75 外なるものたち
脳内3Dマップでの戦闘に慣れる必要がありますが、スキルを上げるだけなら町中が1番です。
という事で、《空間認識能力拡張》を上げるには人の多い始まりの町。中央広場にあるステルーラ様の立像の前で、お祈りポーズでスキル上げに励みましょう。
これだけで日曜日を潰す予定はないので、何するかも考えないとですね。最低レベルは思ったより早く達成できそうなので、《古代神語学》に時間を回すべきですかねぇ……。次のイベントまで時間的にギリギリなのは言語でしょうし。
午前中前半を《空間認識能力拡張》にして、後半を《古代神語学》に使用しましょうか。そして午後は別のことを……。
よし、そうしましょう。
午後のログインです。
離宮を出て北へ向かい丘を登ります。ええ、先にイベントだけでも進めておこうかと思いましてね。
再び第一の門へやって参りました。
男性と女性が同時に喋ったような声が直接頭に響きます。
『来たか。この先は深淵。外の常識の通じぬ場所。それでも行くか?』
「はい」
『生物をやめることになったとしても、居場所を失うかもしれなくてもか?』
「そうだとしても、全てでは無いですよね」
『良かろう。行くと良い。銀の鍵に導かれ、窮極の門へと至らん』
古ぶるしきものは、私が入ってきた方の向かい側にある巨大な門を指します。
ちゃんと条件はクリアしたようなので、指示通り中央にある六角形の台座を避け、門へ向かいます。
門に近づくと重々しくも勝手に開きましたが……先が認識できませんね?
彼……と言って良いのか分かりませんが、古ぶるしきものは台座の上で再び眠りに就きました。
……行きますか。
確かここから先は…………ん、システムによる制御が……。
あ、やっぱ落ちるんですね。踏み出した1歩目から床がなくひたすら落下体験。脳内3Dマップも、目もダメですか。体の制御も返って来ませんし、落下イベントですね。ただただ落ちる。これバンジー嫌いな人トラウマになりそうですね?
どのぐらいかは分かりませんが、かなり長く落ちる感じだけ味わい……着水。
この重量で浮かぶんですか……それにしても、薔薇の香りがする素晴らしい海ですね。ええ、薔薇の香りがする海です。
浮いたところで体の制御が返ってきました。
うん、ただひたすらに海。脳内3Dマップは勿論、目の範囲でもダメですか。
腰にぶら下がっている銀の鍵が薄っすらと輝き、一定方向を指しながら光も向けています。銀の鍵に導かれとか言っていたので、この通りに行けば良いのでしょう。
水泳の取得を考えなくもないですが、不死者は呼吸の必要がない種族ですし、恩恵が言うほどない。どうも戦闘はなさそうなのでスルーで良いでしょう。水中ダンジョンとかあるなら取る必要がでそうですけど。
あ、待てよ。一号をワイバーンで……呼べませんか……そうですか。
はい、泳ぎますよっと。
お、ついに《空間認識能力拡張》が30になって、脳内3Dマップで色や質も分かるようになりましたか。目の出番が減りましたね。
ちまちま離宮でやるより、戦闘や町の方が遥かに効率が良かったようで。後はスキルレベルを上げて範囲を広げるだけですが、どうせここから上がらなくなるのでしょう。多分ここまで……色が分かるようになるまでがチュートリアル的な。
銀の鍵に従いただ泳ぐことしばらく……と言うか、数分どころかもうすぐ1時間経ちますよ。広すぎでしょう。確実にイベントマップなので、1回来たら来ることは無いのでしょうけど……。
ようやく陸を見つけまして、ストーンヘンジのような巨大な石組みのアーチが見えます。ようやく窮極の門ですか。
早速上陸してアーチの中心を目指します。
原作だと呪文があった気がしますが、特に聞いてないんですよね……。このゲームだと不要なのでしょうか?
中心部分に来ると銀の鍵が浮き上がり中心へ。銀の鍵は光り輝きながら回転し始め、周囲の石組みも一部が光り始めます。あれ、かなり細かく古代神語が浮かび上がっていますね。
共鳴するように光が強くなり……む、転移しましたね? 脳内3Dマップに映る風景が一瞬で切り替わりました。銀の鍵は……ベルトに戻ってますね。
あの、ティンダロスの猟犬に囲まれたんですけど。熱烈歓迎ですか? 尻尾……多分尻尾がブンブンしてますけど。多分なのはそもそも犬じゃないからですよ。
「来たか……。お前達、まずはさせる事があるだろう。後にしろ」
お、ワンワン王だ。助かりますが、それだと後でまた囲まれるんですけど?
「付いてこい、資格あるものよ」
おや、いつもと違ってキリッとしていますね。余計なことは言わずに付いていきましょう。
脳内3Dマップ範囲は花畑しか映りませんね。目を使いますか。花も新素材っぽいですが、とりあえず後回しで。
…………『外の常識の通じぬ場所』ですか、なるほど。確かにぶっ飛んでいますね。同じところにあって、同じところに無いのかもしれません。
かろうじてシルエットだけ見える程度には遠くに、やたらトゲトゲした場所があります。多分あそこがティンダロスでしょう。
そしてとある方向にはバカでかい船が浮いています。ムーンビーストですかね。
やたら発展している……リアルより発展しているであろう建造物なんかもありますね。あれ何の種族でしょうか? 気になりますね。
まあつまり、深淵と言う場所に様々な種族の住む土地が存在していると。
おや、海がある……? 何体か浮かびますが……やはりクトゥルフでしょう。あの建造物ルルイエでは?
「ここでは目を信じない事だ。その距離は正確ではないぞ」
各種族ごとに空間や次元が弄られているのでしょうか。見えるけどそこに無く、見えずともそこに在る……。面白いので良いですけど。
花畑の中にある1本道を、ティンダロスの王に付いて歩いていきます。行き先は多分……どでかい古城ですね……。
おや、ムーンビーストだ。ん? あれは……あの見た目は……。
「もしかして、彼らはミゴとイスですか?」
「そうだな。変態技術者共だ。基本的に他種族の土地へ行くことは制限されているが、奴らのところは行かない方が良いぞ。何があるか分からんからな」
そうティンダロスの王が示した先は、SFレベルに発展した建造物でした。そうか、奴らの仕業ですか。
何やら楽しそうに話しているので、共同開発するレベルの友好関係なのでしょう。
「ちなみに地上でマシンナリーと呼ばれる者達を作ったのが奴らだ」
「……は? さらっととんでもないこと言いましたね」
「いや、正確にはマシンナリーではなく、その元となる機甲種と言うべきか。遥か昔、奴らの時代の文明よ」
ミ=ゴとイスの偉大なる種族が機甲種を作ったのですか。まあ多分、工場や助手が目的だったのでしょう。リアルで言うお掃除ロボットとかが元ですかね。それが心を持ちマシンナリーに?
もしかしてソフィーさんとかが持つあの箒。アレのコアとかが? でもダンジョンって自然発生するんですよね……んー……?
ま、別に良いか。特にどうこうあるわけでもないですし……。
気づけば正面にバカでかい古城が。そんな歩いたつもりはないのですがね。
黒や白、灰色でゴシック建築の古城です。実に良い雰囲気ですね! SS撮るしかありませんよ。とても好きです。常夜の城より遥かに大きく、年季も感じますね。
おっと、付いていかねば。
中も見た目相応に落ち着いています。
常夜の城より遥かに大きいのに、人数は遥かに少ないためだいぶ寂しい感じがするのがネックですが。
冥府は強いて言うなら王都なんですよね。城と城下町。
深淵は城と花畑。そして周囲にはそれぞれの種族がいる土地なので、この城自体はあまり使うものがいないのでしょうか?
ん、老婆、女性、少女の3人。
「ん、ミゼーア。その子が?」
「そうだ。同胞になるかもしれん」
「私はテネブラルム。そしてススピリオルムとラクリマルム」
……嘆きの聖母たちですか。
話しかけてきた黒髪金目の美しい少女がテネブラルム。灰髪金目の成人女性がススピリオルム。そして白髪金目で皺だらけの、魔女的な老婆がラクリマルム。
「私はアナスタシア・アトロポス・ネメセイアです」
「よく来た。ネメセイア。貴女、目は私と同じ?」
マーテル・テネブラルムは盲目でしたね。マーテル・ラクリマルムが聴覚障害で、マーテル・ススピリオルムが言語障害でしたか。
「いえ、まだ訓練途中なので見えますよ」
「そう。捧げるなら目の方が良い。私達みたいに代わりがいるなら別だけど」
そう言って嘆きの聖母たちは歩いていきました。
「目を捧げる……ですか」
「修行の一種だな。まあ、目がある種族ならの話だが」
まあ、そうなりますか。目がない種族ザラですもんね。
再び歩き始める事しばらく、だいぶ奥へ、下へとやって来ましたね。
「まさか異人が本当に来るとは思わなかったが」
突然横に男性とも女性とも取れる、中性的な顔立ちの……20台後半ぐらいでしょうか、聖職者のローブのような物を着た、これまた人間離れした美しさの人が出現しました。
いや、絶対に人ではないでしょうから、人間離れしてるのは当たり前ですかね。
「この者を頼む」
「良いでしょう」
「あまり遊んでやるなよ、ニャルラトテップ」
「久方ぶりの正規ルートでの訪問者だ。分かっている」
「逃がすと流石のお前でも他が煩かろうよ」
ここで這い寄る混沌が来ましたかー……。
ティンダロスの王が私を置いて帰ってしまいました。這い寄る混沌と2人きりですよ。おぉ、怖い怖い。
まあ、このゲームだと警戒する必要は薄そうですが。
「ニャルラトテップだ。この城の管理者をしている。神々の仲介人でもある」
「アナスタシア・アトロポス・ネメセイアです」
「よろしい。では付いてくるように」
特に何かあるわけでもなく、これまた大きい扉の前にやって来ました。
「ああ、神よ。moa pia she les. 女神ステルーラよ」
ニャルラトテップが門に向かって祈りというべきでしょうか? それとも呼びかけと言うべきか……。
とりあえず、古代神語学ですね。残念ながらまだ中央の意味が分かりません。
これにより門が重々しく開いていきます。
「ここにいる以上大丈夫だとは思うが、失礼のないように」
先が見えなくて不安しか無いのですが、行く以外の選択肢がないのもまた事実。
大きな扉をくぐると再び体の制御を奪われ、イベントが発生。
足元から感じる感触が硬い地面ではなく、何やら柔らかい感触へ変わりました。少し進んでも脳内3Dマップには何も映らず。
更に数歩進むと突然切り替わります。多分転移した……って……これはまさか?
玉虫色の無数の球体が壁に付いている……と言うより、玉虫色の無数の球体が壁と言うべきでしょうか。周囲全てが囲まれ、離れてはくっついてをそこかしこで繰り返し、膨らんだと思えば縮小する。
まさにクトゥルフ神話。名状しがたき無形の化物。
私の正面の空間がブレたと思ったら、強烈な光を放つ玉虫色の球体が空中に出現しました。こちらの球体は周囲よりも忙しなく形を変えていますね。
そして球体は今までの不規則な動きを止め、意味ある形を成そうとしています。
作られた形は18歳ぐらいの女性で、灰色の髪に玉虫色の瞳。それは本に記される特徴そのまま。
お、体の制御が返ってきましたね。
「よく来ました。資格ある異界の者よ」
「お会いできて光栄です。ステルーラ様」
挨拶して頭を上げたらテーブルと椅子が用意されていました。ここのもの達は転移系を駆使するので、気づいたら……と言うのが多いですね。
ステルーラ様の指示に従い、大人しく座ります。
「こちらへ来た以上、覚悟はあるのですね?」
「はい。ただ、冥府は気掛かりですが……」
「ふむ……私も放置はしたくありませんが、貴女の進化先次第でしょう」
ステルーラ様が軽く手を振ると、私にUIが出てきました。
「貴女の思うがままに、選びなさい。それが進化先に影響を与えるでしょう。時が来るまでに決めること」
なになに……。
〈誰を信仰するか〉
3柱が表示されていますね。クレアール様がいない。
まあ、これはステルーラ様として……。
〈次のものから己が重視するものを選べ〉
〈生、死、時空、運命、契約、断罪〉
これは……ステルーラ様の『顔』ですね。
ふむぅ……難しいですね。少し考えましょうか。『時が来るまでに』って40の進化前までに決めろって事でしょうから。多分。
ステルーラ様以外を選んでも、それぞれの『顔』から選択でした。ステルーラ様に戻して……保留で。
「見た目はあれですが、彼らはいい子達です。仲間となるのなら仲良くするように。永い付き合いになるのですから」
「見た目は見ていれば慣れるでしょう。大丈夫だと思います」
むしろちょっとテンション上がりますよね。神話生物の立体ですよ。設定はともかく、見た目部分は割と原作基準ですからね。
「しかし、こちらに来るにはその装備では不十分ですね。床に触れないように座りなさい」
よく分かりませんが、指示通りにしましょう。膝を抱える体育座り。
ステルーラ様がこちらに手を向けたと思ったら、レア度Goの全てが装備から外れ、光の玉となりステルーラ様の手のひらへ。
「生身で足を付けないように。細胞が死ぬわ」
「あ、はい」
なるほど? そう言えば、触れただけで腐食、萎縮、火脹れ、骨の露出などでしたか。装備の保護があったから普通に歩けていたわけですね。
あのゲーム人間からしたらオワタ式で、いかに死なずに逃げ切るかですからね。そもそも関わるなと言いたいですが、関わらないとゲームが始まりませんし?
少ししたら光の玉が帰ってきて、元通りに。
「それで良いでしょう。期待していますよ」
そう言ってステルーラ様が立ち上がったので、私も立ち頭を下げます。
そして、門の外へ出ていました。
〈『称号:ステルーラの祝福』が『称号:ステルーラの加護』へ強化されました〉
〈特定の条件を満たしたため、『称号:女神との邂逅』を取得しました〉
〈銀の鍵の深淵への転移方法が解禁されました〉
ニャル様がいませんね。あ、転移してきた。
「ほう? どうやら気に入られたようだ。しかし、お前はまだ部外者。仲間となれば歓迎しよう。強くなるが良い」
言うだけ言って歩き始めたので、付いていきます。置いてかれたら迷子不可避なので。残念ながら、ニャルラトテップは付いてこないなら普通に置いていくようなタイプですからね。本来は人間を殺すより、狂わせて嘲笑う存在ですから。
「最低でも自衛ができる程度には強くなる事だ。勿論外でではなく、ここでだ」
そう言って私の横に転移してきたなにかを蹴り飛ばしました。
なお、蹴りの余波で私が瀕死。死な安死な安。頑張れ自動回復。
「好奇心旺盛なのは結構だが、そう急くな」
そう言えば、ニャル様ってドリームランドの保護者的な面もありましたね。……こっちに来る事があれば、すぐにワンワン王でも呼ぶとしましょう。
別に命の危険とかではないでしょうが、多分ワンワン達みたいに囲まれそうですね。むしろ喧嘩に巻き込まれた方が死にそうです。
吹っ飛んでいったものは放置して先に進むことしばらく、ワンワン王が待っていました。
「戻ったか。どうやら無事に乗り越えたようだな」
「ではティンダロスの王よ、後は任せる」
「心得た」
来た時と同じく、今度はティンダロスの王に付いていきます。さらばニャル様。
ふと思うのが、基本的に皆『歩く』ということをしないんだろうな……と。本当に人……ではありませんが、見かけないんですよね。
立ち話してるのは見かけますけど、忙しなく動き回っているのを見ません。転移で直接移動……もしくは飛行ですね。
それにしてもステルーラ様の問は実に悩ましいですね。
選べるの1つじゃないんですよ。いっそ強そうな効果を並べていくべきでしょうか? ただ、それは罠な気がしないでもないんですよねぇ……。選ぶのに理由付けがあった方が確実か。ここの運営何してくるか分かりませんからね。
「何を悩んでいる?」
「誰を信仰し、何を重視するのか……と問われまして」
「なるほどな。だがステルーラ様だろう?」
「そうですね。そこはまあ良いのですが……」
「ああ、信仰する『顔』か? そればかりは自分で決めないとな。でなければ意味がない。自分が本当に大切だと思うものを選ぶと良いぞ」
ふぅむ……ぶっちゃけ全部大切な気もしますが……。『生、死、時空、運命、契約、断罪』ですからね。
実は国語の問題みたいに、上記の単語を使って文章を作れ……でしょうか?
考えながら歩いていると古城の外へ出てきました。そしてワンワン達に囲まれる。猟犬という威厳は大丈夫ですか? 現状見た目の悪いただの犬になってますが。
よーしよしよし。むむ、不思議な触り心地ですね。……君達なんで並んでるんですか?
撫でていたのがスルッと動き、並んでたものがスルッと入ってきました。……撫で待ちですか。
「やれやれ……まだ同胞ではないというのに」
王はお爺ちゃんポジ……と。
まあ数は多くないのでいいでしょう……。
そこそこ撫で回しました。スライムみたいな不思議な感じでした。彼らは満足したのか解散しています。
おや、後ろから来るこれは……。
「テケリ・リ。リ・リ……」
ステルーラ様とはちょっと違った玉虫色。だいぶ暗い玉虫色の球体。言ってしまえばスライムですが、思い浮かぶイメージとは確実に違うでしょう。表面は無数の目が瞬きをしているかのように閉じたり開いたり、ぷくぷく泡立ったり。かなりのグロスライムです。
ステルーラ様は綺麗な玉虫色の無数な球体の集合体。このスライムは黒っぽい玉虫色の球体。
にょいんと触手が1本伸びてきて、私の前で停止します。具体的には腰の辺り。
それを掴むと軽く振られて、触手が引っ込められました。まあつまり握手ですよ。
「テケリ・リ~」
後ろに音符が付きそうなぐらいには機嫌良さそうですね。どこか行ってしまいましたが。
「……ショゴスですか?」
「そうだな。あまり気にするな」
見た目はともかく、中は可愛い感じがしますね。見た目はともかく。ちなみに大きさは5メートルほどなので、かなりでかいですよ。
まあ、地上にはいれませんよねって。子供泣くってレベルじゃないですよ。
「では王よ、私は一旦これで。また後ほど《古代神語学》を教えてください」
「うむ。我らは楽しみにしているのを忘れるな」
「なるべく早く、ご期待に応えられるようにします」
「ではまた会おう、資格あるものよ」
銀の鍵を使用して、始まりの町の中央広場へ飛びましょう。
中央広場にある立像へやって来ました。……うん、人が歩いていますね!
さて、色々と確認をしましょう。
まず装備は……特に変化なし。銀の鍵の転移先に深淵が追加されたぐらいですね。祝福が加護になったので、強化したかったら進化しろとなっています。
あとは称号ですね。
女神との邂逅
女神と出会った者に与えられる記念称号。
記念称号ですか。とか言いつつ隠し効果あったりするので油断なりませんが。
ステルーラの加護
光と闇系魔法耐性上昇。光と闇系魔法コスト軽減。
空間系魔法強化。空間系魔法経験値ボーナス。空間系魔法コスト軽減。
被回復効果上昇。即死耐性上昇。
加護の方はコスト軽減だけから随分強化されましたね。肝心の数値は知りませんが、それぞれの顔に対応する能力の強化なのでしょう。上から光と闇、時空と運命、生と死だと思います。契約と断罪はまあ……ステータス的には無理ですかね。
さて、とりあえずベースを後4レベ上げれば進化できそうですが……なんだかんだで、結局公式イベント後になる気がするんですよね。
「おぉ! めっちゃ可愛い子いんじゃんやばくね!?」
「マジじゃんお前誘ってこいよ!」
そうだ、始まりの町に来たので、エルツさんに魔鉄を加工して貰いましょうか。
「んんっ。お嬢さん、俺らと遊びませんか」
ダンジョンで出た軽剛鉄と言われる、ライチウムは売りましょう。昨日のうちにスケさん達が持ち込んでるでしょう。
魔鉄の加工中に属性金属の作成をして、魔鉄を受け取る時に売る。
公式イベントの召喚体は1体までですが、ワイバーンやリザーダインの上乗せを考えると足りませんね。でも奴らを出してもサイズ的に的になる気がします。
結果的にウルフの方が良さそうです。それならキャパシティは十分。
「無視されてんぞお前」
「そりゃ無いぜセニョリータ!」
結局は私自身を強化するしかありませんか。使役がメインでもありませんし。
普段の行動とフリーフォーオールで確実に必要な《空間認識能力拡張》。そしてエイボンの書による何かしらの効果があるだろう《古代神語学》。後者はイベントまでにカンスト。前者はイベントまでにできるだけ上げたい。
「待って、スルー力高すぎるでしょ!」
属性金属を売り、魔鉄を受け取り次第狩りですね。平日は《古代神語学》と生産に時間を取られるでしょうから、やっぱ土日で狩りしておくのが1番ですか。
となれば、早速売りに行きますか。
「お、姫様がナンパされてるでござる!」
「ごきげんよう、ムササビさん。はて、ナンパですか?」
「……あれ?」
何やらムササビさんがシクシクしてる男性を哀れんで見ていますが、どうしたんですかね。
「そう言えば、南おめでとうございます。どうでした?」
「んー……まだ港町から出てないでござるからなー」
「おや、探索はまだでしたか」
「町自体は特に代わり映えしなかったでござるよ。姫様はダンジョンでござろう? 楽しかったでござるか?」
「ええ、結構ハードでしたよ」
「むぅ。南かダンジョンか悩むでござるなぁ」
「私はもう、公式イベントまで大体予定が決まりましたからね……」
「計画的でござるなー。邪魔するのはやめるでござるか」
ムササビさんと別れ、エルツさんのお店でライチウムを単価500で売り、魔鉄を預けて離宮へ飛びます。
全属性の金属を11本ずつ作成して、再びエルツさんのお店へ。いつも通り武器の半額で買い取って貰い、商業組合で魔石の補充をします。
貯金が9Mになりましたか。良いことです。
では、狩りに行って夕食。その後生産して就寝でいいでしょう。
ステルーラ様の問も考えておかないとですが、これはリアルで考えておきましょうか。全てを使って1文にできれば良いのですが。
よし、やることはやったのでレベル上げに行きましょう。
深淵の城はアノール・ロンドでも思い浮かべて。
《古代神語学》は架空言語なので調べても無駄です。
視界は広くても意識はステータスとインベのUIに向いていて、スルーされた悲しい3陣は出てきません。
主人公に自分が話しかけられていると意識させなかったのが敗因。