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73 北東第四エリア ヴァルオワッセ

 朝起きて、平日分の委託売上の回収へ向かいます。

 ジャーキー、ホットドッグ、オニオングラタンスープ、五行札、魔粘土。そしてエルツさんに属性金属。

 委託分の手数料も引かれて、合計674万。5日間の合計ですが、素晴らしい儲けです。施設分の回収は楽でしたね。ジャーキーとホットドッグがとても良い効率。


 とりあえず必須レベルの施設は買ったと思いますし、ニフリートさんにアクセでも頼みましょうか……。

 後はダンテルさんに目隠し用の装備も頼みたいですね。


 一度ログアウトして朝食などを済ませます。



 そして午前中のログインです。

 ふとご飯を食べてる時に思ったのですが……キャラクリで目閉じにした場合、このゲームだとどうなるんでしょうかね。

 中央広場のベンチに腰掛け、掲示板で検索をかけます。


 オプションで通常を目閉じに設定する事が可能。この場合見た目通り見えないようにするか、通常通り見えるようにするか設定が可能……と。特に縛りプレイがしたいわけじゃないなら、目閉じや糸目キャラは後者の設定を推奨。

 やはりそうですか。目閉じキャラとか糸目キャラは一定数人気ありますからね。ですが、通常通りに見えなくなったらやってられません。そのための設定なのでしょう。

 意識すれば目を開けることが可能なので、どっちの設定でも状態異常の暗闇は普通にかかる……と、これは運営が言ってますね。


 ……これを利用すれば目隠しは不要ですね。強いて言うなら、リアルの方のお金が微妙にかかると言うことでしょうか。

 目隠しをアクセ枠で作って貰えば、ステータスも上がるので悪くはないのですが……煩わしそうなのと、ビジュアル的な問題が?

 ダンテルさんは……いますね。製作者と話した方が手っ取り早いでしょう。


「……お? やあ姫様」

「おはようございます。少々相談がありまして」

「珍しいな。なんだ?」

「目隠しやアイマスクなどのアクセは作れますか?」

「んー……まあ、可能だな」

「スキル関係で目隠しが重要なんです。目隠しか、キャラクリで弄るか。悩んでまして」

「ふーむ……怪盗とかのパピヨンマスク? あれなんかも作ろうと思えば可能だろうが、問題は留め方か?」

「システム的なあれはないのですか?」

「『留めれるような構造がある』なら機能するが、そうじゃないならしないんだよ。だから浮いてるような、『それどうなってんの?』は現状無理だな。できるようになるのは判明してるが、スキルレベルが足りん。エクストラか3次スキルだろう」

「んー……アクセ枠をいい加減埋めようかと思ったのですが……。遮ることができればいいのですが、デザイン的にはどうです?」


 私を下から眺め、回るように手をくいっとされたので回ります。


「うーん……1番簡単なのはハチマキみたいに目を覆って後ろで縛ればいいが、それだと髪型は変える必要があるな。それに今の服装的にも微妙だろう」


 後ろはクリスタルロータスの留め具がありますからねぇ……。


「あー……メガネだと欲しい効果を得られるか?」


 メガネを受け取ってレンズ部分に布を折って合わせますが、いまいちですね。


「一応効果はありますが、これでは誤差ですね」

「求めるほどの効果は得られない……と。ゴーグルとかにしないとダメか。それはちょっとなぁ……眼帯も両方に付けたら間抜けだし……」


 ダンテルさんとあーでもないこーでもないと試したりもしますが、どうにもしっくり来ませんね。


「と言うか、取り外しは考えなくても良いのか? 切り替えも重要なんだったら、キャラクリが1番な気もするが」

「あー……ちょっとプリムラさんの試射場を借りてきますね」

「おう」


 確かに、メガネとかならまだしも巻くタイプとかだと困りますね。

 とりあえずダンテルさんのお店を一度出て、近くにあるプリムラさんのお店に入り、そこから試射場へ。

 ここなら距離が分かりますからね。的が範囲に入る位置で距離が分かるでしょう。


 その結果、だいぶ分かりました。

 まず銀の鍵は2倍の補正があります。そして目閉じは1.5倍。

 素の状態で的から私が23メートル。私を中心に球状なので半径ですね。倍にして直径46メートル。そして私の《空間認識能力拡張》は現在23レベル。

 銀の鍵を装備すると的から私が46メートル。直径92メートル。

 更に目を閉じると的から私が69メートル。直径138メートルです。


 そして掲示板を見る限り直射は短弓が40メートル。長弓が50メートル。和弓が60メートル。

 つまり直射は範囲内に入りました。問題は曲射されると120メートル、160メートル、200メートルなので範囲外に出ます。ですが曲射はまあ……比較的余裕があるのでこの際良いとしましょう。

 曲射より機械弓……クロスボウですね。これの直射が100メートル。ただし、50メートルから威力減衰と、命中率の低下が発生するようです。曲射は実質不可で、音は煩いらしいですが、近距離は強いらしい。


 魔法は魔法により射程が違うのでなんともですが、基本的には長弓ぐらい。


 何はともあれ、100メートルは欲しいですね。それまでアクセにするのは危険でしょうか。

 目を閉じないと長弓と和弓が範囲外に出るのはよろしくないですね。スキルレベルが半径とイコールだとすると、大会前までに30にしなければ。そうすれば銀の鍵だけで半径60メートルにはなるはずです。

 理想は33……66の1.5……じゃ妖怪1足りないですか。34ですね。


 つまり……切り替える必要性があるため、装備で用意するのはまだ向かないという事ですね。

 ダンテルさんに連絡しましょう。


「検証の結果、切り替えが必須そうだと判明しました」

『そうか。じゃあ見送りだな。他になにかあったら来ると良い』

「そうさせてもらいますね。ではニフリートさんのお店へ行ってきます」

『ああ、じゃあな』


 プリムラさんのお店を後にし、今度はニフリートさんのお店へ向かいます。


 ニフリートさんのお店は……お洒落ですね? 《細工》系の生産者なので、簡単に言えば装飾品店です。宝石店でも良いかもしれませんが、基本的に宝石単品で売っているわけではありません。

 ゲームの装備的に言うとアクセ屋。ネックレスやイヤリング、指輪に腕輪などのアクセを売っているお店。

 ニフリートさんは……店員さんの横で作業中ですか。


 むむ、ティーカップにソーサーのセットですか。ハウジング用の小物……欲しいですね。《料理人》の【テーブルウェア】は魔力で作った入れ物でしかないので、デザイン性は皆無です。

 気に入った柄……安定の白地に青で描かれている物を手に取り、確認します。……中々本格的ですね。そんな高くありませんし、買いましょうか。む、魔粘土で作られたティーカップもありますね? 明らかに値段が違う。


「おや、おはよう姫様」

「おはようございます、ニフリートさん。作業は終わりましたか?」

「店舗にいる時は本格的にやる前処理みたいなものだから、一応中断は可能なの」

「そうでしたか。こちらの食器類も《細工》系なのですか?」

「それは合作だよ。別の人が形を作って、私が模様入れて、作った人が焼くの」

「私の魔粘土で作られてるっぽいのは……」

「買ってるって言ってたねぇ……もっと数欲しいとも言ってたけど」

「魔粘土は優先度が低いんですよねぇ……」


 値段的にはそこそこですが、使う人がそもそも少ないんですよね。それなら蘇生薬を作った方が……。

 とりあえず魔粘土で作られた方を買いましょうか。2万ですね。1万が粘土代として、残りを山分けでしょう。


「まいど」

「ところで、アクセを買いに来たんですよ」

「ああ、目的はそっちだったのね。欲しいステータスと形、宝石は?」

「指輪ですかね? 器用・体力・知力・精神辺りで、光と闇でしょうか」

「んー……これかな?」


[装備・装飾] ヘマタイトの指輪 レア:Ra 品質:B+ 耐久:140

 丁寧にカットされた大粒のヘマタイトが付いた指輪。

 装備者の知力を強化する。

 製作者:ニフリート

《鑑定 Lv10》

 MDEF:△

《鑑定 Lv20》

 知力上昇:中

 闇系統魔法強化:中

 闇系統魔法耐性:中

 暗闇耐性:中


 あれ? 強い。ああ、でも……防御力は守護シリーズの方が高いですね。

 宝石がついてない指輪もありますが、魔法系の強化は無し。つまり値段差が凄い。


「何個必要なの?」

「まだ7ヶ所空いてるんですよ」

「そんな空いてたのね。結構な額になっちゃうけど……」

「生産で稼いだので、そこは問題ありません。2Mあれば足りますよね?」

「7個なら……1.8(いちはち)ぐらいかな? 宝石持ち込みなら1.4(いちよん)


 持ち込みで140万ですか。少し売りましょうかね? 正直宝石より、魔鉄が足りませんし。

 器用2、体力1、知力2、精神2ですかね。宝石は……セレスタイト4、ヘマタイト3でしょうか。

 闇系統魔法強化は種族でもされてますし、何より闇吸収の私に闇耐性は無意味です。どうせなら等倍である光耐性を優先しましょう。


 セレスタイト4個、ヘマタイト3個を生贄に、140万で指輪7個を購入。


 早速装備して、まさにゲームな事をします。それは……装備枠の横にそれぞれある、目玉マークを潰していきます。すると指に嵌っていた指輪が消えて、邪魔になりません。

 これ強いけど見た目気に入らないとか、装備の見た目に合わない場合に使用します。見えなくなるけど装備はしてるので効果は発揮したまま。

 なお、この機能はアクセサリー専用です。武器とか盾には勿論使用できませんし、各部位の防具にも使用できません。そっちはアバター枠使えと言うことですね。


 今まで装備してなかった部分に装備できたので、これで結構強化されたと思うんですよね。

 後は背と外套が空いてますが……この2つはまあ、良いですかね……。


 ああ、そうだ。ワーカー用のカバンを買おうとしてたんでした。


「ではダンテルさんのお店に行ってきます」

「毎度どうも。あんま耐久減らないけど、壊れる前に修理持ってきてね」

「気をつけておきますね」


 ニフリートさんのお洒落なお店を後にして、再びダンテルさんのお店へ。


「お? また来たのか。どうした?」

「ワーカー用のカバンを買おうとしてたんですよ。忘れてました」

「ワーカー……ああ、あれか」


 ダンテルさんに収納系を見せてもらいます。

 背中のバックパック。手提げバッグ。腰のポーチ。容量としてはポーチ<手提げ<バックパックですね。

 正直武器などが持てなくなる手提げはゴミらしいですが。

 バックパック安定ですかね。


「これ、これにしましょう。背負い籠」

「敢えてそれか……」

「背負うの骨ですからね」


 3万で10枠の背負い籠を購入し、ワーカーに装備させて召喚します。


「なんというか、シュールだな」

「まあ……これで受け取りが楽になるので、良しとしましょうか」


 ワーカーの籠に手を突っ込んでみると10枠のUIが出てきます。


「お、こっちも【インベントリ操作】が可能なんですね」

「《空間魔法》か」

「お? ん……?」

「どうした?」


 インベントリ共有化と言う選択肢が出ているので、押してみます。

 すると銀の鍵が腰から浮き、ワーカーの籠の開いている空間に刺さり、開けるように回ると……鍵は腰にワープして帰ってきました。


「なんだ……?」

「なるほど……この籠も私のインベントリのショートカットになっていますね」

「なに? 《空間魔法》か? それとも銀の鍵の効果か?」

「恐らく両方です。【インベントリ操作】と銀の鍵の連携かと……」

「むむむ……流石アーティファクトと言うべきか……」


 私の装備しているベルトポーチと同じく、ワーカーの籠もショートカットに。

 共有化された事で背負い籠の10枠が私のインベ枠を増やし、ワーカーが背負い籠に入れると直接私のインベに入ると。最高ですね。

 他の素体にも装備させて共有化すればインベ枠が増える……でしょうけど、もはやインベに困ってないんですよね。【インベントリ拡張】が無くても良いぐらいには。もはや《空間魔法》に常時経験値を入れるため、使用しているような状態です。

 そもそもインベがパンパンだったのは食材達のせいで。それらを生産キットの収納にしまえるようになった時点で解決済みです。

 という事で見た目の問題的にも無しですね……。ワーカーだけで十分でしょう。


「背と外套が空いているのですが、何かありませんかね?」

「背と外套ねぇ……。ドレスなのが最大の問題だな。大体背はバックパック。外套は冷寒耐性だから悪天候時にお薦めだが……不死者には関係ないっけか?」

「環境ダメージ系は進化してから関係ありませんねぇ……」

「両方無くても良さそうだな。欲しいならショールとかストールになるか? あのお嬢様達用に作っておくか……。アプデ情報に天候もっと変えるとかあったな」


 エリーとアビーは必要そうですね。

 そう言えば、もっと天候変化を頻繁にさせるとか書いてありましたっけ……。その方が変化があって面白そうですが、対策も必要になりますね。

 【遮光機構(アンソール)】無くなったんですよね……。《空間魔法》系で何か工夫できませんかね? まあ、天候崩れたら検証しながら考えましょうか。


 これ以上は特に買うものがなさそうなので、ダンテルさんのお店を出ます。

 少し早いですが……お昼にして午後に備えましょうかね。



 昼食後、ログインする時にワールドではなくキャラクリへ行き、目を閉じた状態をデフォルトに設定してからワールドへ接続。

 うん、ちゃんとなっていますね。範囲も広がっていますし、目を開けるには割としっかり意識が必要と。びっくりした時とかに目が開かなければ問題ありません。これで良さそうです。


 《空間認識能力拡張》を上げるには、もしかして町中でこれを使用して観察するのが1番効率良いのでは……?

 人が多い始まりの町の中央広場……ここが1番活かせる? それはつまり経験値の入りも良いわけで……。時間までここでスキル上げしましょうか。


「……お姉ちゃん何してるの?」

「お姉ちゃん今スキル上げ中」

「ここで?」

「そ、ここが効率良さそうだなって。運動会までにある程度上げたいから」

「……感知系?」

「せっかく取ったレアスキルだから、最大限活かすために目も閉じました」

「まじか……」


 感知系と言えば感知系でしょうか。この視点は《感知》と《看破》系スキルを最大限活かせるでしょう。

 基本的には人間の視覚情報ですが、確か蛇系が熱源感知系持ってるんでしたっけ。《空間認識能力拡張》は心眼の方が近いかもしれませんね。

 まあ、レアスキルなので秘密です。


「お姉ちゃんお昼は?」

「もう食べたよ。午後からスケさん達と第四目指して狩り行くから」

「どこー?」

「フェルフォージ」

「北東かー」


 アルフさんがフェルフォージにいますね。スケさんはまだですか。まだ時間はありますし、もう少しスキル上げに勤しみましょう。

 妹はご飯を食べに一度ログアウト。


 お、上がりましたね。

 プリムラさんのお店でチェックした感じ、スキルレベルがそのまま半径で良さそうです。

 さて、銀の鍵でフェルフォージの中央広場へ。


「ん、やあ姫様」

「こんにちは、アルフさん」


 出たところにアルフさんがいて合流。

 アルフさんがスケさんを呼んで集合っと。


「やあやあ!」

「よし、じゃあ行こうか」


 アルフさんが馬なので、私とスケさんもワイバーンではなく馬を召喚します。


 第四エリアにはフェルフォージから右上に斜めに抜けます。フェルフォージの北と東は山なので、間の低くなっている部分を道とし、そこを通る事になりますね。


 アンデッドの馬はとても良い。スタミナという概念がないため、常にトップスピードを維持できる。襲歩……とも言いましたか。

 しかしですね……このマップは相手がゴーレムなんですよ。まあ、つまり……相手も常に最高速度で追って来ますよね。


「ゴーレムライダーが追ってくるなぁ」

「追ってきますねぇ……」

「速度は遅いし振り切れるべー。前に人いたら倒そう」


 ゴーレムの乗り物にゴーレムが乗ってる、アイアンゴーレムライダー。乗り物の方は犬に近く、上は人っぽい。

 ゴーレムなのだから、乗せる必要は無かったのでは……?


「あれ、ケンタウロスのようなゴーレムではダメだったのでしょうか?」

「ケンタウロス型よりはあれの方が弱そうだし、わざとじゃないかな?」

「確かに、敢えて欠点などを作るため……と言う可能性もありますか」


 他にもガーゴイルやアイアンウルフなどもいますが、付いてこれそうな敵はいませんかね。

 アイアンウルフが厄介と言えば厄介でしょうか。毛が鉄のように硬いウルフです。色も鉄っぽい。動物なので速いですが、スタミナあり。

 ゴーレム系は重量があり遅いですが、スタミナなし。


 これと言った問題は無く、第四エリアまで行けそうですね。


「クックック、フハハハハ、ハーッハッハッハ! 僕は最速!」

「俺ら並走してるけどな」

「……クックック、フハハハハ、ハーッハッハッハ! 僕らは最速!」

「やり直すな!」


 三段笑いですね。笑いの三段活用とも言いましたか。主に悪役用ですけど……見た目的には似合うのでは? なんたってリッチです。骨ですからね。


「お、もうすぐ第四ー」

「まだ碌な敵情報無かったんだよね。アイアンからスチールになってるらしいけど、それぐらいしか分からなかった」

「鉄が鋼になりましたか。速度が変わらないなら振り切れるでしょう」


 上り坂だったり下り坂だったりと、上下に忙しい山道を疾走する事しばらく。第四エリアへと入り、チラチラと脳内3Dマップで敵を察知します。アルフさんの言うようにスチール系になっていますね。

 正直色や質はまだ分かりませんが、《識別》などの『見る』事が条件のスキルは動くんですよね。名前と形が分かれば、色や質は大体察せます。このゲームに魔眼系があるかは分かりませんが、少々気になりますね。


 敵のレベルは42~45。マーダーガーゴイル、スチールゴーレムライダー、スチールゴーレムウルフが確認できます。

 マーダーガーゴイルだけよく分からないので、目で確認します。片刃で軽く反った片手剣を持ってますね。ブッチャーナイフを片手剣レベルにまででかくした物……でしょうか。流石マーダー。殺る気満々ですね。体はまあ……ゴブリンを大きくして、質を石っぽく翼を生やした感じでしょうか。

 まあつまり……。


「いまいち格好良くないですよね……ガーゴイル」

「んだねぇ……」

「ねー。リアル寄りってか……夢がないー?」

「そうだなぁ。ロマンがない?」


 いまいちこう、盛り上がりに欠ける見た目です。

 スチールゴーレムウルフはウルフ型の鋼鉄ゴーレムです。ついに生物じゃなくなりました。


「でも様子見に来たやつが突然死んだって言ってたんだよね。原因が分かってないから注意しといて」

「あいよー」

「分かりました」


 あまり代わり映えのしない山道を疾走することしばらく、脳内3Dマップの上空に敵を発見。

 そして《危険感知》が起動。3Dマップにしっかりとルート予測がされています。

 当然本来の視覚情報だけだと見える範囲しか表示されないので、かなり有利です。つまり上空から斜めに……視界に入らず掠るように当たる場合は《危険感知》が見えないわけですが、そこで《直感》です。お互いがお互いをカバーし合うので、この2つのスキルは両方取るとかなり便利ですね。


 上空からの奇襲。かなりの速度ですね……敵はスカイゴーレム。

 指示は素早く簡潔に。


「上空! 散開!」

「「むっ!?」」


 《危険感知》は自分が狙われた場合、または自分が範囲攻撃に入っている場合……ですからね。他者の、PTの……は主に《直感》側のお仕事です。《直感》の本領は他のスキルの強化、もしくは拡張でしょう。

 『気づいた』ので、2人も私を狙うラインが見えたはずです。すぐに三角で先頭を走っていた私を避けるように広がり、私は逆に速度を急激に落とします。常にトップスピード……最大速なので、加速して避けるのは不可能ですからね。


 減速したことによりタイミングがずれ、私の前方にスカイゴーレムが地面を爆ぜさせながら……ぶっちゃけ墜落では?

 飛び散る地面と土煙。目では見えないので脳内3Dマップの方で警戒しますが、動いていませんね? ランスで攻撃してみますが、普通に当たっているようです。


「奇襲後は硬直でもあるんですかね……」

「動いてないのかい?」

「動いてないですね……」

「【ノクスプロード】!」


 スケさんの爆発も当たり、土煙もそれで晴れます。

 現れたスカイゴーレムは地面に足を埋め、翼が地面に突き刺さっているようです。翼を動かし地面から抜き放ち、飛ぼうとしていますね?

 勿論飛ばせる気はありませんが。


「あ、動き始めた。約6秒の硬直? かなり長いですね」

「おぉ! スカイゴーレムかっけー!」


 かっけーと言いつつ、魔法を撃ちまくるスケさん。

 羽ばたき地面に埋まった足を引っこ抜いて浮かび上がります。が、そこをアルフさんが両手剣で叩き落とします。


「よいしょぉ!」


 叩き落とされたところで私とスケさんの魔法が当たり討伐。

 私が取り込んで移動を再開します。


 スカイゴーレムは色的にも恐らく鋼でしょう。本体のサイズは子供ぐらいで、特徴的なのは翼。緩やかなカーブを描いた翼は、剣が3本ずつぶら下がっていました。シルエットは細身ですが、ところどころがとても鋭く、足は鷹のようでした。

 上空からの奇襲は足と翼の剣を、鋼の体という重量と降下速度に物を言わせて突き立てるようですね……。


「掲示板の情報提供者が即死した原因はあの落下攻撃かなぁ……」

「恐らくそうだと思います。足と翼の剣による特殊攻撃や特殊行動でしょうね」

「僕に来たら死ぬだろうなー」

「現状だと俺でもきついんじゃないかね? 角度的にも防ぎづらいだろうし……」

「あの地面の爆ぜ具合がただの演出か、それだけの威力があるかですよね」


 恐らく斥候型だと思いますが、ここまで来ている人を即死させたので、それだけの威力はあるのでしょう。スケさんは間違いなく逝きますね。


「格好いいから僕も素体欲しいなー?」

「走ってればどうせ向こうから来るだろ」

「来るでしょうね……」

「使うかはまた別の話だけど!」


 まあ、格好いい=強いではありませんからね……。

 同じ動きをさせても……召喚した場合金属ではないので、重量差であそこまで威力は出ないでしょうし?


 む、やっぱり来ましたか。今度はあのセリフですね。


「上から来るぞぉ!」


 再び減速して正面に落とし、【魔力増幅マジーアアンプ】と【六重詠唱ヘキサスペル】を使用して魔法を撃ち込みます。

 スケさんは【ノクスエクスプロージョン】で土煙を飛ばしてから単体魔法に切り替え。

 アルフさんはスケさんが土煙を飛ばすのを確認したら、騎乗のまま走ってきて思いっきり両手剣を振り抜きます。勿論アーツで。

 落下直後は硬直が長いことを知っていますからね。そこを袋叩きにしないと言う選択肢がありません。飛び立つ前に叩き潰すに限ります。

 スケさんが倒したスカイゴーレムを取り込み、移動再開です。


 スチールトータス、スチールゴーレム、スカイゴーレムが町周辺ですね。

 スチールトータスは人間の子供ぐらいあり、甲羅が剛鉄製。ドロップは鉄鉱石でしょうか? それならアイアントータス狙った方が良さそうですが……。

 スチールゴーレムは剛鉄製の3メートル近くある塊です。ゴーレム達は関節が繋がってなく、各パーツごとに孤立して浮いている不思議生物ですね。まあ、それを言ったら我々不死者も含め、魔法生物自体が不思議生物ですけど。

 ファンタジーですからね。


 たまに降ってくるスカイゴーレムを叩き潰しながら町へ。


「うーむ……。ゴーレムを剣で叩くのはやっぱあれだなぁ……」

「耐久の減りが早いですか?」

「下手に振るとへし折れるし、地味にプレッシャーあるよ。まあ両手剣だから耐久は十分あるけど」

「へし折れたら笑ってやろー!」

「ハハハハ、ぬかしおる」


 スケさんは純魔なので関係なし。私は刀身が折れてもまた作れば問題なし。

 問題となるとしたら下僕達ですが、幸い装備問題が解決したので全員メイスが可能です。なんとかなるでしょう。なんとか……スケさんは覚えたんでしょうか?


「そう言えばスケさん、図書室行ってます?」

「いやー?」

「あ、これは持ってませんね……」

「おぉん?」

「『死霊の秘法と夢想の棺の考察』を読むと《死霊秘法》に【夢想の棺】【泡沫の人形】【泡沫の輝き】が追加されますよ? それと霊体系で召喚も可能に」

「なにーっ!」

「うちの賢者(リッチ)さんは頼りねぇなー?」

「ぺっ」

「おっま」


 図書室、このゲームだと結構重要ですよね。知識は武器だよ兄貴。なお、活かせる頭があることが前提ですけど。

 それはそうと、ヴァルオワッセに着いたらスケさんが本を読む時間を取りましょうか。人形の方はまだ出番がないでしょうけど、装備は便利ですからね。


 お、門が見えてきましたね。


「って、なんか随分ゴツいですね」

「ゴツいなぁ? それだけの防御力が必要なのか」

「トータスはともかく、スチールゴーレムとスカイゴーレムがいるしー?」


 当然周囲の敵相応の壁が必要と言うことですか。すぐに壊される壁作っても資金や資材の無駄ですからね……。


「お? あれバリスタか」

「特有のものじゃなければそうでしょうね……」

「ゴーレムなら的はでかいし、悪くはないのか? スカイには辛そうだが……」

「バリスタで着地狩りすれば良いのでは?」

「射線さえ通せればいけるか? バリスタの命中精度そんな良いのかね?」

「スキル補正あるし、それなりの精度になるのでは?」

「情報がなさすぎるか……」

「ですねぇ……噂をすれば」


 門が目前というところで、再びスカイゴーレムが降ってきたのでしばき倒し、何事もなかったかのように門へ向かいます。


「ごきげんよう、異人の不死者です。入っても?」

「来るだけあって良い腕だ。歓迎しよう。ようこそヴァルオワッセへ。このまま真っ直ぐ進めば主要施設は見つかるだろう」

「分かりました」


 スカイゴーレムが降ってくるぐらいでは微動だにしない。流石現地人。いつもの事ですか。

 言われた通りに真っ直ぐ大通りを進み、中央広場へ。勿論まずはポータルの開放。これで転移が可能になりました。とりあえずスケさんを送り出し、私とアルフさんは休憩です。


「ドワーフの住人が随分増えましたね」

「ドワーフの国らしいからなぁ。建物は全部石造りかな?」

「火事対策ですかね。後は……単純に石材が取りやすいからでしょうか」

「鉱石掘る時に出た石とかかねぇ……」

「しかし、工房が多いでしょうから煙が沢山出てると思ったのですが……」

「それは思った。家から出てる煙の量が少ない? もっと黒いと思うんだけど」

「不純物が少ないとか? 真っ先に思い浮かぶのは魔動炉的な物ですが」

「だねぇ。ファンタジーのお決まりと言うか、魔力が主燃料だから煤が?」

「コークスなどよりは環境に良いと言うべきでしょうか」

「魔力だけじゃなさそうだけど、何かしらあるんだろう」

「まあ鍛冶は本領ではないので、エルツさん辺りが頑張るでしょう」


 石造りの町並みで中世感が出ていますね。まあ、ファンタジーなので中世モドキですけど。別にそれっぽいなら良いですよね。忠実に再現されてあの汚さならブチギレるでしょうし? 流石に私もそのゲームをやりたいかはとても怪しい。

 と言うか、魔法がある世界であそこまで汚くなる事はないでしょう。【洗浄クリーン】というとても良い生活魔法があるわけで、水も出せます。ああなる条件は潰れているはず……。

 魔法というとても大きな違いがある世界で、同じ発展をしている方が逆に不自然さがありますよね。違って当たり前と言えるはずです。


「ごめ~ん待ったー?」

「うるせぇわ。その見た目で言うな」


 ザ・人骨。


「この後どうしますか?」

「東の第四orダンジョーン?」

「もしくはダンジョンの情報集めに組合行きか」

「ああ、採取か討伐クエストあるかもしれませんね。レベル帯も知りたいです」

「これは先に組合かな」

「そうしましょう」

「おっけー」


 まずは冒険者組合で情報集めといきましょう。


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姫さま、アクセサリー枠が埋まったのに、ファッション変わらず
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