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16 フューチャーソフトウェア

今日は運営のお話。

誰が喋ってるとかは気にしないで良いです。気にして書いてないので。

運営側も15名ほど名前だけは決めていますが、こいつら出番あるのかは知りません。

運営の話を今後書くかがそもそも不明です。GMの4人が本編で?

 とある高層ビルの、広々としたフロアの1つ。

 そこはPCが並び、PCの前には人が座ってにらめっこをしている。

 機械達のかすかな稼働音と、マウスとキーボードの操作音、紙を捲る音だけの世界。

 そんな静かな世界に、女性の声が投げかけられた。


『サーバーで初めてのエクストラ種族が誕生しました』


 その声がフロアに響いた数秒後、一斉ににらめっこをしていた人々が立ち上がり、驚きの声がフロアに響き渡る。


「ユグドラシル! 種族はなんだ!?」

『音声認証……一致。種族は死体の王女(コープスプリンセス)です』


 再び驚きの声がフロアに響き渡る中……1人だけ奇声を上げている男がいた。

 まさに狂喜乱舞と言える状態だろう。実際ちょっと暴れている。


「えー……、あいつは置いといて……。ユグドラシル、その種族になったプレイヤー名は?」

『プレイヤーネームはアナスタシアです』


 FLFOの統括AI……通称ユグドラシル。由来は勿論世界樹である。

 物凄い軽いノリで決まったユグドラシルだが、別に不満も無いので誰も突っ込まなかった。突っ込んだら『じゃあ名前考えといて』という振りが来るのが分かりきっているから。


 ユグドラシルから教わったプレイヤーを検索し、チェックに入る。


「へーい、山本さん。どんな人?」

「今調べてるから少し落ち着けやかましい」

「いやー、まさか一番最初に来るとは思わなかったよ」

「そりゃ全員そう思ってるだろうな……」

「……ん? ユグドラシルさっきプリンセスって言った? アナスタシア? まさかの女性プレイヤー!? ふおおおおお」

「ええい! 耳元で叫ぶな!」


 あの種族はプレイヤーの性別によって、王子か王女か決まる。

 そして、さっきから騒がしいのが種族を考えた社員である。

 『考えたい人は考えていいけど、ちゃんとゲームに落とせるようにしてね?』という代表の言葉の元、調整後エクストラ種族にぶち込まれた。


「しかし、運営的には一番なって欲しくないと言える種族が一番最初とは……」

「世の中そんなもんですよねー」

「作ったやつが言うなや」

「まともな人である事を祈りましょうね。いやほんとに」

「ほんとにな……」


 種族の設定に則り考えていき、調整後強い種族ほどなるための難易度が鬼畜である。

 有名な種族だったり、条件が分かりやすい種族がいる中、このゲーム設定特有の……オリジナルだったり、どうしても設定上強くなってしまう種族もいる。

 後者ほど難易度が高く、ヒントも減る。


 そして問題の死体の王女(コープスプリンセス)はヒント0である。

 精々がマップ見れば隠し部屋に気づける……? 程度で他は何もないのだ。


「よくあのぶっちゃけクソゲークリアしたなぁ……どこのド……へん……ど根性持ちかな?」

「今ドMと変態って言おうとしましたね?」

「……俺なら途中で投げるぞあの条件」

「ヒント無しかつスペースが人一人分で外れると即死。かつ種族が初期のゾンビのみでしたっけ」

「そうだな。しかもあの死にゲー、リアル1日でルート変わるべ?」

「ああ、そんなのもありましたね。……よくクリアしましたね? ゾンビで真っ直ぐ歩くのすら難しいのに」

「いやほんとにな。まあ、苦労に見合う種族だよあれは」

「……無事に最終段階まで派生ルートを行ければですけどね」

「そう言えばあれ、条件多かったな……」

「下手したらキャラクリエイト時点でルートが閉ざされますね」

「……ああ、所有スキル問題か」


 少し話していると、プレイヤーアナスタシアの情報がディスプレイに表示される。


「これは……マップ埋めですか?」

「襲われない事を良いことに、まずマップ埋めをしたみたいだな。だからこそのあの種族なんだろうが……」

「ああ、めっちゃ死んでますね」

「むしろ俺はこの回数でなれたのに驚きだが? 時間は……」


 ログから時間を調べて、その時の映像を出してもらう。


「……なるほど、しゃがみながら行ったんですか」

「と言うか、ほぼ座ってんな。急がば回れってやつ?」

「ですね……」


 映像を見て感心するしかない社員達であった。

 ゲーム内ではカタコンベ生活のため、人柄がさっぱり分からなかった。

 そこでアカウント登録情報から、β大会入賞のアキリーナの姉……と言う事も発覚し、一安心して作業に戻った。


 そして少し経ち、不死者の王女(イモータルプリンセス)へと進化した時、驚きの声が上がっていた。『めっちゃ美少女だったー!?』や『姉妹揃って美少女か!』という叫びが。

 『ヤバイなあの胸部装甲。エクストラ装備ちょっと変更していい?』と言った社員は、女性社員の眼光により隅に追いやられていた。ただでさえギリギリなのに何をする気だと。まさに自滅である。






 統括AIユグドラシルがイベントの発生を社員達に知らせる。


『ワールドクエスト、始まりの街防衛戦の準備を開始します』


 それを聞いた社員達は言葉を飲み込み、数秒後……ガタガタッと立ち上がった。


「ついに来たか! でもこのタイミングかよ!」


 なんたって一週間後、第一回公式イベントである武闘大会をやろうとしているのだ。

 とは言えワールドクエストは基本的にオートである。統括AIにおまかせだ。

 様々な条件があり、それが達成されたら勝手に始まるのだからしょうがない。


「予想ではもっと後のつもりだったんだが……」

「主力狩場の1つみたいですから、もしかしたらとは思ってましたけどねー」

「まあ、イベントと重ならなかったんですから、良しとしましょう?」

「……それもそうだな。ワールドクエストならこっちがやることはないし、変わらずイベントの準備をするように」

「『はーい』」


 再び席に着き作業を進める社員達。


「あー、俺もこのゲームしたいなー」

「GMで我慢しろ」

「めっちゃ仕事じゃないですかー! しかも問題児の相手……」

「運営故、致し方なし」

「放送見てるとなー…………楽しそうにやりやがって! ありがとうよ!」

「そうな」


 公式掲示板とユーザー生放送の監視をする部署も当然ある。

 AIが発見したルールに反している書き込みを、社員達が前後の流れをチェックしたり。ユーザー放送で違反しているやつはいないか見たり。上げられた動画が変な加工されていないかもチェックしたり。


 掲示板も生放送も全てリアルタイムなので、プレイヤー達が今どんな状態なのか、と言う情報を運営が知れる訳である。

 プレイヤー達と利用法は違うが、運営にとっても重要な情報源だったりする。


 しかしそれら情報が入る中、ゲーム好きな社員達は我慢しなければならない。

 自分達はできないのだ。ゲーム内でポロッと余計な情報出すわけにはいかないのである。裏情報を知っているのだから、有利だし?


「そう言えば、エクストラ種族と装備の情報が掲示板に出てましたよ」

「あれ、アナスタシアさん? もう公開したのか?」

「アナスタシア、アルフレート、ほねほねが3人で公開してましたよ? その2人もエクストラ種族条件はクリアしたようです」

「アルフレートにほねほねって言うと……ああ、βのな!」

「ネクロノミコンと馬が回収されたみたいですね」

「馬はともかく、本まじか。両方30進化だっけか?」

「いえ、片方20ですね」

「そうか……王女と賢者、騎士の3人PT組むんだろうなぁ……組むよな?」

「馬の乗りこなしにPT組んでバフでゴリ押した模様ですよ。まあ、見つかった時点でバフ無くても時間の問題でしたけど」

「そうか……まあ、ありだわな。しかしそうか。もう公開するとは随分欲のない」

「PK対策も兼ねてるようですね。装備的な意味で」

「……なるほど。でも今の状況で喧嘩売っても、返り討ちあうだけじゃね? 範囲の光魔法あればわんちゃんあるだろうけど……」

「今の状況だとそうでしょうね。姫様の装備は現状だと次マップレベルですから。装備強化条件が特殊ですけど、最後まで行ければ神器級になりますが……」

「……姫様?」

「プリンセスと格好で通称姫様になったようですよ? 王家アシストも入れているようですねー」

「なるほど、姫様な。掲示板盛り上がってるのか?」

「人外板がお祭りですね。姫様わっしょいしてます。まあ、エクストラ種族と装備って言う核爆弾落としたので、当然ですけど」

「なった本人にはもう関係無いもんな……。まあ、俺らとしたらありがたい。これでもっと好奇心に従って色々してくれればいいな」

「ですねー。エクストラ種族の存在で人外も多少人口増えてくれませんかねー」


 良くも悪くも、人は『特別』に弱い。『期間限定!』や『今だけ!』などという事にとことん弱い。

 エクストラ種族も、エクストラ装備も1つしか無い特別である。そして人間、実に我が儘で嫉妬深いものだ。羨ましいのは分かるが、相手に迷惑かけてはいかん。

 とは言えゲームなので、そう言う人間はGMコールからのブラックリストに入れられて終わりなのだが。わざわざ不快になってまで付き合う必要がないのだ。

 運営としても是非とも楽しんでもらいたいので、その辺りはばっちり対応する。


「そう言えばその姫様、武闘大会には出ないのか?」

「あー、それですが、ログ見た感じどうも対人は興味無いみたいですよ」

「そうか、そういうのもいるわな」

「ですねー。日本人PvPに積極的とは言い難いですし、VRなら尚更ですかね?」

「そうだなぁ。PvPはどうしてもハードルが高いか? まあ、とりあえずやってみればいいだろう」


 今回の第一回は夏休み直前になっている。

 既に第二回のイベントも話が進んでおり、それは夏休み終盤辺りを予定していた。まあ、社会人や運営からしたらそんなの関係ないのだが、学生組は歓喜だろう。


「第二陣の方はどうなってる?」

「予定通りですねー」

「二陣にこじつけたプチイベントは?」

「そっちも順調ですねー」

「よしよし、順調なのは良いことだ。不具合修正班は?」

「こっちはいつも通りですよ……良くも悪くもね……」

「おう……頑張ってくれ」

「へーい」





「準備は良いかー?」

「おっけーでーす」


 運営側の準備が整った頃、統括AIユグドラシルが始まりを知らせる。


『ワールドクエスト:始まりの街防衛戦、最終準備中』


 運営側も一応、やることがあるのだ。……それは、イベントの録画である。

 録画したのを編集して動画とし、公式サイトやCMで使用する。

 普段の自動録画とは別に、手動で社員達がある程度場所を決めて録画。所謂フリーカメラ。使えるのが撮れたら良いな……程度の気軽さだ。

 最前線に張り付き舐め回すように撮るカメラと、総隊長達のいるであろう司令部に張り付くカメラ、戦場をうろつくカメラが数台ずつ用意されるのが予定されている。


「隊長組は後方待機かー。まあ、そうだよね」

「隊長格が死んで問題ない訳がないよなぁ?」

「まあ、それだと暇でしょうから狙いに行くんですけどね……」

「ゲームで暇させるのもあれだからね」

「総隊長はやっぱり姫様でしたね。……ちょっとシーフが可哀想かな」

「シーフからしたら姫様は天敵か。ボスの猛攻には耐えられるかな?」

「流石に現状では制限でジェネラルより下ですから、中の人と周り次第ですね」



『ワールドクエスト:始まりの街防衛戦、Ready……開始します』


「お、姫様ノリノリだ! 良い絵をありがとう!」


 アナスタシアの開始セリフにより、防衛戦が開始。

 そのセリフをベストアングルでバッチリ撮影していた。運営からしたらノリが良いのはおいしい(・・・・)のだ。映像……宣伝的な意味で。


「皆楽しそうだなぁ! 良いなぁ!」

「でも実際これ、『笑顔で敵に突撃していく危ない人達』だからね?」

「それ言っちゃダメだろうよぉ!?」

「大和魂ですかねぇ……」


 運営側も中々カオスで、楽しそうに映像を見たりフリーカメラで騒ぐグループと、ログでバグが出てないか祈りながら見つめるグループで別れていた。

 温度差が凄い。


「むむ! 姫様住人の冒険者達を上手いこと言って下げた。ファインプレー」

「Sクリアあるなー」

「あるねー」

「いくら開始直後とは言え、やっぱゴブリンじゃこんなもんかー……」

「囲まれさえしなければ死にはしないかな?」

「まあ今回は王道かつ、ワールドクエストのチュートリアルみたいなもんだからね」

「ゴブリン軍団はお決まりだよねー」

「ねー」


 プレイヤー達にゴブリンとホブゴブリンが薙ぎ払われていき、ゴブリンシーフが動き出す。対空で半分の低レベルが落ち、残りが総隊長達のいる司令部へ。

 それを地上側と空側からフリーカメラで撮りつつ追う。


「難易度上げるならこのまま街凸なんだけどねぇ……」

「現状じゃ対空持ちがいなすぎますからね」


 呟きつつも画面からは目を離さず、隊長組との戦闘を見守る。


「うーん、さすがに上手いね」

「ですねー。さすが有名なトッププレイヤー達」


 プレイヤー、セシルの配信も当然チェック中である。

 有名だけあって視聴者数が凄く、開始数分で1万を超え、現在7万程。

 シーフが行く前は後ろから前線の観戦だったのでほぼ雑談状態だったが、今は戦闘が始まり盛り上がっている。


『虫がうざいでござる!』

『あぁくそう! この虫剣が滑る! 耐性め……』

『弱点の打撃めっちゃ通るぞ。シーフが普通に強い』


 実に楽しそうな音声が聞こえ、コメントが流れる。

 そしてシーフが10体を下回り、一斉に総隊長を狙い始める。


『総隊長が頼りになりすぎてヤバイでござるな』

『そう言えば、姫様ゾンビ種だったね?』

『いやそれより、あのウェポンパリィとウェポンガードの方が問題だろ? 普通あんなできねぇぞ?』

『姫様実はタンク説でござるな』


 フリーカメラでも、セシルの配信でも……シーフに集られてるにも関わらず、防いで受け流すアナスタシアが映っていた。


「……これは凄いな」

「なんか本人しれっとしてますが、判断能力ヤバイですよね?」

「ヤバイな。器用補正と装備の反応強化だけじゃああはできんぞ……」

「と言うかあの装備のセット効果、良いように見えて結構曲者ですよ?」

「俺も実際試したから知ってるぞー……。一部だけスピードが早くなるから逆にやり辛いんだよなあれ」

「そうなんですよね……。だから普通なら大人しく敏捷を上げた方が良いんですが……まあ、わざとそう言う調整したんですけど……」

「敏捷と同じだったら強すぎるもんな」

「ですね。DVRはどうしても中の人依存になるんで、好む人も使える人もいるだろうとは思ってましたが……」

「見事に使いこなしてるな」

「中の人と奇跡的に一致しちゃいましたかねぇ?」

「かも知れんなぁ……」



 好きと得意は全く別物である。

 下手の横好き、下手の物好きと言う言葉がある通りだ。

 ダイブ型のVRは今までのゲームとは訳が違う。ヘッドセット付けて、コントローラー握って……などではない。実際に自分が動くのだ。肉体性能がゲームのキャラ性能になるので、現実ともちょっと変わるが。

 今までのゲームのように、キャラの動きを脳内変換、脳内補足するのではない。

 自分で自分のイメージ通りの動きをする必要があり、そのイメージ通りの動きが十分できるスペックを持った肉体キャラを作る必要がある。

 陸上選手とかからすれば、スタート直後はゲームの方が『持久力ないなー』とか、『足遅いなー……』と言う現象が起きるだろう。

 ここで理想のキャラと、実際に自分にあったキャラで違いが出ると、ストレスを感じやすい。

 それがストレスとならないのはRPをしている人達だろうか。この人種はその差も含め楽しんでいるから。


 憧れのプレイヤーがいて……『あの人かっこいい! 真似したい!』となり、同じスキルを取っても自分は自分、他人は他人である。スキルショートカットをポチポチするゲームではないのだから、当然である。

 人の動きを完全に真似するなど、早々できる事ではないだろう。不可能とすら言える。どうしても中の人によるセンスの差が出るのだ。

 当然ゲームなのだから、データ的には同じキャラはできる。ただ、それを活かせるかどうかは中の人次第だ。どんなゲームでも『強キャラ使っても下手なら負ける』と言うのは常識だろう。むしろ強キャラ使った時点で全て勝てるなら、確実にクソゲーで速攻過疎るだろう。


 これがダイブ型ゲームの良いところであり悪いところだろうか。

 どうしても体を動かすのが苦手な人はいるから、その人達用にスキルを使用すると全身が動くオートや、アシストが入るだけのセミオートなどもあるのだが、当然マニュアルが人気である。

 そもそもVRというジャンルをしている人は、自分で動きたい人が多いから。


 まあ、そこは注意するように、勘違いしないようにとデカデカと公式に書いてあるのだが。読まない奴は読まないので、プレイヤー増やすと面倒な事になりそうだな……と運営一同思っている。

 このゲームはMMOなのだ。今までのソロのVRとは違う。どうしても他者と比べる連中が出るだろう。そうなると妬みだなんだでGM出動だ。勘弁して欲しい。

 『運動音痴を運営のせいにするな』と言えればどれだけ楽なことか。いっその事言って訴えられても、データは同じだし、サーバーからログや映像引っ張り出せばそのまま証拠になるから勝てるんだが……。



 ……それらはともかく、イベントである。


「なんかこれ、最後のジェネラルが総隊長狙うのも無駄に終わりそう……」

「これ姫様、魔法アタッカーで遠近両用でサブタンクですね?」

「何言ってるか分かんねぇはずなんだが、納得せざるを得ない」

「ヤバイ種族がヤバイ人に引かれた予感」

「まあ……幸い? 対人には興味無さそうなのが救いか? それとも、確実に有名プレイヤー仲間入りの1人が参加しない事を嘆くべきか?」

「遠距離戦は間違いなく、現状では姫様の魔法火力がトップクラスですし、近接はオーラONであの防御態勢されたら……」

「衰弱かかった瞬間ほぼ勝ち確だな……毒にもなったら目も当てられん」

「状態異常かかる前に瞬殺は……できる気しませんよね」

「筋力と敏捷が絶望的なだけで、不死者だからHPはあるからなぁ。しかもレベル的に格上の短剣シーフを、正面からのは全て捌いてるからな?」

「そうなんですよね。視界に入ってるのは全部捌いてますよね」

「しかもスタンスがパリィじゃないからな」

「正面からのは全て弾く……もしかしてジェ◯イですかね?」

「いや、種族的にはベ◯ダー卿じゃないか? と言うかあいつらは背後からのも察知するだろ」

「ああ、そうでしたね」


 映像を見ながらふざけて話していた2人なのだが、別の社員から嬉しくない突っ込みが来る。


「あー……ジェ◯イありえますねぇ……」

「「は?」」

「感知と看破持ってますし、この2つの進化からの統合ってあれですよね? しかもこの種族の最強ルートって、……リスパクリしたルートでは?」

「「あっ……」」

「ぶっちゃけ純粋に化物ルートですよ……。このまま最強ルート行って欲しいなー。是非見てみたい」

「あの種族進化複雑でしたねー? 嫌がらせかと思うぐらいに」

「設定に従った結果ああなっただけで、嫌がらせではないぞ? そもそも、なる人物が現れると思ってなかったからな……」

「「まあ確かに」」

「でもあのルートって結構先だし、最難関だから大丈夫だろ。ハハハハ」

「フラグですね、分かります。まあ、なるにしても……再来年とかでしょう」

「いやいや、あの種族は条件のヒントが無さすぎるだけで、必要レベルは低めじゃなかったですか?」

「あー……そうか、冥府って30か。てーと……40か!?」

「姫様は既に必須スキル持ってますからね。このままやってれば来年中には?」

「そう言えば光と闇持ってて、4属性取ってないんでしたね」

「錬金も持ってますから前提スキルは完璧ですよ? 後はスキル上げと……中の人の運と性格次第ですね……」

「……この話は止めるか。なるようにしかならん」

「ですねー……。今更変えるわけにもいきませんし」



 話を切り上げそっと視線を逸らした先では、ジェネラルの猛攻をしれっと捌きながら……他のプレイヤーにボコられているのを眺める姫様が映っていた。


「うん、攻撃パターン覚えてるな?」

「……まあ、前半見る時間十分ありましたからね。むしろ覚えてるの前提です」

「ドンマイジェネラル、良い奴だったよ……」

「姫様の中の人なにもんだし」

「妹があれだし、姉がゲーマーでも不思議ではないな……」


 そのまま姫様に完封され、周囲からボコボコにされたジェネラルが地に伏せたのを優しい目で見つめる運営達だった。

 そこへ統括AIのユグドラシルが終了を伝える。


『ワールドクエスト:始まりの街防衛戦、終了しました。集計を始めます』


 それを聞いた開発部の部長は次の指示を社員達に出す。


「終わったかー……。じゃあ録画を確認してTVCMサイズと、公式に上げるトレーラーか? 後は……配信サイトにも上げるかな? 映像班よろしくー」

「『へーい』」

「他はいつも通りだ」


 数日後公式と配信サイトに編集された動画が公開され、更にもう少し経った後にCMとして短いのがお茶の間に流れる事になる。

プレイヤー個人のシステムメッセージを〈〉

プレイヤー全体のシステムメッセージを〈〈〉〉

としたのをスポーンと忘れていたので、14と15のワールドクエスト関係を修正しておきました。

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― 新着の感想 ―
あ~、これはなっちゃうわ。 うん、なっちゃうよ。
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