。
んー……エイボンの書はクトゥルフ神話のアーティファクト。クトゥルフ神話TRPGだと魔術を使うのは知力ではなく精神でしたね。
まあ、良いか。そんなことより次のアクセは精神寄りにするべきでしょうかね。
さて、そろそろイベント特設フィールドへ行きますかね。
問題は《空間認識能力拡張》が微妙に足りてないんですが、特設フィールドに人が集まるでしょうし、待機中に上げさせてもらいましょう。
離宮のミニ立像から特設フィールドへ飛びます。
おお、めっちゃ人いますね! MMOは過疎が最大の敵なので、人が多いのは良いことです。スキル上げが捗りそうですね。
特設フィールドは……バカでかい校庭ですか。まあ、運動会ですからそうなりますかね。
「そろそろ始まるからもう1回言うぞー! 競技の内容はUIから見るか、始まる前に説明があるからそれを聞くように!」
「競技時間が来たらUIからイベント会場へ飛ぶか、ミニマップに従い直接移動するようにしてください」
この声は八塚さんと三武さんですね。つまりいつものGM組。イベント担当なんですかね?
「お、やあ姫様。今回は遅かったね?」
「ごきげんようセシルさん。イベント前にやりたい事があったんですよ」
「最後の詰めってやつ? 姫様競技何出るの?」
「かりもの2つと魂入れ、後はフリフォですね」
「ほほう」
「『まじかよ! もう変更できねぇ!』」
「ついにPvP出るんだ?」
「ええ。他は敏捷絡みそうですし、1番能力活かせそうなのがフリフォかなと」
「『姫様とあたりませんように。姫様とあたりませんように』」
「生き残った3人までが次だったね。姫様と無理して戦う必要はないが……」
「レベル的にどうせもうすぐ進化ですから、今回は現状の全力で行くつもりなので、よろしくおねがいしますね」
「お、おう。当たらない事を祈ろうかなぁ」
「『ギャー!』」
周りが元気ですね?
確認作業で結構ギリギリになったため、すぐにイベント開始時間になります。
「第三回公式イベントの時間だおらー! チーム振り分けどんっ!」
「色、付きましたかー? 同じ色は同じチームなので、競技中は注意してくださいねー」
RGBですか。赤、緑、青の3チームと。1チーム何万人いるやら。
私は赤ですね。
「お? 姫様同じチームじゃん。別にされるとか思ってたけど、3チームならまあそんなもんかな?」
「セシルさん今回はソロ参加ですか?」
「うん、今回はソロだね。狩りとバレー、フリフォにコンクエ予定」
「狩りとフリフォは同じですか。同じ戦場かは分かりませんが」
「まあやることは1位目指すだけだし、大して変わらんでしょう」
「それもそうですね」
セシルさんと話していたら、運営にセシルさんが呼ばれました。
「いつも姫様ってのもあれだな。暁の騎士団長セシル君! 選手宣誓しようか!」
「は? 聞いてないんだけど……」
「今言ったもんな!」
「これだよ……テンプレ見せて」
「ちょい待ち…………これだな」
「んー……」
選手宣誓のテンプレが空に表示されました。カンペですかね。
少しセシルさんにアドバイスしましょうか。
「セシルさん」
「ん?」
「この辺り、シグルドリーヴァ様に誓いましょう。火と風を司り、戦と勝利の神です」
「なるほど、良いね」
「へい、カモーン!」
セシルさんは苦笑しながら出現したマイクの付いた台に歩いていきました。
「んんっ、始めるよ? どうせ録画してるんだろう?」
「おうよ!」
「『宣誓! 我々、冒険者一同は! スポーツマンシップを投げ捨て! 運営の決めたルールに従い殺し合うことを! 戦と勝利の神、シグルドリーヴァ様に誓います!』」
「めちゃくちゃ物騒だがよし!」
「第三回公式イベント、ファンタジー運動会を開始します!」
「『ヒャッハー!』」
「早速始めるから会場に移動しろー!」
「『おーっ!』」
好きな競技をUIから観戦できるようですね。生産組が出してる露店を見て暇つぶしするのも手でしょう。最初は的当てだったはずですね。
あ、私は半径100メートルを超すまで、《空間認識能力拡張》のスキル上げに励むので。
割とすぐスキルレベルが上がり、100メートルは超えてくれましたか。最低限はいったので、観戦しながら上げましょう。
お、マジカルバレーしてる。
ボールに魔法を当てると上乗せされるんですか。それでスパイクを放つと。
武器や盾の角度を調整してボールを受けつつ、地上でも戦闘と……かなり忙しいですね?
スパイクは近接アタッカー。タンクはブロック役で、相手のスパイクを受けるのは動きが比較的早いサブタンクの役目ですか。なるほど……。
サブタンクが上げたボールに魔法使いが魔法を当て、それを近接アタッカーがアーツで相手に……が基本のようですね。
タンクは相手のスパイクのブロックや、敵からの直接攻撃を防ぐ必要もあると。
めちゃくちゃ殺伐としたバレーですね。これは酷い。
当然スパイクは魔法使いなどを狙うと……。あ、魔法使い君吹っ飛んだー! うわぁ、錐揉み回転して後頭部から地面に行きましたね……南無三……。
お、別のコートではミードさんがバレーしてますね。弓で……?
コートから出るレベルで後ろに下がるミードさん。弓を構え始めましたが……。
ミードさん側のチームは、受けたボールに魔法を当て、かなり上空まで吹き飛ばしました。
「【メテオシュート】」
「は? ぶべっ!?」
「『人間技じゃねぇだろ……』」
「『さすがミードの姉貴!』」
な、なるほど……。
上から落ちてきたボールに、単発高威力の長弓アーツ、【メテオシュート】を当てて相手のコートにですか……人間ですかね。
【メテオシュート】って斜め上に撃ち、その角度から落とす当てづらいアーツなのですが。
当たった哀れな人が、錐揉みどころか直線でぶっ飛んで行きましたね……。
ミードさんのチームもポカーンてしてるのがまた面白いですね。ミードさんは片腕を上げてクールにアピールしてますけど。うん、姉貴。
お、こっちはリーナがやってますね。
上げられたボールに飛び上がり、片手でハルバードを持ち、体ごと回って遠心力を加え……2回転後にアーツを使用してボールに当てる。
「ぶち抜けー! 【鬼人斬り】」
「めぎゃっ」
我が妹ながら、本当に人間でしょうか。元々運動神経は良かったですけども。遠心力乗せるための2回転は、わざとボールに当てないように振ってますからね。
ちゃんと着地してますし、運動選手でも目指すのでしょうか? ゲーム内のステータスだからこそか。
ただ、リーナ。そのブルマの体操服はどこから持ってきたのです? 無駄に似合いますね。
ちなみにリーナから放たれたボールは、レシーブの人ごと地面に吸い込まれ即死でしたね。南無三。
「『1陣トップ層のスパイクがヤバすぎる件について』」
「『頑張れタンク』」
あれ、トモとスグもバレーしてるんですか。敵同士だし。
「死ねぇ!」
「舐めんなぁ! つうか俺ばっか狙うのやめろぉ!」
「魔法使いは先に潰すだろ!」
まあ、魔法使いのトモ狙いますよね。1陣純魔なので火力相当でしょう。当然普段PTメンバーのスグはそれを知ってますし。
むぅ……バレーも楽しそうでしたね。
「次は狩り物競争するぞー!」
「これは別の特設フィールドへ飛ばされるので、エントリーした人は通知を見逃さないようにしてくださいね」
お、私がエントリーした競技ですね。
通知が来たので、特設フィールドへ飛びます。
ここは……牢屋ですか? 石造りで鉄の檻ですもんね。とりあえず、一本道なので先へ進んで行きましょう。あ、他のプレイヤーもいますね。
先に進むと大きい扉の前に受付のような物があり、GMがいました。
「ようこそ、挑戦者達! もう少し待ち給え! 揃い次第ルール説明をするから」
ここ以外にも別の門があるようですね。少しして説明を受けます。
この受付でクジを引き、この扉から出るとコロシアムに出る。コロシアムに出た5秒後に、クジに設定された敵がコロシアム内にポップする。
自分の目標はマーカーが付くので、時間制限内にその敵を倒すか捕まえ、帰還する。帰還方法は扉に触れる必要がある。
そしてクジの敵はランダムであり、明らかに勝てないだろう敵も、低確率だが出る可能性がある。その場合、時間制限まで生き残れば良い。
死亡した瞬間失格で、生きていた時間のみ経験値が貰える。よって、時間制限中に生き残るだけでもそれなりに貰える。倒して帰還すればそれぞれのボーナスも入る。条件によって計算式が変わるので、自分のできる限りの事をすればいい。
プレイヤー同士にダメージはないが、MPK的な事は可能である。そして敵同士もダメージが入る。
ドロップ品の回収は死体にタッチか、とどめを刺した時にインベに入る。
「以上だ、何か質問は?」
「はい」
「はい、姫様」
「勝てない敵って、最大どのぐらいのが出るんです?」
「カンスト」
「『おいっ!?』」
「えっと……では、外なる……」
「可能性は0じゃない」
「あ、そうですか……」
「まあ、0.0いくつなのは間違いないけどね」
「しかし参加人数を考えると……?」
「うん、楽しそうだよねー。1体ぐらい出るといいなー? せっかくのお祭りだし。アハハハ。運営一同期待してるから!」
「『こ、こいつら……』」
自分が外なるものを引くより、誰かが引いた方が怖いですね。マーカーが付くということは、ヤバいやつの位置は分かるわけで。
ん? 外なるものが可能性あるなら、冥府の人達も可能性あるんですかね。まあ、始まれば分かりますか。
「他は?」
「はい、時間制限は全体? 個人?」
「個人だね。誰かがクリアするか、リタイアしたら追加のプレイヤーが来る」
「ああ、理解」
となると、コロシアム内は一定のプレイヤー数が保たれるわけですね。
「プレイヤーがリタイアしたら敵は?」
「新しいプレイヤーの敵に置き換わる」
「湧いた敵のタゲは?」
「出現直後はクジで引いたものを狙う」
何が来たかある程度把握しておかないとかなり厄介そうですが……そもそも特性を知らない敵が来そうですね。
そして敵はポップ直後、クジで引いた人を狙って動くと。
「では、始めるぞ! さあ自らの運命を引いて扉に触れるが良い挑戦者達よ!」
ぞろぞろ並んで順番に引いて、扉に触れていきます。私も引きますが、メモは見ても分からないんですね。扉に触れて転移します。
「『って思ったより狭いぞ!?』」
「これ大型来たら辛そうですね……」
PKは無理でもMPKは可能……かつ、敵同士もダメージがある……ですか。
運動会なので一応チーム戦です。敵チームの人にはさっさと死んでもらった方が良い。つまり真面目に戦うのではなく、自分の敵を削ってもらいつつ、他の人に敵の攻撃をぶつけるのが最善ですか。
フィールドが思ったよりも狭いので、敵に巻き込むのは楽でしょう。つまり敵同士を戦わせて削らせるのは楽。問題は他のプレイヤーの手助けになってしまいますが、それが味方チームの人なら問題ではないと。
ううーん……中々難しい競技ですね。
そうこう考えている間に、わらわらと敵がコロシアム中央に湧き始めました。
「『見たことないのいっぱいいるー!』」
ええ、本当にね。普通に飛行もいるんですか。と言うか、さらっと魚が空中泳いでるのはなんですかね。特別仕様か、元々そういうものか……。とりあえず、アサメイを手に持ちます。戦闘が始まりますからね。
はて、私の獲物が脳内3Dマップ内にいませんね。目で探しますか……。
「お、機甲……ん!? っとぉ……!」
ギリギリで飛んできた物を弾けました。私の敵は機甲種ですね。
支援射撃型MK.Ⅱ Lv56
支援射撃をメインとした武装をしている多脚型支援機。
妨害をメインとした支援射撃型の中でも火力が重視された機体。
背中にある大型の2門が特徴的で、射程が長く威力も高い。
属性:― 弱点:― 耐性:―
属:機甲種 科:四脚
状態:正常
射撃タイプなのは好都合ですが……脳内3Dマップより射程が長いのはいただけませんね。射程内に入れますか。
……相手の攻撃を敵チームの人に反射すればいいのでは?
まあ、まずはパリィしつつ近づくのを優先しましょうか。
「俺遠距離攻撃ないんだけどぉ!?」
「お前! こっち来んじゃねぇよ!」
「おい! 誰だあんなの呼んだやつわぁ!」
「エグいのいるんですけどおおおおおお!」
私からは見えませんが、なんかいるんですかねぇ? 私は飛んで来る魔力を弾きつつ歩きます。実弾ではなく魔力銃のようですね、あの機甲種は。
見た目は蜘蛛のような多脚型で、上に丸い胴体が乗り、その上に大きな銃身が2門こちらを向いています。
胴体から生えている腕にも銃を持っているようですが、恐らく射程外なのでしょう。そちらは動いていません。
実弾と同じくそのうちエネルギー切れになるのでしょうか? 薬莢の排出は見えませんが……マナを使用するような設計だとかなり厄介ですね。作ったのが奴らとなると……弾切れの可能性は低そうですが。
上の2門は連射性能がそんなに高くない。反動はそれなりに大きいのか、そのための多脚ですか。問題は腕の二丁ですかね。マシンガン系だととても困りますが、可能性は低いと思いたい。
アサルトライフルとか持ち出したら、弓が悲しみに包まれますからねぇ……。
「ヒャッハー! 邪魔だどけぇ!」
「てめぇ!」
「あぶねぇ!」
ふむ……さすがに乱戦に入りましたか。
100メートルに入ると腕の2門もこちらへ向けてきましたね。私も目から脳内に切り替え、パリィではなく反射をメインにします。
難しいことは考えず生き残りが最優先で、やつを倒す事を考えましょう。56とか格上ですから、生き残るだけで十分でしょう。
制限時間は10分ですが、やつだけなら問題はなさそうなんですけどね……。問題は他のプレイヤー含めた周囲ですから。
腕の2門もセミオートですか。フルオートじゃなくて助かりますが、上のより遥かに連射性能が高いですね。ボルトアクションぐらいでしょうか。
なるべく銃に当たらないよう反射します。銃の部位破壊ができた場合、効率が下がりますからね。
大型が120ぐらいの、腕が100ですか。魔力銃は射程が長いですね。明らかに距離減衰かかってるようですけど。
ちなみに、パリィはそのまま距離減衰で消滅。反射は攻撃開始判定なので、復活します。不思議ですね? まあ、してくれないと届かないのですが。
「おぉ!? なんか綺麗な姉ちゃん湧いた!」
「あん? ほんまや!」
綺麗な姉ちゃん? 湧いたって事は敵側ですか?
「あらあら、なんだか楽しそうですね」
ん? この声は……え、よりによって貴女が来ましたか。誰だラーナ呼んだ人。
「しゃべっ……っておいぃ!? 誰だ姉ちゃん呼んだやつぁ!」
「はぁい! 僕でぇす!」
「てめぇ! さっさと死んでこい!」
呼んだ人が死ねば次の人で置き換えられる。ラーナはカンストですからね。きっと識別でレベルを見てしまったのでしょう。
呼んだ人にまずタゲが行くらしいですけど、ラーナのような人間系ってAIどうなってるんですかね? ラーナがヘイトに従うとは思えませんが?
「ふむ? 呼んだ人を殺さないように暴れれば良さそうですわね」
「『最悪だー!』」
「シャバの空気が美味しいですわ」
「『シャバ!?』」
まあ、普段冥府ですからね。そういう意味ではシャバ……うん。
む、今敵側の識別情報じゃないですか。
スヴェトラーナ・グラーニン・エインヘリヤル Lv100
ディナイト帝国にて剣姫と呼ばれ、国民に愛された大英雄のグラーニン公爵夫人。
大規模スタンピードの時、公爵夫人にも関わらず最前線から生還した武人である。
若い時の、剣姫として最高スペックを発揮する姿を取っている。
属性:聖 弱点:― 耐性:物理
属:エインヘリヤル 科:霊体
状態:正常
公爵夫人だったんですね。
にしても、予想通り弾切れしませんねこいつ。地味に硬いし、レベルが上だけあって時間かかりそうです。とりあえず、1発ラーナを狙って反射しますか? それともバレないようにするべきか。これ倒してくれませんかねぇ……。
「おっと……ふんっ」
ラーナの方に突っ込んでいった割と大型の敵が一撃で潰されましたね……。
そしてラーナに倒させて楽しようとした人も、こっそり死体回収できるわけもなく、ラーナに蹴り飛ばされて壁にめり込みました。
「私の獲物が欲しければ、私の屍を超えていくことです」
「『無理ゲー』」
……関わるのはやめましょうか。
魔法の射程内に入れないと話になりませんので、反射しながら更に近づきます。
「なんかあの人の構え、姫様に似てね?」
ラーナとは型が違うのですが、よく分かりましたね。ラーナは知らない型ですが、私は水鏡です。
ようやく射程内に入りましたか。
「【Lia Persepho Oura】」
完全に固定砲台と化しているので、【ノクスピラー】を放ちます。
あ、さすがに動くんですね。小癪な……。
「おや? サイアーではないですか。ごきげんよう」
「……見つかりましたか。ただでさえ格上相手にしてるので、邪魔しないでくださいね」
「獲物を盗るような無粋な真似はしませんわ。それにしても射撃型の機甲種ですか。サイアーと相性は良いですね」
「倒してくれても良いんですよ?」
「サイアーの良いところ見てみたいですわ」
「そうきましたか……」
まあ、場所的にも普段戦っている姿なんて見せられませんからね。殺しに来ないだけ良しとしましょう!
さすがに話しながらだと反射の精度が怪しいですね。ただでさえ他のに巻き込まれないよう、移動しながらですから。
「【Zex Ra'se Persepho Ilda】」
私の周りに半円を書くように、【臨界制御】により威力の上がった【ダークランス】が、【六重詠唱】により6個出現します。肩の高さに2個、頭の高さに2個、その上に2個ですね。
アサメイは反射に忙しいですが、エイボンの書が来てから魔法はそちらなので問題はありません。敵からの射撃を全て反射して返しつつ、魔法も撃ち込む。DPSは中々のものでしょう。
「なるほど……。水鏡で反射成功率6割と言ったところでしょうか。十分ですわね。水面にしてもう少し慣れれば……ふふふふ」
なんか見てるラーナが楽しそうですね。
あ、あの敵うちの機甲種に突っ込みますね。削ってくれるとありがたいのですが。
たまに飛んでくる他からの流れ弾はパリィします。行き先は知りません。
これ《空間認識能力拡張》や《危険感知》、《直感》とかのスキルがとても美味しいのでは? 戦闘終了時が楽しみですね。《野生の勘》や《弱肉強食》も上がりますか。
「へうっ」
「サイアー……別のこと考えましたね?」
はい、集中します。HP割と持っていかれました。
「【Zex Dey Persepho Ask】」
【臨界制御】で増幅した【ダークヒール】で回復しておきます。
「ヒャッハー! 汚物は消毒だぁ!」
あ、モヒカンさんだ。
「異人は面白いですわねぇ……」
「いえ、あれは極少数派ですからね?」
「そうですか……」
なんで少し残念そうなんですかねぇ!? おっと、また被弾するところだった。
もうすぐで倒せそうですね。このままなにもないと良いのですが……あ、今フラグ立てましたね。
こんにちは、黒っぽい玉虫色! 誰ですやらかしたの。運営の爆笑する姿が目に浮かびます。
「テケリ・リ!」
「『あ?』」
「テケリ・リ! テケリ・リ!」
「『おまっ……』」
「『1D6/1D20になりまーす』」
「『リアル夢に出そうなんですけどぉ!?』」
……さっさと機甲種倒して撤退しましょうか。
竜などに比べればマシなんでしょうけど、この状況で5メートルは十分大きいですね。
最大の問題は……ショゴスの戦闘方法が謎と言うことでしょうか。原作は確かのしかかりだけでしたよね。巻き込まれただけで死ねる気がするので、警戒せざるを得ませんね……。
「外なるものですか……是非お相手願いたいものですわ」
「正気ですかラーナ」
「これ逃したら当分無さそうですからね」
「私の機甲種倒してから行ってください。話は通じるはずなので。割と可愛いですよ? この間握手しました。……同じ個体か分かりませんけど!」
「そこ肝心なところでは?」
「あの見た目で個体識別ができるとでも?」
「んー…………」
視線逸しやがりましたね。
もしや私も外なるものになればできるのでしょうか。
「サイアーの今の強さも見れましたし、時間は有限ですからね。行ってきますわ」
「あ、はい」
私が相手している機甲種の後ろに移動したラーナにより、機甲種ちゃんは私の頭上を山なりにぶっ飛び、無残なジャンクへと成り果てました。南無三……。
さっさと拾ってそのまま近くの扉に触れるとしましょうか。私の頭上……つまり扉の方に飛ばしてくれたので。
あの2人が戦うところにいたくないですからね。確実に余波で死ねる。
「外なるものよ。よろしいですか」
「てけ?」
「普段は冥府にて軍を纏めている者、スヴェトラーナ・グラーニン・エインヘリヤルと申します。是非、お手合わせをお願いしたく」
「テケリ・リ!」
「相手してくれるそうですよ。では私は帰るので、また向こうで会いましょう」
「サイアー言葉分かるのですか?」
「なんとなくは分かりますね」
「左様ですか……」
「テケリ・リ~」
触手をフリフリしてるショゴスに手を振り返して扉に触れます。あれやっぱり同個体でしょうか。それとも皆ああなのでしょうか。
そもそも頭いいのはショゴスロードで、ショゴスはあんまりだったような。だから少し子供っぽい感じなのでしょうか?
まあ、地獄絵図になる前に脱出っと。
そして、脱出後に映像で中の状況を確認します。
「『おいぃ!?』」
「『ぎょえーっ!』」
「『山本おおおおおおおおお!』」
「『あそこに入りたくねえええええええ』」
気持ちは分かりますが、入らないと消えないんですよねぇ……。ほら、運が良ければ2人が倒してくれますよ。運が悪いと自分が倒されますけどね。
運営は案の定、机などをバンバンしながら大爆笑してました。
と言うかエントリーしてないか、既に終わった人達は大爆笑してました。もしくはショゴスの姿に慄いてる。多分SANチェックに失敗したんでしょう。
「ふぅむ……相性の問題もあるのか、ショゴス優勢ですね。それとも基礎ステータスの差か……ラーナをさすがと見るべきでしょうか」
「お姉ちゃん冷静ですね……」
「まあ、私は事前にショゴス見てるから。ところで、その体操服どうしたの?」
「ダンテルさんに貰った」
「やっぱりやつか。でも性能は良いんでしょう?」
「うん」
まあ見た目は体操服でも、ステータスはゲームなので素材依存ですからね。さもありなん。ある意味高性能防具をタダで貰ったわけですよ。なおブルマ。
あ、ラーナがカーテシーしながら消えていった。呼んだ人が死んだんですね。まだショゴスが残ってますけどね……。
と思ったらラーナと戦って満足したのか、さっさと呼んだ人を引きちぎりました。そして新たな人が来て帰還。
平和が訪れましたね。まあ、まだ人いるようなのでどうなるか知りませんが。
うん、経験値美味しかったですね。
あと3競技、楽しみにしましょう。
名前:アナスタシア・アトロポス・ネメセイア
種族:幽世の王女 女 Lv37
職業:幽世の支配者
職名:最高位裁定者
属性:死
属:幽世の最高位不死者
科:アーウェルサロイヤルゾンビ
スキルポイント:80
スキル
《細剣 Lv35》《本 Lv14》《古今無双・一刀流 Lv18》《軽装 Lv44》
《閃光魔法 Lv40》《聖魔法 Lv1》《空間魔法 Lv44》《高等魔法技能 Lv49》
《危険感知 Lv42》《直感 Lv42》《舞踏 Lv45》
《料理人 Lv32》《錬金術 Lv40》《採集 Lv18》《採鉱 Lv28》
《目利き Lv34》《解体 Lv30》《鑑定 Lv36》《識別》
《古代神語学 Lv100》《空間認識能力拡張 Lv36》《窮極の魔術》
《地図製作 Lv3》《トラップ感知 Lv3》《トラップ解除 Lv1》
控え
種族スキル
《暗黒魔法 Lv41》《影魔法 Lv21》《死霊秘法 Lv43》《死を纏うもの Lv27》
《物理耐性 Lv51》《物理無効 Lv47》《魔法耐性 Lv32》《怯み耐性》
《魔力最適化 Lv31》《野生の勘 Lv35》《弱肉強食 Lv35》
《生気吸収 Lv36》《HP超回復 Lv35》《MP超回復 Lv35》《回復特性 Lv21》
《アンデッド統括 Lv46》《幽世の王族 Lv32》《王家の権威 Lv48》《幽世の最高位不死者》
《ソウルチェイサー》《幽明眼》《裁定の剣》《裁定者》
称号
優雅で静謐なお姫様:他者に与える印象がとても良くなり、警戒もされづらい。
ベルステッド解放者:始まりの町の東を一番最初に解放した記念称号。
インバムント解放者:始まりの町の南を一番最初に解放した記念称号。
ダンジョン到達者:異人で一番最初にダンジョンに到着した記念称号。
古代言語学者:遥か昔に地上では忘れられた言語を知る者に与えられる記念称号。
女神との邂逅:女神と出会った者に与えられる記念称号。
料理人:一人前の料理人に与えられる称号。
錬成師:一人前の錬成師に与えられる称号。
錬金術師の弟子:始まりの町のメーガンに弟子入りした。
ステルーラの加護:被光系、闇系魔法耐性。空間系魔法強化。空間系魔法経験値ボーナス。空間系魔法コスト軽減。
幽世の支配者:幽世の者達への命令権を持ち、デスペナ軽減。常夜の城がホームになり、幽世の拡張が可能。
The Silver Keyの所有者:空間や次元に関する様々な恩恵を受けられるだろう。銀の鍵装備可能。
Book of Eibonの完全解読者:超古代の魔導書を完全に解読した。エイボンの書が本来の力を発揮する。
古代剣術後継者:型の効果がフルスペックで発揮可能。