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48 第二回公式イベント開始

ようやくキャンプイベントの始まりです。何話続くかは知らん。

 イベント開始まで後20分ぐらいなので、待ち合わせ場所へ向かいます。


「アルフさん、ごきげんよう」

「やあ姫様」

「スケさんはまだ?」

「まだだねぇ。ログインはしてるし、そのうち来るでしょう」

「イベント開始までもう少しありますからね。ところでアルフさん、武器変えたんですか?」

「そうなんだよねー。レアスキル解放されて取ったんだ。解放条件は秘密……と言うか、俺も分からん。効果は両手武器を片手武器として装備できる。おかげで両手剣と大盾さ!」

「それは良いですね。スキルの扱いは?」

「利き腕じゃない方に何か装備してると《片手剣》扱いだね。腕にバックラー装備しつつ、両手で持っても片手扱いだったよ」

「と言うと……盾を捨てると?」

「《両手剣》に切り替わるね。ソロの時に《両手剣》上げ始めた」


 レアスキルは解放された人にも条件が分からないのですか。自分で探せってことですかね? 内容的に筋力とかが関係してそうですけど……。

 戦術の幅は広がるでしょうから、良いことですね。


「ごめ~ん待った~?」

「うるせぇわ。骨でそのセリフやめろ」


 微妙にクネクネしてるのがまたなんとも言えませんね。スケさんなので骨ですし、絵面で言えばとても気持ち悪い。見なかったことにして2人をPTに誘います。


「よろしく!」

「よろしくおねがいしますね」


 皆楽しみにしているのか、町にかなりの人数が集まりワイワイガヤガヤしています。


「こうしてみると、だいぶ初心者装備減ったね?」

「確かに減りましたね」

「見た目があれだからねー。さっさと変えたいでしょー」

「まあ、初心者装備脱却がまず目標にはなるか」

「私初期装備ボロ布でしたからね……」

「HAHAHA、僕は今も全裸マン」

「人外種の宿命だわな」


 そう言えば下僕達は防具の装備ができるのに、スケさんは未だ素っ裸ですね。現状武器とアクセぐらいしか装備させて貰えないそうですが……イベント始まったら一号に確認しましょう。


「あ! ターシャです!」

「あらほんと。ごきげんよう、ターシャ」

「ごきげんようターシャ!」

「ごきげんよう、エリー、アビー」


 2人の後ろにはレティさんとドリーさんもいますね。2人とはいつも通り特に喋らず、視線のみで。

 アビーもドリーさんも無事天使になれていますね。天使の翼が生えています。運営の翼よりもでかい……と言うより、運営の翼がデフォルメされた小さい翼で特別製なのでしょう。


「ターシャ! 魔粘土がもっと欲しいです!」

「ああ、あれですか。あれ魔石使うので原価が結構するんですよね」

「魔石……まだ見たことないです……」

「第二エリア以降の一部からですからね……」


 消耗品でもあるので、現状アビーに数揃えるのは辛そうですね。魔石さえ用意してくれれば他の材料は水と土とスライムジェルなので、こちらで配分見ながら作るんですけど……。


「《人形魔法》はどうですか?」

「楽しいです! 今3体操れるのです!」

「4人で組んで、他は人形で埋める予定よ」

「なるほど。丁度3体呼べるわけですか」


 こっちはスケさんと2体ずつで5人PTですかね。人形の持ち込みはスキルを上げるとサモナーのように出し入れ可能になるようで、それで解決しているようです。

 それはつまりスキルを上げなければ……大変そうですね。


 のんびり話していると10分前になり、視界の端でアイコンが点滅しています。PT全員の準備完了次第、イベントフィールドへ転移されるようですね。


「行くです!」

「じゃあ運が良ければ向こうで」

「ええ、運が良ければ」


 4人を見送り、私達もUIを操作して準備完了。しばらく真っ暗な中を漂います。体感速度の調整作業を済ませ、視界が戻ると……。


「「「おぉー……」」」

「……豪華客船?」

「世界観どうした?」

「まあ……イベントフィールドですから……」

「豪華客船に武装した人達が乗ってるのは中々シュールだね」


 私達以外にもどんどんプレイヤーが転移してきます。


「ああ、他にも何隻かあるようだねぇ」


 アルフさんに言われて視線を海の方へ向けると、他にも見た目の違う豪華客船が。流石に一隻に全員は乗らないのでしょうね。分けて乗せられているようです。

 確かこれから漂流なので、もしかしたら船ごとに開始位置が近いかもしれません。


 飛べる種族の方が他の船に向かって飛んでいき、見えない壁に阻まれていました。まあ、うん。ですよねって感じです。

 水着で来た人もいるようで、豪華客船に付いているプールで遊んでいます。外周は海でしょうから、銛……選択肢としては十分ありですね。海の幸狙いですか。


 残り5分というところで何やら天候が怪しくなってきました。そして再びアイコンが点滅します。確認すると今回の概要ですね。簡単に纏められています。



 エントリーしたアイテム達をちゃんと今持っているかの確認。無い状態で始まるとアイテム無しになる。

 体感時間を変えての8日間サバイバル。戦闘不能は1回まで。2回目で追い出し。4回目のログアウトでも追い出し。

 睡眠が必要。寝不足ペナルティあり。不死者などの睡眠不要種族も中の人問題で睡眠必要。寝不足ペナルティは無し。

 セーフティエリア無し。PK可能エリアでもある。

 持ち込みは申請したアイテム一種類のみ。所持金もイベントエリア中は0に。

 持ち込んだ装備や消耗品は状態が保存されており、イベント終了後に自動修復、自動補充される。気兼ねなく使おう。

 イベント中で発見したアイテムは『イベント専用アイテムリスト』に登録され、イベント後の報酬交換リストに名前が出現。このリストは全プレイヤー共有であり、誰か1人でも発見すれば良い。プレイヤーが加工した完成品など、ここから選べないのは全て没収されるので、生きるために迷いなく使うように。

 イベント中のスキル取得は個人評価が下がる。どのぐらい下がるかはスキル次第。評価の公開はイベント終了時にランキングで。

 イベント後に少し便利な報酬と交換可能。


「お、景品リストなんかあるんだね。どれどれー?」

「戦闘消耗品ボックス? 生産素材ボックス? ……週間クエストかな?」

「あ、私これ欲しいです。湧き出る水筒」

「えー……中に入れた液体を登録すると、魔力を注ぐことでその液体が湧き出る魔法の水筒。魔法薬不可。……なるほど」

「料理用の品質の高い水を入れておきたいですね。汲みに行くのが面倒な水とか」

「お、ステータス強化系のアクセもあるよ? 上昇は控えめらしいけど」

「イベント景品だからそんなもんでしょ」


 めっちゃ強いと言うような物はありませんね。おや、ハウジングアイテムだ。コレを交換しておくのもありですね。

 それとイベント専用アイテムリストは全て???ですね。始まってないため発見アイテムがあるわけないので、当然でしょう。


「ふははは! はーっはっは! 俺だぁ! どうも八塚やつづかです」

「基本的にはお久しぶりです。三武みたけです」


 私は武闘大会以来ですね。お久しぶりじゃない人は、何かしらの理由でGMのお世話になった人でしょう……。


「第二回公式イベント『夏といえばキャンプ』が始まるぞー!」

「『あなたは無人島に何を持っていきますか?』というお決まりが主題です」

「インフォは確認したかー? イベントルールだから確認しておくように」

「少し便利な報酬と交換できますが、このイベントのメインはどちらかと言うとレベル上げなので、控えめですよ」


 まあ、余り良い報酬出てしまうと醜い争いが始まりますからね……。でも今回のイベントは協力前提でしょうから、1人で抜け駆けしようにも無理では?


「アイテムの確認はしたかー? インベに無かったら何も持たずに転送されるぞー。ちなみに所持金も0にされるけど、慌てなくていいぞ!」

「サバイバルにお金は不要ですからね」


 イベント中に1陣から装備を受け取り、そのままイベント終了後も使う……なんてことがないようにする対策でしょう。

 逆に言えば、イベント中はエルツさん達の装備を使える可能性があるわけで。トップ生産者組の生産品体験ですね。しかも使い切らないと、イベント終了後どっちにしろ消えるという。


「ゲーム内8日間。体感的には1週間ちょっと。楽しんでくれたまえ! ちなみになんで8日なのかというと、ゲーム内1週間が4日だからだ!」

「ゲーム内的には2週間ほど、異人達の数が激減するわけですね」


 普段のリアルで言うと2日分。リアル1日ゲーム内4日。ゲーム内4日がゲーム内一週間。ただ今回は体感速度も弄るので、数時間で1週間ちょっとの無人島サバイバル体験ですね。


「2陣は第二、第三エリアを目指して。1陣は第四エリアへの足しにしてくれ!」

「普段はあまり接点の無いだろう、1陣と2陣の交流が目的でもあります」

「魔物がいる少しデンジャラスなサバイバルを楽しんでくれたまえ!」


 少しで済むと良いんですけど……。


「あ、そうそう掲示板ですが、向こうで合流しないと同じ船の人達だけですので」

「まずは合流を目指すと良いぞ!」


 ふむぅ? まあ、海岸沿いを進めば合流できるでしょう。全員漂流ですからね。

 周囲はすっかり暗くなり、雨が降り波が高くなります。このゲーム船酔いあるんですかね? ありそうですねー……。


「さあ、嵐が来たぞ!」

「あ、空に逃げても無駄ですので」

「俺らが蹴り落としてやるからな!」


 まさかの物理。

 すっかり雷雨になりましたね。しかし、このサイズの豪華客船はそう簡単に潰れないと思うのですが……。


『は、早くして……でそう……』


 船酔い……あるんですねぇ……。時間になりましたよ。良かったですね。


「いやいやいや、高波ってレベルじゃないな?」

「何メートルかな?」

「10メートルクラスでしょうか? ぶつかった時点で相当ヤバそうですけど?」

「あれに飲まれるのかー」

「大迫力ですねー……」

「あ、待たなくても自分から海に飛び込めば移動されるぞ!」

『おまっおせぇよ! グワーッ!』


 波って速いんですよ。物凄い音と共に波に飲み込まれ、視点が暗転します。



 真っ暗だし、体も動きません。既に海岸にいるようなのですが、目が覚めるまでと言うカウントが進んでいるので、待つしかありませんね。


「お、姫様見つけた。起こせるのか?」


 アルフさんはもう起きているのですね。私はもう少しです。


「ふむ、声だけじゃ意味ないのか? 揺すってみようか」


 ゆさゆさされると残り少ないカウントが飛び、起きれました。


「おはよう」

「おはようございます。声だけじゃカウントに変化ありませんでしたよ」

「揺すらないとだめかー。とりあえず眼福だけど【洗浄クリーン】使っておきな」


 ああ、濡れて張り付いているのですか。砂も付いていますし、【洗浄クリーン】で綺麗にしておきます。


「んー……ステータス依存か? 装備的にSTR……いや、VITかな? とりあえずこの場合……女性から起こしてあげた方が良いんだろうか。そうするか」


 ふむ? 確かに重装備の人が起きるの早いですね。起きる速度がステータス依存だとしたら……体力依存でしょうね。アルフさんに起こされなくても、後4秒ぐらいで起きれましたから。筋力は絶望的でも、体力は高いですからね。

 とりあえず女性プレイヤーから起こしましょうか。いや、【洗浄クリーン】だけ使用していくのが正解ですかね。最初数人だけ起こして手伝って貰いましょう。


「あ、スケさんここにいましたか」


 白い砂浜に打ち上げられているメタリックな骨。ホラーですね。白よりはマシですけど。とりあえず起こします。


「おはようございます」

「おはよう! カウントがなげーのなんの」

「体力依存だと思います。つまりスケさんはまだマシな方ですね」

「不死者の中では低い方だけど、他よりは高いかー」


 起きたり起こされたりで動ける人が増えたので、近い内に全員起きるでしょう。おや? あれは……。ゆさゆさして起こします。


「ミードさん同じ船だったんですね」

「ああ、姫様。助かります」

「エルフは体力低いですからねぇ……。他に知り合いいました?」

「フェアエレンがいたはずですが……」

「まだ見てませんね。……妖精種探すの大変では?」

「確かに。体力もかなり低いはずです」

「……すみません皆さん。どっかにフェアリーのフェアエレンさんがいるはずです。探してもらえますか?」


 踏まれていない事を祈りつつ、皆で探しましょう。


「いたかー?」

「いねぇなー」

「ぬ? サラマンダーじゃないか」

「お、いたぞー!」

「うははは! 助かったー! 30分は長すぎだ運営! 起こされるの前提なんだろうけど!」


 妖精種は小さいのでソコソコかかりましたね。他の人も起こされたようで。


「皆起きたでしょうから、後は自由ですかね」

「皆好きにやるでしょ。僕達はどーするー?」

「ミニマップが行ったところしか表示されないタイプか」

「私が飛び回れば解決ー?」


 んー……フェアエレンさんに飛んでもらうのも良いですが、少々リスクが高いですね。マップ情報共有機能はある……となると……。


「フェアエレンさんは掲示板のために海岸沿いを飛んで下さい。マップは私とスケさんの下僕を使いましょう」

「ああ、そうしようか」

「おっけー! じゃあ早速行ってくる!」


 飛んでいくフェアエレンさんを見送り、《死霊秘法》を見ます。コストが軽く……飛行速度が早い……ホーク系ですかね。スキルも上空偵察型で固め、テンプレートとして保存しておきましょうか。《感知》や《看破》、《鷹の目》で視力強化などですね。


「一号、偵察です。この島の大まかな状態が分かればいいので、空を回って戻ってくるように」

「カクン」

「ああそれとスケルトンの時ですが、防具を付けてるとペナルティがある?」

「カクン」

「……誤差?」

「カタカタ」

「外しておきましょうか……」


 装備できるけど装備するとペナルティとは、おのれ運営小癪な罠を……。防具は外しておくとして、偵察に行ってもらいましょう。


「では一号、頼みましたよ。勝てそうにない敵なら逃げるように」

「カタカタカタ」


 スケさんの下僕と一緒に飛んでいきました。

 マップを確認すると変化していきますね。まず何も分からない状態から、薄く表示されていきます。一号の通った後はいつも通り濃く記されていますね。


「ん、これダンジョン仕様のミニマップだねー」

「そうなんですか?」

「2陣用に作られたあのダンジョンもそうでさー」

「あれですか」

「薄いのは遠くから見ただけ。濃いのがちゃんと通った場所だね。本格的なダンジョンがまだ無いから、正確な違いは不明」

「先の道は見ればどうなってるか分かるけど、罠などの細かいのまでは不明……でしょうか?」

「恐らくそうじゃないかとは言われてるね。そういう斥候用スキルもあるんじゃないか……と」

「ふぅむ……とりあえずあれですね。地形が分かれば十分なので、視界のみの薄い状態だけでいいでしょう」

「細かくは地上行くしかないだろうから良いんじゃないかなー」

「ではそれで。ミードさんはどうしますか?」

「そうですねぇ……2陣がいるので、外周部分はそこまで強くないはずです。なので森にでも入ってみようかと」

「では今の状態のマップを渡しておきますね」

「助かります」


 前方に広がる森へ向かうミードさんを見送ります。

 ああ、そうだ。今のうちに持ち物の確認もしておきましょう。


「持ち物は……料理キットのみで、キットの収納は……全滅ですか。ですよね」

「流石にダメだったかー」


 料理以外にも収納あるでしょうからね。それを考えるとやっぱり無理でしょう。収納に入ってるのこのイベントで使ったら、鍛冶とか完全に赤字ですし。そもそも所持金0にされましたからねぇ……。





「スケさん、どうですか?」

「んー……森だねぇ。北に山があるけど……」

「こっちも森ですね。やたらでかい木は見えてるあれでしょうね……」

「おわーっ! 下僕が殺られたー!」

「まじですか」

「北には行かせない方が良いかも」

「そう言われましてもねー」

「だよねー」


 今のところ命令は声のみですからねー……。そのうち念話やらが可能になると思うのですが……うん? お、さすが一号。動き的にがん逃げしているのでは? 少し北側が不十分ですが、十分全体像は分かったので良しとしましょうか。

 マップによると三角……微妙に丸みがあるので、おにぎり型と言うべきでしょうか。私達は左下……西側の南側に漂流したようですね。

 スケさんのは西から北、一号が東から北へ向かって飛んでいったようです。そして北を目指す最中にがん逃げして、西を通り帰ってきました。


「一号、上出来です」

「カタカタカタ」

「北は飛行ですか?」

「カクン」

「地上からの狙撃はありましたか?」

「カタカタ」


 北に飛行がいて、地上からの狙撃は無かったと。

 北から東と西に川が流れていて……西側には湖がありますね。島の中央付近、東と西の森が繋がらずに禿げているのが気になりますが……今は良いでしょう。

 東の森と西の森にはお互い中央辺りに大木が。ただ、東の方が明らかに大きいですね。

 外周は海と砂浜。北側は見えてませんが、マップから察するに絶壁でしょうか。北は砂浜が無さそうです。

 今わかるのはこのぐらい……と。2人とマップを共有しておきます。


「ふぅん……なるほどねぇ……」

「まー……このまま北上して西側の森を探索かなー?」

「無難にそうしましょう。召喚はどうしますか?」

「森か……馬はないなー。姫様キャパは?」

「今は……6300ですね」

「僕の方が多いけど……この場合大して変わらないか。ベアとオーガ出そうかな」

「私はどうしましょうか。飛行いります?」

「森だし偵察はあれだねぇ。攻撃型で牽制させるのが良いかな?」

「3体出しても良いよー? こっち2体の3倍だけで6000持ってかれるから」


 ベアとオーガのサイズのせいですね。

 んー……スケルトン、ウルフ、アウル。全員3倍の上乗せ。スケルトンとアウルは職業カスタム、ウルフは2箇所カスタムで合計コスト6000。

 一号は両手剣でソルジャー。二号は片手剣と小盾。三号はフクロウなので装備は無しで、職業はシーフに。スキルもガチガチの戦闘構成で。


 よし、では北上して森へ向かいます。ミードさん達が向かいましたが、進捗どうでしょうかね。フェアエレンさんも北の飛行に食われてないと良いのですが。飲み込み判定に負けると即死ですからねー……。

 小さい種族専用戦法として、わざと口に飛び込みバースト魔法をぶちかますという、荒業を聞いた時は笑いましたが。口中は基本的に弱点判定らしいですよ。大体発動後は怯みが入って口から出れるらしいとか。


「んー……敵も弱いねぇ? もっと奥目指さないとダメかな」

「掲示板でも見てみようか。そろそろ合流できてるんじゃない?」


 アルフさんと下僕達が周囲の警戒で敵を。スケさんが掲示板を。私が周囲のアイテムを探します。

 薬草、毒草、カッセイタケ、ヒカゲシビレタケなどなど……見覚えのある物が沢山ありますね。


「おや、木の実ですね」

「お、食材かな?」


[素材] 弾ける木の実 レア:No 品質:C

 弾けるほどの美味さ……。

《料理人》

 ではなく、一定以上の刺激を与えると弾けて異臭を放つ。

《錬金術》

 直接投げるかポーションのようにする事で、ある程度の獣を追い払えそうだ。


「……コレは酷い……何という罠」

「あー……PTで《鑑定》共有かな? こっちでも見れた……」

「素材判定に疑問を覚えるかが勝負かな?」

「確かに……ジャンルが食材じゃないね」


[食材] フラガリア レア:No 品質:C

 甘くて美味しい。

《料理人》

 直接食べるのも良いが、潰して搾り冷やしたミルクで割ると良さそうだ。


「おや、普通に食べれるのもありますね。三号、あれ採れますか?」


 いちごがベースでしょうか。思いっきり木からぶら下がっている事には目を瞑りましょう。ゲームですゲーム。逆に言えばこれだけでも異世界感はでるので、良い手段ではありますか。


「リンゴみたいにいちごができるのかー」

「大粒だねー。俺ら食べれないけど」

「交換用に採取はしておきますね」

「「おっけー」」


 お金がない協力系ですから、つまり物々交換です。交換用の元は採取しておきましょう。薬草なども採りながら少しずつ奥を目指します。


「ん? ああ、ミードさんですか。進捗どうですか?」

「微妙ですね。敵も弱いですし。姫様これ《鑑定》できましたか?」

「弾ける木の実ですね。地雷ですよ」

「ジャンルが素材だったので、警戒しておいて正解でしたか。ではフラガリア?」

「そちらが食べれます」

「なるほど、助かります」


 ミードさんと話していると、掲示板を見ていたスケさんがミードさんに確認を。


「敵のレベルどのぐらいだったー?」

「今のところ最大は23とかです」

「こっちは2陣用かな? 東と北が30台だってさー。ただ、北の山はかなり強いらしいよ」

「でも30台なんですよね?」

「知り合いで言うとセシルやルゼバラム、トモ組が苦戦してるっぽい」

「……トップ組じゃないですか。敵はなんです?」

「なんとワイバーンさ! 僕の下僕もコレに落とされたっぽい」


 なるほど、一番下とは言え亜竜ですか。となると、種族特性によるものですかね。アンデッドや動物系は体力が多いなどありますからね。


「それは気になりますが……まずは食料や寝床の確保を優先します。この森が一番低いのなら拠点はこちらですかね」


 ミードさんはエルフですからね。食事も睡眠も必須です。


「姫様、マップ掲示板に出しとくよ?」

「ええ、構いませんが……先にミードさんと統合しておいては?」

「そうしましょうか」

「ああ待って、それならえっと……セシルのマップ貰って……よし」

「助かります。こうなっているのですか」

「よし、これで掲示板に出せば……っと」


 とりあえず私達のいる西の森に集まる予定のようですね。30台とか2陣は死ぬので、1陣が護衛しながらこちらを目指すようです。

 北は亜竜やゴーレムなど割りと大型系。東は植物系。西は動物や虫、鳥などが確認されているようですね。

 ミードさんは西の森中央付近にある大木を目指すそうなので、ひとまずお別れ。


「私達は湖でも目指しますか?」

「西の北側にあるこれ?」

「大木、もしくは湖。何かあれば良いな……と」

「じゃあ行きますか」

「現状特に情報無いからねー」


 再びアルフさんと下僕は敵警戒。スケさんは掲示板。私が素材系と役割分担をしつつ、北側にある湖を目指します。


「おや、リン……?」


[食材] アプレン レア:No 品質:C

 リンゴとオレンジの混ざったような味がする果実。

《料理人》

 絞って繊維は捨てよう。丸齧りすると混乱する。


「……はい。普通に食べれるフラガリアがむしろ貴重なのでは?」

「まあ、なんでもかんでも普通に食べれるなら面白みないし?」

「そう言われると確かに」


 とりあえず採取はしておきます。見た目はみかん、色はリンゴ。


「む、戦闘準備!」

「ラプターの群れですか。狩りにでも来たんですかね?」

「……お? 帰っていった」

「明らかに美味しくないと判断したのではないでしょうか……」

「鎧1、骨6、ゾンビ1。食事目当てじゃ戦う必要がないねぇ」

「ですねぇ……ん? ノリで言いましたが実際にそうだった場合、このイベントエリアAIが特殊ですね」

「ああ、確かに」

「でもさっきから地味にアルフ戦ってない?」

「あー……?」

「食事ではなく、縄張り意識からの争いという可能性は?」

「「なるほど……」」

「まあ、ただの妄想の域を出ませんが。純粋にこちらは数が多いですからねぇ」

「群れで狩りしている以上、多少利口か? まあ、引き続き移動しようかね」


 1体まではPTカウントされないので、実質こちらは8体です。ラプターは28レベ5体でした。ベース的には適正レベルですね。

 戦わずに済んで楽と思うか……逃げると言う選択をすると知ったので、肉の確保が面倒になったと取るべきか。我々は食べなくても良いですが、食材調達班は大変ですね?

 狩るなら少数精鋭。採取ならフルPTでの移動でしょうか。まあ、もう少ししないと判断するには情報が足りませんね。


「中々楽しくなってきましたね?」

「だねー」

「問題は食事不要種族なのが逆に悲しい感がひしひしと……」

「ある意味最重要項目を気にする必要がありませんからね……」


 普段のゲームでは楽ですけど、こういうイベントとなると少々寂しいですね。皆今頃必死に食材探しに駆けずり回っている事でしょう。北と東はそれどころじゃないかもしれませんが。

 とりあえず私達は湖を目指します。


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― 新着の感想 ―
食材の少ない孤島………。 動物たちは何を食べているのやら。
[一言] 今更ですけど読み返しててふと思ったことがひとつ。 一号達ってクラウド方式で魂?意識?共有してるなら、傍に二号置いて二号づてに、一号に指示だしとかできないんでしょうか。
[一言] 結構前の感想だけど、以前に1体目は0体目っていうことになるって言われてたね 4人PTで一人が3体出したら6人PT+1体(0体目) 主人公の3人PTで二人が2体ずつ出したら5人PT+2体(0体…
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