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戦闘書いてたらちょっと楽しくなっちゃった。気づいたらこの長さ。
前半お話、後半戦闘。
ログインしたらストレッチをして、雑貨屋へ向かいます。
「こんにちは。《錬金術》になったので来ました」
「ほう……それじゃあババアの知恵をやろう。座んな」
お婆ちゃんの隣に何故かある椅子に腰掛けます。ほんと何故でしょう。
「最初に確認するけど、教わった時点で弟子入り扱いだよ。基本的に他の錬金術師からは教えられなくなる。ババアで良いか、選びな」
「……他に知り合いもいませんし、先人の……特にお年寄りの知識というのは貴重ですから、問題ありません」
「よろしい。ではまず基本知識」
お婆ちゃんから《錬金術》によってできる事を教わります。
「魔物から取れる魔石の利用、アイテムの作成、分解、更に物質が持つ属性を操る。それが《錬金術》さ。今いくつだい」
「今は……2ですね」
あれ? なんで2なんでしょう。もしかして【暗黒儀式】が《錬金術》判定?
「ふむ……ああ、そうだ。お前さん《暗黒魔法》は?」
「覚えていますね」
「……ならば《死霊魔法》は」
「取りましたが……何か問題が?」
「そうかい。いや、問題は無いよ。《錬金術》で近いうちに【ゴーレム錬成】を覚える」
「ゴーレムですか。気になりますね」
「簡単に言えば《死霊魔法》の劣化版さ」
「えぇ……」
「これから話すのは確実に守りな。破ったら弟子とは認めんよ」
「分かりました」
「話すのは【ゴーレム錬成】と《死霊魔法》、そして【キメラ創造】の関係だよ」
ほほう? 【キメラ創造】ですか。これまた気になる物が出てきましたが……。
【ゴーレム錬成】とは加工した魔石を使用し、ゴーレムコアを作って使役する。このゴーレム……簡単な命令しか聞かない。というより聞けない。なので戦闘には使えないが、物を運ぶなどの単純作業には適している。そこで何とか戦闘に使えないかと歴代の錬金術師達が研究に励んだ。
【ゴーレム錬成】の問題は頭が悪い事だ。それが唯一にして最大の弱点と言える。魔力さえあれば体が壊れても周囲の素材を取り込み動き続ける。核となるゴーレムコアさえ無事なら良いのだ。
体に問題がないなら頭をどうするか。そこで目を付けたのが……最初から頭の良い魔物を利用する事だった。その結果、【キメラ創造】という『禁忌』が生まれた。
「ああ、やはりそうでしたか。体を《錬金術》によって弄ったのですね?」
「そうさ。ただ話はそう上手いこといかなかった。当然といえば当然だがね」
体を弄られた生物が素直に言うことを聞くわけがなく。術者は即座にキメラに殺される。そもそも突然体が変わるんだ。作り変えられる痛みとてあるかもしれない。
最大の問題が……術者を殺してもなお、狂ったキメラは残る。ゴーレムと違って元々生きていた生物だから。
その残った憐れなキメラは、暴れまわり周囲を破壊する。他の魔物も、木々も根こそぎだ。後始末は残った者達がしなければならない。何を元に創造したか次第でキメラの能力は千差万別。だが、大体キメラの討伐は冒険者ではなく、国が動き騎士達が出張る程の騒動になる。
「そして更に問題なのが、不死者までもが出てきたんだよ。『生物の霊魂はステルーラ様の管轄であり我々の役目。地上の者が関わること許さず』とね。それが大問題になって、錬金術師達が総出で調べ上げ、すぐに【キメラ創造】という錬金術を禁忌に指定した」
でもこれで諦めるほど人間は諦めが良くない。
そこで今度は《召喚魔法》に目を付けた。あれ、どんな原理だ? とね。その研究の結果生まれたのが《死霊魔法》だ。
とは言え、本当の『死霊』に手を出したらまた不死者案件だ。そんな愚かな真似はしない。よって《死霊魔法》とは言っているが、あれは《召喚魔法》の頭と《錬金術》の体を組み合わせたものである。《召喚魔法》の召喚体が持っている成長する頭脳。《錬金術》の【ゴーレム錬成】による肉体の生成。
そこまで行ったら後は試行錯誤。その結果、《暗黒魔法》の力を借りて魔物の骨肉を体に使用するのが相性最高だと判明。
「だから《死霊魔法》とは《召喚魔法》と【ゴーレム錬成】の融合で、ゴーレムの一種であり、生物の霊魂とは全く別の物なのさ。倒されても頭脳が初期化される事も無く、怪我の心配もいらない。まあ……代償として骨肉の用意と、材料の都合上アンデッドにしかならんと言う問題があるのだがね。それも相まっての命名さね」
つまり原理とAIに《召喚魔法》を利用し、《暗黒魔法》と《錬金術》で魔物の骨肉を利用して、【ゴーレム錬成】の技術も組み合わせ器となる体を作った訳ですか。
《暗黒魔法》と《錬金術》の融合なので、両方のスキルが【暗黒儀式】で上がりそうですね。
まあ、そういう設定だよと言うのは理解しました。スキルって神様が用意した物じゃないの? とか言う疑問には目を瞑りましょう。ええ、ぶっちゃけどうでも良いです。横に置いとくどころかどっかにぶん投げておきましょう。
地味に気になると言えば、【キメラ創造】で不死者が出てきたと言うことですね。生きたまま複数体融合したってことでしょうか? それなら魂も変化して出張ってきそうですが、1体以外死体なら魂は別に……いや、体に合わせて変質する? 人工的に行われたため、それもNGという事でしょうか。
まあなんにしても、【キメラ創造】やる価値は無さそうですね。だって作ったキメラと戦闘になる挙げ句に、不死者とか言う同業者が出張ってくるの確定じゃないですか。しかもキメラに勝ったら不死者とご対面。キメラに負けたら恐らく、キメラ討伐依頼発生からの騎士達出動でしょう? そして確実に国から指名手配された挙げ句に弟子クビ。更に世界の錬金術師を敵に回しそう。良いことがなさすぎる。
そもそも私【死霊秘法】で良いですからね。
「理解しました。まったくもってメリットがないので、手を出すことは無いです」
「手っ取り早く強い使役対象が手に入るよ?」
「言うこと聞かないのは使役と言いませんよ」
「うむ、よろしい」
「そもそも、私も不死者ですからね。同業者を敵に回すわけにはいきません」
「……なに? ああ、そう言えばお前さん異人か。ふむ……」
「あ、そう言えば……冥府への入り口ご存知ありませんか?」
「無い……と言いたいところだが……」
「……あるのですか?」
お婆ちゃんだし知らないかなと、結構軽い感じで聞いたのですが。聞いた私がびっくりですよ。普通冥府の入り口なんて……ねぇ?
「知らないけど、ありそうなところは知ってるさね。だが、もっと知ってそうな奴がこの街の教会にいる」
「教会にですか……」
「お前さん、見た目的にかなり高位だろう?」
「ええ、高位不死者ですね。見た目でわかるのですか?」
「不死者は大体ミイラか骨さね。お前さんのそのナリで高位じゃない方がびっくりさ。高位なら浄化耐性あるだろう?」
「ありますね」
「あれは小あるだけでも結構なもんだ。中もあれば安心して教会に入れるはずだよ。会いに行ってみると良い。『メーガンにルシアンナに聞けと言われた』とでも言えば良いさね」
「ルシアンナさんですね。この後行ってみましょうか……」
「ああ、不死者か。ならあれが役に立ちそうさね……待ってな」
地味に初めて聞いた名前……メーガンお婆ちゃんですね。ノソノソではなく、スタスタ裏に歩いていきました。しばらくして戻った手には本が。
「えー…………これだ。覚えておきな」
「これは……どうしようかと思っていたので助かります」
〈《錬金》の基本レシピ『パーツ』を覚えました〉
欠損修復用であるパーツのレシピですよ。
生物の骨肉(中以上)と魔石の合成ですか。メモ書きもありますね……品質で修復直後のペナルティ時間軽減。A+以上次回死亡時欠損率低下……ですと? この情報は嬉しいですね。
「ありがとうございます」
「礼を言うのは早い。これを読んでいきな」
大量のレシピ取得ログ再び……。
「それは基本中の基本。つまりこの道なら知ってて当たり前のレシピさね。何か分からない事や疑問があったら聞きに来な。教えるかは内容次第だがね。『自分で調べる』という行為を忘れた者に未来は無いさね」
「分からなくもありませんが、結構スパルタですね?」
「最初から付いてこれそうも無い奴はそもそも弟子になんてしないよ」
「なるほど。【キメラ創造】以外に気をつけるものは?」
「そうさねぇ……30で覚える【魔力錬成陣】は使ったかい?」
「いえ、まだですね」
「最初は布を見ながら錬成陣を魔力で書けるようになりな。それが始まりさね。そうすれば布に乗らないような物にも使えるようになる」
「もしかして【キメラ創造】は……」
「【魔力錬成陣】を使うのは確かだが、特殊な錬成陣さね。知識がないうちに余計なことするんじゃないよ。《錬金術》は便利だが危険なのを頭に入れておきな」
「分かりました」
更に《死霊魔法》に付いてアドバイスを頂きました。
「《死霊魔法》の最初は赤子みたいなものさね。頭が悪いが学習していく。どんな子に育つかはお前さんの育て方次第。肉壁に使うのは全然ありだが、愛情を忘れてはいけないよ。後で褒めてやるとかね。《召喚魔法》との共通点、忘れるんじゃないよ」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ行きな」
レシピや《死霊魔法》などの成り立ちを教えて貰ったので、十分な収穫でしょう。お婆ちゃんのお店を後にします。
〈特定の条件を満たしたため、『称号:錬金術師の弟子』を取得しました〉
おや、称号もちゃんとあるんですね。
錬金術師の弟子
始まりの街のメーガンに弟子入りした。
実にシンプル。
さて、教会行きましょうか。始まりの街の教会は中央広場の北西にあります。今まで避けてましたが、こちらでもインバムントで感じたちょっかい再び。無視して突入します。
中は……礼拝堂ですね。4柱の立像と長椅子の部屋です。
その立像の前で祈っている……プレイヤーですね。そのプレイヤーが突然光に包まれます。……実に見覚えがある。自分ではなく、アルフさんとスケさんで。
光から出てきたのは1対の白い翼の生えた女性でした。
「念願の天使キター!」
「おめでとうございます」
「うへあっ!? あ……姫様?」
「ごきげんよう。たまたま進化に立ち会ってしまったようで、私の天敵ですね!」
「いやいやいや……いや? んー……光系魔法強化か……」
「やっぱり天敵でしたね」
「被闇属性4倍……」
「……お互い様ですね」
「……あ、私キューピッドです」
「一応名前はアナスタシアです。呼び方はご自由に」
「では姫様で」
ですよね。知ってましたとも。
天使に合わせて色彩変えて、掲示板に情報出してくると言うのでお別れです。これから天使が増えそうですね。
では近くにいる教会の人にルシアンナさんがいるか聞きましょう。
「ルシアンナ……という方は居られますか? メーガンさんに会ってみるように言われたのですが……」
「ルシアンナ様ですね。少々お待ちください」
様付けという事は偉い方でしょうか? でも普通に会えるようですね……メーガンさんパワーと言う可能性もありますが、はて。
しばらくして先程話しかけた方と、お婆ちゃんがやって来ました。お婆ちゃんの方が修道着の装飾が豪華ですね……。
「おやおや、えらい別嬪さんが来ましたね」
「アナスタシアと申します」
「やはりそうですか。灰色のドレスを着た女性は物腰が柔らかいと有名です」
「それは初耳ですね……」
「この街での評判ですよ。それで、メーガンがどうしました?」
「実は私不死者でして、冥府への入り口を探しているのですが……」
「なるほど、それで私の元へよこしたのですか」
少し思考した後、近くの椅子へ座るよう促されたため、席に着きます。
「私も実際に知っている訳ではありませんが、確実にあるだろうな……と言う場所は知っています。ただ、今現在どうなっているか……と言うのは保証できません。そもそも冥府への入り口と言うのは、基本的に不死者にしか見えないのです」
「こちらは情報が0なので、可能性があるだけでも十分です」
「ふむ……そうですね……。では、場所を教えるのでそこに関する頼みも聞いて貰えますか?」
「頼み……ですか。できることなら構いませんが……」
「【洗浄】は使えますか?」
「ええ、使えます」
「でしたら問題ありません。頼みたいのは掃除ですから」
「掃除ですか」
「はい、掃除です。冥府の入り口があるであろう場所はこの街から北東にあります。今は使われていないカタコンベの更に奥。ステルーラ様の旧大神殿……その礼拝堂の掃除をお願いしたいのです」
「カタコンベの更に奥に旧大神殿があったのですか」
「ただ、あそこは破棄されてかなり経ちます。それこそ千年単位ほど。ほぼ崩れているでしょうが……立像付近、つまり礼拝堂は無事な可能性が高いので、できる限りで構いません。入り口を探すついでに掃除をお願いします」
〈『旧大神殿礼拝堂の掃除』クエストが発生しました〉
oh...
住人から頼まれるタイプのクエストですか。
『旧大神殿礼拝堂の掃除』
始まりの街から北東にあるステルーラ様の旧大神殿へ赴き、礼拝堂の掃除を行う。
依頼者:ルシアンナ
達成報酬:???
ルシアンナさんからは情報の代わりの頼みだから、報酬はないはずですし、ゲーム的な報酬がある……ということでしょうか。シークレット報酬気になりますね。
「期限などは特に無いので、気をつけて行ってきて下さいね。栄えたのはかなり前。今では道ぐらいは……判断できるかな? ぐらいの未開の地に等しいですから」
「付近の魔物情報なんかあったりしますか?」
「恐らくアンデッド系だろうとは思いますが、詳しくは分かりません。ベルステッドの冒険者組合で聞いてみてください」
ステルーラ様の立像だけだとアンデッドが集まってしまうのだとか。それがあの土地を破棄する事になった理由で、それにより現在の教会には、4柱全ての立像が揃えられてるのだとか。ゲーム豆知識ってやつですね。
始まりの街から北東のカタコンベ……つまり実家でしょう。その更に奥にあるらしいですが、エリア的にはベルステッドの北の森の奥ですね? それなら確かに、ベルステッドの冒険者組合で情報を仕入れた方が良さそうですね。
ルシアンナさんがお仕事に戻るそうなので、お礼を言って教会を後にします。中央広場まで戻りましょう。教会と言う場が私を浄化しようとちょっかい出して来るので。
さてさて、とりあえずやりたい事は済ませました。何をしましょうか。……スケさんは流石にこの時間いませんね。教えるのはまた後で。
んんー……特にありませんし、ベルステッド行きますか? 期限がないクエストですが、シークレット報酬が気になるのは確かです。……行きましょうか。
悪魔種の人達が何人か教会へ向かうのを見送りつつ、ステルーラ様の立像からベルステッドへ飛び、冒険者組合へ行きましょう。
「ようこそ冒険者組合へ。どういったご用件でしょうか」
「北の森の更に奥の情報が欲しいのですが、ありますか?」
「余程のことでない限りお勧めはしませんが……ありますよ」
「個人的に結構重要なので、敵の情報を貰えますか? 教会の方が言うにはアンデッドとの事ですが……」
「出てくるのはアンデッドです。しかも中位アンデッドクラスですね。当然不死者では無いので知能自体は低いと言えます。しかしその分野生の本能があります」
「つまり……?」
「アーマースケルトンウルフなどが連携してくると言う事です」
……野生の本能。まあ、そういう事にしておきましょう。ゲームですからね。その辺り突っ込んだら負けですよ。突っ込みどころのないゲームの方がレアですからね。そもそも生態系どうなってんだって言われたら大体が詰むでしょう。
うん、それはどうでも良いとして、アーマースケルトンウルフですか……。初めて聞きますね。しかもそれが連携と。リンクしているわけですか。あー……【ライトバースト】は私も巻き込まれるので、結構困りますね……。
とりあえず敵の情報を貰いましょう。
アーマースケルトン
スケルトンが鎖帷子を付けていて、打撃に強くなっている。
剣を持ったソルジャー、弓を持ったアーチャーが確認されている。
アーマースケルトンウルフ
アーマースケルトンのウルフ版。《影魔法》での不意打ちに注意。
レブナント
《腐乱体》の無いゾンビ種。普通に動けてしぶとい。
フォレストウルフゾンビ
北のフォレストウルフがゾンビ化したもの。こちらも《腐乱体》無し。
フライングヘッド
空飛ぶ頭蓋骨。上から闇系統魔法で攻撃してくる。
ファントムナイト
リビングアーマー系統なので非常に硬い。
「《識別》はお持ちですか?」
「あります」
「ではリーダーやジェネラルを見つけた場合は要注意です。彼らは統率系統を持っていますので、難易度が跳ね上がります」
「いる可能性があるのですね?」
「あります。行くのでしたら光系統は必須。できれば《聖魔法》の確保を」
《聖魔法》ですか……下手したら私も巻き込まれるんですよね……。レブナントは恐らく無視できるでしょう。同種ですので。他の奴らにリンクして襲いかかってきたら泣く。気になるのはウルフゾンビ。ゾンビだけど無視できるのかどうか。
教えてくれた受付嬢さんにお礼を言って組合を後に……する前に装備を引き出しましょう。始まりの街防衛戦で手に入れた鉄装備です。剣、槍、斧、短剣、グレートソード、兜、鎧、小手、グリーブですね。これらを《死霊秘法》に投げ込んでおきましょうか、インベ取りませんし。後は魔石も引き出しておきます。
とりあえず様子見に行きましょう。行ってみない事には敵の強さも分かりませんからね。所持金が4万超えているので、野菜を補充して豚腸も買っておきましょう。これで残り1万ちょっと。
……キャパシティは39あるので召喚できますが……いきなり第二エリアと言うのは辛いでしょうか? 物は試しですかね。武器は……斧で、防具はひとまず無し。
召喚には場所を指定してから『呼ぶような言葉+呼ぶ種類』がキーワードで、キーワードの順番は不問ですか。んー……呼び方的には下僕ですから……命令形の方が良いのでしょうか?
召喚場所は……って難しいですね? ……レイピアを抜き、自分の前の地面にレイピアを向けます。うん、これで安定しましたね。召喚場所指定、結構慣れが必要そうです。
「来なさいスケルトン」
【暗黒儀式】の魔法陣……錬金混じっているので錬成陣でしょうか? まあ、いいか。黒い陣が指定した場所に出てきて、スケルトンが這い出てきました。ちゃんと鉄の斧を背負っていますね。見た目は普通のスケルトン。うん、骨ですね。第二エリアで戦える気がしないのですが?
鉄装備でフル武装しますかね……? んー……魔石使えたりしませんか? ゴブリンの魔石を取り出して見せますが、いらないと言われた気がします。あなた意思疎通できるんです?
「武器は斧で良いですか?」
「カタ?」
カタンと言う音と共に首を傾げました。もしかして……案外可愛いのでは? ではなく、まだレベル1ですからね。頭が悪い前提の質問の仕方をしなければなりませんか。
「武器は剣がいい?」
「カクン」
頷きましたね。いえすと言っている気もしますし、剣がいいのですか? いや、判断するにはまだ早いですか。
「武器は槍がいい?」
「カクン」
「武器は斧がいい?」
「カクン」
…………もしかして。
「武器は何でもいい」
「カクン」
はい。えー……と。
「与えられた物を覚えるから何でもいい」
「カタカタカタ」
正解のようですね。流石下僕。
結構受け答えはできるようですね。王家の特性か、はたまた同業者だからか分かりませんが。ちなみに聞こえるのはカタカタ頭揺らしているだけです。副音声的に何となく分かる程度。
あ、重要なことを聞いてませんでしたね。本人に聞いても怪しいですが、聞くだけ聞いてみましょう。『頭が悪い』の定義が分からん。
「あなたは名前が必要ですか?」
「カタカタ」
不要……ですか。
「複数呼んでも魂は共通ですか?」
「カクン。カタカタカタ」
つまり、クラウド制? なるほど、それなら確かに与えられた物を片っ端から覚えていけばいいと。
「新しい体は慣れる時間が必要」
「カクン」
なるほどなるほど。違う武器を持たせればその武器の経験を積んでいく。しかしそれは体にも適用されると。カスタムとかしたら弱めのところで慣れさせる必要がありそうですね。
「……魔石は必要?」
「カクン」
「いるのですか? ……このままではダメ」
「カクン」
そうとなれば《錬金術》で【魔石加工】しましょう。ゴブリンの魔石が魔石(極小)に。ゴブリンエリートの魔石が魔石(小)に。トロールの魔石が魔石(中)に。ゴブリンジェネラルの魔石が魔石(大)になりました。全部で18個ですね。
「これで使える」
「カクン」
「ではそうですね……中をあげましょう」
「カタカタカタ」
魔石(中)をスケルトンに渡すと、パクリと食べた瞬間魔石が溶けて消えました。
〈下僕のレベルが上昇しました〉
下僕のレベル……下僕レベル、何かあれですね。私の下僕度はこのぐらいです的な。まあ、下僕のベースレベルと言う意味なので、AIレベルが上がったんですね。魔石で上げられるんですか。4上がって今5ですね。
……魔石と言えば、魔力球はどうなんでしょう。
「これは使えますか?」
「カタカタカタ!」
激しいですね。あげましょう。
〈下僕のレベルが上昇しました〉
…………あれれー? おかしいぞー? 30レベル超えたぞー?
えっと、GMコール……じゃなくて問い合わせにしますか……。
不具合の可能性。《死霊秘法》の下僕にオーブを渡した場合の経験値が正常か、確認して下さい……っと。
明らかに動きが良くなったスケルトンを連れて、試しにピグゥと戦わせます。
「さあ、やっておしまいなさい!」
「カタカタカタ」
お、行った。ピグゥに片手斧でジャンプ斬りですか。盾も持たせたいですね……。ピグゥの攻撃自体が避けやすいので、特に問題なく戦えてますね。スキルレベルが低いので、ステータス自体は低いはずですが、バグなのか仕様なのかAIレベルがゴリっと上がりましたからねぇ……。処理能力が上がったのでしょうか? まあ、上る前を知らないので、比べられないのですが。
「プッギュイ!」
「カタカタカタ!」
デフォルメされた可愛い豚さんと、スケルトンが戦ってるのシュールですね……。
戦っているのを眺めていると運営からメッセージが返ってきました。
不具合だって! いくらなんでも上がりすぎでしたからね。えっと……準備が出来たらメッセージを送るので、一度ログアウトして、再びメッセージを送るのでログインして下さい……と。
無事スケルトンがピグゥを倒したので召喚を解除。取り込まず解体して街に戻ります。途中でメッセージが来たので、街に入りしだいログアウトします。
ログアウトして体を伸ばしているとメッセージが来たので、ログインです。
メッセージによると使用したオーブの復元と下僕レベルのロールバックですね。
「こんにちは、アナスタシアさん。GMの久遠です」
いつの間にか後ろにGMが来ていたようですね……。
「こちら不具合のお詫び兼不具合報告のお礼ということで、どれかお1つお選び下さい」
提示された物はお金5万。戦闘消耗品セット(ポーションなど)。生産消耗品セット(素材など)。1時間取得スキル経験値UPチケット(使用期限1日)。SP3。
戦闘消耗品セットは私からするとゴミですが……。
「素材セットは何の素材がどういったルールで出るかお聞きしても?」
「生産消耗品セットを使うとどのスキルで使用する物か選べます。ただし、出てくる素材は開ける人のスキルレベル依存です。勿論トレードは不可」
なるほど。スキルレベル高い人に開けてもらうなどは無理ですね。
戦闘消耗品セットはベースレベル依存で出てくるランクが変わると。
経験値チケットは1日過ぎたら勝手に消滅するので注意が必要。どのぐらい上がるかは秘密だけれど、スキルによって変動する。1次なら効果は実感できるかも? との事ですが、逆に言うとその程度と言うことですね。
「……SP3下さい」
「SP3ですね。変更は不可能です、よろしいですか?」
「はい」
「ではSP3をお渡しします」
「ありがとうございます」
「いえいえ。一度問題ないか確認して下さいね」
SPは……増えてますね。オーブも返ってきてますし、……下僕のレベルが5ではなく7ですが、なんでしょう?
「下僕のレベルが7ですが?」
「それは……ピグゥの討伐経験値が入っているようです」
「ああ、あれですか。バグならどうせ戻されると思って試しただけなのですが」
「多少得したとでも思って頂ければ。他には何かございますか?」
「いえ、大丈夫です」
「では、引き続きFLFOをお楽しみ下さい」
久遠さんはすっと溶けるように消えていきました。
再びスケルトンを召喚します。……何故項垂れているのです1号。ロールバックされたからですか。仕方ありません。オーブ1個に魔石(中)3個、魔石(小)5個あげましょう。
パクパク魔石を食べ、下僕のレベルが23になりました。これでこのマップの適正……と言いたいですが、AIレベルだけですからね。下僕一号に頑張ってもらいましょう。……一号も何も共通らしいですけど。
先程より10レベ近く下がっているので、再びピグゥと戦わせてみましょう。
……やはり処理能力に影響があるのでしょうか。先程より反応速度が遅い気がしますし、判断も遅い? ふむ……AIレベルが低いと苦労しそうですね。魔石で上げられるので、手に入り次第食べさせるべきか。オーブが定期的に手に入る分、そういう意味では有利ですね。【魔力解放】あまり使いませんし。
「カタカタカタ」
無事に倒せたようですね。道中ピグゥと戦わせながら、北に向かいましょうか。
〈《高等魔法技能》がレベル5になりました〉
〈《高等魔法技能》の【臨界制御】を取得しました〉
……戦闘中でもないのに突然上がりましたね。《空間魔法》が3になっているので、こいつの仕業でしょうか。
【臨界制御】
次に唱える魔法の消費を2倍にし、2倍の威力で放つ。
なるほど。よくあるタイプの効果ですね。使う時はそこそこありそうです。主に確殺狩りする時とかでしょうか。
北の森へ突入。森の感じは南と同じですね。歩くのに不自由はしないレベル。
……あれ? もしかして来るタイミング間違えたのでは? もうすぐ時間的に夜ですよね。……いや、変わりませんか。敵だけじゃなく私も強くなりますからね。むしろ私の方が《高位不死者》なので、敵より補正値高そうですが……ベースレベル不足で制限されているのがどのぐらいなのか……ですね。
奥ばっかりで手前の敵情報聞くの忘れましたね。
……フォレストウルフですか。少し緑がかった1メートル中盤ぐらいのワンコ。そう言えばこのゲーム、嗅覚アクティブ的なものあるんでしょうか? それがあるか無いかで犬系の評価が分かれますよね。掲示板に情報あるんでしょうか。
まあ、進行方向にいるので戦いましょう。【ダークランス】で先制攻撃を仕掛け、私の横に一号を立たせます。盾持ってれば前にしたんですけどね。いっそ片手斧ではなく、グレートソード持たせてアタッカーさせますか? でも今森なんですよね。取り回しが心配ですが……ジャンプ斬りだけさせるとか?
とりあえず、私が持っている間に隙があり次第攻撃するように言います。後ろから一号が攻撃していますね。……一号ーっ! 殴られ続ける事に煩わしかったのか、馬の如く後ろ蹴りされて一号がゴリっと削られました。一瞬でレッドゾーンへ。
普通のゲームならヘイト持っている間、範囲攻撃でもない限り周りは安全なのですが、このゲームはそうでも無さそうですね……。そう言えば、ワールドクエストの時も盾を狙ったジェネラルの攻撃に巻き込まれているのがいましたっけ。
とりあえず真後ろはダメですね。斜め後ろにするべきです。距離を取れる槍も良いですかね。悩ましい。
一号が回復のため待機している間に倒します。
「一号、一度装備を変えましょう」
「カクン」
HPがHPなので、再召喚です。ついでにフォレストウルフを取り込み、コスト3倍は足りないので2倍の上乗せ召喚をしてみます。これで多少ステータスが上がる。這い出てくる一号はセットスキルが《刀剣》で、グレートソードを背負っています。
一号連れてると《死霊秘法》《アンデッド統括》《不死者の王族》《王家の権威》の4スキルが上がるのでいいですね。一号には是非頑張って貰いましょう。
「良いですか一号。ウルフの斜め後ろからですよ。攻撃したら一旦離れなさい」
「カタカタカタ」
よろしい。では再び前進です。
キャパシティが欲しいですが、フォレストウルフのドロップが気になりますね。ドロップ情報板……フォレストウルフー……はっと。フォレストウルフの皮に牙、そしてウルフの肉ですか。うん、不要ですね。取り込み決定で。ウルフのお肉ならウルフ狩ります。キャパシティがウルフ1に対してフォレストウルフは3ですよ。
掲示板開いたのなら敵の情報も見ますか。
もう1体はアクレイギア……ですか。植物系の魔物で骸骨のような物がぶら下がっていると。弱点は斬撃と火系で、動かないため非常に楽。近づいた時不意打ちで巻き付かれると厄介……ですか。動かないならスルーで良いですね。
フォレストウルフを倒しながら奥へ奥へと進みます。何体かアクレイギアを見つけましたが、情報通りだったのでスルーです。
スタイルを変えた一号は順調にアタッカーしていますね。良いことです。相手がウルフなので、たまに攻撃を外しているのが見えますが、まあ仕方ありません。現状ステータス的にはかなり弱いでしょうからね。死ななきゃ別に良いです。今キャパシティに余裕はありませんよ。
そう言えば【暗黒儀式】すると《暗黒魔法》と《錬金術》が上がる反面、《目利き》と《解体》が上がりませんね? 実に悩ましい。
マップによると、もう次エリアですね。
一号は置いてきた。敵が1段階上がるはずですから、一号はついてこれそうもありません。
旧大神殿のあるエリアも森なのは変わりませんね。ただ、こういう森を鬱蒼とした森と言うのでしょうか。お日様や月明かりはあまり期待できそうにないですね。人の手が入っていない、アンデッドの出る不気味な森。
あれは……レブナントですね。《腐乱体》が無いので、見た目的には人……と言えなくもないですかね。ボロボロの服装などを除けばですが。歩き方も微妙にぎこちない。とりあえずレブナントからタゲは来ない……と。
斜めの赤いライン……! 上ですか! フライングヘッドぉ……あーぶない! って闇系魔法なら必死になって避ける必要も無いんでしたか。いやでも、敢えて当たる必要もありませんね。
レブナントがリンクした? ……でも攻撃はしてきませんね。マーカーだけリンク状態ですね。
上空の頭蓋骨と魔法合戦を開始します。勿論こちらは光系統。そして向こうは闇系統。何が問題って、あの頭蓋骨止まりませんね。偏差射撃必須ですか。まあ、詠唱を始めると予測ライン表示されるんですけど。なお、このラインは『同じ速度で真っ直ぐ行った場合』です。少しの速度や進路の変更で、掠ったり外れたりするでしょう。地上ならともかく、空は特にですね。
相手の魔法は【ロイヤルディフェンス】で対応しつつ、【ライトアロー】や【ライトランス】で応戦します。ボール系は弾速が遅いので、ランス系が精々ですね。……2発当たって倒せますか。耐久が低いであろうフライングヘッドで1発半分ちょっと……これ結構きついですね。他の敵は3発必須でしょうか。
《空間魔法》の【インベントリ拡張】一回解除しましょう。確実に足りなくなる。【臨界制御】を使用しても大丈夫な状態にします。
フライングヘッドを倒してから数秒後、レブナントのリンクが解除され、通常状態に戻りました。こちらから攻撃に巻き込まない限り放置決定。
エリアの中央辺りにクエストマークが出ているので、そこに旧大神殿があるのでしょう。真っ直ぐそこを目指します。
少し音に気を配っておけば、フライングヘッドは大体分かりますね? 上、結構葉っぱだらけなんですよ。上から音がしたらヤツです。
あまり敵のリスポーン数は多くないのでしょうか? このエリアには私しかいないとは思いますが……暗視があるとは言え、森なので視界が悪いですね。
……む? 何かいる? 恐らく今のは《直感》ですが……気のせい……じゃないですよねー! おわーっ! 3方向からの飛びかかりはちょっとー!
敵が攻撃に入り《危険感知》が発動し、攻撃予測ラインが表示されたためそれに従い避けて、逸らします。《舞踏》さん素晴らしいですね。《危険感知》は従来のMMOの様に攻撃範囲が赤で表示されます。スキルレベルでその精度が上がるでしょう。これ、結構便利と言うかソロだと必須レベルですね。
アーマースケルトンウルフですか。今のが《影魔法》の不意打ちってやつでしょう。割とやばかったです。今も3方向から囲まれてるのでヤバいんですけどね! 【ライトバースト】が使えればまだ楽だったでしょうに。使ったら私も消し飛ぶんだこれが。
私の周りを綺麗に三角形を維持したままぐるぐる。HAHAHA、私は慌てませんよ。私は基本カウンタースタイルですからね。
【ライトランス】をレイピアの先端に出して、交互に飛びかかってくるスケ犬に直接当てます。【ライトボール】と【ライトアロー】を牽制に使用。連携のタイミングをずらせれば十分です。そして【ダークバースト】も混ぜ込みます。敵には耐性がありますが、私には強化がありますからね。吸収でも無効でも無いですから、怯みも発生するため割と有効と判明しました。
案外何とかなるものです。いえ、結構掠ったりでじわじわ削られるんですけどね。自動回復スキルに頑張ってもらいましょう。とは言え残り6割なので、【ダークヒール】で回復。残り8割。
〈種族レベルが20になりました。よって一部種族スキルが開放されました〉
流石格上、美味しいですね。しかし、こんなところでスキルを見ている余裕は無いんですよこれが。メモして後でチェックしましょう。
レベルアップで全回復ですね。ありがたい。
あれは……アーマースケルトンソルジャー、アーマースケルトンアーチャー、ファントムナイトのリンクですか。バスタードソード、短弓、メイスに大盾ですかね。面倒な。
ん!? アーチャーにバレた! うわめっちゃ走ってくる。 弓ですか……アーツは【ロイヤルカウンター】でするとして、通常攻撃は【ロイヤルディフェンス】で頑張りますか。アーツだとアシストが効いて楽に打ち払えるのですが、通常の【パリィ】系でも難易度が高いだけで不可能ではありません。《危険感知》で大体飛んでくるルートは分かるので、まだマシですね。
来るまでにアーチャーへ向けて魔法を放っておきます。【臨界制御】【ライトランス】でどうでしょう……か! むぅ、残りますか。流石36レベ。
それにしても、ファントムナイト足遅いですね。私よりマシなのがなんとも言えませんが……おや? 【アローレイン】はやめろ下さい! ……ん? ハハハハ、木最強。マップに合ったアーツ選択するほど、アンデッドは賢くないようですね。枝の下で厄介なアーツは1つ潰せますか。
【臨界制御】はそこそこディレイが長いし、バッソを持ったソルジャーが先行してやって来てるので、【ライトアロー】をアーチャーへ。
地味にスケルトンと相性悪いんですよね、私。武器が魔法依存とは言え、攻撃タイプは刺突のレイピアですから。
突っ込んできたソルジャーの攻撃を【ブレイクパリィ】で跳ね上げ、アンバランス状態にして、【ライトランス】を先端に出した突きを放ち、そのまま斬撃へ移行します。アンバランスは3秒間被ダメージが2倍です。しかし倒せない!
ファントムナイトも合流。こいつが厄介ですね。弱点は打撃と光。《細剣》の【ペネトレイト】しようにもアンデッドなので弱点がない!
ちまちま矢は飛んでくるし、大盾持ったファントムナイトが目の前陣取ってて邪魔だし、ソルジャーの攻撃が普通に危ないしで……これ無理じゃないですかね? 多分こいつらがここのメインと言うか……基本ポップの組み合わせだと思うのです。つまりこれに苦戦するようだと無理ですね。ウルフ3体とかは何とかなるのに!
【ラピッドシュート】で飛んでくる2発を防ぎ、メイスを流して、バッソを再び跳ね上げさらばソルジャー! 次は瀕死のアーチャーですね。
私の残りHPは6割……そろそろ回復を挟まないとですか。しかし先にアーチャーに【ライトアロー】を……ん!? ちょ、スケ犬ー! せいせいせい、落ち着きまぐえっ……ちょい!
もうこうなったらアーチャーだけは持ってくから! 腕噛むの止めなさいスケ犬! ファントムナイトがメイスを振ってきたので、腕に噛み付いてるスケ犬を盾にします。ざまぁみなさ……おぅふ。スケ犬3体の増援はちょっとってレベルじゃなく辛い。
【ダークバースト】からの【ライトアロー】……よし、アーチャー落ちましたね。
腕を噛ませてメイスの盾にするの強い。さらばスケ犬。メイスは打撃さ。そしてさらば私。次の私はもっと上手くやってくれるでしょう……。
あふん。
市民、幸福ですか?
あの言い回しは好きだけど、ゲーム自体は私には合わん!