41 第二回イベント情報
実は100話超えが地味な目標だったりするのですが、さっさと先進めたい病を患っていましてね。
レベル上げを描写するぐらいなら交流で会話だよなぁ的な。
「おーねえちゃーん」
「ん?」
「第二回公式イベントの情報が出たよ!」
バタバタやって来た妹によると、少し前に公式が更新されたようですね。チェックしましょう。
第二回公式イベント『夏といえばキャンプ』8月下旬、4週目の土曜日ですか。
「へぇ、キャンプ」
「キャンプはキャンプでもサバイバルキャンプ!」
えっと……『あなたは無人島に何を持っていきますか?』
「なるほど。持ち込めるアイテムの制限」
「じゃないとサバイバルにならないからねー」
各部位の装備品に加え、1種類だけ持ち込みが可能。よって他のプレイヤーと協力して魔物のいる無人島で生き抜きましょう。PKは可能ですが、自分の首を絞める事になるでしょう。
「戦闘不能は1回まで。2回目の戦闘不能で通常エリアに戻されると」
「体感時間を変えて7日間だから、経験値が美味しい!」
精神疲労軽減のため、ゲーム内での睡眠が必要になります。寝不足ではステータスの低下など、ペナルティが発生します。そして不死者など睡眠不要設定種族の方、ごめんなさい。ペナルティ自体はありませんが、中の人には睡眠が必要です。寝てください。
勿論食事の必要もあります。サバイバルなので素材は集めてください。食事不要種族は必要ありません。
「まあ……私は寝る必要あるから……うん」
「食事はともかく、睡眠不要は元々フレーバーだったよね」
「フルダイブなだけに、中の人の疲労を考えるのは必須だから……」
普段の鯖はゲーム内時間が加速されているだけで、体感速度などは変更ありません。それをすると色々問題があるのでしょう。主にぶっ続けでやる人達の肉体疲労……と言うより、主に脳と精神疲労の方ですか。頭痛が酷いのではないでしょうか。
イベント中のログアウトは可能だけど、頻繁なログアウトは控えるように言っていますね。4回目のログアウトはイベントエリアからも出される。一度出されると復帰不可なので、食事やトイレなど事前に計画組んで空けておけと。
「頻繁なログアウトすると脳が混乱するのかな?」
「案外お馬鹿さんだからね。まあでも、VR機器で電話やメールなどはそのままできるそうだから、食事とトイレを済ませておけば平気でしょう」
戦闘よし、生産よし、採取よし、探索よし。イベントフィールドの無人島で好きに過ごせと言う事ですね。手に入れたアイテムはお持ち帰り可能……と。
イベント中のスキル取得は可能ですが、個人評価が下がります。評価基準は秘密ですが、イベント概要から察してください……? 協力して生き残れと書いてあったので、そういう事でしょうね。
イベントに参加する方は事前にエントリーをする必要があります。明日の0時。日付が変わり次第可能となりますので、忘れずに登録してください……ですか。このエントリー時に装備している物と持っていくものを登録するようですね。
イベントフィールドへの移動は10分前から可能で、その際船内に移動。イベント開始と共に無人島の海岸沿いにランダム漂流……ですか。PTを組んでおけば同じところへ行くようですね。
そして無人島にセーフティーエリアはありません……? さらっと書きますねこの運営は。
しかし持ち込み可能アイテム1種ですか。これは悩みますね。
「お姉ちゃん何持ってく?」
「うーん……料理キットか錬金キット。採取系の道具って選択肢もあるから……迷うね。自分だけならいっそ全部不要なのだけれど」
「……種族的に料理もポーションも不要だもんね。このイベント不死者強い!」
「なお寝る必要はある」
「まあ、うん」
「いっそロープとかの方が使い道あるかも?」
「ナイフは剣があるか。火とか水は魔法があるし……おやー? 思ったより……やっぱポーションかな」
「いや、ツルハシじゃないかな」
「鉱石? でも……あっ装備の修理材料か! 待てよその場合……」
私は装備の修理も食事もポーションも不要ですからね。アルフさんとスケさんとPT組むとして必要なのは……ツルハシですか。アルフさんの大盾がネック。
ただし、評価を考えると正解は料理キットか錬金キットでしょうね。どちらもプレイヤー少なかったはずですから。それこそ素材集めの人手より、職人の人数不足が最大のネックになると思います。
「無人島と考えると錬金……? でも魔物がいるならお肉はあるだろうから燻製……いや、塩はまだしも砂糖が無理かな」
「個人としてはポーション持っていきたいけど……」
ああ、小麦や大麦……大根など、食材は探せば島に用意しているみたいですね。農業も可能で収穫速度が上がっている……と。木の実なんかもあるようです。
実に悩ましい。
「やっぱ錬金キットかな。調理キットは1つあれば手伝いができるだろうけど、錬金キットは1人用だからね……」
「ああー……確かに。私はツルハシかなぁ……」
イベント始まるまでに錬金レシピを一度見直した方が良さそうですね。無人島で必要になりそうな物をピックアップしておきましょう。
公式開いたついでに、掲示板に書き込んでおきましょう。言動によっては奴らが来るぞ……。ちなみに試しても良いですが、責任は取りませんっと……。
「お姉ちゃんこれまじ?」
「確認するわけにもいかないから未確認だけど、嘘つく理由がないからね」
「誰かが体張るしか……」
「碌な事にならないと思うけどね……。どうせ誰かしらやらかすでしょう」
「死なないで検証班! あなたが死んだら……」
「次回検証班死す」
「多分もうすぐ死亡報告来るんじゃないかな……」
「ちなみにステルーラ様は輪廻の女神です」
「あそっか。うわ、ヤバそう。……あ、『【悲報】外なるものヤバい。死ぬ。というか死んだ。もうしません許して。トラウマ製造機』ヤムチャしやがって……」
「ワンパンで戦闘不能かつ、戦闘不能時の復活待機時に追撃……?」
「復活待機時って判定無いはずだよね……。しかも体を引きちぎられたとかSAN値ヤバそう」
「復活後所持金全てかつ、スキルのレベル減少……」
「スキルレベル減少……」
思った以上にやばかったですね。そしてデスペナが本来と違うようで。
……灰色のでかいヒキガエルだけど、頭から触手が生えてた?
「ん……? おいムーンビーストじゃんか! ドSの拷問蛙じゃん!」
「単純に引きちぎられたのは幸運だった可能性」
「お、もう1人勇者が死んだ。なになに……? 『大きくなったり小さくなったりする青っぽくて犬っぽいモヤッとボールみたいなのに襲われた?』日本語でおk」
「んんー……? モヤっと……トゲトゲ? 変動する青っぽいトゲトゲした犬?」
「あーっ! 三角ワンワンだー!」
「ああ、ティンダロスの猟犬か」
「じゃれつかれたら死毒が付いて……毎秒4%!?」
「ペロペロされたところが文字通り無くなってSAN値がピンチ……」
「HP無くなって戦闘不能時にもペロペロされて体が消えてったと……」
「何かゲーム変わってるな? 『襲われてる本人もあれだろうけど、見せられる方も大概ヤバい』って言ってるね」
「ってかステルーラ様って元はヨグ様じゃないの? ティンダロスまで深淵にいるわけ? あいつら本来敵同士だよね」
「そもそも『ティンダロス』が別世界だったはずだから、一緒の世界に住んでる時点で違うよね」
「クトゥルフ関係が外なるものに纏められてるって思って良さそうか。そして住処を与えているのが……恐らくヨグ様であろうステルーラ様」
役割からして悪い存在と言う事は無さそうですね。無差別に暴れていたら目も当てられませんでしたが、どっちも契約違反者のみ狩って帰ってるようですし。まあ、目撃者はドンマイですけども。
ムーンビーストにティンダロスの猟犬がいる事は確定ですかね。プレイヤーがなれるかは謎ですけど。蛙と犬から進化? 前者はともかく、ティンダロスの猟犬って人が犬っぽく見ているだけで、正直不定形では? ……まあ、良いや。ゲームしましょう。
昼食を終え少し休んでからログインします。
第二回公式イベントに備えて準備をしたいところですが……持ち込めるアイテムが1種類なんですよね。つまり生産しておく必要がないので、錬金レシピを漁っておきましょう。
サバイバルで使えそうなレシピは……瓶、ポーション、矢、ショベルなどですか。というか作れたんですね、ショベル。木と石かインゴットですか。ツルハシや鍋などもありますね。少々コストが重いのを除けば、確かに錬金は便利。
さて、後は何しましょうか。……と言っても探索かレベル上げですが。午前中は生産で潰しましたから生産はなし。……とりあえず町歩きますか。
「あら姫さん、買い物かい? お散歩かい?」
「ごきげんよう。お散歩ですね。でも少しだけ使ったので補充しましょうか」
「まいど!」
いつも露店をしている野菜屋のおばちゃまから、使った分のタマネギやニンニクを補充しておきます。ちなみに歳は50台ぐらいですね。
「そう言えば外なるものが来たって聞いたけど、大丈夫だったのかね?」
「それでしたら異人が馬鹿やっただけなので、気にしないでください」
「そうなのかい? 気をつけておくれよ? 最悪周囲を巻き込むからねぇ……」
「巻き込むことあるんですか……」
「度合いによるよ。基本的には平気だけど、破った内容によっては……ね。過去にステルーラ様を侮辱した国が、3人の女性を筆頭にした化物達に一夜にして滅ぼされたってのは有名さ」
「3人の女性……?」
「1人は老婆、1人は成熟した女性、1人は若い少女だったか」
えっと……なんでしたか。確かにそんなのがいましたね。えーっと……。
「ああ、そうだ。教会では『嘆きの聖母たち』と言われてたっけね」
ああ、そうだ。三聖母ですね。そりゃ滅ぶでしょう。
『マーテル・ラクリマルム』『マーテル・ススピリオルム』『マーテル・テネブラルム』の三柱……でしたか。見た目は普通の人ですが、あれめちゃくちゃ強いんですよね。3人同時に殺さないと復活させあうし、3人いるとステータス共有してくるし。それぞれが動物を使役する挙げ句に聴覚障害、言語障害、視覚障害の致命的な状態異常。更に全ての奉仕種族の召喚と従属権があるはずです。
こちらの世界でどこまで能力が再現されているか分かりませんが、今来られたらプレイヤーも全滅するでしょうね……。
深淵……流石に混沌とし過ぎでは? きっとフューチャーソフトウェアの中にファンがいるのでしょうが、流石に普通に跋扈させるわけにはいかなかったのでしょう。それで深淵を作ってこの世界に合わせた結果がこれなのでしょうが……いくら他に居場所ないからって、混ぜるな危険と言う言葉を知らないのでしょうか。深淵も相当大きそうですね。
世界を破壊しに来るわけでもなく神々の使い的な状態なので、味方じゃないけど敵でもない、基本的には干渉してこない存在ですか。唯一の例外が契約違反時に断罪しに出張ってくると。
もう少しステルーラ様周りの設定が知りたいですね。深淵は流石に分かりませんが、冥府や奈落辺りは関わることになりそうなので。
まあ、もう少しフラフラしましょうか。住人との雑談が中々の情報収集に……。
「お、お嬢。散歩か?」
「ごきげんよう、お散歩ですよ」
「今日も天気は良さそうだからな。散歩日和だ!」
住人の皆さんは結構話しかけてくれるんですよね。
「「「「あ、こんにちはお姉さん!」」」」
「はい、こんにちは。これから遊びに行くのですか?」
「うん!」
「そうですか。気をつけるのですよ」
「「「「はーい!」」」」
4人組の子供達でした。元気ですね。生き生きしすぎでしょう。AIの凄さが滲み出てますね。
おや?
「お婆ちゃん、どうかしましたか?」
「ああ、教会まで行きたいんだがね、ちょっと腰をやっちまってね」
「あらあら……ヒールで治るでしょうか?」
「ヒールじゃ一時的に痛みが引くぐらいでダメなんだよ」
「そうなのですか。《聖魔法》は持ってないんですよね……」
「ハハハ、持ってる方が少ないから気にするこたぁないよ」
私は筋力がないので、おんぶなども少々不安ですね。……ふむ。ではああしましょう。
「運ぶ手段を思いついたので、ちょっと待ってくださいね」
「おや、そうかい?」
えっと《頑強》《重心制御》《筋力強化》《足捌き》にして、目的地が教会なので浄化耐性が無いと話になりませんね。スケルトンオーガを職業カスタムでファイターにしてステータスを寄せる……と、召喚コスト2400ですか。キャパシティは3100あるので問題無いですね。
「よし。来なさいスケルトンオーガファイター」
「お、おお? おまえさんネクロマンサーかい? 珍しいねぇ」
「一号、オンブは知っていますか?」
「カクン」
「……ふむ。一応自分で試しますか」
一号に背を向けさせしゃがませます。その背に乗り、立たせます。一号はスケルトンなので、掴まるところは沢山あります。これは思いの外良いですね。揺れは許容範囲内でしょう。《重心制御》と《足捌き》がいい仕事しているはずです。
しかし、でかけりゃ良いってもんじゃないと言う事が分かりました。誰ですかね、オーガをチョイスした人は。2メートル超えなので、逆に辛い。オンブと言うか、背中に足掛けて立つに近い。
スキルはそのままに、メタスケをファイターにして3倍上乗せ召喚で呼びます。これでコストはオーガと同等。サイズ差が大きいですからね。
再び乗った感じ、メタスケ安定ですかね。では本番、私は降りてお婆ちゃんを背負わせ歩かせます。
「おお、こりゃ良いねぇ。しかし教会行って大丈夫かい?」
「浄化耐性を持たせましたので、大丈夫ですよ」
「ほほう。おまえさん優秀だねぇ……浄化耐性持たせるのは難しいと聞いたが」
まあ、私の浄化耐性を一号にコピーしているだけですからね。裏技です。
お婆ちゃんを背負うメタスケと絵面が少々あれですが、仕方ありません。私じゃ背負うの難しそうですからね。筋力的に一号の方が良いでしょう。
一号が足を持ちつつ骨盤に引っ掛け、腕を回したお婆ちゃんが肋骨を掴むと。一応私が少し後ろを歩けば完璧ですね? 落ちることはないでしょう。
「一号、少し待ちなさい」
「カクン?」
スケルトンラビットを一号と同じスキルで召喚し、教会の方へ走らせます。教会前まで行ってひょこっと二本足で起き上がったので大丈夫でしょう。
「やはり大丈夫そうですね。行きますよ」
「アンデッド!?」
やばっ教会の人出てきた。逃げるのです二号!
「あっどこに!」
二号は私の後ろ足に隠れました。
「あらら?」
「すみませんうちの子です」
「なるほど、ネクロマンサーでしたか。良かった良かった」
「腰を痛めたお婆ちゃんを運んできたのですが、どこへ運びますか?」
「それでしたらこちらへ」
そのまま一号に礼拝堂とは違う場所へ運ばせます。治療室的な場所があったのですね。運び込んだら送還。
「いやー助かったよ」
「いえいえ、お大事に」
さて、次はどこへ行きましょうか。……おや、ルシアンナさんがいますね。
「おや、アナスタシアさんでしたか」
「ごきげんよう、ルシアンナさん」
「こんにちは。どうですか、入り口は」
「まだ掛かりそうですね。周囲のアンデッドが手強いですよ」
「《聖魔法》があると楽なのですが……不死者では使い勝手がよくありませんね。無理はしないように」
「もう少し鍛えてから行きますよ」
そう言えばルシアンナさん、誰の信仰なのでしょうか。ローブの色は黒っぽいですが、よく見ると紺ですね。それに金の刺繍。
「どうかしましたか?」
「メーガンさんから服の色に付いて聞いたのですが……」
「ああ、なるほど。私は特に誰の……と言うわけではありません。強いて言うなら全員でしょうか。そういう者は私のように紺と白が基本ですね」
聖職者達が着ている修道服はデザインが一緒です。ですので基本的には色を変えるだけで対応しているようですね。そして刺繍の色が身分を示しているそうです。
赤から緑、緑から灰、灰から金だそうです。これは神々の髪の色かつ、生まれた順番だとか。シグルドリーヴァ様の赤が新人で、クレアール様の金が偉い。
「なるほど。それで布の色は信仰しているなら神の色を纏うと」
「はい、身が引き締まりますからね」
「金刺繍のルシアンナさんは偉いわけですね」
「ふふふ、お婆ちゃんですからね。ベテランですよ」
実に穏やかににこやかーですが、周囲の赤刺繍の人結構引き攣ってますし、灰色刺繍の人とか苦笑してますよ?
「ルシアンナさん、微妙に服のデザイン違いますよね」
「あらら? よく気づきましたね? 聖職者は身分を露骨には出しません。神々に仕える者ですからね。しかし全く分からないというのも少々困ります。それが刺繍の色にまず現れ、よく見るとデザインが違うと言う物になっています」
所謂量産型ではない特別なデザインの服でしょうから、偉い人用という事でしょうね。多少服装を気にしている人なら気づくと思います。
「この街周辺を管理する大司教をしているの」
「ここではなく、この辺りの……ですか。なるほど、予想以上に偉いですね」
「身分を言うと大体畏まっちゃうから基本的に言わないで混じってるのよ」
「では私も暴露しましょうか。不死者と言いましたが種族は不死者の王女です」
「……えっと待ってね。それって確か……え、なんでここにいるの? そうか異人だったわね……異人がなってしまっていい種族なのですか? ステルーラ様?」
おや、ルシアンナさんが混乱状態になってしまいましたね? 他の方達顔色悪いですが、取って食ったりしませんよ? 肉食ですが、人肉はちょっと……。
「えっと、アナスタシアさんでしたね」
「はい」
「冥府への入り口を探していると言っていましたし、ここにいるのは異人だからですね?」
「そうですよ」
「だそうです。落ち着きなさい。口外禁止とします。よろしいですね?」
物凄い頷いてますね。
それにしても予想より遥かに大きい反応ですね。もう少し情報が欲しいところです。この反応、冥府にある常夜の城が私の家……と言う予想が当たってしまった可能性が? そうだとしたら『お前ここで何してるの?』は頷かざるを得ませんね。
「ふむ……メーガンには?」
「確か高位不死者としか言ってないですね?」
「なるほどね……よし、場所を変えましょうか」
教会の庭の一角から教会内の一室へ移動しました。ひと目で分かる、かなりいい部屋です。
「さて、まずは……不死者と外なるものについてはどのぐらい?」
「『ステルーラ様と幽明種』という本を読んだぐらいですね」
「なるほど、あれですか。では基本的に不死者は冥府や奈落。外なるものは深淵と言うのは良いですね?」
「はい」
「基本的にかの者達はそこから出てきませんが、例外があります。外なるものはステルーラ様との契約が破られた時。不死者は……魂関係でこちらに問題があった場合と言いましょうか。かの者達はそれらを感知してやってきます」
「私がいる時点で何かやらかしたんじゃないか……と?」
「それもありますね。んー……支配級って分かりますか?」
「外なるものの支配種族ですか?」
「彼らはもう別枠ですね。支配級や支配クラスというのは、魔物の中でも統率系スキルを持った個体の事です」
ワールドクエストで見たジェネラルが該当しますね。他はまだ見たこと無いでしょうか。
「あの存在は脅威となります。そして支配者級トップに位置するのが王家。キングやクイーン、プリンスやプリンセスと付く個体です。王家の統率力は文字通り桁が違いますね。比較的生まれやすいのがゴブリンキングです」
ゴブリンとの戦闘は冒険者の新人……FやEと言ったランクでも、武装さえしていれば1対1で勝てるレベル。あくまで1対1ですね。そしてジェネラル統率下に入ったゴブリンだと……勝てるか怪しくなる。で、問題の王家の統率下に入ったゴブリンだと……確実に負けるらしいです。
つまり、王家に関する名の付く個体は即討伐対象が基本です。危険過ぎるためですね。統率可能数、統率時上昇能力共に桁が違うのだとか。更に問題なのが、王家のいる場所へ、他の支配級まで集まると目も当てられないとか。
ゴブリンはまあ、基礎能力が低いので……キングがいても被害が出るが、どうにでもなるレベルだとか。
基礎能力が高い魔物だと当然危険度が跳ね上がるため、基本的に見つけ次第冒険者組合へ駆け込み、即討伐隊が編成される。個体によってはそのまま軍に連絡が行くようですね。
「特に危険とされるのがアンデッドの王家。アンデッドは知能が低いので特に問題になっていないだけで、基礎能力は高く、特殊スキルも多いのです。数も多くしぶといので、集団でこそ本領を発揮する支配級が誕生すると目も当てられません。王家なんか生まれたら周囲の軍と聖職者が総動員されるレベルです」
「……アンデッドの支配級と不死者の支配級は?」
「はい、別物です。戦闘能力だけで言ってしまえば、当然不死者の支配級統率下が比べ物にならない脅威ですが、知っての通り不死者は基本的に生息圏が違うので」
「ああ、なるほど。そもそも住む次元が違いますからね」
「不死者の王家はそれこそあれです。常夜の城で冥府と奈落を治めているはずなのですよ……。不死者は私達生物の死後の世界を管理する者達。そのトップが不死者の王家の方達なのです。ここにいるのが本来はおかしいのですが……」
「異人ですからねぇ……」
「はい。いつでもいいと言いましたが、できるだけ早く冥府を目指した方が良さそうですね。王家はそう生まれません。彼らも困っている可能性がありますから」
人間の場合王家は王族の家族ですが、魔物の場合は判明していないようですね。数年から数百年でひょっこり誕生しているそうで、対処が大変だとか。
王家以外の支配級はそこそこ誕生するようですね。見つけ次第討伐されているようです。集団こそが本領なので、発見が遅れるとそこそこ大規模な戦闘になりやすいと。これが恐らくワールドクエストなどになっているのでしょう。
王家は同種族同時に複数発見されたことがないらしいですね。常夜の城、もしかして主不在ですか?
「……こっちだと二ヶ月以内には行きたいところですが」
「ふふふ、私が死ぬ前にお願いしますね」
「まあ、それは大丈夫でしょう……後40年ぐらいは生きてくださいね」
半分ぐらいマジですね? 統率者のいない死後の世界は不安ですか?
まあ、サラッと流して話を変えておきましょう。
「それにしても王家の強化能力ですか。王家の統率系固有スキルは2つほど私が持っているので確定でしょう。場合によっては指揮系の統括スキルもあるでしょうし、ゴブリンでも強くなるのは納得ですね」
「ほう! 効果はお聞きしても?」
「上昇量は不明ですがスキルレベルで変動です。権威で全ステータスが上がります。統括で頭も良くなり全ステータス強化。王族で全ステータスと……場合によっては所有しているスキルの共有化ですね」
「全ステータス強化が3つに頭が良くなるだけでも脅威だと言うのに、スキルの共有化……ですか?」
「今のところ私は下僕のみにですが、私の所有している種族スキルを与える事が可能です」
プレイヤーとモンスター側で多少効果が違うなんて、ゲームではよくありますからね。敵側だと統率下の同種に与える可能性も否定はできません。
「なるほど、この情報は冒険者組合と共有しましょう。ありがとうございます」
「いえ」
その後も少し雑談して、お暇します。
結局のところ、プリンセスと言う王家の支配級であること。更に不死者である事の両方が問題だったわけですね。
簡単に言ってしまえば、まずプリンセスで支配級トップである事にビビり。その後不死者と言うことで一安心するも、よくよく考えると全然安心できない事に気づいてよりビビると。
私達のリアルで言うならそうですね……自己紹介したら相手が閻魔様だった? ……はい、そりゃビビりますね。大変申し訳無い。種族は基本黙っていましょう。碌な事にならない気がします。良い情報を得ました。
とりあえず第二回公式イベント後に、再び旧大神殿エリアのリベンジですね。不死者はやはり冥府を目指すのが最優先っぽいです。具体的な目的があるのは良いことですね。
他の種族はなにかあるのでしょうか。こればっかりは知りようがないのですが。
「あーっ! ひっめ!」
この声かつ上というと……ああ、やっぱりフェアエレンさんですね。
「ごきげんよう。どうしました?」
「これ見てこれ」
[素材] 妖精の蜜 レア:Ep 品質:C
妖精が固有の魔法で花から生成した蜜。
とても美味しいが量が少なく、大変珍しい。
蜜をくれるかは妖精次第。もし見つけたら仲良くしよう。
「わお、作ったのですか?」
「試してみたけど全然採れないね。花畑欲しいわ」
ポーション瓶に半分ぐらいとても綺麗な色をした蜜が入っています。軽く光ってますかね? これで1時間ぐらい飛び回って集めたそうで、花畑でも見つからないと面倒くさいとか。
ちなみに、プレイヤーではなく住人の商人にかなりいい値段で試しの1瓶が売れたとか。エピックですからね……。説明文からしても、供給が全然無いのでしょう。
「品質は多分花の状態に依存しそうだし、中々大変だー」
「蜂蜜の妖精バージョンですか。味見はしましたか?」
「美味しかったよ。自分用確保してる。あ、それあげるから」
「良いのですか?」
「いいよー。蜜使う系のお菓子作ってくれればなおいいねー」
「ふむ……まだお菓子系は作ってませんでしたね」
「これペロペロするのも悪くないんだけど、こう……あれだよね」
「まあ……お菓子考えておきますね」
「よろしくー!」
そう言って飛んでいってしまいました。空ですか、楽しそうですね。
さて、もう少しお散歩しましょうか。
名前:アナスタシア
種族:不死者の王女 女 Lv24
属性:闇
属:高位不死者
科:ロイヤルゾンビ
スキルポイント:44
スキル
《細剣 Lv14》《宛転流王女宮護身術・細剣 Lv15》《軽装 Lv16》
《閃光魔法 Lv12》《空間魔法 Lv12》《高等魔法技能 Lv15》
《危険感知 Lv13》《直感 Lv13》《舞踏 Lv19》
《料理人 Lv16》《錬金術 Lv14》《採集 Lv4》《採掘 Lv7》
《目利き Lv27》《解体 Lv24》《鑑定 Lv30》《識別》
《言語学 Lv13》
控え
種族スキル
《暗黒魔法 Lv13》《死霊秘法 Lv22》《闇のオーラ Lv33》
《物理耐性 Lv35》《物理無効 Lv32》《魔法耐性 Lv13》
《生気吸収 Lv16》《HP超回復 Lv20》《MP自動回復 Lv19》《自動回復特性 Lv13》
《アンデッド統括 Lv19》《不死者の王族 Lv28》《王家の権威 Lv26》《高位不死者》
称号
優雅で静謐なお姫様:他者に与える印象がとても良くなり、警戒もされづらい。
ベルステッド解放者:始まりの街の東を一番最初に解放した記念称号。
インバムント解放者:始まりの街の南を一番最初に解放した記念称号。
料理人:一人前の料理人に与えられる称号。
錬成師:一人前の錬成師に与えられる称号。
錬金術師の弟子:始まりの街のメーガンに弟子入りした。




