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 アルフさんの進化を眺めていたスケさんから、魂の叫びが。


「ふぁああああああ! アルフ裏切ったなー!」

「ふははは!」


 アルフさんは黒い鎧で、右手で頭を脇に抱え、左で大盾を持ち立っていました。つまり……デュラハンですね。エクストラ種族になれたようです。


「まあ、中位不死者だったけどね。エクストラなれたわー。いでよ我が眷属ぅ!」


 アルフさんの横に、同じく黒い似たデザインの防具を付けた馬が出現しました。


「うまぁ! え、ずるい。足ゲット?」

「種族解放試練で散々地面に落とされた暴れ馬だね」

「こっちパズルだったんですけどぉ?」

「私死にゲーでしたが?」


 普通に羨ましいですね、馬は。

 この馬、リビングアーマーホースって感じです。動く鎧馬。中は空洞のようで、この子も頭がありません。アルフさんもこの馬も断面は虚空です。格好いいですね。

 私とスケさんはエクストラ装備がありましたが、アルフさんは無かったようで……代わりにおんまさんですかね?


「えっと……素材は魔石1、皮3、爪4、豪腕の指輪1でしたよ」

「「豪腕の指輪?」」

「その名の通りですね。筋力を増やす指輪のようです」

「あ、いらね」

「ではアルフさんに」

「え、良いの?」

「「筋力上がってもねぇ……」」

「ああ、うん。じゃあ残りの素材は2人で分けて」

「と言っても、現状魔石は使い道不明で……皮と爪、使う?」

「いえ、全く」

「だよねぇ……」

「エルツにでも売って、2人で分ければ? 歓喜して買ってくれるでしょ」

「そうしよっか?」

「そうしましょうか」


 魔石はじゃんけんしてスケさんの元へ。爪と皮は売ってお金を分ける事に決定です。

 その分お金を少し多めに貰える事になりました。


「この後はどうしますか?」

「それは勿論……」

「行くでしょ!」

「では次エリア行ってみましょうか」

「じゃあ次は僕が録画しよっかなー」


 スケさんの後ろに妖精さんが浮くのを横目に、奥へと進みます。

 アルフさんは当然騎乗。機動力のあるメイン盾。防御判定どうなるんでしょうね。

 『頭邪魔くさいな』というアルフさんの呟きで発覚した、まさかの出し入れ可能。なんというか、もうほとんど頭を見ることは無さそうです。右手塞がったら剣持てませんし、手綱握ってないどころか、手綱がありませんが気にしない事にします。


 奥へ進むと森を抜け、平原が広がっていました。田園風景と言うか……うん。


「なんだろう……こう、田舎って感じがするね」

「食料系っぽいし、まあ分からなくもないね」

「始まりの街周辺とはまた違った平原ですね。まさに長閑のどか……でしょうか」

「だねー。まあ、プレイヤー達が来たらどうなるか分からないけど……」

「それはまあ……否定できないね」


 穏やかな風が吹き抜けるなか、アルフさんがぐるぐる周りを馬で走り回り、私とスケさんはのんびりと真っ直ぐ歩きます。進化直後ですし、走り回りたい気分なのでしょう。スケさんも敏捷はさっぱりなようです。


 暫く進むと夜明けと共に、風に揺られる小麦の絨毯が視界いっぱいに広がります。


「おぉー……これは凄いですね」

「これは凄いねぇ……」

「あの畑どういう処理かねー? NPC所有か、PCが刈れるオブジェクトか……」

「NPC所有だと思いますけどね」

「MMO次第では小麦の採取ポイント的な扱いになるだろうけど……」

「このゲームでそれは無いか。管理してる農家NPCがいそうだねー」

「小麦自体は始まりの街でも売ってたんですけどね。パンを焼くのが無いんです」

「ああ、器具がないのね」

「オーブン欲しいですねー……んー……? あれ、敵ですか。マーカー赤ですし、ドロップが非常に気になりますね」

「牛だね?」

「サーロイン……ヒレ……あ゛っ……食事不可……」

「まあ丁度一体だし、倒すしか無いよねー」


 あ、私食べれるので。

 マーカーが赤なので大丈夫だと思いますが、一応アルフさんが周囲の確認。

 周囲に人も、柵も何もない事を確認して接近します。

 名前はアンガスのようです。アンガス……。


「……アンガスってなんか聞き覚えあるなー。なんだっけ?」

「アンガス牛じゃないかね?」

「恐らくアバディーン・アンガス。アンガス牛ではないでしょうか。これは肉質に期待ですね。是非狩りましょう」

「「お、おう」」


 早速アルフさんが【アピール】で釣り、戦闘開始です。

 馬乗ったままですが、なんか問題なく盾で防げてますね? 実に不思議だ。私達は魔法で攻撃します。


「……なんか変じゃね? と言うか、体力ありすぎじゃね?」

「なんか、私のダメージが死んでません?」

「ああ、確かに。でもこっちの攻撃普通に通るけど?」

「変ですね。闇耐性は無いし……魔法耐性ならスケさんのも減るはず……」

「アルフの攻撃は……」

「普通に通るねぇ? 特に違和感はないけど」


 はて、なんでしょうかね?

 3人共不死者ですから無関係。ゾンビ系だけピンポイントで……なんてありえないでしょうし。納得できる設定ならまだしも、相手は牛ですからね。

 《闇魔法》も《光魔法》もだめ。近接攻撃もだめですね……。

 はて、他に2人と違うところは……?


「あ、あー……もしかして……?」

「何か分かった?」

「ここは所謂第二エリアですよね? 実は私、未だに2次スキル持ってないんですよこれが」

「「まじで!?」」

「原因はこれぐらいしか思いつきませんね。2次スキルを取得しているかどうか……がキーなら、私の攻撃だけ極端にダメージが低いのは納得です」

「ふーむ、とりあえずこれ倒しちゃおう」


 ダメージは0ではないので、ペチペチ攻撃して倒します。私の火力が死んでるのもありますが、敵の体力が多いですね。倒すのに一苦労です。


「どうせ食材系だろうし、《料理》持ってる姫様が解体した方が良いね」

「私今回何もしてないんですけどねー……」

「2次スキル取ったらまたこっち来て戦ってね。検証ご苦労様です!」

「まあ……それぐらいなら良いですけど……。私も気になりますし、ここでソロ狩りできないのは困りますから……」



[食材] アンガスのバラ レア:No 品質:C

  アンガスのバラ肉。

  幅広く使える万能肉で非常に美味。

  気性が荒いため入荷が稀で、貴族階級が好んで食べる。

  ステーキやすき焼き、しゃぶしゃぶがお勧め。

[食材] アンガスのスネ レア:No 品質:C

  アンガスの脛の肉。

  脂肪分が無く筋ばかりだが、ゼラチンや濃厚な旨味があり、出汁を取るのに最適。

  貴族階級……の屋敷で働く料理人や、高級店の料理人が求める部位。

  煮込み、ポトフがお勧め。

[食材] アンガスのランプ レア:No 品質:C

  アンガスのランプ肉。

  幅広く使える万能肉で非常に美味。

  気性が荒いため入荷が稀で、貴族階級が好んで食べる。

  ステーキやローストビーフ、たたきがお勧め。



 バラが2個、スネが3、ランプが1個ですか。

 アンガスが大きいですから、取れる個数がボアやベアより多くなってますかね。


 とりあえず戦闘は終わりにし、街に入ってポータルを開けることに。

 小麦畑に向かって歩くと壁も見えてきました。始まりの街よりも控えめの壁ですね。そんな時アルフさんが馬で走っていき、少ししたら帰ってきました。


「小学校卒業と同時に離れ離れになっちゃった初恋の女の子でもいた?」

「私達が一番乗りのはずなのにいたらびっくりですね」

「「そこ!?」」

「それで何しに行ったんです?」

「柵が見えたから確認にね。マーカーが黄色になってたから、赤は敵で良いはず」

「なるほど。一安心ですね」


 そのまま街へと近づいていくと門番に止められました。どうしたんでしょうか。


「そこで止まれ!」

「どうかしましたか?」

「……そっちの2人は?」

「ああ……私達は人ならざる者です」

「と言うと……異人か。私達? 君もかい?」

「はい。一応ゾンビ系になります」

「そうなのか……。ところで、異人というと森を抜けてきたんだろう? どこからか来たファイティングベアが住み着いてたと思うんだが……」

「それでしたら倒してきましたよ」

「本当か!?」

「素材ならお見せできますよ? 倒して真っ直ぐ来ましたので」

「ああいや、組合に報告してくれれば良い。それで広まるからな」

「組合の場所を聞いても?」

「ここを真っ直ぐ行けば左手にあるさ」

「では寄っていきますね」

「頼むよ。ようこそ、ベルステッドへ!」


 普通は骨と馬に乗った首の無い鎧が歩いてきたら、確認するために止めますよね。

 実に正常かつ、職務に忠実な門番さんでした。むしろおかしいのこっちだった。


 許されたので街の中へ。朝なのもあり活気は十分でしょう。


「びえええええええ」

「スケさん、子供泣かせないで下さい」

「不可抗力だよねぇ!?」

「昼間っから骨が街闊歩してたらビビるよねぇ。夜よりマシだけど」

「頭無い鎧も大概だろ……」

「人外の宿命ですねぇ」

「「姫様良いよなー」」

「今後どうなるか分かりませんけどね……」

「「まあ……」」


 隣にいた恐らくお母さんに張り付いて泣いてる女の子にペコペコしてる骨ですよ。なんというか、シュールですね。お母さんも苦笑しています。

 さあ、組合に行きますよ。女の子が泣き止みませんからね。ちなみに、アルフさんは馬をしまっています。出し入れ可能の馬とか本当に便利ですね。


 組合は……こちらの方が始まりの街より小さいですが、作りは同じですかね。

 組合の受付嬢さんに素材を見せて討伐の報告をしました。報酬は12万。3人で分けて1人4万ですね。フルPTだと1人2万ですか。

 ついでに東の森の討伐クエストも報告しておきます。3300の収入。

 更に昇進です。冒険者ランクがEに。


 その後、中央の広場へ行きポータルを開けるのですが……開放されませんね?

 立像の前に野菜が乗ってる祭壇があるのですが、それに触れてもログが流れない。

 ……左腰のポーチから野菜を取り出し、祭壇に置きます。


「あ、開放されました」

「まじか……」

「野菜限定なのかな? えっと……ウルフの肉……あ、いけた」

「……ウルフの皮……あ、いいんだ」

「要するに、捧げ物が必要?」

「かな? 皮で良かったから食料である必要は無さそうだし」

「流石に生肉は腐らないか心配になるけど?」


 周りの人に聞くと、ここの捧げ物は教会の人がちょくちょく見に来て、回収していくんだとか。早く見つけて回収していく事を祈りましょう。


「さて……一段落ついたけど、どうする?」

「おっと、録画終了で良いや」

「んー……夕食ですかね? もう少し時間ありますけど……」

「微妙な空き時間なんだよねぇ……」

「とりあえず、アイテム整理しよう?」

「ああ、そうしようか」


 アイテム交換タイムです。

 私が出した皮やら角と、ベアのお肉を交換してもらいます。今まで持ってた角も17個放出し、51個の肉を入手です。

 スープにしても私のスキルレベルにしても、ボアのお肉はもう使わないでしょうか? 露店より委託販売にでも出してみましょうかね……同業者が使うでしょうし?


「ボスとかの情報はどうする?」

「行動パターン情報ですか? 弱体化されたんですよね?」

「らしいねー。姫様が動画撮ってたし、それ掲示板に投げるだけでも良いし……嫌ならこっちで覚えてるの書いとくよ?」

「動画自体は別に良いのですが……簡単ですか?」

「上げる必要があるから……動画サイトのアカウント必要だね」

「作らないといけませんね」

「アカウント登録したらアップロードして、その動画のURLを掲示板に。そうすれば勝手に掲示板で再生可能状態になるからそれだけだね」

「ふむ……。あー……夕食の時にでも妹に聞きます」

「ああ、その方が早いね」


 一先ずここまでという事で解散。夕食の時間が近いのでログアウトします。



 夕食を作っているお母さんの手伝いをしていると妹が降りてきました。


「お姉ちゃんボス倒したでしょ! ソロ?」

「んーん。アルフさんとスケさんの3人PTで」

「あの2人かー」

「それでボス戦を録画したんだけど、アカウント持ってないから掲示板に上げれなくてさ。やり方を秋菜に聞こうかと思って」

「良いよ良いよー。ボードは?」

「あそこ」


 妹が動画サイトを開いて持ってきたので、そこでアカウントを作成。アップロードする動画をコネクトボードからVR機器にアクセスして選択します。そしたら動画のタイトルと説明文を軽く入れて……決定。後は待つだけ。


 ご飯ができて運んでいる時、確認したらアップロードが完了していました。


「あ、終わった」

「見たい。よし、テレビで見よう」

「食事しながら見るには微妙にグロくない?」

「大丈夫! 親切設計だから!」


 心を折る心折設計じゃないと良いですけどね。

 ご飯を運んでいる最中、妹はせっせとリビングのテレビを付け、映画などを見る時用のスピーカーまでつけてました。テレビは80インチ。お父さんの趣味です。


 そうしたら妹が自分のコネクトボードとテレビをリンクさせ、動画を開きます。再生時にグロ設定を選べるようで、全年齢を選んでました。なるほど親切設計。


「もう再生数が結構行ってるー!? 一番乗りが……まあ、いいか。ユーザーフォローの1番は貰ったし。全画面再生っと……」


 三人称視点でテレビに映される自分を見るのって、なんとも言えませんね。正確にはキャラクターですけど。


「これ琴音? 肌白すぎない?」

「種族補正で白くなっちゃったの。ゾンビだから」

「ゾンビなのね。骨……スケルトンだっけ。鎧はなんて言ったかしら……」

「リビングアーマーだね」

「両方ともプレイヤーなの?」

「うん。……さっきから煩いのは……コメントの通知か……」

「娘のドレス姿……良いわね。色があれだけど……黒髪ロングも中々……。ただ、この黒いモヤは?」

「それはスキルのエフェクト」


 さっきからボードが煩いんですよね。サイレントマナーにしておきましょう。確認は後です。ご飯食べましょう。

 アルフさんが埋まったあれは……面白いので黙っておきましょう。ご飯噴き出すのは止めてね。教えないけど。


 テレビがでかいので隅にある一人称視点もそれなりの大きさで見れますね。

 自分が撮った動画なので私は知っていますが、お母さんや妹は知らないので中々楽しそうですね? 私も一人称と三人称の違いがあるので、微妙に新鮮ではありますが……。自分のじゃなければ見るのは面白いかもしれませんね。気が向いたら見てみましょうか。気が向いたら。


「おぉ……あのラッシュを割りと余裕で耐えたね……。と言うか、スケさんが赤くない!」

「今日の狩りで進化したね。メタルスケルトンメイジだってさ」

「メタスケかー」


 ゾンビと骨と鎧が熊と戦ってるところを見ながら夕食って、なんとも言えませんね。どうせなら昨日のイベント戦でも見たいですね。


「なんか、ちょっと可愛いわね。短い足で蹴ってるの」

「音ヤバイけどね……」


 正直大盾が壊れないか心配でした。まあ、ゲームなので耐久がある限り壊れませんが。でもこのゲーム、結構油断ならないらしいんですよね。細剣とか本来ウェポンガードとか無理にすると、耐久あってもへし折れるらしいですから。


「む、2回目のラッシュ? おぉ……んふっ……んぐっ……」

「お、耐えたね」

「危なかった……噴き出すところだった……」


 ギリギリで耐えましたか。

 その後の早送りな熊を見てお母さんが笑い、妹が何やら考えてる最中に倒れました。


「ドロップなんだったの?」

「魔石と爪と皮。後は筋力上がる指輪だったね。指輪はアルフさんにあげた」

「お姉ちゃんもスケさんも筋力いらないかー。奥は行ったの?」

「行ってきた。スケさんがこの後録画してたよ」

「ほほう……スケさんのチャンネルは…………お、これかな?」


 ああ、スケさんもアップロードしているようですね。あの長閑な平原を見るんですね。食事中にはあいますかね? 牛と戦いますが……。


「あれ!? アルフさん進化した!?」

「ボス倒してデュラハンになったよ」

「う、馬……だと……? 妬ましい……」

「いいよねー。私やスケさんで言うエクストラ装備があの馬っぽいけど」

「デュラハン……首のない人に首のない馬……妖精のあれ?」

「そうそう。あれが元ネタ。このゲームだとアンデッド扱い?」

「中位不死者だってね」


 お母さんもなんだかんだ知ってるよね? まあ、長閑な平原を見ながらご飯を食べ進めます。丁度今の見終わったら食事終わりそうですね。


 ご飯食べたらスキルレベル上げて……また牛で検証ですかねぇ?

 問題は何のスキルを進化させるか……。《魔法技能》は30になってましたが、特に解放されたログは無かったですね? となると他のスキルは……《足捌き》が29でリーチですか。しかしこれを狙って上げるのは……。

 《料理》も27ですが、流石にベアのお肉ではあまり上がりませんし、そこそこ時間がかかりますね。

 《HP自動回復》も27ですが、これも狙ってやるのは……?

 《感知》や《目利き》などは論外ですし、やっぱり《刀剣》辺りが一番ですかね。近接戦闘してれば《足捌き》が上がる気がします。

 面倒ですが一度戻って、森で狩りして上げてからリベンジですね。


「ふぅむ……2次スキル所有してるかでダメージ補正かー……」

「まだ確定じゃないけどね」

「この後スキル上げ?」

「その予定。足捌きが先に上がるだろうけど、それはそれで戦闘系じゃなくて良いのかって検証にはなるし?」

「なるほど。皆もボスチャレンジしだしそうだなー。どうしようかな……」

「初回討伐はSP6と称号だったよ」

「6は美味しい……称号効果は?」

「無し」

「えーっと……ベルステッド解放者。始まりの街の東を一番最初に解放した記念称号……とな?」


 称号は完全に記念ですね。効果はありませんがレア度は非常に高いでしょう。一番最初に解放した人しか貰えないようですから。

 『お姉ちゃん入れてボス行くか……?』とか呟いてますが、呼ばれれば行くけどね。ボス戦なら私もメリットあるし? 称号はともかく、SP欲しいです。これからゴリっと減るでしょうから。


 計画的に取らないとすぐSP不足になるとは書いてありましたが、取りすぎましたかね? 必要なものだけ取ったつもりですけど。

 初期スキル10個に対して私は16個。更に種族スキルですから……足りませんね。


「あ、スケさんこっちでも子供泣かしたんだ」

「始まりの街でも泣かせたんだ……」

「うん。種族デメリット、子供に泣かれる。ハハハ」


 地味に嫌ですね。



 食事も終え、お風呂やら諸々を済ませてからログインです。

 途中スケさんから『動画見つけたから掲示板に貼っていい?』ときたので、お願いしておきました。丸投げしたとも言いますが。


 掲示板に用が無くなったので、早速スキル上げと行きましょう。


『姫様2次スキルまで後どのぐらい?』

『足捌きが後1ですね』

『じゃあ狩り行こうか』

『この周囲ちょっと見てきたけど、豚と牛だったよ』

『豚さんもいるんですね?』

『デフォルメされてて無駄に可愛かったよー』

『牛は闘牛っぽいのにな……』


 なにそれ気になりますね。

 検証も兼ねて、2人とスキル上げです。本当は戻ってベア達で上げる予定だったのですが……。ミニマップを見て2人と合流します。


 合流した時スケさんが別の方向を指差したのでそちらを見てみると、ピンク色の丸い物体がありました。


「マーカー赤ですね?」

「あれ、ピグゥ。ちなみにノンアク」

「……豚ちゃんですか」


 短い手足に丸い体。そしてつぶらな瞳。それでモグモグ草を食べています。

 なるほど、無駄に可愛いですね。


「豚肉手に入るし、倒そうか」


 とのことで、戦闘開始です。

 魔法で攻撃すると『ぷきゅぃ!』とか可愛い声出してますが、補正により全然HPが減っていません。

 攻撃されたピグゥはのそのそとお尻をふりふりしながら歩いて来て、ムクっと後ろ足で立ち上がり……こちらに向かってジャンプしつつ、回転蹴りをしてきました。


「ちょっ!?」

「「やっぱビビるよなあれ」」

「豚、豚とはいったい」

「どう考えても格闘豚」

「ただまあ、びっくりはするけど……って感じだよね……」


 落ち着いて見てみると、VRゲームの弊害というかなんというか。

 ただでさえ格闘系はリーチが短いのに、手足が短いせいで酷い。


「もしかして、物凄い弱い」

「うん」

「ただ、当たるとヤバい。普通に攻撃力高い。後は動物系だから体力もある」

「なるほど」


 四足からのジャンプ頭突きや、回転蹴りを1歩横にズレたりしながら斬りまくります。一番厄介な攻撃はただのパンチかもしれません。出が早いのです。


 1体倒すのに約5分。スキルは上がらず。

 経験値にも補正がかかっているようですね。つまり物凄く効率が悪い。

 カタコンベでの狩りを考えると、ベースレベルによる制限は殆ど無く、スキルレベルによる制限がある感じでしょうか。

 とは言え、カタコンベでの狩りは現実的ではありませんけどね。あそこは私……ゾンビ種かつエクストラ種族だからこそできた訳で。あそこでの狩りは魔法攻撃手段が無いとゾンビ種でも不可能でしょう。普通のゾンビ種は知力低いですし。



[食材] ピグゥの肉 レア:No 品質:C

  ピグゥのバラ肉。

  様々な料理で使える万能肉。

  生息地では一般的に食されるが、他へ持っていくと高く売れる。

  火はちゃんと通そう。取り出す時に骨付(スペアリブ)を選択可能。



 3個ですか。

 豚ちゃんはボアやベアと同じドロップ量ですかね? それと、こちらは一種類な気がします。アイテム名が部位の名前では無いですし。

 スペアリブですか……。


「でもこの場合、お肉目当てならアンガス一択では?」

「まあ……スーパーなら金銭的な問題が出るけど……」

「現地調達すればいいからなー」

「問題はアンガスが強いことですけど、倒せない訳ではないですからね」

「最大の問題は僕達が食べれない事だ!」

「うんうん」


 2人は味覚どころか胃すらありませんからね……私はありますが。


 その後も少し狩りを続けると……《足捌き》がカンストしました。


 〈《足捌き》が成長上限に到達したので《回避》が解放されました〉


 《足捌き》30でスキルポイントが2貰えました。

 そして予定通り《回避》ではなく《舞踏》を取りましょうか。消費SPは6です。

 ちゃっかり《舞踏》ではなく《舞踊》というスキルもあるのですね。前者は種族が、後者は《足捌き》と《重心制御》だけ。

 イメージ的には前者が貴族達の社交ダンス。後者は踊り子などのダンサーでしょうか? 同じ踊りとは言え、全然違うものですね。

 予定通り《舞踏》を取りましょう。



 〈2次スキルが取得されました。スキル・アーツカスタマイズが解放されます〉



 おや? ヘルプが追加されましたね……。



 ※スキル・アーツカスタマイズとは

 自分の好みに合うように、スキルやアーツをカスタマイズできるシステムです。

 強化はスキルレベル10毎に1段階可能です。スキルレベル上限が100のスキルは10段階まで強化可能になります。ただしスキルやアーツによって、強化項目や強化ルールが変わるのでご注意ください。

 強化による変化、上昇量などはあなたのプレイスタイルによって様々な変動があるため、自分で確認する事を強く推奨します。

 やり込めばやり込むほど個性が出る。それがこのカスタマイズシステムです。



 へー……こんなシステムあったんですね。


「2次スキルを取ったらカスタマイズが解放されたのですが」

「うんうん、βの時は無かったから楽しみだよねー」

「完全にやりこみ要素だけどなー。システム上これはテンプレが無いから、自分で試しながらベストを探すしか無いね」


 まだ分かってないから何とも言えない段階だけど、勘違いしてはいけない事が1つ。

 例えば《刀剣 Lv10》と《刀剣 Lv30》の場合。

 取得アーツは以下の通りです。


 《刀剣 Lv10》

【スラッシュ】【ディスタンスソード】


 《刀剣 Lv30》

【スラッシュ】【ディスタンスソード】【斬鉄剣】

【アタックスタンス】【ラッシュ】【ディレイスラッシュ】


 この場合、カスタマイズできるのは当然覚えているアーツだけですが、10レベの場合は【スラッシュ】と【ディスタンスソード】の両方(・・)を1段階まで強化可能と言う事です。

 30レベの場合は6個のアーツを3段階まで強化可能になります。

 30になると当然上位スキルが来ますが、下位スキルである《刀剣》は3段階が強化上限になります。


 《刀剣 Lv30》で《細剣 Lv20》の場合、下位スキルのアーツは6個3段階までで変化はありません。これに加え《細剣》で覚えたアーツも各種2段階まで可能です。


 それに強化すればただ強くなるかと言ったら、そうは問屋が卸さない……と。

 性能、燃費、冷却、特殊と言った強化項目があるようで、どれか上げるとどれかが下がる……とか。

 しかもこの数値がプレイスタイルで変わるとか、アーツによっては下がらないのもあったりとか、種族でも影響あるんだろうな……とかで、『リストにするとか死ねるから自分で見てSSでも撮っとけ』だそうです。


 これは後で……明日にでもじっくり見るとして。2次スキルを取ったので戦闘しましょうか。


「うーし、うー……し……」

「どう見てもリンクだろうな、あれは……」


 結果はいかに! と、多少テンションの上がったスケさんですが、敵を見つけて一瞬でだだ下がりです。

 アンガスが3体……牛だから3頭でしょうか? ……敵だし別に体で良いですかね。ちなみにアンガスは褐色――赤毛でも良い――で、サイズはリアルの闘牛サイズです。と言うかぶっちゃけ闘牛ですよね。アンガスという名の闘牛です。


 さて、問題は3体リンクという事でしょうか。現状ではリスクが高いですね。


「ちょっとリスク高いなー?」

「姫様がまともに戦えるようになってれば問題ないけど、確認がまだだからねぇ」

「そうですねぇ……。アルフさんに2体持ってもらえば済む話ですが、与ダメージに補正があるなら、被ダメージにも補正ありますよねー」

「むしろ無かったらびっくりだねー」


 という事で、3体リンクのアンガスはスルーです。

 ダメージ与えられない、被ダメージが洒落にならないではちょっと。まずは戦闘スキル以外でも補正が消えるのか確認するのが先です。足の速さ的にもアンガスから逃げるのは無理ですからね。アルフさんぐらいでしょうか。


 馬乗ってるアルフさんに少し探してもらい、そちらへ移動して確認開始です。

 まあ結果としては、2次スキルが重要であって、戦闘スキルの必要はないですね。


「まあ、そうしないと生産職が辛いってことかな?」

「かもね。逆に生産だけ上げれば制限は外れるけど……」

「エルツさんとかの純生産職の人達も工夫次第では……って事ですかね」

「生産はステータス補正高いからね。装備なんか自分達で用意すりゃいいし?」


 生産の素材を集めながら戦って、生産を真っ先に2次スキルへ。その後多少育った戦闘スキルで2次エリア来ても……普通なら火力不足なのでは?

 ワールドクエストは少々特殊でしたが、勝っても負けてもスキルが上がるのは『戦闘終了後』ですからね。この方法は効率的には微妙そうです。

 わざとそういう調整してるんでしょうけど。


「まあ、確認終わったので寝ますね」

「掲示板には報告しておくよー」

「お願いします」


 街へ戻りログアウトです。

 ボスの素材はスケさんに預けました。売っといてくれるでしょう。


 来週は武闘大会ですね。出ませんけど。

 では、おやすみなさい。


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― 新着の感想 ―
デュラハンの視界はどうなるんだろう? 元々顔のあった場所?
[気になる点] 私とスケさんはエクストラ装備がありましたが、アルフさんは無かったようで……代わりに(おんま)さんですかね? お馬が、おんまになっています。 [一言] 面白かったです。
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