60 スキル強化
ふむぅ……今日のお昼は洋にしましょう。
冷蔵庫にあるディスプレイに表示されている食材を見ながらお昼を決め、食材を取り出し料理を開始します。
「お姉ちゃん! 詳しく!」
「どのぐらい?」
「最初から」
「正気?」
「箇条書きで」
「ああ、うん。そうねぇ……」
要するに最初から要点だけ教えろと。経緯としてはなんだかんだ、結構長いと言えなくもないですからね。
図書館で本を読み、冥府の存在を知った。
錬金術の師匠がお婆ちゃんなので、冥府の入り口を聞いてみたら教会の人を紹介されたので聞きに行った。
紹介された教会の人が偉い人で、不死者しか見えないらしいから断言はできないけど、高確率でありそうな場所を教えて貰った。
早速行ってみたらフルボッコにされたので、少し放置してレベル上げをする事に。
イベントで上がったついでに、スケさんとアルフさんを連れてリベンジに行った。
無事突破して旧大神殿に到着。入り口を見つけて行ってみたら、種族が王家だから試練を素通りして冥府へ到達。
真っ直ぐ宰相の元へ連れてかれ、言われるがまま王座に座ったらアナウンスが流れた。
とりあえず考えるのはやめて、冥府中央にあるステルーラ様の立像にお祈りをして進化した。
その後試練から合流した2人と確認をして、今に至る。
「なるほど。じゃあスキルの確認はまだ?」
「装備とスキルの確認はご飯食べたらかな」
「装備も変わったの?」
「変わって色が灰色じゃなくなったの」
「へー! まだ現役で使えそう?」
「補正が変わってたから使えるはず?」
食事をしながら妹とゲームの話をしつつ、掲示板の方に情報を書いておきます。
「お、変なの湧いた」
「運営も大変ですねぇ……」
「まあそれは良いや。お姉ちゃんの家って他のプレイヤー行けるの?」
「どうだろ? まだハウジングアイテム何があるのか詳しく見てないから……」
確認しないといけない部分ですね。呼べないとなるとハウジングとしては少々寂しいものがありますから。
畑とかも作れるでしょうし……錬金素材でも栽培しますかね? まあ、まずは確認しないと話になりませんか。
「しかし、家名なんかも決められるんだね!」
「決めたのはミドルだけで、家名は宰相に聞いた元々あったやつだよ」
「そうなの? 元から冥府にあった家名か……下手に口にしない方が良いかな?」
「むしろ地上の人達は知ってるのか気になるかな」
「じゃあ何人かの住人に聞いてみようか」
「よろしく。夕食の時でいいや」
「わかったー」
食事を終え掲示板を見つつ、少しのんびりしたり体を動かしてからログイン。
早速ハウジングメニューから設置できる物を確認すると、ステルーラ様のミニ立像なるポータルがありますね。これを設置する事で立像からの転移が可能に。
家の開放条件はフレンドにしておきましょうか。これで立像を設置すれば、フレンドならポータルから我が家に来れますね。
立像50万ですかー。手持ちじゃなくて貯金から購入が可能なのは楽ですけど、すっからかんになりそうですね。
とりあえず必須なので購入しましょう。設置場所は……正面玄関の前に置いておきましょうか。これで私にもポータルが登録されると。そして復活地点もここにしておきましょう。
優先度が高いのはハウジング用のキッチンと、ハウジング用の錬金台……更に畑。
家具もリストにありますが、これ課金ですね。生産スキルで作ることができるようなので、私はそちらにしましょう。家具はプリムラさんとダンテルさんに発注で。
とりあえず急いで用意する物はミニ立像ぐらいですか。ハウジングとかエンドコンテンツも良いところですからね。他はのんびりやりましょう。当然のように100万単位持ってくのはちょっと。
異人用リスポン地点であるぼろ小屋のレベルアップはまだ足りませんので、放置。
ふむ……いっそのこと、早速宰相にお勉強頼みましょうかね……。エイボンの書が気になりますし。その気分転換に剣術を教えてもらうとかどうでしょう。中々良いのではないでしょうか?
しばらく交流を兼ねて冥府生活しましょうか。
そうと決まれば、突撃……隣の常夜城。
メイドさんを捕まえて宰相の場所を聞きます。
「宰相、早速言語を教えて下さい。その息抜きに剣術を予定しています」
「おお、構いませんぞ。向上心があるのは良いことですな。若い若い。しかしサイアー。最初に言っておきますが、地上の者に教えてはなりませんよ」
「そうなのですか?」
「地上は地上の進み方……と言うものがありますからなぁ」
まあ色々あるのでしょう。教えるのも面倒なので、黙っている事は別に問題ではありませんから良いでしょう。
早速じっくりみっちり教えてもらいます。
リアルで15分ほどでしょうか?
〈《魔法言語学》の理解度が10%に上昇しました〉
と、静かにログに流れたのを視線の端で捉えました。思ったより早いですね……。
宰相と話しながら時間が経つ事リアルで2時間半。ゲーム内では10時間。
〈《魔法言語学》の理解度が100%に上昇しました〉
〈《魔法言語学》が成長上限に到達したので《魔術言語学》が解放されました〉
「ん、《魔術言語学》が解放されました」
「流石サイアー。理解が早くて何より。このまま《魔術言語学》もやりますかな? ただし、こちらをやる場合ステルーラ様に誓って貰いますぞ。口外はしないと」
「ステルーラ様にですか?」
「人類はまだ《魔法言語学》も解読できてなかったはずですからなぁ」
という事は本来、《魔法言語学》でかなり足止めされるのですね? 解読できていないという事は、指南書なんかも無いでしょうし……図書館などで言語学を1からとか地獄ですね。
《魔術言語学》
一部に伝えられる特殊言語。
誰でも使えるように汎用化させたのが魔法であり、魔術はその前身である。
魔法より強力だが、扱える者は限られる。
人ならざる高位の者と接触し、友好関係を築ければ……。
……これ宰相に教わるしか道無いですね。
人ならざる高位の者って言うと、宰相だけではないでしょうし……他のプレイヤーも探せば教えて貰えるんでしょう。では遠慮無く。
SP10を消費して覚えます。残りSP54ですか。
既に3次スキルですが、更に《古代神語学》があるんですよね? SPが減りますねぇ……。
ステルーラ様に誓い、リアルも15時前なので……継続ですね。
〈《魔術言語学》の理解度が10%に上昇しました〉
……予想はしてましたが、上がりづらくなりすぎでしょう。
さっきは2時間半で100%なったのに、今3時間で10%ですが? 既に18時近いですね。
えー……リアル6時間、ゲーム内1日で20%ですか。つまり《魔術言語学》をカンストさせるにはゲーム内5日なので、リアル30時間。1日と6時間ですね。
よぉし、剣術しましょうか!
「宰相、先は長そうなので休憩しましょう。剣術です」
「ふむ、では訓練場へ行きましょう。そこにいるはずですからな」
お城の敷地の一角にある訓練場へ向かいます。勿論騎士達の訓練場ですね。
騎士とは言え、アーマーだけではありません。ゾンビも霊体も、骨もいます。その役職騎士達の元へ歩いていきます。
「グラーニン」
「あら宰相」
「サイアーに剣術を」
「スヴェトラーナ・グラーニンです。ラーナとお呼び下さい、サイアー」
それはもう見事なカーテシーをされました。
肩より少し長いセミロングで金髪の、少々鋭い青色の目をした美女ですね。レベル? さも当然のように100ですよ。
王なのだから呼び捨てで良いとのことです。
「種族は霊体系、エインヘリヤルソードマスターですわ」
……エインヘリヤルですか。流石に調べなくても知っています。
「英雄なのですか?」
「元ですね。ここでは霊体の1人に過ぎませんが、帝国の方で少し」
てへぺろっ的な感じに言われました。この人結構お茶目ですよ?
「帝国と言うとディナイトで?」
「まだあるのですね?」
「ええ。私達異人は海に手こずっていて、まだ誰も行けてないですが」
「海の敵に手こずっておられるのですか? 海ごと叩き斬れば宜しいのに」
流石ソードマスターの英雄。さらっと無茶言いおる。……ん? ここにいる間は地上に行っていないはずなので、生前でそのぐらいはできていた事になりますね。……これだから英雄は。
「さて、まずは色々確認致しましょう。宰相から情報は貰っていますが、この目でも確認したいですから」
「こちらはまだ30なのでお手柔らかに」
まず的に魔法を撃ってみろとの事。剣術は?
的の耐久などが不明なので、どのぐらい強くなったかは分かりませんが……的の耐久全然減らなかったのですが?
「ふんふん……」
宰相やラーナは分かるのでしょう。
そして、今度はラーナの攻撃を防ぐようです。
加減されているのは分かりますが、確実にギリギリを狙ってきてますね……。しかもレイピアがミシミシ言っているのですが?
「ほほぉん?」
突然背後から来たり、横から来たりですよ。銀の鍵とスキルが無かったら斬られてますね。セット効果である、反応速度強化の補正が上がったのも大きいでしょう。
「ふむ……なるほど……」
しばらく続けたら満足したのか、次は遠距離に対する確認です。
宰相が闇系の魔法を使用するので、それを反射するとのこと。闇なら万が一当たっても吸収しますからね。
宰相が放った【ダークボール】を反射するため、【ロイヤルリフレクト】で待ち受けます。すると今まで感じた事のない抵抗をしてから、あらぬ方向に反射されました。今度はミシミシと言うか、バチバチ干渉しあっていましたね……。
普段より力が必要で、反射角度が難しかったですね。
「やはり今のサイアーに合わせていると思うのですが」
「でしょうな。本来の神器ならあの程度あっさり返すでしょう。しかし、通す気は無いようで。サイアーが反応さえすれば防ぎそうですな、流石神器」
「では、やはりサイアーにはあの型を極めて貰いましょうか。私も極めきれなかった……と言うか、考えはしたものの性に合わなかった防御の型を。攻撃性に欠けますが、サイアーは魔法がありますからね」
武術はど素人なので、是非基礎からお願いしたいですね。
基本的にラーナの型は元になった古代武術が存在する。でも再現度がいまいちなのか使いづらく、これをベースに自分が使いやすいよう、実践でアレンジしていったものだそうです。
実践でってところに性格が滲み出ている気がしますが、『殺してなんぼの剣術なのに、実践で使えないんじゃ意味がない』ってご尤もな返事を頂きました。
むしろ自分の命が懸かっているだけに、無駄な動きが省かれるんだとか。後は帰った時にできる限り思い出し、繰り返し体に覚えさせる。
完全に武人なキャラ設定ですね。
「まずは見て下さいね。これが基本の構え。そしてこれが守りの構えですが、これは近接である私用なので、サイアーに覚えて貰うのはこちらの方です」
少しだけ体勢が違うようで。斬りかかれるよう多少重心が前でしたが、私は遠距離なのでその必要がないわけですね。
「《宛転流王女宮護身術》は私からすれば時間稼ぎ用です。近接はパリィ、遠距離をリフレクトで宜しいですね?」
「はい、それが理想ですね」
「ではサイアーが基礎の型を覚えている間に、調整しておきます」
『目指せ、脱見習い』
剣術の師匠、スヴェトラーナから認められろ。
1.解放スキルの取得。
依頼者:スヴェトラーナ
達成報酬:称号
クエストも発生しましたし、基礎からじっくり教えてもらいましょう。
私をラーナに任せて宰相は戻っていき、私は騎士の人達に混じって訓練します。
しばらく宰相とラーナを往復しましょうかね。型も時間かかるでしょうが、スキルはどうなるんでしょうね? 実に楽しみです。
という事で、数日ほど籠もり往復しました。現在4日目、水曜日でございます。
朝食を終えログイン。
離宮の庭で道に沿って咲いているクリスタルロータス達を見つつ、常夜の城へ向かいます。
ハウジングは少しレイアウトを弄っただけで、特に追加はありません。基本的に宰相とラーナを往復なので、他はさっぱりですね。
「宰相、続きをやりましょう」
「そろそろ終わりそうですなぁ。《古代神語学》は教えられませんし……」
「そうなのですか?」
「あれは外なるもの達の領域というか、年代と言うか……。そもそも本来なら必要ない言語ですからなぁ……」
「この本が特殊すぎるだけですよね。近い内に頼んでみましょうか」
「そうしてくだされ。さあ、始めましょう」
〈《魔術言語学》の理解度が100%に上昇しました〉
〈《魔術言語学》が成長上限に到達したので《古代神語学》が解放されました〉
《古代神語学》
遥か昔に失われたとされる、全ての言語の原型となる最古の言語。
遥か昔から存在する彼らと接触ができれば……。
レアスキルに昇格……つまり消費SP16……あれだけあったSPがゴリゴリと。
ラーナの方も16持ってかれそうな気がしますねぇ……。
まあ、取得しますよ。
まだ読めないとは思いますがチェックしましょうか。
〈特定の条件を満たしたため、《魔導の深淵を覗きし者》を取得しました〉
あれ……装備強化でもスキル解放でもなく、取得?
《魔導の深淵を覗きし者》
禁断の知識が込められた超古代の魔導書の解読を始めた。
魔導書から知識の一部が流れ込んでくる……。
最大MPとMP回復速度に大の補正を加える。
言葉が分かってしまう以上、強制だったようですね……。種族ではなく普通の方ですか。効果は地味ですが、とても優秀。
強化が捗って実に楽しいですね。ゲームの醍醐味です。
さて、少し早いですがお昼にして、午後はラーナの方へ行きましょうかね。
昼食を済ませ訓練場へ向かいます。
アルフさんをたまに訓練場で見るんですよね。今は時間的にいませんけど。
「ラーナ。今日も頼みますよ」
「ごきげんようサイアー。最大限サポートさせて頂きますよ」
型だけではなく、ちょくちょく模擬戦をします。これでもスキルレベルは上がるようですよ。まあ、ゲーム的に上がりづらくなっていると思いますが、0じゃないならやっていればそのうち上がるわけで。
〈《死を纏うもの》がレベル20になりました。スキルポイントを『1』入手。効果が上昇します〉
〈《自動回復特性》がレベル30になりました。スキルポイントを『2』入手〉
〈《自動回復特性》が成長上限に到達したので《回復特性》が解放されました〉
〈《生気吸収》がレベル30になりました。スキルポイントを『2』入手〉
〈《宛転流王女宮護身術》がレベル30になりました。スキルポイントを『2』入手〉
〈《宛転流王女宮護身術》のアーツ【ロイヤルスフィア】を取得しました〉
〈《MP超回復》がレベル20になりました。スキルポイントを『1』入手〉
〈《細剣》がレベル25になりました〉
〈《細剣》のアーツ【エクリクシス】を取得しました〉
アーツが無いスキル達も、通知が無いだけでログには流れますからね。
【エクリクシス】
突き刺した対象を内部から爆発させる。
【ロイヤルスフィア】
全方位防御を行う。
【エクリクシス】は中々の威力でしたよ。突き刺さりさえすれば。避けられたりすると爆発が発生しませんでした。つまり外すと隙のできるただの突きに。
【ロイヤルスフィア】は効果時間中、自分の周りに膜のようなエフェクトが出現し、攻撃を防ぎます。対範囲魔法に便利ですが、クールタイムが長めですね……。まあ、無いよりは遥かに良いので良しとします。
《回復特性》は……自動が外れた名前通りですね。自動回復のみから、回復判定が入ったら回復量に上乗せされると。これは不死者固有スキルなので、消費SP3。取得しましょう。優先度がかなり高い、もはや必須級のスキルです。
そんな強化作業なんかもしつつ、ラーナや騎士達と訓練してた結果。
〈今までの行動により《古今無双・一刀流》が解放されました〉
さらばSP16よ。容赦なくレアスキルが私のSPを食べていきますね……。
〈《古今無双》を取得しますか?〉
勿論ですよ……っと。
〈《古今無双》と《宛転流王女宮護身術》は同時に存在できません。《古今無双》をよくご確認の上、選択して下さい〉
運営が念押しして来てますね……。大人しくしっかり確認しましょう。
《古今無双》
古代武術を剣姫スヴェトラーナがアレンジした古代剣術。
自分を守り、相手を叩き斬る事だけを追求した超実用型剣術。
クールタイムなどが無い代わりに、動作(型)を覚える必要がある。
再現度が高いほど効果が上がるが、同時にアーツのセミオートを失う。
【Ex 基本の型】
つまり……システムによる体のサポートが無くなるんですね? 元々私はマニュアル戦闘派なので、そこは不要ですが……。
それよりも気になるフレーバーテキストが、『古代武術を剣姫スヴェトラーナがアレンジした古代剣術』ですかね……。剣姫スヴェトラーナというワードも気になりますが、どれだけ古代と?
……あ、ああ、そうか。ここにいるラーナさんは既に死んでましたね。どのぐらい前の人か分かりませんが、『元となった古代武術があるけど、ラーナの使用してた剣術ももう古代だから』って事ですね?
何百年すれば古代判定なんでしょ。もしくは4桁か……。
それにしても、これは大きな賭けですね……。
「どうされました?」
「《古今無双・一刀流》が解放されましたが、少々悩んでいるのですよ」
「ふむ? あのアルフと言う異人はともかく、サイアーは悩む必要無さそうですが。《護身術》はどんな状況にも対応できるものですが、広く浅くの時間稼ぎです。そんなものこちらからしたら基本の型ですから」
「基本の型という事は、別の型も教えてくれるのですよね?」
「勿論ですわ。一番最初にお見せしましたでしょう? 基本さえ覚えれば他の派生は応用ですので、サイアーならすぐ覚えるはずです。これから【気流の型】と【流水の型】、それに【鏡の型】をお教え致します」
3つの型を教えてくれるのですね。
《宛転流王女宮護身術》が消えるのはSP的にかなり痛いですが……仕方ありませんか?
「サイアーの動きを見ていた感じ、不自由そうには感じませんでした。むしろ《護身術》よりもやりやすくなる可能性が高いです」
クールタイムが無くなるのは非常に大きい。型をなぞる必要がありますが、RPの一環と考えてしまえばむしろありですか。
よし、取りましょう。SP4しか回収できてないので、マイナス6ですが……さらば護身術。
〈《古今無双》を取得しました〉
〈特定の条件を満たしたため、『称号:古代剣術後継者』を取得しました〉
〈『守護のアサメイ』が持ち主に適応しました〉
『目指せ、免許皆伝』
剣術の師匠、スヴェトラーナから認められろ。
1.6個の『型』を習得せよ。
依頼者:スヴェトラーナ
達成報酬:称号更新
古代剣術後継者
剣姫スヴェトラーナの使用していた古代剣術・古今無双の中でも、一番得意とされる一刀流を扱う者の証。
地上でも長きにわたり継がれているようだが、既にただのチャンバラに見える。
型の効果がフルスペックで発揮可能。
地上でも道場や騎士団で続いているのでしょうね……既に劣化しているようですが。効果が低いのでしょう。
15時ですか。引き続き重要であろう3つの型を教わりましょう。
ちなみにアサメイは《宛転流王女宮護身術》が消えて、《古今無双》に変わっていますね。【基本の型】ではなく、派生型使用時の効果が上がるようです。
「ではまず【気流の型】ですが、これは足運びがメインです。ほぼ【基本の型】に入っているので、すぐでしょう。一番楽な派生型です」
〈特定の条件を満たしたため、《古今無双》にエクストラアーツが追加されました〉
「そして【流水の型】。こちらは魔法以外の受け流しに特化した型です。型自体は難しくありません。実践で扱いきれるかはまた別ですが、《護身術》時代の下積みがあるので、むしろやりやすく感じる可能性が高いですね」
〈特定の条件を満たしたため、《古今無双》にエクストラアーツが追加されました〉
「最後に【鏡の型】です。遠距離攻撃を反射する事に特化した型になります。こちらも実践で扱いきれるかはまた別です。こちらは型も実践も難しいですが、サイアーの空間能力ならきっと……私より使いこなしてくれるでしょう」
「期待が重いですね」
「無駄な期待はしない主義です。サイアーなら使いこなせさえすれば、囲まれても十分なはず。ぜひ魅せて欲しいですね」
ニッコニコですこの人。ガチですね……。やりますけど。一番欲しい型ですから。
〈特定の条件を満たしたため、《古今無双》にエクストラアーツが追加されました〉
「流石サイアー。理解が早く、思い通り動かす器用さもあり、忍耐力もある。そして体幹も十分。教えるのがとても楽しい」
「3つ覚えるのに半日以上掛かっていますが……」
「十分です。むしろ脅威ですね。基本派生型は後3つありますが、いかがなさいます?」
既にリアルは19時近いですからね。ここまでにしましょう。でもその前に、残りの型を聞いておきましょう。
「残りは【対人の型】と【対魔物の型】。名前通り対人と魔物を想定した攻撃の型です。そして【守りの型】ですね。防御に重点を置いた型になります。サイアーと模擬戦したり見てる感じ、出番は無さそうですから。流水と鏡、頑張って下さい」
「分かりました。そろそろ地上にも行きたいところですし、一旦ここまででしょうか……」
「いつでもお待ちしておりますので、続きをやりたい時に」
「その時はお願いしますね」
ご飯まで少しあるので、スキルの仕様を確認しましょう。
【Ex 基本の型】には……複数のアーツが存在すると。
【剣技強化】【斬撃強化】【脚力強化】【防御強化】【受け流し強化】【反射強化】が存在し、それぞれのアーツが現在の『型』に合わせて強化される。
【Ex 基本の型】の間は6個全てのアーツが発動するけど、補正値が低い。
【Ex 流水の型】の間は【剣技強化】【斬撃強化】が失われるけど、【受け流し強化】の補正値が跳ね上がる……と。他の補正値に変化は無い。
【Ex 鏡の型】の間は同じく2つが失われ、【反射強化】が跳ね上がる。同じく他の補正値に変化は無い。
確かにとても強いが……『型』をちゃんとできている事が前提。できていないと補正値は全て0。頭に浮かぶ動作を、どれだけ正確に再現できるかなスキルですね。
そして頭に浮かぶ動作自体にブレがあるのは、スキルレベルの低さや知力依存かもしれませんね……。
宰相やラーナが気になる言い方するんですよね。『理解が早く、思い通り動かす器用さもあり、忍耐力もある。そして体幹も十分』と。
これって『理解が早く(知力)。思い通り動かす器用さ(器用)。忍耐力(精神)。そして体幹(身体制御?)』と思わなくもないんですよね……。
宰相の場合、もし教える側の知力も影響あったら? どれだけ分かりやすく教える事ができ、教えられた側はどれだけ理解力があるか。
ゲームなので、内部データとしてステータスの数値はあるはずなんですよね。何かしらの行動において、そちらを参照しないとは思えませんし……。
そして筋トレが効果ある以上、型稽古と言いましたか。あれをした方が脳内精度が上がるのでは? 実際中の人である私も覚えるでしょうし、今後は体幹トレーニングの代わりに型稽古ですかねぇ……。
後気になるのは……アサメイの【属性収束循環機構】ですね。
死、光、闇はシンプルに即死と呪い、光属性、闇属性だったので良いのです。刀身は白と黒ですが、死だと闇より濃いですね。
問題は空間ですよ。これが分からないのです。刀身で与えるダメージが他に比べ、4割ぐらい下がるんですよね。ちなみに色は一番好きです。夜空っぽいんですよ。深い青の中に白い星のような点々が浮かんでいるんです。綺麗ですよ。
空間属性と聞いて浮かべるイメージはなんでしょうか? 少なくとも、刀身での直接攻撃ではないと言うのはダメージで分かります。
次元斬とか? できるなら既に現象として起きているでしょう。恐らく違う。
……そう言えばインベントリが空間系ですよね。対象のインベントリを破壊して、アイテムをバラ撒く? 鬼畜にも程が……流石にないでしょう。信じますよ運営。
「あっ……」
「お……っと。ん……?」
「お見事ですサイアー」
流れ弾が飛んできたので弾いたわけですが、これは検証すべきですね。
「ラーナ。魔法が得意な人はいませんか?」
「勿論いますよ」
「少し検証に付き合ってください」
とりあえず魔法を撃ってもらい、パリィや反射をするのですが、その際属性を変えて試します。
その結果、飛んでくる魔法属性に一致させた方がパリィがしやすいという事が判明。そして何より、空間属性だと属性一致より楽。
つまり刀身での直接攻撃が弱くなる代わりに、反射に対する補正が上がるようです。空間は空間でも、結界の方みたいですね。
ついでにラーナにも手伝ってもらい、近接攻撃を試した結果……こちらもやりやすいので、パリィと反射の防御系に補正を与えるようです。
剣で攻撃する時は死か闇。相手がアンデッドなら光。それ以外は空間の刀身を使うべきでしょう。
刀身にする際のMP消費は空間で5%ほど。それに比べると他は無いに等しいですね。死は自分の属性なので、消費無しだと思います。
こんなところでしょうか。
付き合ってくれた人達にお礼を言って、離宮へ戻り夕食にします。
「お姉ちゃん! 明日プチアプデするって!」
「へー。あのシステムが来るのかな?」
「追加するってー」
中二病患者が増えそうですね。
私はショートカットワードにでもしましょうか。たまに長い魔法ありますからね。
食事やお風呂を済ませ、寝る前のログインをします。
さてさて、とりあえず急ぎでやりたい事は済ませました。気になっていた事を確認していきますか。
[素材] クリスタルロータス レア:Ep 品質:A
触れた者の本質を映し出すと言われる、冥府に咲く幻の花。
入手が冥府のみのため、薬師や錬金術師が渇望する物の1つ。
摘んでみると白く光ってますねぇ……。
川と繋がっている庭の池で、水も汲んでみましょう。
[素材] 追憶の水 レア:Ep 品質:A
非常に高い魔力を含む、冥府を流れる川の水。
入手が冥府のみのため、薬師や錬金術師が渇望する物の1つ。
これは湧き出る水筒に汲んでおきましょうか。
後は土と、あの一角にある採掘ポイントでしょうか。
[素材] 清浄の土 レア:Ep 品質:A+
非常に高い魔力を含む、浄化の土。
入手が冥府のみのため、薬師や錬金術師が渇望する物の1つ。
[素材] ムーンネザーライト レア:Ep 品質:C
常に夜である冥府にて、月明かりを受け続けて変質したムーンクリアライト。
魔法触媒の素材として重宝されるが、ネザー品はとても貴重。
《採掘》が低いからですかね。品質がとても微妙。採れるだけマシですかね。
それとあの実は……。
[素材] ホーリープニカ レア:Ep 品質:A+
復活の象徴と神聖視される、白いザクロ。
真っ白いザクロはとても珍しい。
品質が総じて高いのは、恐らく城の敷地内で採取したからですかね。レア度が高いのは、純粋に人の出入りができない冥府品だからでしょう。
んー……師匠のところにでも持ち込みましょう。地上での扱いを教えてくれるでしょうからね。
水は大きな空き瓶に汲んで、他はそれぞれ5回ずつ採取しておきましょう。
そして家のミニポータルから始まりの街へ飛びます。久々の地上ですね。こんにちは現世。
さて、お婆ちゃんの家に向かいましょう。
「お久しぶりです師匠」
「お前さんか……冥府には行けたようだね?」
「はい。そこで師匠に見て欲しい物がありましてね」
「冥府で採れたものかね。何個か浮かぶが……はて、何が出てくるやら」
1つずつカウンターの上に並べていきます。
「噂には聞いていたが、まさか実物を見ることになるとはねぇ……ふぅむ……。知っている事を教えるよ、良いかい?」
「お願いします」
魂の色に連動するとされるクリスタルロータスは、国が求める幻の花。
非常に高い魔力を含んだ追憶の水は、魔女と呼ばれる者達が挙って求める。
「ホーリープニカは教会が求めるだろうし、それ以外の土も水晶も、入手経路が限られすぎてて欲しい者は沢山いるだろうさ。取扱いは注意するように」
「ふむ……」
「魂の色が見えるようになったかい? 幽世の王よ」
「ええ、なりました」
「信用できる者の目安にはなるさね。教会へ持っていくならルシアンナに直接渡しな。流通させるつもりはあるのかい?」
「ムーンネザーライト以外は、今後他の異人達でも持ち帰れるかと。水などはまあ、困らないのではないでしょうか?」
「他の魔女達が押しかけて来そうだね……やれやれ。とは言え、追憶の水なんか出てきたら当然か」
「その中で欲しいのあればあげますよ。師匠ですからね」
「良い弟子を持ったもんさね。ロータスと果実以外は貰おうか。ああ、それと……次から水を汲んでくる時は魔法の器を使いな。勿体無いさね」
そう言いながら奥に引っ込んだお婆ちゃんが、大きな器を持ってきて水を移し替えました。魔粘土系を使用した入れ物ですね。
以前魔力を含んだ物は魔力を含んだ物で……とか言ってましたね。
「清浄の土と追憶の水に、オーブを混ぜて魔粘土作りましょうか」
「やめろとは言わないが……産地の持ち主にしかできない無駄に贅沢な器さね」
ところで、さらっと気になるワードが出てきてましたね。
「魔女とはどんな存在なのですか?」
「ああ、知らないのかい。そうさね……とある修行を行い、少し特殊な魔力を持った者達であり、その魔力などを使用し魔女の秘薬と呼ばれる数々の薬を作る者達」
遥か昔の魔女達が研究をし、効果が非常に高い魔法薬を生成した。
ただ……魔女自体が少なく、それに伴い生産数も少ない。王家や公爵、精々侯爵ぐらいにしか行き渡らない。
そこで、誰でも作れるように生産性を上げた結果が、今出回っている効果の落ちた魔法薬だそう。
そして魔女の作った効果の高い魔法薬を区別するため、『魔女の秘薬』と呼ぶ。
「魔女は修行を終えた者の事を指し、寿命が劇的に伸びる。魔女になるためには師を探し、弟子と認められねばならん。魔女の秘薬のレシピは弟子に継がれる。たとえ奪ったとしても、魔女特有の魔力が必要だから無駄さね」
「なるほど。まあそもそも、私に魔法薬は無意味なのですが……魔女が敵ではないと分かったので良しとしましょう」
「そっちの世界では敵なのかい?」
「敵というか、忌み嫌われると言うか。魔女と言われて浮かべるイメージは、人によって綺麗に分かれそうですね」
「こちらで手は出すんじゃないよ。基本的に薬師達憧れの存在だからね。敵に回すものが多すぎるさね」
「覚えておきます」
そう言えば、私の家名は子供でも知ってる程度に有名だと妹から聞きましたが、ラーナはどうなのでしょうか。南の英雄だから、この大陸では微妙でしょうか?
「師匠はスヴェトラーナと言う英雄はご存知ですか?」
「スヴェトラーナ……南の大英雄だね? 子供でも知ってるさね。いきなりだね」
「何年ぐらい前の方なのです?」
「もう600年ぐらい前になるんじゃなかったかねぇ……?」
「なるほど、だいぶ前ですね」
「それでも有名さね。絵本があるはずだよ」
「絵本ですか? 本人に持っていってあげましょうか……」
「……お前さんまさか?」
「ええ、冥府にいたんですよね。剣術教えてもらっています」
「……絵本持っていくのはやめてやんな。きっと悶え死ぬさね」
「残念です。話だけにしておきましょう。……では、今日はお暇しますね」
「早速なにか作るとするかねぇ……」
たまに持ってきてあげましょうか。
お店を後にしてログアウト。
明日はアプデらしいので、ログインはメンテ後ですかね。
剣術の師匠であるスヴェトラーナ・グラーニンですが、ロシア語です。
ロシア語は性別で家名が変化するようですね。
しかし○○爵位家とする場合、変形されると厄介なのでガン無視しています。
名前:アナスタシア・アトロポス・ネメセイア
種族:幽世の王女 女 Lv30
職業:幽世の支配者
職名:最高位裁定者
属性:死
属:幽世の最高位不死者
科:アーウェルサロイヤルゾンビ
スキルポイント:27
スキル
《細剣 Lv25》《古今無双・一刀流 Lv3》《軽装 Lv32》
《閃光魔法 Lv28》《空間魔法 Lv24》《高等魔法技能 Lv33》
《危険感知 Lv28》《直感 Lv28》《舞踏 Lv34》
《料理人 Lv24》《錬金術 Lv19》《採集 Lv14》《採掘 Lv7》
《目利き Lv32》《解体 Lv29》《鑑定 Lv33》《識別》
《古代神語学 Lv1》《空間認識能力拡張 Lv4》《魔導の深淵を覗きし者》
控え
種族スキル
《暗黒魔法 Lv28》《死霊秘法 Lv36》《死を纏うもの Lv20》
《物理耐性 Lv47》《物理無効 Lv43》《魔法耐性 Lv28》《怯み耐性》
《魔力最適化 Lv8》《野生の勘 Lv9》《弱肉強食 Lv9》
《生気吸収 Lv30》《HP超回復 Lv31》《MP超回復 Lv20》《回復特性 Lv1》
《アンデッド統括 Lv37》《幽世の王族 Lv21》《王家の権威 Lv41》《幽世の最高位不死者》
《ソウルチェイサー》《幽明眼》《裁定の剣》《裁定者》
称号
優雅で静謐なお姫様:他者に与える印象がとても良くなり、警戒もされづらい。
ベルステッド解放者:始まりの街の東を一番最初に解放した記念称号。
インバムント解放者:始まりの街の南を一番最初に解放した記念称号。
料理人:一人前の料理人に与えられる称号。
錬成師:一人前の錬成師に与えられる称号。
錬金術師の弟子:始まりの街のメーガンに弟子入りした。
ステルーラの祝福:空間系魔法のコストが軽減される。
幽世の支配者:幽世の者達への命令権を持ち、デスペナ軽減。常夜の城がホームになり、幽世の拡張が可能。
The Silver Keyの所有者:空間や次元に関する様々な恩恵を受けられるだろう。銀の鍵装備可能。
Book of Eibonの所有者:魔法に関する様々な恩恵を受けられるだろう。エイボンの書装備可能。
古代剣術後継者:型の効果がフルスペックで発揮可能。