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短めです。

 再びログイン。

 時間的にゲーム内は昼間です。


「おかえりー」

「ただいま。エルツさんはお昼ですか?」

「そうだよー」

「では私は買い出しに行ってきますね。スープを作ろうかと思いますので」

「じゃあ器でも作っとこうか?」

「あ、お願いしますね」

「任されたー」


 ログインしたら変わらず露店中のプリムラさんにスープ用の器をお願いし、材料である野菜を買いに行きましょう。

 流石に手持ちの玉ねぎとキャベツだけなのは寂しいですからね。

 ぼたん鍋は……醤油と味噌が両方ありませんか……困りましたね。


 露店ではなく、店舗の方も見てみますか。


「いらっしゃいませ」


 お姉さんが店番のようですね。

 ゴロゴロと並んでいる露店に比べ、店舗のこちらは小綺麗に並んでいます。

 収穫したのをそのまま並べている露店と、仕入れて軽く手を加えた店舗……と言った感じでしょうか。日本人としては店舗の方が馴染み深いでしょう。

 正直値段に差は無いですね。


 それよりも野菜より気になるところがあります。

 こちら、香辛料が塩と胡椒以外も置いてありますね。

 店舗の方が高級店扱いなのでしょうか?

 香辛料は野菜に比べると遥かに高いです。香辛料にしては塩胡椒は安いと言えます。


「ローリエにピュアオイル……ヴァージンオイルですか……」


[素材] ローリエ レア:No 品質:C

  主に肉の臭みを消すのに利用される香辛料。

  10回使用可能。

[素材] ピュアオイル レア:No 品質:C

  一般的に使用されるオリーブオイル。

  50回使用可能。

[素材] ヴァージンオイル レア:Ra 品質:C

  最高級オリーブオイル。

  異人達にはエクストラヴァージンオイルと呼ばれる代物。

  50回使用可能。


 ローリエが1袋50……。

 ピュアオイルが1瓶250……。

 ヴァージンオイルが1瓶3000……。


 エクストラは流石に高いですね。

 月桂樹もオリーブも産地はほぼ同じだった気がします。という事は、こちらも産地は同じでしょうか?


「香辛料をお求めですか?」

「この2つは産地同じでしょうか?」

「ええ、同じですよ。南のインバムント特産ですね」

「インバムント……南は港町でしたね」

「はい。買うなら今のうちかと」

「今のうち……買えなくなるのですか?」

「街道近くに住み着いたコアトル種が邪魔でして……」

「ああ、流通が潰されているのですか」

「はい……無くなりはしないでしょうが、護衛費用なども考えると値上がりと品薄は確実でしょう……」


 これ、あれですね。東西南北にいるボスでしょう。

 北がゴーレム、東がベア、西がビー、南がコアトル。

 つまり、そろそろ流通に影響が出始めると言うことですか……。

 それはそうと。


「ボアのお肉を使用したスープにお勧めの香辛料はありますか?」

「ああ、それならローリエですね。まず肉とローリエを入れて灰汁を取ってから野菜を入れると良いですよ。2人分で1枚が目安です」

「なるほど……ではローリエは必須ですか……」


[素材] クーエル レア:No 品質:C

  料理に振りかけて食べられたりするエルを煎った物。

  10回使用可能。

[素材] シーエル レア:No 品質:C

  料理に振りかけて食べられたりするエルを煎った物。

  10回使用可能。

[素材] エルル レア:No 品質:C

  一般的に使用されるエルから取った香りの無い油。

  異人達にはサラダ油や太白油などと呼ばれる代物。

  50回使用可能。

[素材] エルンタ レア:No 品質:C

  一般的に使用されるエルから取った香りのある油。

  50回使用可能。


 これは……黒ごまに白ごまですね。

 エルンタの方が一般的にごま油と呼ばれる方で、エルルはごまが原料のサラダ油のようですね。



「ローリエを10個と……クーエルにシーエルを5個ずつ。ピュアオイルとエルンタを1個、エルルを2個お願いします」

「はーい!」


 ヴァージンオイルはお金的にはまぁ、余裕あると言えなくもないですが……料理のスキル的にまだ早いでしょう。現状上げている段階ですからね。


 その他にも玉ねぎやキャベツ、ニンジンとバレイショ、ニンニクを購入。

 野菜各種20個ずつにしておきます。……なぜじゃがいもだけ馬鈴薯なのでしょうか? 設定者の拘りでもあるんでしょうかね?

 ……どうせプレイヤーからはじゃがいもって言われるんでしょうね。


「ありがとうございましたー」


 お店を後にし、プリムラさん達の場所へ戻ります。


「お、戻ったか。器預かってるぞ」

「ああ、エルツさん。プリムラさんはご飯ですか?」

「交代で露店預けてな」

「そんな事できるんですね」

「あんまお勧めしないけどな。信用できるなら……ってところだ」

「なるほど」


 そう言えば、流通に関しては知っているのでしょうか? 割りと重要な事ですが。


「そう言えば流通が滞りそうで、品薄や値上げがおきそうだってお店の人が言ってましたよ?」

「……まじか?」

「聞いた物は南の港町特産の物でしたが、原因が住み着いたコアトル種とか言ってましたので」

「それってまさか……え、東西南北全てか?」

「コアトル種と言えば南のボスのことでしょうから、可能性がありますよね」

「確かにボスが邪魔してるんだ、流通が滞る可能性は高い。2週間か……」

「襲われる可能性を考えると勇気がいります。護衛費用が上がれば商品価格がそのまま上がるでしょう」

「しかし参ったな。真っ先に西を開けるのが正解か? ただでさえポーションがヤバイのに、西の流通まで死んだら詰むぞ? 東は東で携帯食料だったか?」

「どの道、流通が滞る時点で問題なんですよね。住人が困る=我々も困る訳で」

「つっても俺は生産職なんだよな。問題の原因がボスの時点で無理だ。むしろ最初からこういうイベントの可能性もあるな……」

「ああ、なるほど。倒せればそれはそれで良し。倒せなければ流通が滞るイベントに進む……ですか」

「オンラインだからな。リアルタイムで進行してってもおかしくはあるまい? これだけ住人がリアルなんだ、住人達が今の状況に合わせて勝手に動く。するとそれがイベントになる」

「いつ始まるか分からない。もしかしたらもうイベントの最中かも知れないって事ですか」

「んだな」


 何もアナウンスがない。そもそもクエストが発生しない場合とか。

 もしくはクエストは発生するけど、発生しない前段階から住人達に動きがあるとか。

 後者の方が面白いかもしれませんね。住人と交流してれば事前に準備ができるわけですから。それはつまり、今後のイベントでスタートダッシュが可能になります。

 ……まだ前例がないので分かりませんが。


「まあ……今日は料理ですね。……あれ? もしかしなくても鍋がないのでは?」

「初級料理キットに鍋はないぞ……」

「なんということでしょう……」

「初級じゃない普通の料理キット買ってこい。7000ぐらいするが」

「高いですね?」

「初級はあくまでお試し用だからなぁ。普通のは一気に内容物が増えるぞ。基本的に生産者はすぐ買う」


 ちなみに、キットは全て上書き追加式。

 つまり料理キットに初級料理キットの中身は入っていない。全部買い、統合する必要があるらしい。

 統合しなくても別々で使えるけど、別アイテム扱いだからその分インベントリの枠を使用するため、統合しない理由がないとか。


「まあ、お金出して同じ内容物被られても困るからそう言う扱いなんだろう。どうせ統合作業は最初だけだから面倒じゃないし、ありがたいのは確か」

「料理はともかく、鍛冶とかの炉は初級から変わらないって事ですか?」

「いや、なんか強化パーツみたいなのが付いて炉が豪華になるぞ」

「ああ、それで『上書き追加』ですか」

「上書きと追加両方だな。フライパンの蓋が追加されたっけかなー? 料理は触れてないから断言できないが、使ってるのを見たような気はする」

「まあ、早速買ってきますね。皮でお金はありますから」

「おうよ」


 北へ歩いて行き、お婆ちゃんの雑貨屋へ。


「料理キットありますか?」

「本格的にやるのかい?」

「はい。初級では色々足りなすぎて」

「ありゃド素人用だからね。錬金は?」

「そっちはまだ触れていないので」

「そうかい。なら7000だよ」


[道具] 料理キット レア:No 品質:C

  駆け出し料理人が扱う道具が入った持ち運び用の料理セット。


 お金を渡してキットを受け取り、お婆ちゃんのお店を出る。

 さて、エルツさん達の場所へ戻りましょう。



 戻るとプリムラさんも帰ってきていました。

 統合の方法はキットのどちらかをドラッグ&ドロップだそうで、早速統合。

 そして展開!

 ででんとシステムキッチンのような物が出てきました……。


「一気にレベル上がりすぎでは?」

「それは思うが、逆に料理はそれぐらいないとあれだろ? それによく見てみ?」


 どれどれ…………。


「ハリボテだこれ……」

「おう! 蛇口はねぇし、コンロでもIHでもねぇ。初級で使ってた七輪の進化版」

「逆に炭火ができると取るべきでしょうか……? でも水は致命的では……」

「姫様魔法持ってねぇのか? 【飲水ウォーター】が水道水だぞ」

「ああ、なるほど」


 排水は機能している……と言うか、流すと消えるようですね。ゲーム的処理だった。

 調理道具は…………。

 フライパンにフライパンの蓋。鍋小が1人用。鍋中が6人用。それとそれぞれの蓋。

 後は……この筒はなんでしょうか……?


「ああ、これ燻製するのに使う筒ですか。【燻製の心得】は確定ですね」

「ほう、燻製肉ってやつか?」

「そうですね。それと蒸し料理用のせいろとプレートですか」

「だいぶ変わったろ?」

「はい。使っていた謎フライパンも変わってますね。鉄のフライパンに銅の鍋ですか……。私からすればありがたいですが、初心者にはどうなんでしょうね?」

「なんかあれなのか?」

「調理道具としてはどちらも最高と言えますが、表面がコーティングされている物とはちょっと違ったコツと言うか、扱い方があるんですよ。まあ、重要なのはこのゲームがどこまで再現しているか……ですね」

「かかる時間とかはだいぶ短縮されてるけど、工程自体は結構再現されてるぞ」


 となると……やっておいた方が良いでしょうか? でしたら使う油はエルルですね。

 まずは6人用の鍋とフライパンを両方洗いで……水を入れた鍋を火の上に。

 6人用なので言われた通りローリエを3枚投入。これで残り使用回数が9回に。

 水の状態からローリエを投入、沸騰したら切ったお肉を入れ、アクと一緒にローリエを取り出す。そしたら野菜を投入して、最後に味を調節……と。

 この際にできた野菜の切れ端をとっておき、鉄フライパンの焼きこみ作業に使用。スープ作りの合間に済ませて、放置ですね。


 味付けが塩しか無いのが少々悲しいですが仕方ありませんね。

 味の調整をして少し煮込んだら完成です。



 〈《料理》がレベル15になりました〉

 〈《料理》の【蒸しの心得】を取得しました〉



 ×6とか表記されているので、それぞれ器に移して鍋を空けます。

 お玉で一回掬うと1杯分消費され、器に注ぐと1人分ですね。

 そしたら再びスープを作ります。

 基本生産は同じことの繰り返しですからね。せっせと量産しましょう。


[料理] 具沢山なブラウンボアのスープ レア度:No 品質:C+

  シンプルな塩味のスープ。

  ボアの肉はしっかり処理されているため、臭みもなく食べやすい。

  満腹度+25

  内包:器、スプーン

  調理者:アナスタシア

  食器類:プリムラ




 食事やお風呂などの用事を済ませ、後は寝るだけの状態にしてから夜のログイン。

 相変わらず露店しながら生産しているエルツさんやプリムラさんと過ごす事に。


「生産って、なんか上がるの早くありません?」

「そりゃ最初だけだな」

「うんうん。最初だけだね」

「他のスキルと同じ感じですかね?」

「他のよりも上がりやすいね」

「そうだな。と言うか、そうしないとできる事が少なすぎるだろう? 最初のうちはバンバン上がって、できる事が増えていく。むしろ生産者からすりゃ、それからが本番であり、やっとスタート地点に立つわけだな」

「うんうん。まず1段階目はこのゲームの、そのスキルに慣れる段階。2段階目からが本番で試行錯誤を始めて、あの手この手でオリジナリティを出していくのー」

「なるほど……」

「やり方やコツなんかを知ってる事が前提だが……2,3日で2段階目まで持ってくことが可能なぐらいだ。ああ、勿論素材の供給協力者もな」

「既に《料理》が15超えたので、確かにそのぐらいで可能そうですね」

「お、早いね! 2段階目から他のオンラインゲームよろしく一気に上がらなくなるけどね!」

「むしろ生産は上がりきってからが本番感あるからなぁ……」


 確かに、オンラインゲームの生産と言えば上がりづらいですからね。

 回数が数千とか数万普通に要求してきますから。

 まあ、運営としてもそんなすぐにクリアされても困るんでしょうけど。


 そんな事を話していると、ほねほねさん……通称スケさんがやって来た。

 まあ、スケルトンだからですよね。

 スケさんからPTが飛んできたので、承認する。


「姫様! 無事見つけたよ!」

「え、あったんですか?」

「あったよ! ……やばいやつが」

「私も大概でしたが……何だったんです?」

「ネクロノミコン……」

「……SAN値いくつ減ったんです?」

「お、姫様知ってる系?」

「リーナが買ったルルブを軽く読んだぐらいですけど」

「ああ、アキリーナちゃんね」


 私は王家の血肉……と言う名の、ぶっちゃけ心臓でしたよね。

 スケルトンはネクロノミコンですか。

 昨日の午後に知ってから、睡眠もソコソコで探し回って漸く見つけたそうで。


「いやぁ、ヒント無さすぎでしょう……。しかも試練? 鬼だった……」

「私はヒント無しの死に覚えゲーと化してましたね」

「こっちはクソでっかいパズルだったよ……。でも今は期待してる。骨で知能テストと言えばやっぱリッチだよねぇ」

「レベル上げないとですね」

「当分先な気がするんだけどね。まあ、ビルドもこのまま行こうかな。あそこ進化前は行けなかった気がするし」

「今の種族すらも条件ですか。ありえなくはない……かな?」

「うん、『メイジ』が条件の可能性は十分あるよね。後は取得してる魔法の種類とか、スキル構成が影響する場合も十分あり得る」

「ありえますね……。そもそもキーアイテムの無い、ビルドからの特殊進化とかもありそうですよね」

「ユニークモンスターと言えば、それもあり得るよねぇ。ビルドじゃなくて戦い方からの派生とか?」

「ああ、それも面白いですね」

「これぐらいサプライズが無いと、人外は人口増えないかなー?」

「まあ……夢はありますね……?」

「うん、そうね……。アルフはまだ?」

「アルフレートさんはまだ聞いてませんね」

「そっかー……まあ、今日はこれで落ちるね!」


 無事見つけたから、明日仕事だしご飯食べてさっさと寝ると、ほねほねさんはログアウトしていった。

 ……寝不足だったのでしょうね。


 ほねほねさんを見送った後はせっせと料理を作る作業へと戻る。

 まずは《料理》を2段階まで上げましょう。試行錯誤するのはその後ですね。

 《錬金》は《料理》を上げた後でしょうか。



 寝る時間になったらキットを片付け、プリムラさんから料理の売上を受け取ります。なんと、収入4万5000です。ホクホクですね。

 そしたら宿を取りストレッチをしてログアウト。

 リアルでもストレッチをしてから就寝です。

 おやすみなさい。


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― 新着の感想 ―
スケルトンでネクロノミコンかあ………。 クトゥルフ的にはグールから進化して欲しい気もするが。 あれって一回読むだけでいい感じにSAN値減らなかったっけ?
[一言] SANチェック1d10/2d10、 そしてクトゥルフ神話技能にプラス15~17です!
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