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54 夏といえばキャンプ 5日目

無人島生活 5日目

 酷い目にあったが、無事に5日目だ。

 仲間達との調査の結果、この島は生態系がおかしい気がする。

 1.島で何が起きているのか突き止めろ。


 ふむぅ……生態系で当たりだったようですね? 確信できる何かが島にあると思うので、それを探す作業ですかねぇ……。


「あ、おはようございます。クレメンティアさん」

「おはおはー」

「聞きたいことがあるのですが、あの嵐でシードが散ったりしてませんよね?」

「特に見つからなかったねぇ……と言うか、それされると対処不可能じゃない? ゲーム的処理にしても、なんか光ってるオブジェクトに向かってなにかする系? ぶっちゃけやってらんないと思う」

「まあそうですよね……。竜を中心としてたので、風向き的にもエリア外ですか」

「だねー。台風みたいに円じゃなかったよ」


 ちょいちょいリアル寄りの事がありますが、面倒なだけで楽しくない事をわざわざさせはしませんか。拠点の整地なんかはよくある作業ですが……フルダイブ型なので、寝心地に直結しますからね。そっちは皆喜んでやるでしょう。


 とりあえず東が大規模イベントなのは察せました。東を警戒しつつ、北と西の調査をすれば良いのでしょう。


「姫様、報告があります!」

「はい、なんでしょう?」

「北のワイバーンとリザーダインは、今日もポップ数が激減したままでした!」

「なるほど。経験値稼ぎは望み薄ですか。調査優先ですかね……」

「では仮眠します!」

「ええ、お疲れ様です。おやすみなさい」


 スケさんに確認して貰う手間が省けましたね。イベントを進めさせるための運営からの処置でしょうか。それとも楽しいサバイバル生活終了のお知らせか。

 今日を入れて後4日。さあ、どうなりますかねぇ……。


「少ねーけど産地直送だ!」


 料理しよっと。


「料理の音といい匂いで起きる、まるで新婚気分!」

「寝言は寝て言え」

「それはお隣さんの匂いだ」

「悲しい」


 焼いてるパンの香りはともかく、朝からバーベキューはリアルだと重すぎると思いますけどね……。

 ぞろぞろと起き始め、5日目の始まりです。


「さて、諸君! ……どうする?」

『北はどうだったん?』

「それでしたら先程報告を受けましたよ。ワイバーンとリザーダインは激減したままだそうです」

『そうかー……』

「東が本命だとして、北と西の調査に本腰入れるかい? 当たりは《直感》が動く西だと思うけど、北はついでにね」

「ポップが減ったので調査しやすさはありますね」

「その通り。何もないのが分かるだけでも上々さ」


 セシルさんの言う通り北と西で分けるべきですかね。飛行できる人がいるPTは北で、他は西でしょうか。つまり主に人外系の妖精に悪魔、天使や霊体などですね。

 飛べる人がいるPT、いないPTで分かれて貰った感じ十分そうなので、これで行きましょうか。私達はアメさんとトリンさんがいるので北行きです。


「問題は何がキーなのかさっぱりな事だけど……」

「そうなんですよねぇ……」

「まあ、外周から大木目指してみようか。あれもただの木じゃなさそうだし」

「北はとりあえず山を探索してみますよ。生産組の皆さんは拠点をお願いします」

『おう』


 決まったら早速行動しましょう。北と西へ向かってぞろぞろと進軍。


 砂などが流され、より岩肌が露出した北側を進みます。景色がだいぶ変わりましたね。中々新鮮です。方法もダイナミックで新鮮でしたけどね……。

 山へ近づき次第ワイバーンのタゲを取り、飛行系の人達には山を見てもらい、ワイバーンやリザーダインが辛い人には坑道の調査を頼みます。


「こっちブレス来るぞー。近づくなよー!」

『おう!』

「今度はこっちだー! 近づくなよー!」

『おう!』

「空の人達、1体倒したからポップしますよ。タゲが来たらこちらへ」

『おっけー!』


 一号をけしかけつつたまに魔法を撃ちながら、各PTの戦闘位置の調整や探索情報を纏めていきます。

 そこそこ時間はかかりますが、逆に言えばそれだけですね。ポップ数が予想以上に少ないので、探索が捗ります。確かにこれではレベル上げは効率悪いですね。


 昼食休憩なんかをしつつ探しますが、見事に何もなし……と。山も嵐で崩れて多少外見が変わっているのですが、それによって何かが発見されるなんてこともなく。ああ、新しい鉱石は見つかったようですけど、既にノッカーの人が採掘中だとか。

 そう言えば、全然《採掘》上げてませんね……。まあ気が向いたらやりましょう。


『姫様、今良いかな?』

「セシルさんですか。構いませんよ」

『《直感》の正体と言うか、原因と言うか……判明したよ』

「ついに判明しましたか。なんでした?」

『と言うか向こうから接触してきたよ。イベントNPCみたいだね』

「え? 人ですか?」

『いや、レベル64の喋る銀狐ぎんこだった。それでね、リーダーを呼べっていうんだよ。ステルーラ様に連なる者って言われたら、多分姫様だよね?』

「あー……そうでしょうね。どちらへ行けば?」

『西の大木によろしく!』

「分かりました」


 アルフさん達に知らせてから、一号を馬に変えて移動を開始します。

 銀狐……確か善狐とされる狐さんでしたね。天金銀白黒でしたっけ。このゲームではどうなっているか分かりませんが、64レベとのことで我々よりは強いですね。


 敵を無視して急いで大木へ向かうと1陣のPTが集まっており、銀色の毛をした1メートルは超えている狐が静かに座っていました。


「お、きたきた」

「お待たせしました。お呼びですか?」

「見ていた感じ、一番指揮に向いているのはお主だったのでな」


 ワールドクエストと同じように、統率系スキルを見ているのでしょうか? それなら恐らく私のままでしょうね。まだ他に王族が出たとは聞いていませんし。

 もしくはここにいるユニオンのリーダーだから……と言う可能性ですね。

 まあ、なんでも良いですか。話を聞きましょう。


「お主達、生き残りたくば力を貸せ」

「詳しくお願いします」

「東には行ったか? 少なくとも見てはいるだろう?」

「他の者は行っていますね。見た感じ森ですが」

「東は元々草原だったのだ。いつの間にやらあの状態よ」

「……何年前の話です?」

「年も経っておらんから問題なのだ。半年ぐらいであの有様よ」

「なるほど、明らかに異常ですね」

「その通りだ。焼き払おうとはしたのだがな。仕留めそこなった挙げ句にもはや手を付けられん。今はまだ防衛できているがいつまで持つやら……」

「では中央にあった戦闘痕のようなものは……」

「戦闘痕そのものだ。お主らも戦っただろう……やつの尖兵とな」

「シードコッケにプランテラミートチョッパーですか」

「そうだ。我々だけでは押し切れんのだ」

「やつ……原因はなんです?」

「木の化物だ。東の大木。トリフィド」

『トリフィドだぁ!?』

「聞き覚えがありますね……はて、なんでしたか?」


 一緒に聞いていた人達が何人か反応したので、聞いてみましょうか。


「肉食の植物という意味でトリフィドを持ってきたのかねぇ?」

「あの大木動いてないよな? これから動くとか?」

「つまり自走する肉食植物ですね? 別段ファンタジーでは珍しくないですね」

『……確かに』


 ああ、映画にそんなようなのがあった気がしますね……。

 まあとりあえず、東の大木であるトリフィド本体の討伐……がこのキャンプのフィナーレですかね。となると……休憩入れつつ今から4日で東の森制圧ですか。


「やつはかなりしつこい。お主らも既に目を付けられていよう。やるか?」

「ここで断る選択肢はありませんよね?」

『おう!』

「ということです。協力いたしましょう」

「感謝するぞ」



〈〈ワールドクエストが発生しました〉〉

〈〈場所:イベントエリア・孤島〉〉

〈〈該当エリアへと入った異人は自動的に参加状態へと移行します〉〉

〈〈クエスト規模を確認中…………完了。Wクエストに設定〉〉

〈〈各異人達は制限時間内に自分の役割ロールを選択してください〉〉



 ああ、来ましたか。今回も規模は戦争規模と。

 そして初見の役割選択ロールセレクトをヘルプで確認しましょうか……。


※クエストで選択する役割ロールについて

役割選択ロールセレクトとは、どの職業の人を演じるか……を選ぶことです。

敵の攻撃を引き付ける盾……タンク。

敵をひたすら攻撃する……アタッカー。

味方を回復する……ヒーラー。

偵察は任せろー……斥候。

軍の生命線……後方支援。

などなど、イベントによって選べるロールは変わります。そして選択したロールによって特有のイベントが発生したりする可能性があります。

生産者の方や直接戦闘は苦手だなーという方は、後方支援を選択しましょう。装備、ポーション、食事の生産から物資の輸送まで仕事は様々です。戦闘だけが戦争ではありません。前と後ろ、両方いなければ軍は壊滅します。

タンクでも大盾か? 小盾か? それとも回避盾か?

アタッカーでも持ってる得物は? 機動隊か? もしかして空や海とか?

ヒーラーでも回復か? それとも補助支援型か?

と沢山あります。確定を押さない限り選び直しは可能ですので、安心してご確認を。ただし、制限時間には注意してください。

実は俺こんなスキル構成だけど、◯◯なんだ……って人は各自運営に申請してください。定期メンテナンスの際に選べるよう追加させていただきます。ただし、悪用するようでしたら凍結いたします。


 ふむぅ……なるほど。

 私はアタッカーですね。魔法攻撃型で属性は闇。移動タイプは騎乗も可能ですが……森ですから歩きで良いでしょう。



〈〈各異人達の役割ロールの選択が完了しました〉〉

〈〈Wクエストに必要な役職に適切な異人達を検索中…………〉〉

〈〈総隊長…………完了。部隊長…………完了。各プレイヤーに申請を開始〉〉

〈〈申請した全員の参加を確認しました〉〉

〈総隊長になったため、役割選択ロールセレクトが総隊長に切り替わりました〉

〈〈各部隊長へ部隊員の振り分けを開始〉〉



『うわー!? 視界がー!』


 なぜ私達1陣まで……あー、なんか仮想PTみたいなのができてますね……。防衛戦とはものが違うのですか。ロールPTとでもしておきましょう。

 ちゃっかり選んだロールが総隊長に上書きされてますが……まあ、そういうものなのでしょう。



〈〈ワールドクエスト:島の生態系を取り戻せ!〉〉

〈〈場所:イベントエリア・孤島〉〉

〈〈規模:Wクエスト〉〉

〈〈勝利条件:東の森にある大木・トリフィドの撃破〉〉

〈〈敗北条件:イベント期間の経過〉〉

〈〈フェーズ1:偵察フェイズ開始〉〉

〈〈斥候を森へ派遣し情報を得ましょう〉〉



 ふぅむ……やっぱ始まりの町防衛戦はチュートリアルみたいなものですか。にしても全然違うので、今回は役に立ちませんね。

 えっと、部隊リストは……。


総隊長 アナスタシア

 地上部隊A セシル

 地上部隊B こたつ

 地上部隊C ルゼバラム

 地上部隊D ムササビ

 機動部隊

 偵察部隊  ミード

 音楽部隊  ノルベール

 航空部隊  フェアエレン

 後方部隊  エリーザ

  兵站へいたん シュタイナー

  武具 エルツ

  消耗 サルーテ

  採取

  運搬


 ふむ……なぜエリーが部隊長に……? 纏めるのは確かに得意だと思いますけど。ミードさんも地上部隊ではなく偵察部隊ですか。そしてムササビさんが地上部隊。

 機動部隊、採取、運搬の人達は特に知りませんね。


「……ムササビさん、地上部隊なんですね?」

「HAHAHAHA、忍者が斥候やるわけないでござろう?」

『何言ってんだこいつ……』

「そう言えばこの人達、忍者は忍者でもスレイヤーな方でしたね……」

『あー……』


 本来忍者は情報収集がメインと言われていますね。殺るのが専門なムササビさん達はただの暗殺者集団です。あえて言うならやべーやつら。

 さて、本格的に動く前に銀狐さんに確認しておきましょう。


「えっと……東に集中して良いのですね?」

「うむ。北も西も食い止めているので問題はない。東の森を潰してくれ」

「では我々は早速動きますが、そちらは?」

「こちらも動く。動物は攻撃するなよ。反撃されるからな」

「分かりました」


 よっこらとか聞こえそうに立ち上がった銀狐さんは、テクテク歩いていく最中に蜃気楼のように姿を消しました。なるほど? 《直感》はあれに反応していたようですね。


「さあ、トラブルシューターの皆さん。任務ですよ」

『はいっ! UV様!』

「なんですの? この一部の一体感は」

「ごきげんようエリー。部隊長ですね」

「ええ、なぜか。何をすれば良いのかしら?」

「とりあえず移動です。拠点は中央で良いでしょう」

『おう!』


 さっさと移動を開始します。

 移動しながら他部隊長、分隊長達に中央を拠点にする事を告げ、集まってもらいます。中央以外では後方部隊がやり辛いでしょうからね……。


「さてエリー。説明しましょう」

「ええ、よろしく」

「目標はあの大木をへし折る事です。まあ、そこは地上部隊とか他がやるので良いでしょう」

「前線の仕事ね」

「エリーは後方部隊長なので、非戦闘員……生産者達を纏めるのが役目です」

「できるかしら?」

「やることの把握さえしてしまえばエリーなら余裕です。まずUIの後方部隊にぶら下がってる一番上の人達を覚えてください」

「エルツさんやサルーテさん達ね?」

「その人達が各部門のリーダーなので、上手く回せばいいだけです」

「ふんふん」

「恐らく私から前線で足りない物を言うので、それぞれに指示を出していって下さい。錬金以外は素材が分かりやすいと思うので、大丈夫なはずです。私から特に無い時は、後方部隊内で素材を上手く回してくれればいいです」

「ふぅん……。これアビー達を副官にしてサポートしてもらえるのね?」

「可能です。アビーを副官にして、レティさんとドリーさんにそれぞれ付いて貰えば余裕でしょう。運搬の人達を扱き使ってください」

「ええ、分かったわ」

『えっ』


 えっ? いえ、どう考えてもこれ大変なの運搬の人達でしょう。確実に馬車馬のごとく……あ、運搬のリーダー馬の人ですね……。大丈夫です。馬車馬は商人の相棒なので大切にされてますから、安心してください。プリムラさんに荷馬車でも作って貰ったら良いと思いますよ。問題はこの島の地形で使えるかですけど……。

 ああでも、インベがあるので自分で持って、更に1人乗せて走ればいいのですか。荷馬車不要ですね。なんと便利なインベントリ。


「あ、お姉ちゃん! クエスト変わってるよ!」


『島の生態系を取り戻せ!』

 1.東は元々草原だったらしい。そびえ立つ大木を打ち倒せ!

 2.島の住人である銀狐から聞いた東の森を調べてみよう。偵察フェイズ。


※残り時間:3日と10時間35分。


「なるほど、以降このクエストが続きそうですね」

「楽しみだー!」

「姫様、良いですか?」

「ああ、ミードさん。偵察にルールなどあるんですか?」

「全エリア探索率が100%になるか、入った偵察部隊が全員死亡し追い出されると次のフェイズに移行するようです。どこまで上げられるか……ですね。ここで時間かけすぎても後半で詰みそうです」

「それ、死亡回数には?」

「カウントされないようです。死ぬまでにどこまで稼げるかでしょうね。マップルールはダンジョンと同じだそうで、円形でエリアが分かれているんですよ」

「ではエリアごとに探索率があるんですね?」

「そうですね。各エリア100%にしないと次に行けないのかは不明です」

「浅いエリアは程々に、奥の方チェックしたいですね……」

「行けるようなら2陣に浅い方を任せる予定です」


 奥に行くほど……つまりトリフィドに近づくほど危険度が増すでしょうから、高スキル持ちである1陣が奥を担当することになるでしょうね。始まると連絡なんて取れそうにありませんから、偵察部隊長であるミードさんにお任せします。


 島中央の拠点に到着したので、部隊毎に分かれて固まってもらいます。顔合わせになるでしょう。

 総隊長の私には金の王冠が付いていて、それぞれ部隊長の上には銀の王冠。その王冠の背景にどの部隊か示すシンボルが記され、ひと目で分かりますね。

 例えば地上部隊なら靴と英字。機動部隊は馬と英字。音楽隊は音符と英字。航空部隊は翼と英字などですね。更に英字に合わせて枠の色が違うと。

 全体的にシンプルなマークが使用されていますが、エリーの後方部隊が一番ゴッチャリしてるでしょうか?

 そして各部門のリーダー達には王冠の無いシンボルのみ……ですね。

 というわけで、各リーダー達だけはすぐに分かります。


「地上部隊アルファーはこっちに集まれー!」

「地上部隊ブラボーはこっちだよー!」

「地上部隊チャーリーはこっちだー!」

「地上部隊デルタはこっちでござるよー!」

「偵察部隊はこちらへ」

「音楽隊はとりあえずこっちねー」

「機動部隊は少し離れましょう」

「航空は上に集合ー!」

「後方部隊は各部門毎に集合し、生産準備を。スペースは十分にとるように!」

「農家ぁ! 畑作っぞー! こっちこーい!」


 ワイワイガヤガヤと行動を開始。

 各部門毎に生産キットなどを展開していき、部門のリーダー達がそれぞれ使いやすい配置にしていきます。


「植える奴を決めておくから、すぐ使える状態にしといてくれ! とりあえずこっち側は麦系だ! その東は加工スペースにすっから東以外に畑広げてくれ!」

「じゃあ私達料理人は加工スペースの近くに陣取ろうか」


 部下が優秀だと上は楽ですねー。各自勝手にやってくれるので、こちらはそれらを把握しておき、各自勝手にやるのでその際の衝突を防ぐのが役目です。

 後方部隊もこちらはこちらで戦争ですね。


「そこは運搬が使うので空けておいて!」

「ここは?」

「そこなら構いません」

「おけー」


 エリーも問題無さそうですね。私も動くとしますか。

 まず必須なのが採取と運搬に付ける護衛ですか。運搬には機動部隊を護衛に付ければ良いでしょう。ついでに遊撃もしてもらいます。

 航空部隊は地上部隊に分かれて付いてもらいましょうか。フェアエレンさんに言ってきましょう。

 音楽隊は地上部隊は勿論ですが、後方部隊にも残ってもらいましょう。ノルベールさんに言っておきます。

 それと、料理人の人達に作れるようなら蒸留水も作っておいて貰いましょう。消耗品部門のサルーテさん達が大量に使うはずです。


「姫様ぁ!」

「なんです?」

「兵站部門に漁師がいんだよー!」

「漁師……となると、エリー!」

「何かしら?」

「錬金組少し借りれますか?」

「まあ、大丈夫だと思うけど」

「では漁師達と海岸に行く班を作って下さい。そしてポーション瓶と塩の調達を」

「分かったわ」


 荷馬車はインベがあるので不要ですが、人を運ぶのに馬車があった方が効率がいいですね……。となると……プリムラさんと馬の人を呼びますか。正確にはケンタウロスですけど。


「なにー?」

「ブルヒヒン?」

「人を輸送するのに馬車は可能ですか? それと日本語でおけ」

「馬車を作ること自体は可能かな。木さえあれば。乗り心地は保証しないけどー」

「HAHAHAHA、目的地は?」

「錬金と漁師の輸送で海岸。鉱員の輸送で北ですかね」

「んー……南は可能。北は途中までなら。岩肌が出始めると馬車は無理だね」

「ふむ……馬車はどのぐらいで可能です?」

「木工職人沢山いるから……10分もあれば?」

「人の輸送はそんなしないでしょう。1台あれば十分です。頼みます」

「おっけー」

「運搬組はここを中心に東西南北頼みます」

「馬使いが荒い姫様だわ! 任せときなぁ!」


 これで良しと。

 ミードさん率いる偵察部隊を見送りつつ、引き続き全体の把握に努めます。

 偵察部隊は長くても今日中に帰ってくる予定だそうですね。


 現状地上部隊が出番ないので、1部隊に採取組の護衛を頼みましょうか。


「セシルさん。採取部隊の護衛を地上部隊に頼みたいのですが、動かせますか?」

「んー……可能……かな。正式には偵察部隊の情報入った後に決めるけど、今のところ東西南北に部隊を配置する予定だから、西を担当するうちが護衛しようか?」

「ええ、お願いしますね。では採取部隊のリーダーを呼びますので」

「おっけー」


 えー……後は……むむ? ああ、エリーがバカ正直に付き合ってしまってますね。


「そこ邪魔しない!」

「あぁ? うるせぇ! 俺達が何しようが勝手だろうが!」

「なんですって……?」

『後方部隊長の笑顔怖すぎわろた……』

『目が笑ってないってあれのことか……』


 エリーやアビーは怒っても笑顔ですからね。

 それにしても……手に持ってる鞭がとても似合いますね? エリー。青少年の性癖歪めないように気をつけてくださいね。

 それはそうと、既に時間との勝負に入ってますから仲裁しますか。


「エリー、バカ正直に付き合う必要はありませんよ。オンラインゲームなので一定数はいるのです。実際総隊長と言えどこちらにその辺りの命令権はないので、最初からいないものとして扱って下さい。現在進行形でイベントポイントがゴリゴリ減ってると思いますし、付き合うだけ無駄ですよ?」

「そうは言うけど、かなり邪魔よ?」

「地上部隊の人にでも言って、素振りでもして貰えばどうです?」

「なるほど、素振り……ね。準備運動は必要よね」

「ええ、突然の運動は危険ですからね」

『こええええ……』

『2人して笑顔なのがなおこえー……』

『素振りわろた』

『素振りなら仕方ない』

「素振りと聞いて」


 リーナがハルバードをぶんぶんしながらやって来ました。

 あ、逃げていきましたか。武闘大会個人戦2位ですからね……。


「他愛なし……」

「リーナは誰部隊?」

「セシルさん部隊ー」

「じゃあ護衛?」

「暇だから行ってくる」

「なるほど、よろしくね」

「後々自分達が楽になるからねー」


 そう言ってリーナは歩いていきました……素振りしながら。風切り音してるんですよね……あれ。武器なので当然ハルバードは金属の塊です。危険人物ですがまあ、スルーしましょう。



 運搬部門の人達が走り回り、エリーに決められた場所へインベから取り出しては置いていきます。

 移動が早い後方部隊は運搬部門。移動が早い戦闘系は機動部隊に振り分けでしょうね。つまり馬や狼の人達が振り分けられるので、人外系が多かったりします。後はテイマーやサモナーなど、騎乗持ちの人達ですね。どちらの部隊も移動力が売りなので、当然と言えます。


「ターシャ。エルツさんが呼んでますわ」

「分かりました。行ってきます」


 エルツさんは武具部門のリーダーですが、武具部門も後方部隊なのでエリー経由になるわけですね。早速向かいましょう。


「呼びましたか?」

「おう、地上部隊のリーダー達呼んでくれ。ついに鋼の上ができたぞ」

「なるほど、変えるのですね。早速呼びましょう」

「すまんな!」


 セシルさん達を呼ぶと早速やって来ました。流石新素材武器の吸引力は伊達じゃないですね。


「鋼の上だってー?」

「コバルトハイスだ」

「は?」

「配分吟味するのはイベント後だな……。どうせイベント中のみだし良いだろ」


 セシルさんとエルツさんが話していますが、コバルトハイスですか。さっぱり分かりませんね。鋼とクロム、コバルトにモリブデン、更にバナジウムを使うとか。

 高速度鋼とも言うらしいですが、さっぱりです。セシルさんも知らなそうですね。コバルトハイスはゲーム的に鋼の1個上とだけ覚えておけばいいですよね。


 私は変える必要がないとは言え……本格的に強化を考えねばなりませんね。武器自体の攻撃力などはこのレベル帯の装備になると完全に負けますか。

 アタッカービルドで武器が弱いとか避けねばなりません。神の加護……恐らく称号ですよね……。教会に入り浸り、ルシアンナさんの手伝いするのが近道でしょうか? まあ、イベント終わったらまずは旧大神殿エリアのリベンジですが。

 《鑑定》が言っている限りでは、加護を受ければ武器だけでなく装備一式が強化されるようですが……問題は何段階なの? って話ですね。

 とりあえずイベント中はどう足掻いても無理なので、ほっぽっておきましょう。


「ところで姫様」

「なんです?」

「短時間睡眠は可能でござるか?」

「後はペナルティを受けない程度の睡眠時間で云々……ですね?」

「そうでござるな」

「自慢ではありませんが、私は無理ですよ?」

「断言されたでござる」

「寝てる時に潜り込んできた妹を蹴り出したことがある程度には、私は睡眠を邪魔されるのが嫌いなようですからね。それで凝りない妹も妹ですが……」

「マジでござるか……」


 妹は速攻で私に蹴り出されない条件を導き出し、今でも普通に潜り込んできます。確か、何よりもまず必須なのが潜り込むスピード。そしていかに少ない動作でポジショニングするか……でしたか?

 私に睡眠の邪魔と判断される前に、いかに早く潜り込んで寝る体勢を整えられるかが勝負……とか言ってましたね。

 何が妹にここまでさせるのか知りませんが、無駄に真剣でしたね。


「速攻で二度寝決めるので、基本的に途中で起きるのは無理ですね。魔物が攻め込んできてるなら起きれるかもしれませんが……」

「まあ寝るなら寝るで連絡網を決めておいた方が良いでござろう? それの確認でござるよ」

「ああ、確かに。偵察部隊が戻る頃は既に寝てるでしょうからね……」


 装備の配布が終わり、エルツさんがまた鍛冶へ戻ってから睡眠時の相談をしておきます。

 全員同時に寝るわけにもいかないので、地上部隊をそれぞれ何ウェーブかに分け、前線組と寝る組で分ける必要もあるでしょう。

 ルゼバラムさんとムササビさんが起きてると言うので、私とセシルさんとこたつさんは先に寝ます。

 後方部隊はエリーとアビーが先に寝て、レティさんとドリーさんが起きていると。

 それぞれのリーダー組は補佐を決めているでしょうから、その人と少し時間をずらします。


「本番は明日か明後日からかな?」

「燃えてきたでござるなぁ!」


 偵察部隊が戻るまで特に大きな動きは無いでしょうから、今のうちにエリー達と協力して拠点の充実を優先します。

 戦争は数だよと言いたいですが、数よりもまず準備です。物資が無ければ数が維持できないので話になりません。

 走り回ったりはしませんが、拠点を彷徨き変化の確認と問題の確認をして周ります。そして問題を共有し、解決できそうな人へ丸投げ。

 ええ、総隊長は人を使う側の立場ですからね。お願いしますよ。



 後3日ちょっとは長い戦いになりそうですね……。

 では私は寝るので、後は任せます。


5日目書くこと無さそうだし、6日と纏められるか? とか思ってたけど、実際書いたらそんな事はなかった。

戦闘がメインになる後半の方がサクサク行けそうですなぁ。そろそろイベントも終了か。


機動、採取、運搬は特にプレイヤー名を決めていないので、空白です。

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― 新着の感想 ―
協力体制の狐さんは何かしてくれないのかな? というか、狐さん独自の軍団を持っているんじゃ?
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