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18

スケさんはゆるくちょっと子供っぽい感じで、アルフさんはちょっと丁寧な感じ。

 朝6時。ゲーム内でも丁度朝になったところです。プレイヤーは少ないけれど、いないと言う訳もなく。


 さて、今日は何をしましょうか?

 料理を後3個上げて進化させるのも良いですし、狩りに行くのも……。

 とりあえずストレッチという名の体幹トレーニングをしてから宿を出ましょう。


 〈今までの行動により《重心制御》が解放されました〉

 〈特定の条件を満たしたため、《舞踏》が解放されました〉


 おや、目的のものが来たのでは? 何やら別のも解放されたようですが。



 《重心制御》

  体のバランスに補正を加える。

  体を思い通りに動かしやすくなり、バランスを崩されづらくなる。

 《舞踏》

  体のバランスと足運びに補正を加える。

  体を思い通りに動かせ、バランスが崩されづらく、悪路でも疲れづらい。



 むむむ……?

 《重心制御》より《舞踏》の方が上ですか? ログ的にも、少々特殊なようですね。えっと……《足捌き》と《重心制御》、更に種族で《舞踏》の解放ですか。《重心制御》ではなく、《舞踏》を取りましょうかね? 王女っぽいですし。


 〈特殊派生先のため、取得すると派生前スキルが消滅しますがよろしいですか?〉


 悩ましいポップアップが出てきましたね……。

 消えるのは《足捌き》ですか。確か……リビルドで取った初期スキルでしたね。26まで上げたのが勿体無い気もしますが……いや、いっそ30にしてスキルポイントを回収してから? 歩いてれば上がるし……そうしましょう。

 《舞踏》は《足捌き》30まで保留で。


 インベの整理でもしますか?

 とは言え不要なのは……ウルフ皮と爪、ディア角ぐらいでしょうか。ボア皮はエルツさんに売っ払いました。買い取りが2000から2500になってたんですよ。武闘大会も来ますし、装備の新調需要ですかね?


 よし、とりあえず……宿を出て使った野菜達を補充しましょう。

 お店を回って塩27個、砂糖5個、胡椒14個、玉ねぎ51個、キャベツ50個、ローリエ5個、ニンジン50個、ニンニク1個、馬鈴薯50個、料理酒2個で合計6070の出費。案外持っていかれましたね……。

 このまま組合へ行き、お金を預けておきましょう。10万預けて組合に40万、手持ちに1万ちょっとの全財産41万ですね。今のところ使う予定はありませんので、このまま貯金で。


 さて、一旦落ちましょう。




 よし、午後のログインです。

 午前中はあの後ステーキの補充をしておきました。スキルレベルは上がりませんでしたが、現状で一番満腹度が上がる料理ですからね。商品として必要でしょう。

 ステーキ作る際に使用したニンニクも再び補充しておきました。

 午後はどうしましょうかね……。


「おや、姫様」

「おいーすー」

「おや、ご機嫌よう。狩りですか?」

「東の森を予定中ー」

「姫様も来るかい?」

「そうですね。行きましょうか」

「お、じゃあリーダー渡すよ」


 後ろからやって来たアルフさんとスケさんで3人PTを組みまして、組合に寄って討伐依頼を受けてから東の森へ向かいます。


「魔法スキル上げたいので、後衛でいいですか? 少し遅れ気味なんですよね」

「アルフがタンクするから問題ないよー」

「東の森は敵も1体ずつだから平気でしょう」

「そのうちリンク持ちとか来るんだろうなー」

「詠唱反応とかの特殊アクティブも出るんでしょうか」


 お決まりですよね。詠唱を開始すると同時に反応するMob。

 魔力を魔法として変換する際の変化に反応している……とかそういう設定でしょうか。まあ、その辺りの理由付けはどうにでもなるでしょうけど。

 プレイヤー的には詠唱反応ですね。


「出るんじゃないかな? MMOしてる人なら割と一般的な知識だろうし」

「このゲームだと一番厄介なリンクって……普通に視線と音じゃない?」

「ダンジョン内で音リンクとか最悪ですね」

「そう言えばこのゲーム、ダンジョン無いねー」

「まあ、この最初のエリアに無いだけかもしれないけどね」


 カタコンベ(実家)もダンジョンと言う感じはしませんでしたからねぇ……。


 話しながら歩き東の森に突入。

 たまに薬草やキノコを採取しながら奥へと向かいます。《錬金》のレベル上げに使用するでしょうからね。


 大盾を持っているタンクのアルフさんを先頭に、私とスケさんが付いて歩きます。

 アルフさんは完全前衛。私はまあ、どこでも良いです。スケさんは完全後衛ですね。

 現在お天道様が出ているので自動回復の恩恵がほぼ無いですが、私とスケさんが【ダークヒール】を持っていますので、アルフさんの回復も問題無いでしょう。そもそも東の敵に大盾の防御を抜ける敵はいないでしょうし。

 ここの敵は孤立しておりリンクしていませんので、囲まれる心配もありません。

 まあつまり、死ぬことはないと言う訳ですね。


 早速見つけたボアをアルフさんが【アピール】で引きつけ、少し離れた場所からスケさんと魔法を撃つだけの簡単なお仕事です。


「そう言えば、ドロップはどうするー?」

「2人の時はどうしていたんです?」

「交互に倒したやつにナイフ突き刺して、ドロップはそのままだね。面倒だから」

「βの時から2人だからねー。ソコソコの付き合いだからそんなもん」

「なるほど。そのままローテに私が入れば良いですが……」

「姫様肉が欲しいっしょ?」

「ですねぇ……むしろお肉貰えれば他はいりませんよ」

「じゃあ……俺達が出した肉と、姫様の肉以外を交換で?」


 組合やプレイヤー間のお肉の取引を考えると……他素材より遥かに値段は落ちますね。そもそも需要が同じじゃないので『売れやすさ』にも差がありますか。

 私はお肉を《料理》すればスキルレベルが上がり、完成品を売ればお金も入ります。2人はお肉の代わりに、皮や角を私から分けて貰った方が、お肉単品で売るよりプラスになります。どちらも損はないですし、問題はないでしょう。


「そうですね。その方がありがたいです。何ならインベで眠っている47個の角を放出しても良いですから」

「肉1個じゃ割に合わないねー。平均の3個と1個のレートで良いかな?」

「良いですよ」

「それでも肉の方が安いけどね……」

「加工すればこちらの方が増えるので、気にしないでください」

「よーし、じゃあ交換は狩りを終わりにする時で」



 倒しながら奥へ進み、セーフティーエリアもそのまま突っ切り森の奥地へ。ここからベアも出始めますから、ここがメイン狩場です。

 しかしあれですね、他のPTもちらほら見かけるようになりました。今まで全くと言って良い程見なかったのですが、遂にトッププレイヤー達が進出してきましたか。


「他PTを見るようになりましたが、戦闘頻度にそれほど変化を感じませんね?」

「ああ、このゲームはあれだよ。エリアにいる人数である程度ポップ数が変わるんだ。だから独占状態よりある程度人がいた方が美味しかったりする」

サーバー()の節約……でしょうか」

「だろうねー。でもこっちとしてもその方が嬉しいから文句はないよ。まあ、ポップ数の上限はあるようだけど」

「上限無かったら始まりの街周辺の平原ヤバイだろうし。兎と狼でみっちりとか」

「それはそれで見てみたいですね」


 敵を探しながら歩いている最中に、雑談できるのはPTの醍醐味ですよねー。


「ああ、ただ……突然真横にポップしてくる可能性も出てくるから、ギリギリの狩場だと厳しいかもね」

「所謂クソリス」

「ギリギリの狩場じゃなければむしろ探す手間が省ける」

「割とあるあるですね。問題は、一人称視点だから真後ろに湧かれると……」

「だねー」


 とか言っていると、私達の横にベアがリスポーンしました。


「うわ出たぁ……ウェルカム!」

「フラグ回収ですか、お疲れ様です」

「ただ、真横ってのは減点かな。後ろなら完璧だったのに」


 そしてボコられて解体されるベアである。そもそも普段ソロ狩りしてる敵ですからね。1体横にポップしたところで、問題になる筈もなく。

 戦闘中にポップされても、アルフさんが1体、私が1体持てばいい話です。


「姫様いると安心だなー」

「ステータス上がるし、ポップした場合にもサブタンク任せられるからね」

「僕は近接さっぱり取ってないからねー」

「褒めても何も出ませんよ」



 アルフさんが真正面から殴り合っている最中に、なるべく弱点を狙いながら光と闇を交互に使用して、攻撃していきます。


 大体狩りと言うものはパターン化していくもの。パターン化するとはつまり、安定している訳で、逆にしていない方が問題でしょう。相手の行動パターンに合わせてプレイヤー達が動き、なるべく早く倒して次へ。

 何回も同じ敵と戦えば、だんだん最適化されていくというものです。無駄な行動がなくなっていくわけですね。

 敵は攻撃モーションが基本的に決まっているので、動きを見ればどの攻撃が来るか分かります。動きが分かれば隙を突いて攻撃も容易でしょう。敵の動き、つまりモーションから攻撃予測はアクションゲームの基本です。と言うか、これができないとこのゲームで近接は無理だと思います。一人称だから視野も狭いですからね。

 そして恐らく……と言うか確実に、後半に行くにつれこの攻撃モーションの判断が難しくなるのでしょう。対人だとフェイントしてきたり?


 まあ、何が言いたいかというと……実に面白いですね。

 実際の体を動かしているわけではありませんが、思いっきり動けるのでストレス発散にもなるのでは無いでしょうか。

 動いた後の肉体的疲労感が好き……って人は知りませんが。



「あ、ちょっと待ってくれるー?」

「どうかしましたか?」

「20レベになって進化できるようになった」

「俺はもう少しかなー」

「なるほど、分かりました」


 スケさんは今20レベですか。

 カタコンベの経験値が非常においしいのか……ゾンビの経験値テーブルが2人より低いのか……はたまた両方か。既に私の累計レベルは35ですからね……。


 スケさんの体が光に包まれた後、出てきた体は赤からメタリックへと変わっていました。


「メタルスケルトンメイジになった! エクストラはいつなんだ……?」

「一択でした?」

「一択だったねー」

「いつでしょうねぇ……」

「うん、メタリックだね。防御力高そう」

「微妙に打撃に強くなったよー。まあ……元がマイナスだし、今もマイナスだけど。ぶっちゃけ誤差だね」


 元々スケルトン系は打撃攻撃にとことん弱いですからね。その分刺突系に強いはずですが。私で言うと進化前に持っていた《腐乱体》で火属性2倍でしたが、骨は打撃が初期4倍でしたかね。代わりに刺突軽減だったはずです。


「赤もあれだったけど、メタルも大概だね?」

「一応つや消しはされてますね?」

「それは良かった。てっかてっかしてたら超目立つね」

「メタルって事は金属だよね。重いのかな?」

「体が重いって気はしないけど、どうだろうね?」


 試しにアルフさんが持ち上げてみましたが、私よりもだいぶ軽いようですね。

 ということはもしかして……?


「「メタルメッキスケルトン……」」

「とても悲しいので、とても軽いファンタジー金属としておきましょう?」

「そうだねー……そうしとこうか」

「まあ、狩り行こうか。俺ももうすぐ進化できそうだし」

「私の次の進化はいつなんですかねぇ? そう言えば10レベ何もありませんでしたね……」

「姫様20でリビルドのレベル1だよね?」

「ですね」

「じゃあ次は30かな?」

「となると、まだまだですねー」


 20でなった種族だから次は30レベ……と言うのは十分ありえますね。まだ15レベなのでまだまだ先です。今は種族レベルより、スキルレベルを上げたいので別に良いのですが。

 それとスケさんは《闇魔法》も《暗黒魔法》に進化したらしいです。範囲攻撃魔法を覚えたみたいですね。


「そう言えば姫様、パーツ持ってるー?」

「パーツ……ああ、欠損修復用パーツですか?」

「そうそう」

「3つありますよ」

「どこで手に入れた?」

「実家で、恐らくレアドロップかと」

「実家……カタコンベか。やっぱアンデッド系のレアドロ狙うしか無いかなー?」

「あれね。何個か確保しておきたいよね。これからお世話になりそうだし……」


 闇のパーツの事ですね。我々の欠損修復アイテムです。

 幸いまだしたことありませんが。


「骨系、霊体系、後ゾンビ系も? ドロップしてるから、アンデッド共通レアドロップの可能性が高いねー」

「生産できれば良いんだけどね。俺は生産さっぱりだけど」

「生産ですか……できるとしたら《錬金》ですかね?」

「まあ……正直使うのほとんど僕達だけだろうし、安く売られそうだけどね」

「アンデッドが狩られるような場所にいればだけどね。お、ベアだ」


 ベアに遠距離から魔法を撃つと、ダッシュからの飛びつき攻撃が来ます。それにアルフさんが割り込み大盾で受け止め、そのまま袋叩きです。


 木洩れ日の光が色付き始め、気づいたら夕方に差し掛かりました。幻想的な……と言いたいところですが、森の中の夕方とかどちらかと言うと不気味ですね。これから暗くなりますし、恐怖の方が勝るでしょう。まあ、我々には関係ありませんが。


「お、夕方だね。どうする? 一旦トイレ休憩とかする?」

「あー、10分ぐらい休憩欲しいね。洗濯物も入れたいし」

「そうですね。洗濯物入れたいですし、セーフティー向かいましょうか」


 セーフティーエリアまで敵を倒して移動し、到着したら10分後を目安に3人とも一旦ログアウト。

 軽く体を伸ばして、水分補給とトイレを済まし、洗濯物を畳んでから再びログインです。

 アルフさんが戻ってきた後スケさんが戻ってきて、スケさんがアルフさんを煽り始めました。


「アルフ洗濯物雨で濡れてたろざまー!」

「うん、お互い様な。住んでる場所知ってるからね?」

「ハハハハ……はぁくそめ……」

「姫様の方は大丈夫だった?」

「こっちは平気でしたね。普通に晴れてましたから」

「それは良かった。こっちも降り始めっぽかったけど、大粒だったな……」

「さー、八つ当たりしにいくか!」


 八つ当たり抜いても、結局狩りには行くんですけどね。

 夕方は15時30分までです。それから18時まで夜になるので、案外PT減りましたか? 夜の森は視界が悪いですからね。皆が【ライト】やら【ナイトビジョン】で対策する中、私達3人は普通に闊歩します。



 狩りを続けることしばらく、正面に妙に開けた場所が出てきました。


「あー、あそこボスエリアか」

「だねー。いっそ突っ込んでみるとかー?」

「ふむ……」

「行ってみますか?」

「お、姫様乗り気ー?」

「元々武闘大会中にでも行ってみるつもりでしたからねー」

「所持金は大丈夫かい?」

「午前中に預けたばかりなので大丈夫ですよ」

「こっちも問題なし」

「じゃあ行ってみようか。死んでデスペナなったら夕食にでもするかな……」

「そだねー」


 ノリでボスに突撃する……まあ、割とあることですかね。


 入る前にボスの情報のおさらいです。

 ボスは北と東がレベル22。西と南がレベル20。特殊なあれは特に無いが、純粋にレベルも高くステータスが高いのが北と東。飛行や毒などがあるが、多少レベルが低くなっているのが西と南です。

 北のゴーレムの力と防御を下げた代わりに、スピードが高く攻撃パターンが遥かに豊富なのが東のベアです。東はガチンコ勝負で勝つしか無さそうなんですよね。

 スケさんとアルフさんの回復の話をしてから、スケさんが知力を上げる【ダークエンチャント】を自分と私にかけて突入です。


 せっかくなので、録画してみましょう。



 アルフさんを先頭に3人でボスエリアへ。

 すると久々にシステムに制御を奪われ、真ん中辺りまで自動的に歩いて行き、奥の森からボスが豪快に飛び込んで来るのをしっかりと見ました。

 熊の咆哮後、体の制御が戻ってきます。



 ファイティングベア Lv22

  格闘熊と言われ、非常に好戦的で危険な熊。

  スピードと体重の乗った攻撃には特に注意が必要。

  属性:― 弱点:― 耐性:―

  属:動物 科:ベア

  状態:正常



 レイドとかではないのでゲージは1本。褐色熊より一回り大きいですね。


 ボス戦なので確実に行きます。

 アルフさんの【アピール】確認後に【アタックスタンス】を使用し攻撃を開始。

 《識別》による弱点は無いようですが、《看破》による弱点部位は存在します。その情報を2人と共有しつつ、その部分をできるだけ狙いましょう。


「よし、全然問題ない!」

「問題はHP減って怒ってからだねー」


 特にヒールを急ぐ必要がない事が分かったので、パターンが変わるまで攻撃に集中できそうです。

 私は基本的にランス系で攻撃し、弱点を狙いやすい時だけアロー系を使用。今のところアルフさんの回復は私が担当します。

 スケさんは攻撃しつつ、回復の代わりにエンチャントでバフの維持を。

 アルフさんはタンクなので【ガードスタンス】を使用し、ひたすらヘイト稼ぎ。


 ファイティングベア……ですか、見てる感じ完全に格闘家ですね。動きが完全に熊ではないのですが……ゲームなので突っ込むだけ無駄ですか。面白いから良しとしましょう。


 割と順調にHPが減っていきます。

 そして……ファイティングベアの両腕が赤く光を発しました。体力が残り6割になった時に行う特殊行動ですね。


「ラッシュ来るよー!」

「よしこい!」


 アルフさんが大盾の裏に右手も添え、左足も付けて腰を落とします。完全防御態勢で迎え撃ちます。

 私とスケさんは【ダークヒール】の詠唱を開始。


 ファイティングベアは気合の? 咆哮から、アルフさんに殴りかかります。

 右ストレートから左フック、右アッパーから左ストレートと6連撃を放ちます。1発1発が盾に当たる度、物凄い音を響かせ防御越しにアルフさんの体力を削ります。

 ですが……問題は無いのでラッシュが終わったと同時に2人で【ダークヒール】をアルフさんに。これで全回復です。


「第一にして最大難所突破!」

「アルフ、これから注意してねー」

「勿論だとも! さあパターンは変わるかな?」


 実はあのラッシュをタンクが耐えきれず突破できてなかったそうで、ここから先は情報がありません。

 種族的にフルプレートで、大盾を持つアルフさんの防御力は相当ですね。


 ファイティングベアの行動パターンが変わり、なんと……蹴りまで使うように。

 なんと見事な飛び蹴りか。防いでますけど防御越しに削られますね。なるべくアルフさんのHPは最大を維持するようにしましょう。


「姫様MPはー?」

「6割です。まだ余裕あります」

「こっちも5割。問題無さそうだね」


 ふと思いましたが、我々不死者はポーション使えませんよね? MP切れたらどうするんでしょうね。スキルにあるのは《HP自動回復》です。私は装備のセット効果でMPも回復しますけど、補正無しの自動回復待つだけって辛くないですかね……。


「こいつホントに熊かよぉ!」

「突っ込んだら負けですよ」


 キックボクシングを始めたファイティングベアの攻撃を、ひたすら大盾で防ぐアルフさん。回し蹴りまで始めました。足短いのでちょっと可愛いですね。

 当たった大盾から可愛くない音してますけど。


 とは言えメイン盾がいますので、回復頻度が少し上がったぐらいで問題なく、6割で黄色くなったHPゲージが残り3割になり赤へ変わりました。

 ファイティングベアの両腕に加え、両足も光を纏い始めました。


「アルフ! アーツくるよ!」

「はっはー! 我が防御抜けるもの無し!」

「通常で抜かれてるだろ!」

「知らんなぁ!」


 ノリノリですね。顔があれば絶対に2人して笑顔なんでしょうけど、残念ながら骨と鎧です。表情筋がありません。


 再びラッシュが始まったようですが、それに足も混ざり明らかに攻撃回数が増えています。一旦攻撃を止め、2人で回復を行います。


「ちょ、やめろください」

「ガリガリ減ってるー!」

「攻撃しすぎでは!? あっ? あーっ!」

「あ、アルフー!?」

「ふふっ……」


 ……これがホントのベアハッグ?

 ラッシュ最後の攻撃でバランスを崩し、後ろに回られてハグ。まさかのフルプレートであるリビングアーマーをそのまま持ち上げ……バックドロップ。

 12回攻撃+ベアハッグバックドロップですね。華麗過ぎる連続攻撃。


 めきゃっと頭から叩きつけられたアルフさんは、上半身が埋まりワタワタしていました。状態異常のマークが付いてますが、バインドでしょうか?

 フルの状態からラッシュで削られ、回復していたにも関わらず最終的に残り2割まで減少。急いで回復させながらベアに近づきます。


「スケさんアルフさんを!」

「おっけー!」


 【ダークボール】と【ダークアロー】をファイティングベアに連射しますが、タゲが来ませんね……。

 犬◯家状態のアルフさんがファイティングベアに殴られると、割りと洒落にならないダメージが入っています。


「これ回復間に合わん!」

「【魔力解放リベルタ】! 【ラッシュ】! おぉっと……来ました!」

「ナイス姫様! おらさっさと出てこい!」

「抜けねぇ!」


 オーブが1個無くなりましたが必要経費です。【魔力解放リベルタ】の乗った【ラッシュ】で3回攻撃したら、ファイティングベアのタゲが来ました。

 その際振り向きざまに裏拳が来て、咄嗟にしゃがみつつ受け流し頭上通過。そのまま回ってバッチリこっちを見ています。

 スタンスを【パリィスタンス】へ切り替え、しばらくタゲを取ります。今までよりスピードが上がっていますね?

 アルフさんであれです。【ガード】せざるを得なくなった時点で負けですから、【パリィスタンス】で全て受け流しましょう。


 レイピアは受け流しに使用し、魔法でダメージを与えます。どの道メイン火力は魔法なのですから、無理してレイピアで攻撃する必要はありませんね。攻撃スピードはありませんから、隙があればレイピアでも攻撃する……ぐらいが安定しそうです。

 問題は【受け流し】してるにも関わらず、よく見ると微妙にダメージが来ている事ですかね? 自動回復があっても微妙に減っていきますか。自分にヒールすれば良いですけど、ジェネラルの時もダメージ来てたんでしょうか? 気づきませんでしたが。


「さすが姫様! だけど……抜けねぇな!」

「動けないんだこれが」

「筋力ないからフルプレートを持ち上げるのは……あ、そうか。【念力サイコキネシス】……ふんぬー!」

「お、せーのっとー……よっしゃ!」

「よし、参戦だー!」


 アルフさんの体力も回復し、動けるようになったようなので攻撃を控え、受け流すことに集中します。

 後ろから【アピール】してもまだタゲは私ですね。背中に【斬鉄剣】で防御無視攻撃が入り、もう一度【アピール】でタゲがアルフさんへ。

 その間にスケさんは【ダークエンチャント】を自分と私へ。

 タゲが移ったので【アタックスタンス】に切り替えます。


「よし来た来た!」

「とんだハプニングがあったけど、なんだか行けそうな気がするー!」

「行けそうですねぇ」


 3割時に特殊行動が入り、私の【魔力解放リベルタ】【ラッシュ】で残り2割ぐらいになったので、このまま行けそうです。


「スケさん、1人では回復間に合わなそうです」

「攻撃速いわー」

「おっけー、こっちもヒールする」

「お願いします」


 明らかにファイティングベアの攻撃速度が上がっています。

 私の時より速いのでは……?


「んー……? 熊の防御力下がった?」

「残りHPで攻撃速度が上がって防御力が下がるタイプですか?」

「3割からそうかな? まあ、さっさと倒しちゃおう。回復が間に合わなくなる」

「ですね」


 攻撃を重ねていくと、確かに攻撃が速くなってくとアルフさんが言っています。盾とぶつかる音も非常に忙しない。


「これ、不死者じゃなかったら腕痺れたりするんかね……。凄い衝撃だ」


 部分的な麻痺……でしょうか。あるんですかねぇ? 

 残り1割……。


「おわー! 荒ぶりすぎだろう!」

「早送りしているみたいで、ちょっと面白いですね」

「分かる。傍から見る分には面白い」

「はよ! 討伐はよ!」


 アルフさんのHPも結構な速度で減り始めたので、さっさとしましょう。と言っても、やることは変わらないのですが。



 私とスケさんの魔法がファイティングベアへと当たり、叫びつつびたんと四肢を投げ出し倒れました。



 〈種族レベルが上がりました〉

 〈《防御》がレベル25になりました〉

 〈《防御》のアーツ【エリアガード】を取得しました〉

 〈《受け流し》がレベル25になりました〉

 〈《受け流し》のアーツ【カウンターパリィ】を取得しました〉

 〈《光魔法》がレベル25になりました〉

 〈《光魔法》の【ライトレジスト】を取得しました〉

 〈《闇魔法》がレベル25になりました〉

 〈《闇魔法》の【ダークレジスト】を取得しました〉

 〈《魔法技能》がレベル30になりました。スキルポイントを『2』入手〉

 〈《魔法技能》の【詠唱短縮】【魔力増幅マジーアアンプ】を取得しました〉


 〈東のボスを討伐した事により、東のエリアが開放されました。ワールド初回討伐特典として、スキルポイントを『6』入手しました〉

 〈特定の条件を満たしたため、『称号:ベルステッド解放者』を取得しました〉

 〈〈アナスタシア率いる『出荷よー』パーティーにより、東のボスが出荷されました。以降、東のボスは弱体化され、流通が復活します〉〉



「「そんなー」」

「ネタでつけたPT名が……」

「と言うか『東のボスが出荷されました』って……」

「運営が乗ってきたね?」

「スキルポイント6は実に美味しい……。それに称号かー」

「ですね。さて、解体しましょうか。誰やりますか?」

「姫様でいいんじゃね?」

「俺進化してるんでよろしく」

「お、アルフも遂に」

「……まあ、ボスの素材は山分けです」


 私はファイティングベアのところへ行き、解体ナイフを突き刺します。

 すぐ後ろでは光ってるアルフさんを眺めるスケさんの図。

 PT名変えとこう……『突撃!お前が晩御飯!』でいいですかね。


 おっと、録画終わりにしましょ。


名前:アナスタシア

種族:不死者の王女(イモータルプリンセス) 女 Lv16

属性:闇

属:高位不死者

科:ロイヤルゾンビ

スキルポイント:64


スキル

《刀剣 Lv25》《防御 Lv25》《受け流し Lv26》《防具 Lv25》

《光魔法 Lv25》《魔法技能 Lv30》

《感知 Lv26》《看破 Lv25》《足捌き Lv29》

《料理 Lv27》《錬金 Lv5》《採取 Lv20》

《目利き Lv18》《解体 Lv15》《鑑定 Lv23》《識別》

控え


種族(モンスター)スキル

《闇魔法 Lv26》《闇のオーラ Lv20》

《物理耐性 Lv20》《物理無効 Lv16》《魔法耐性 Lv5》《HP自動回復 Lv26》

《不死者の王族 Lv17》《王家の権威 Lv15》《高位不死者》

称号

優雅で静謐なお姫様:他者に与える印象がとても良くなり、警戒もされづらい。

ベルステッド解放者:始まりの街の東を一番最初に解放した記念称号。

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― 新着の感想 ―
姫さまレベルがなかなか上がらない………のは種族(?)が高位だから?
[一言] 出荷よー面白すぎる 進んでふざけて楽しんだりするノリ、ほんとらしいし好き
[一言] いやホントwww 出荷よ~から爆笑しましたwww
感想一覧
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