39 再び図書館へ
レビューラッシュを頂きました。夢が1つ叶いました。ありがとうございます。
ベルステッドのあるエリアの境目まで戻ってきました。ここで一旦確認。
新しく取り込んだ素体はリビングアーマー。アルフさんがデュラハンになる前の体ですね。《腐乱体》や《骨の体》ではなく《鎧の体》というものを持っています。
斬撃や刺突系統に耐性を持ちますが、打撃に弱い。そしてゾンビよりはマシですが、移動も遅め。まあ、タンク系の種族ですね。打撃に弱いと言っても盾で防いでしまえばいいので。
スケルトンはアンデッドにしては動きが速いですが、アンデッドにしては体力面が低い。
ゾンビは足が遅いけど体力が高く、自動回復系スキルの効果が高い……でしょうか。
タンクにアーマー、他にスケルトン。ゾンビが空気。いや、本当に空気ですね? まあ、無理して使う必要もないので、いいか……。
さて、一号の装備を大盾から二号の小盾に変更。二号には小盾の替わりにゼルコバの円盾。三号としてネクロアーマーに片手剣と大盾を持たせます。スキルも片手剣用に《長柄》から《刀剣》に変更しておくだけで良いでしょう。……装備不足が否めませんね。後でゆっくりこの子達の装備を考えるとしますか。
3倍召喚は足りないので、一号を2倍、二号はカスタム、三号は3倍で召喚してレベル上げ行きましょう。中身は一号なので、連携の確認とかをしなくていいのは楽ですね。問題があるとすれば……AIレベルが高いとは言え、戦闘技術の方はまだまだですね。アルフさんやスケさんと言ったプレイヤー組の方が強いのは確か。アルフさんもスケさんもトップ組なので当たり前ですが。
とりあえず混合の場合のタゲについては分かったので、3人で来ても良いですね。レベル上げには美味しそうです。いや……スケさん現状対アンデッドには空気では? ……今のところ少々辛い感じなので、もう少し後にしますか。
ネクロアーマーは少々古びたフルプレートの鎧です。結構ガタイが良いんですよね。鋼の片手剣とタワーシールドなので、頼りがいがありそうです。一号と二号は変更なしで。
では夕食まで狩り……できたら良いですね。位置取りに気をつけながらいきましょう。三号を先頭に私と一号が続き、二号は周囲をウロウロ。
フライングヘッドは変わらず私が相手をします。四号が来たら弓でも持たせますか? タンクに遊撃がいるので、一号を弓にするのもありですか。物理遠距離アタッカーがいませんから。
さあ、稼ぐとしましょう。
下僕を呼べるようになり被弾はだいぶ減りましたが、流石にノーダメは不可能ですね。【ロイヤルシュトルツ】がいまいちです。まだ三号に【アピール】が無いので、ヘイト稼げませんし仕方ありませんか。
被弾により下僕達の体力が減りだしたら【フォーストゥコンバート】をかけておきます。徐々に使わないMPがHPに変換されるでしょう。
……私も含め魔法生物だと思うのですが、MP吸っちゃって良いんでしょうかね。体を動かす余剰MPがMPゲージになってると思えば良いでしょうか。
やはり私の回復がネックですね。【フォーストゥコンバート】の使い勝手がいまいちです。自分にも使えますが、MP半分消費するのはちょっと問題ですね……。MPの5割をHPの3割に変換です。これは【ライフアサイメント】と違い全快しても止まりません。逆に言えばリジェネ状態が少し継続するとも言えますが……。
【ライフアサイメント】で私のHPを下僕達に与えつつ、自分は【フォーストゥコンバート】でHPを回復するのが良いのでしょう。私が魔法アタッカーじゃなかったら……ですけど。MPの無い魔法アタッカーとかただのカカシも良いところです。その分下僕達が多少ゴリ押しできるようになるでしょうけど……結局は、リソース管理が他に比べて難しい感じですね。
一応マップ中央付近にある旧大神殿を目指してはいますが、中央に行くにつれてポップ数が増えるので、やはりまだ無理そうですね。アンデッドの本領、数の暴力を捌けそうにありません。ゾンビ系だけなら素通りできたのですが……。突っ込んでも死ぬだけなので、程よい位置で狩りを続けます。
それにしても薄々感じてはいましたが……この辺り、光系統が4倍とは思えないダメージですね……。もっとダメージ与えても良いと思うのですが、エリア効果があるのでしょうか? これでも私、闇以外でも魔法火力はあるはずなのですが。暗視で視界的には問題ありませんが、この薄暗さとか意味あるのでしょうか。答えは出ないので放置しますが。
更に気になると言えば、下僕達の動きでしょうか。住人と同等とは言え、住人にも色々いるでしょう。プレイヤーを異人、NPCを住人と言っているだけですからね。1対1では別に問題ありませんが……囲まれると慌てると言うか、不測の事態などに弱いですね。AIレベルが足りないか、はたまたプレイヤーとPTを組ませるためか……。ただでさえ敵の方が格上なので、過信はできませんね。
やっぱりソロの時は召喚して、PTの時は召喚しないのが安定ですか。アルフさんやスケさんの方が安心感あるのは間違いないですし。種族が王族だから統率系があるだけで、使役に特化しているスキル構成とは言い難いですからね。
問題は私の就寝時間が22時なので、残業入るとアルフさん達が帰ってくる頃には既に寝てるんですよ。なので夏休み中は平日に生産日を持ってきて、土日を空けるとして……とりあえず今は狩りしましょう。
〈《宛転流王女宮護身術》がレベル15になりました〉
〈《宛転流王女宮護身術》のアーツ【ロイヤルアンチマジック】を取得しました〉
【ロイヤルアンチマジック】
魔法系を防ぎ、弾く。【マジックガード】【マジックパリィ】に上書き。
ついに対魔法アーツも統合されましたか。フライングヘッドがより楽になるでしょう。
さて、そろそろ撤退すれば丁度いい時間のはず。倒しながら下がりましょう。
旧大神殿のエリアからさっさと撤退し、ベルステッドのあるエリアまで来たらゆったり町を目指します。
三号は片手剣ではなく、片手槍でも良いですね。盾越しにチクチクするだけでも悪くはないでしょう。二号用に両手槌も欲しい感じがしますし、エルツさんから買いましょうか? ひとまず木製で一通り確認するのが先でしょうか。ある程度スタイルを決めておかないと出費が洒落になりません。テンプレートの設定も面倒です。
まだサービス開始一ヶ月ちょっとですか。今のところスキルは上がっていますが、そろそろ上がらなくなるはずですね。つまり目標をスキル上げから別のものに変える必要があります。じゃないと飽きる……とは言え、戦闘生産システム自体が楽しいので大丈夫だとは思いますが、目標はあるに越したことはないですからね。
とりあえず、夕食にしましょう。
色々済ませ寝るだけにしてからログインです。
図書館ですね、うん。せっかく作り込まれているこの世界。ただ戦うだけでは勿体無いでしょう。早速ポータルから始まりの町へ転移して図書館へ行きましょう。
「あー! いたー!」
転移したら女性の叫びが聞こえましたが、待ち合わせでもしてた人ですかね。
「姫様待ってー!」
あれ、私でしたか。待ち合わせの予定などしていませんが。
「ごきげんよー姫様!」
「はいごきげんよう。どうしました?」
「今時間あるかな? ちょっと集まるまで待って欲しいんだけど……」
「はて?」
「お礼を渡したくてね、皆で探してたの」
「お礼……? ああ、もしかして美容の?」
「そうそれ! 効果が実感できた以上、お礼はしないとね?」
見覚えある人なので、心当たりは美容ぐらい。実感できたのなら良うございました。こういうのは向こうの気持ちの問題でしょうから、大人しく受け取っておきましょう。図書館で本でも読もうかと思ってただけなので、時間はありますからね。
1分もしないでポータルからわらわらと女性達がやって来ました。と言ってもやって来たのは3人ですが。
改めて4人にお礼を言われました。女性代表はもう1人いるそうなのですが、まだログインしてないみたいですね。……と思ったらログインしたらしく招集されました。丁度私にもログインしましたって通知が来たタイミングですが、たまたまですよね? 女性ですが……。
「ごめ~ん待ったー?」
「……何してるんですかこたつさん」
「いっやぁ、私も他の子から聞いてねー」
とか言いながらてへーっとしています。フレンドにいるのもあって、代表にされたようですね。
「それで皆でお礼を軽く考えたんだけど、『別段珍しい物ではなく、それでいて必要なもの』と言う事になってね?」
「難しくないですか? 下手にレアな物貰っても、私が困るだろうと言う配慮なのは分かりますけども」
「うん、種族的にポーション系も不要でしょう? それで、これに決まりました」
こたつさんがぽちぽち弄って実体化されたのは……お肉でした。なるほど。
「別段珍しくないけど、料理素材で数が必要、かつ集めるのは地味に面倒と言う事で。兎、ウルフ、ピグゥ、アンガス、トッケイのお肉セットをかき集めました」
「料理板を調査したところ、ボアやベアは料理上げぐらいにしか使わないとか見たので、ありません」
「それとちょっと高いけどゲーム内で普通に買えるアイテム。出し合えば一人頭大した額にならないから、遠慮しないでね」
「そしてそのお肉で料理を作って委託に流してくれるとなお嬉しい」
「携帯食料はちょっとねぇ……料理人もっと増えろー!」
「自分で作るとか」
「「「「「それはない」」」」」
全員でハモらんでも。
「帰宅後の食事はー?」
「「「「弁当! お酒! ツマミ!」」」」
「……お酒とツマミだけじゃない分マシですかね」
「「「「「HAHAHAHA」」」」」
……大人の女性のリアルな生活。
「貰ったお肉で何か作りましょうか?」
「「「「「唐揚げ! おっ? レモンはー?」」」」」
「「かける!」」
「「かけない!」」
「どっちでもいいわ」
「「「「…………」」」」
無言でかける派とかけない派で分かれて、キシャーと威嚇しあって対立しています。何してるんですかこの人達。
ちなみにどっちでも良いのはこたつさん。
「コントですね」
「この流れは聞いてないから、たまたまだろうねぇ……」
「そもそも私が言わなければこの流れにはならなかったでしょうからね」
「示し合わせたように唐揚げか。まさか被るとは……」
「まあ、揚げ物は近いうちに作ろうと思っていたので材料はあります。ただ、そもそもレモンがまだありませんし、喧嘩するなら作りませんよ」
元々ノリだったのもあって、さっと元に戻りました。言っておかないと収拾つかなくなりそうですからね。
少し端っこの方へ移動し、料理キットを展開。作るとしましょうか。
えっと貰った物は……ピュアオイルにヴァージンオイル、エルルにエルンタと言った油系に……お肉各種50個ぐらい。バターや豚腸まであるじゃないですか。
買うと1個3000するヴァージンオイル。贅沢にこれ使いましょう。ゲームですからね! 使用数も量ではなく回数判定なので、揚げ物に使うには最適でしょう。
揚げ物用の鍋と……普通の鍋もいるかな。揚げ物用にはヴァージンオイルを並々注ぎ、普通の鍋には水を。
トッケイのお肉をバラし、鶏唐用とブイヨン用に分けます。ブイヨン用の野菜も下準備をしておきます。
そして本命、水……品質Bの使いましょう。それに卵を入れて溶きます。そしたら小麦粉を入れる前に……卵を溶いた水と小麦粉両方を【冷却】で冷やします。冷やしてから小麦粉を投入し、今度は軽く混ぜる。
できたら箸で油の中に垂らして温度チェック。
「……まだですね」
温度が上がるまでブイヨンの方を進めます。こちらはまたオニオンスープにでもしましょう。
灰汁を取ったりしながら油のチェック。垂らした物がすぐ浮いてきたら丁度いい感じです。衣の液は冷やしておくのを忘れずに。低温を保っておかないとベチャッとしますからね。
「うん、良いでしょう」
「期待で涎が止まらん」
「ゲーム内だけどね」
「お酒がほしい……」
「既に1杯始めたい」
「分かる~」
鶏肉を液に潜らせ投入!
「この音が堪らん」
「ねー」
「揚げ物とか家じゃ絶対やらないもんね」
「揚げどころか料理しないでしょう」
「えへー」
女3人揃えば姦しい。6人いるここは目も当てられない。元気ですね皆さん。
「手際いいなー。良いお嫁さんになるよー」
「おっさんか」
「料理できる奴がやればいいだろうがー!」
この人達もうお酒飲んで来たのでは? とか思ったらこたつさんが突っ込んでくれました。
「さてはあんたら飲んでから来たな?」
「いえ、シラフです」
「まじかよ……」
それでこのテンションですか。相手は任せますよこたつさん。私は料理するので。
油の状態も見つつ、こんがりきつね色になったら取り出します。そして新たに投入。油の状態がちゃんとポップアップで分かるのは良いですね。現状良好です。
エビとかが無いのが悔やまれますね。山菜とか言って薬草揚げたら怒られるでしょうか。……やってみましょう。一応【洗浄】で綺麗にしてからさっと潜らせて投入。こたつさんが2度見していましたが気の所為です。あなたは何も見ていない。
鶏肉と違ってすぐに揚がりました。実にそれっぽい。
「なにこれ山菜ー? 頂きー!」
「あ、ずるい!」
「……な、なぁにこれぇ? 欲しそうにしてたからあげるよ……」
「えー……」
めっちゃしっぶい顔していますね。
「あ、やっぱり駄目でしたか?」
「めっちゃ青臭い。マジ葉っぱ」
「姫様しれっとぶっ込むよね……。あれ薬草だよね?」
「山菜と言い張るのは無理そうですねー」
そして次はカッセイタケを取り出します。
「せいせいせい」
「冒険するのはやめようか。食べるの私達じゃん?」
「ポーションに使われてる以上、いけるかな……と」
「その結果があの薬草じゃん?」
「いけるいける」
「行ける行けるって」
「逝ける」
「いけると言うなら食えよ!」
「炙りと揚げどっちにします?」
結局両方作りました。カッセイタケの串焼きと揚げです。
「お……お? 案外いける」
「うん、案外いける……」
「まじか……。私は普通に唐揚げ食べるんで」
「「それはずるい」」
その後チーズを揚げたり、普通にトンカツを作ってみたりしていたら油の状態が良好から普通、普通から不良になったので作るのはやめにします。油はそのまま流しに捨てるとポリゴンになって消えるので、非常に楽でしたね。
ブイヨンは無事にオニオングラタンスープになりました。
「お礼に持ってきたのに、結局ご馳走になってる件について」
「それなー」
「さっくさくで超うまひ」
「貰った物で十分プラスになるので、問題ありませんよ」
うん、美味しいですね。唐揚げ3か4個を串に刺して売っても良いかもしれません。儲けで考えるならジャーキー一択なのですが、同じの作ってても飽きますからね。
生ハムとかも作ってみたいですね。リアルだと大変ですからねあれ。豚バラしか無いので牛を使うべきでしょうか。脂身の少ないランプですかね。
「お、ねえお姉さん達! 俺らと遊ばない?」
生ハムは確か……冷燻法でしたか。下味などはジャーキーとかと変わらなかったはずですね。最大の問題が、またしても温度管理との戦いですか。生ハムという事で直接加熱をしないため、リアルだと消毒やらなんやらと衛生面が問題と言う。
とりあえず水に塩砂糖を溶かしてソミュール液を作り、お肉も下準備が必要ですね。
「あ、あれー? ねぇお姉さん達! 無視!?」
「「「「え? なに?」」」」
……わざと放置してるのかと思いましたが、食べるのに夢中で聞いてませんでしたね? あ、こたつさんはわざとですね。ああいうのは反応したら最後ですからね。
と言うかこの男性4人組、どう見ても二陣なのですが? 初心者装備ではないようですが……。
「狩り行こうぜ狩り! 俺らが教えるからさ!」
「んふっ……げほげほっ!」
気持ちは分からなくもありませんが、吹き出さないでくださいよ。えっと……これで1日ぐらい置いて水分を出す……と。チクタクしましょう。
仮にも私達一陣ですからねぇ……私とこたつさんはトップ層ですし。他の4人も結構上の方なのでは? 鋼武器ですよね。現状最強素材なのでいい値段ですよあれ。
チクタクが終わりましたね。そしたら胡椒やらニンニクをさっき作ったソミュール液に投入して、お肉も漬けましょう。そしてチクタク。なんと一週間ぐらい。
「教わること無いと思うから、他あたってくれる?」
「私達一陣だからさ、狩場も違うと思うんだ」
うんうん頷きながらモグモグ。男より食い気。ゲーム内だし余計そうなりますか。
「……い、一陣……? じゃじゃあ、少しアドバイスでも貰えないかな?」
だいぶ苦しいですが、その返しはまあありですか。目が泳いでるのがダメダメですけど。
よしよし、塩漬けはこのぐらいですかね。町の中はMP回復が早くて助かります。次は水に数時間浸けて塩抜き。
男性4人は大学生ぐらいでしょうか。こちらの女性陣は少なくともお酒が飲める年齢っぽいですからねぇ……。しかも完全にゲーマーでしょう。誰かに誘われてとか流行に乗ってではなく、やりたいからやってる系の。話してた感じ、チヤホヤされて喜ぶ質じゃないですよこの人達。むしろ晩餐邪魔されてムカついてる系。目が笑ってない。気づけ男性諸君。
女性4人はともかく、私とこたつさんは完全オーダーメイド品の装備なんですけどね? それをできる資金を持っている以上、ひと目で上の方だと分かると思うのですが……。駆け出しだとその判断もし辛いですかね。出回ってる装備やアイテムの情報が不足しているでしょう。
ちなみにこたつさんは猫獣人で茶髪に黄色い目、ホットパンツで白いおみ足が出ている、私より少し小さい細身の方ですね。わんにゃん大帝国のギルマスです。
さて次の問題は、乾燥と燻製を繰り返す事ですが、乾燥具合が分かりませんね。【加湿乾燥】使って良いものか……。
「しつこいナンパは注意対象だぞぉー?」
「あ、久遠さんやっほー」
「はいこんにちは。GMです」
実ににこやかですね。男性陣固まってしまいましたが。
「二陣で人数増えればこういう問題も出てきましてね。このゲームは出会い系じゃねぇっつのに。GMコールにセクシャルコールが追加されてるから、しつこいナンパとかの対応面倒くさくなったらそれで連絡をくださいね」
「あー、そう言えばGMコール系変更来てたっけ」
「やっぱり流し読みで飛ばしちゃうかな? 知り合いに男女問わず広めておいてください。セクシャルコールだと優先度が上がり、AIではなくGMが動くので」
そのまま久遠さんが『はいはい散った散ったー』と追い払っちゃいました。断ってるにも関わらずしつこいと来るようですね。増えた直後なのでしばらくパトロールしているようで、度合いによるけど酷いとお仕置き部屋行きだとか。
さっきの4人はこれと言って問題行動に移っていませんでしたので、散らされただけでしたね。
「あ、美容法ありがとうね? 流石にGMから個人にお礼はできないから、こういう事ぐらいしかできないんだけど、変なのに絡まれたら遠慮なく呼んでください。そんな下らない事で有名プレイヤーに辞められちゃうと、運営としても大損」
「今のところは絡まれていませんね。と言うか久遠さんも知ってるんですか?」
「やっぱ女性としては気になるじゃん?」
まあ、良いんですけどね。
結局ハムの方は【加湿乾燥】を使って水分を軽く飛ばし、燻製器を冷やしつつ温度計を監視しながらモクモクします。
「じゃあ他行ってきます」
「「「「てらー」」」」
物凄い緩く送り出されていきました。
乾燥具合を見つつ燻製を繰り返します。最低でも大体2週間は続けるんですよね。2時間ぐらい燻製しては吊るして乾かし、また燻製しては乾かし。その後も少し寝かせると生ハムの完成です。
[料理] ランプ肉のお手製生ハム レア:No 品質:B-
料理人が長期間しっかり管理して作った燻製肉。
薄く切って美味しく頂こう。
満腹度+30
調理製作者:アナスタシア
むぅ、B-ですか。やはり【加湿乾燥】が問題ですかね。乾燥の方法を考えた方が良さそうです。
こちらもローストビーフと同じ回数系料理ですか。薄く切って出しましょう。
「新作ですよ」
「生ハム!」
「これ作ってたのかー!」
ゲーム内なのもあってペロッと出したものが食い尽くされ解散です。残り時間は予定通り図書館行きましょう。
「ようこそお嬢さん」
「お久しぶりです。世界地図や世界情勢などの本はありますか?」
「本ならありますぞ。どのぐらいの難易度をお望みですかな?」
「現状広く浅くで構いません」
また案内してくれるようなので付いていきます。
世界情勢の高難易度とか、今読んでも理解できないでしょう。そもそもどこになんという国があるのか謎ですからね。
本を受け取り、席に着いて読み始めます。その結果、ある程度の立地ぐらいは分かりました。
今いる大陸は始まりの町を中心に4大国が存在する。
北東にクラダール王国。こちらは金属系の生産が盛んな国家のようですね。
北西にティアレン魔導国。魔法や魔法薬の生産が盛んな国家とのこと。つまり魔草系の産地でもある。
東はネアレンス王国。農業、畜産が盛んで、教会の本部もこちらにあるとか。
西はクリクストン王国。……ただの王国ですね。これと言った特色なし。
そして南のインバムントから船に乗った別の大陸。
大国として軍事国家ディナイト帝国が存在する。立派な闘技場があり、日々賑わっているとか。
大陸的には南の方が大きく、小国群があるのもディナイト帝国がある方らしいですね。つまり今いるこちらの大陸は平和のようです。
そして始まりの町を中心とした東西南北の町。始まりの町を含んだこれら5つの町は独立中立地域であり、どこの国にも所属していない交易路である……と。
つまり今いる第二エリアから先は、それぞれの国に入るということですね。
過去に始まりの街を求めて戦争があったが、不毛すぎて終戦ですか。まあ4大国の中心かつ、港町ですからね。そりゃどこの国も欲しいでしょう。他国に取られるわけにもいかないけど、それはどこの国も同じでぶつかり合い被害だけが増えていった。
それで自国の物にならないけど、他国のものにもならないなら……と言う妥協案が今の状況ですか。手を出した瞬間3大国と始まりの町そのものが敵に回ると。
ある意味戦争が長引かずに終わったのも分かりますね。だってそれぞれの国がそれぞれの特色を持ってますから。これ一番辛かったのは西のクリクストン王国でしょう。
東と敵対すれば食料が途絶える。東北と敵対すれば金属が……つまり武器が途絶える。北西と敵対すれば魔法薬が途絶える。戦地となる始まりの町が特に致命的で塩が途絶える。何より戦争最大の障害は魔物だそうですね。不毛にも程がある。
4大国で始まりの町を中心に5つの町を独立と決め、干渉を禁止とした。そして今では必需品である塩を格安で提供していると。
始まりの町が馬鹿でかいのは4大国の交易路かつ、我々の開始地点だからですね。つまり北西側にある貴族屋敷は……始まりの町周辺を治めている領主の家でしょう。いえ、立場的には領主と言うより王家になるのでしょうか?
南の帝国側は……こちらはあまり情報がありませんね。ただ戦争しているところもあると言うのは分かります。我々プレイヤーがそれに干渉できるのかは謎ですが。
……とりあえず、こちら側にある国の名前が分かっただけでも十分ですか。
貴族制度は特に変更無さそうですね。王族をトップに貴族……公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵。そして一代限りなのが国によって複数。
私も種族的には王族ですが、立場的にはただの平民でしょう。恐らく冥府に行けたら何かあると思うのですが……行けば分かるのでしばらく放置で。
時間は……微妙にありますね。確か絵本神話が何冊かあったはずなので、そちらを読みましょうか。1巻は読んだので2巻からっと……。
惑星に何かをするには力の強すぎた神々が、精霊達を生み出した。
生まれた精霊達は神々に代わり惑星を整えた。
永い時で整えられた惑星は、神々の願いを汲み様々な生物を誕生させた。
神々は神界へと移り、惑星を見守っている。
神々の代わりに精霊がいるということでしょうか。この時点で精霊と敵対は避けた方が良さそうですね。
えっと……全部で4巻あるんですか。後2巻ですね。
主神クレアール様は喧嘩しないよう、他の3柱にそれぞれの役割を与えた。
一番下の活発なシグルドリーヴァ様には、戦いと勝利を見守る役割を。
真ん中の大人しく優しいハーヴェンシス様には、慈愛と成長、更に自然と休息の役割を。
一番上のステルーラ様は、残りの辛いけどとても大切な役割を引き受けました。
それが生と死、契約と断罪の役割です。
生と死の役割を持った神は、神界とは別の場所へ行かなければなりません。
その役割を主神にさせるわけにはいかないと、神界とは別の場所に行くことに決めたステルーラ様。
クレアール様はステルーラ様に副神の地位を与え、神々の中でも強力な時空と運命の役割も与えました。
時空の力があれば、いつでもは難しいけど、神界へ行くことができます。
もしかしたら今、神々の4柱は集まってお茶会をしているかもしれません。
ふむふむ……。
リアル知識だと正直ステルーラ様の元ネタ的にヤバそうでしたが、このゲームでは別段邪神と言う訳では無さそうですね? 他の神々とも普通に仲良さそうです。この絵本が最後なら……ですけどね!
それに確か、公式的にはクレアール様とステルーラ様の力を借りて我々異人がこの世界へ来ている設定だったはずなので、大丈夫だとは思うのですが……。
さて、寝ますか。本を棚に戻して聞いてみましょう。
「絵本神話は4巻で終わりでしょうか?」
「そうですな。教会でもあれ以上は無いはずですぞ」
「あれ、そうなのですか?」
「言葉遣いなどが難しくなった元本のコピーがあるぐらいで、内容は変わりませんな。変わっていたら問題でしょう?」
「まあ……確かにそうですね。神々は今でも仲が良いのでしょうか」
「どうでしょうな。ただ少なくとも、喧嘩はされていないかと。余波がこちらまで来るでしょうからなぁ」
「なにもないのが平和の証ですか」
「そういう事ですな」
確認も取れましたし、お暇しましょう。
宿でストレッチしてログアウトし、リアルでもストレッチしてから就寝です。
こたつさん以外特に決まっているプレイヤーはいないので、誰発言か気にする必要は特になし。