01 プロローグ
この話はゲームの話なので、ゲーム用語が割りと出てくると思います。
要望が多ければ前書きにでも追加するなり、用語を纏めた物を作ったり考えます。
ピンポーン!
「はーい」
「宅配でーす」
宅配のお兄さんからソコソコ大きな箱を受け取りました。宛先は月代 秋菜……どうやら妹宛てのようですね。
「お疲れ様です」
「ではこれで」
宅配のお兄さんを見送り、玄関に鍵を掛けてから2階にいる妹を呼んでリビングに運びます。
物はフューチャーソフトウェアから届き、『大会入賞景品』と書かれていますね。妹の秋菜はゲーマーと言えるでしょう。私はたまにするぐらいですが。
「来たー!?」
「ソコソコ大きいのが来たよ」
ベリベリと豪快にダンボールからガムテープを剥がす妹。中から3個の箱が出てきました。
「おぉー! はいお姉ちゃんこれプレゼントね」
「んん? 秋菜の大会景品でしょう?」
「そうだけど、本体とゲームのセットを選んだの。お姉ちゃんこれ気になってたでしょ? 数量限定の特別版だよ特別版!」
「ああ、これCMでやってるあれ?」
「FLFOだよ! βの大会で入賞したのー」
Free Life Fantasy Online. 略してFLFO。日本初フルダイブ型のバーチャルリアリティオンラインゲームとのことで、最初から複数の企業が開発に絡んでいるそう。
なんでも『本職に任せればいいじゃないか』という発想の元、野菜などは農家、料理などは料理人、木工とかは大工、鍛冶は刀鍛冶などなど……様々な企業が関わっているらしい。
それらを纏めてゲームに落とすのが開発兼運営の『フューチャーソフトウェア』。
まあ、プレイヤーからすれば面白ければその辺りはどうでも良いでしょう。
剣や魔法、弓などで魔物達と戦うのは勿論、鍛冶や裁縫、木工に料理、釣りなんかの生産も可能。土地を買い畑を耕し農業や畜産、ハウジングも可能。
あまり推奨しないけど、盗賊や海賊もやろうと思えば可能で、NPCやプレイヤーから追われるスリリングな生活も可能である。
そして狙ってやらないと完全に同じビルドはあり得ないだろうと言う、大量のスキルを取捨選択し組み合わせ、オリジナリティを出す事が可能であり、ファンタジーな世界で第2の人生を。それがこのゲームの売りらしいですね。
「でも何で本体が2個入ってるんだろ? 一応問い合わせしとこうかな……。ミスだとしても新型だしくれないかなー」
VRゲーム自体はありましたが、オンラインゲームは初めて。だから妹は本体であるVR機器は持ってます。旧型でもできますが、今回のに合わせてその本体も新型が出ているようで。その新型が2個と、パッケージ版のゲームが送られて来たようですね。
「まあ、それはともかく……明日から始まるからお姉ちゃんこれ使ってね。FLFOならお姉ちゃんも大丈夫だと思うから!」
「どれどれ……」
受け取った箱をガサゴソと開け始める。
『問い合わせしてくる!』と秋菜は2階に走って行った。貰えるなら初期設定もあるし、早い方が良いのでしょう。公式サービスの開始は明日……土曜日の12時らしいですから。
VR機器本体の説明書をパラパラと読み進める。
初期設定は布団で横になってアナウンスの指示に従って行って下さい……。
最初に身長や体重、スリーサイズを入力するとより正確にスキャンされます。
この辺は……面倒だし覚えてるやつでいいかな。
アラームの設定が可能……『例えば19時にご飯ならそう設定しておくとゲーム内でも知らせてくれます』……と、これはやっておこうかな?
次はゲームの方を開けて物凄くペラい説明書を取り出す。
このゲームはフルダイブ型バーチャルリアリティマッシブリーマルチプレイヤーオンラインゲームになります。
このゲームを遊ぶにはVR機器とインターネット回線環境が必須となりますのでご注意下さい。
※ネットゲーム……オンラインゲームが初めての方へ※
個人情報が分かるような会話、話題は避けましょう。危険です。そして萎えます。
お友達と遊ぶ時も、キャラクターネームで呼び合うようにしましょう。
他のプレイヤーもあなたと同じ人間です。失礼のないように遊びましょう。
ロールプレイと言われる遊び方をしている人もいます。役割を演じる……つまりそのキャラクターに成りきっている方もいます。どうしても分からなければこっそりと聞いてみましょう。
そして、ただ失礼な態度をロールプレイと言い張るのも止めましょう。普通に嫌われます。
粘着行為やストーカー行為など、場合によっては法により現実での逮捕もあり得るため、十分に注意しましょう。
ネットマナーを守って楽しくプレイ! 保護者の方はお子様にどうぞご説明下さい。
以上、運営との約束です。詳しくは公式サイトを御覧ください。
オンラインゲームは初めてじゃないからこの辺は知ってるけど、気をつけておきましょう。って、これとURLしか書いてないし……公式サイト見ろよってことですかね。
小さい紙には『限定特典スタートダッシュキャンペーンコード』なる物が書かれていた。えーっと……スタート時の所持金にボーナス。初心者用消耗品セット1個。プレミアムキャラクターメイキング1回。……大したもの貰えませんね。オンラインゲームだし、特典なんてこんなものですか。
パタパタと秋菜が帰ってきた。
「特典入ってたけど使う?」
「あー、お姉ちゃん使っていいよー。βプレイヤーは別の特典あるからねー」
「ああ、そうなのね」
「所持金引き継げるからねー。後何個かアイテムも」
「このプレミアムキャラメイキングは?」
「それは数少ない課金要素で、キャラメイク時に使用可能パーツが増える。βプレイヤーも初回はそれだから問題ないよー」
「そっか。じゃあ使おうかな」
『メールです』
秋菜の持ってるコネクトボードにメールが来たようだ。
「お? お、返事来た! お、おぉ……運営太っ腹! ひゃっほー!」
「貰えたの?」
「元々私とお姉ちゃん用に送ったんだって」
「んん?」
「お姉ちゃんにあげたいから本体セットお願いします! って言ったからねー」
「なるほど……」
「ちなみに売ったら私の垢がBANされるから止めてね」
「妹の厚意で貰った物を売らないよ」
「じゃあ初期設定してくる!」
「はいはい。私もしようかな……」
箱を抱えて上に行く秋菜を見送る。
私達姉妹は落ち着きが全部私に来て、私の活発性が全部あっちに行ったような感じ。物静かな私と活発な妹。顔はそれなりに似てるけど、色彩や雰囲気はまるで違う。私の色彩はお父さんに似て、妹はお母さんに似ている。お父さんはお母さんが仕事で捕まえてきた海外の人なので、ハーフということになる。
まあ、姉妹仲は非常に良好。あれで何も考えてないわけでもないから、特に心配もしていませんが。
さて、初期設定をしましょうか。説明書など出した物を箱に戻して自室へ。
自室はシンプルな部屋で、ベッドと本棚、それと丸い机と大きめのクッション。動物のぬいぐるみが少々置かれている。私が暗めの色合いで妹は明るめの色合い。
箱から本体を取り出し、充電コードとネット回線に繋ぐ。どうせ寝てやるので、オンラインゲームということもあり有線。コードが届いて良かった。
ある程度充電されるまでにアカウントを作っておこう。アドレスとか登録して……おや、特典のコードも入れられるんだ。入れておきましょう。
そのまま公式サイトを見てたらそれなりに時間が過ぎていたので、初期設定。
ベッドに寝っ転がり、VR機器をつける。目と耳を覆うようにヘッドフォンにバイザーを付けた感じになる。仰向けが前提なので、後頭部の方にはなく、鼻や口も呼吸のためフリーですね。
『ようこそ。私はサポートAIになります。これよりVR機器の初期設定を行います。必要項目の入力をして下さい』
AIに従い思考操作によって項目を埋めていく。
『身体情報は目安で構いません。そのデータを元にスキャンが行われます』
身長は……158で体重が確か52ぐらいだったかな? 最近量ってないなぁ。バストは……これでウェストが……これで、ヒップは……これっと。
『スキャンの注意事項です。枕も使用せず掛け布団などは体から離し、力を抜いて仰向けでお待ち下さい。女性の方はなるべく体のラインが出る服、もしくは薄着をお勧めします。スキャンを開始してよろしいですか?』
ちょっと待って……枕を隅っこに……掛け布団もどけて、服は……今春だから問題ない。念のため胸の部分をペタペタと合わせ……仰向けで……よし。
『スキャン開始……そのままでお待ち下さい』
10パーセント刻みで進行を教えてくれるAIの声を聞きながら静かに待つ。
『…………スキャンが完了しました。身長160センチ、体重54キロ、バスト――』
なんとも丁寧に身体データを言ってくれるAIを軽くスルーし、それでいいと許可を出す。すると目の前に自分のホログラムが出てきた。実に見慣れた姿です、色彩違うけど。スキャンの精度が凄いと言わざるを得ない。
『こちらが基礎データになります。この基礎データは様々な物で使用される事になります。ゲームでしたらクリエイト時に読み込まれ、ゲームごとに補正が入り、そこから更にご自身でそれを弄ることになるでしょう。この基礎データの更新はオプションで出来ます』
どうやら初期設定が終わったようだ。
『これで初期設定を終了します。何をなさいますか?』
次は……ゲームのインストール。
『インストール方法を選択して下さい』
今回はダウンロードではなく、媒体からっと。もぞもぞ動いて媒体をセットし、インストールを始める。
『読み込み中です…………ジャンルFDVRMMO……Free Life Fantasy Online……通称FLFOが読み込まれました。インストールを開始してよろしいですか?』
はい。
『インストールを開始します。終了予測時間……後2時間。VR機器を外しても問題ありません。もしくは他のことをすることも可能です。その場合バックグラウンドで継続するため、場合によっては処理落ちを引き起こす可能性があります。ご注意下さい』
もうすぐご飯になりそうだし、外しましょうか。特に何もすること無いので。
色々終えてVR機器を確認するとインストールが完了していた。今のうちにアカウントの関連付けも済ませ、後はサービス開始を待つだけです。
……ネットで情報を集めていたら寝る時間になったので、ストレッチをして就寝。