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116 生産者会議


 日曜日でございます。

 起きてからのいろいろを済ませ、午前のログイン。


 さあ、昨日覚えるだけ覚えた生産スキルの検証をしましょう!

 まずは現状さっくり終わりそうな《魔導錬成》。これは《錬金術師》とリンクして使用するようで、《魔導錬成》自体にスキルレベルはありません。《錬金術師》依存のようですね。


 【魔力錬成】は《錬金》系統で覚えたレシピを使用します。

 今までは《錬金》による武具作成はアレンジなどができませんでした。あれは【合成】による製作だったためですね。品質はともかくなんの変哲もない見た目の武器が作られます。

 しかし、【魔力錬成】により《錬金術師》スキルでアレンジが可能になりました。魔法ステータス要求の《鍛冶》と言うのが手っ取り早いですかね。

 つまりそう、大変難しい。


 【魔力錬成】最大の利点は……現地調達が可能って事でしょうか? 鍛冶をするには当然それなりの施設が必要になりますが、これはMPがあれば問題ありません。

 現状において私が使い捨てにするのはツルハシぐらいですね。柄の部分用に木材を持って行けば、掘り続けることが可能ですね。やるかは別として。

 品質などはともかく、錬成陣さえあれば全ての加工をその場で行えます。無人島イベントがまたあれば役に立つかもしれませんね。

 私は特にこのアーツを活かせる状況ではありません。エルツさんやニフリートさんに頼んだ方が確実。リジィの埋葬品強化は素材段階ですし、やはり使いませんね。


 ということで次。

 同じく《魔導錬成》の【クリエイトカートリッジ】です。簡単に言えば魔動銃の外部燃料を作るアーツですね。

 とりあえず【再現】で作れる品質上限であるB+以上の、各弾薬を作りましょうか。量産すれば売れると思うんですよ。まだ使い勝手や使用頻度がイマイチ不明ですが、ブレスポーションよりは使用するはずですからね。仕様によってはHPやMPポーションより使うと思いますが、そこまで行くと単価がちょっと……。

 とりあえずオートカートリッジ、マグナムカートリッジ、ペレットカートリッジ、ライフルカートリッジを作りますか。


 ……どれが一番売れますかね。使用者の数がそのまま売れ行きに直結するアイテムのはずですが。

 FPSゲームではありませんからね……フィールドと考えるとスナイパーでしょうか。しかし洞窟や遺跡ダンジョンならショットガンが強いと思いますし、森ダンジョンとかはハンドガン系ですかね。スナイパーは木が邪魔そうですし、ショットガンを使うには微妙に距離がありそうです。

 ……全部持てばヨシ!



〈特定の条件を満たしたため、《魔導錬成》のレシピ『軽量オートカートリッジ』を覚えました〉

〈特定の条件を満たしたため、《魔導錬成》のレシピ『軽量マグナムカートリッジ』を覚えました〉

〈特定の条件を満たしたため、《魔導錬成》のレシピ『軽量ペレットカートリッジ』を覚えました〉

〈特定の条件を満たしたため、《魔導錬成》のレシピ『軽量ライフルカートリッジ』を覚えました〉



 おや? カートリッジを作っていたら解放されたので、作成数が条件でしょうか。

 アイテムのテキストを見比べてみますか。


[弾丸] オートカートリッジ

 オートマチックハンドガンで使用できるカートリッジ。

 オートマチック用に規格化された形状の弾丸であり、ある程度指向性を持たせる事でエネルギーが扱いやすくなっている。


[弾丸] 軽量オートカートリッジ

 封入された魔力量が少ないオートマチックハンドガンで使用できるカートリッジ。

 異人達の世界のように扱うためのカートリッジ。

 通常のカートリッジとは違い威力増幅効果は無いが、カートリッジを消費すると魔力を込めること無く撃つ事ができる。


 なる……ほど……? これは……私もサブ武器として持つべきか。ベルトに吊るしておけば装備切り替えでUIを弄る必要はありませんが……。

 簡単に言ってしまえばMPを使用せずに、精神ステータスでの遠距離通常攻撃が可能になる……ということです。つまりヒーラー救済武器にもなる感じですね。

 ヒーラーがステータスを気にする必要もなく、更にいざという時のMP管理も気にせず、そのまま銃で通常攻撃とはいえ遠距離攻撃が可能になる。これはとても大きいですね。


 私の場合、狩りでのMP節約になります。火力が欲しい敵はカートリッジを切り替えるのではなく、銃を腰に戻して本にすればいい。

 さらに言えば……アルフさんなどのタンクがいて、相手が遠距離攻撃などを持たないのであれば、銃と本で火力増々にできますね。間違いなく強いと思うんですよ。 右手に剣、左手に銃って結構見ますけど、ぶっちゃけ銃は牽制でしょう。……ええ、絶対に難しいということから目を背ければ。

 そもそも型と銃の両立が無理ですか。中途半端な事になりそうですし、潔く諦めましょう。

 タンクがいる場合の銃と本はありですよね。MP使わず銃をパスパスしながら魔法撃ってれば良いですから、間違いなくDPSは跳ね上がります。アタッカーとしてはやるべきですね……。


 ……とりあえずカートリッジ作りますか。

 銃に関しては後ほど、《魔巧技師》の確認の時にでも。


 軽量の方……一度で沢山できますね。ARやSMG、LMGの類が無いとはいえ、撃ちまくると思いますからこんな物ですか。

 品質上げさえしてしまえば、カートリッジの量産自体はとても楽ですね。これは大した値段にはなりませんね。軽量は論外として、通常のカートリッジで矢……より高くなればいい……かな。

 矢と違って一切素材は使いませんが、1回の生産で作れるカートリッジは1個。MPが最大の状態で纏めて【再現】して複数個作り、セーフティーエリアでの超回復を待って再び【再現】。素材は使いませんが、ひたすら時間がかかるタイプです。

 つまり、通常カートリッジの量産は大変面倒。それなりの値段してくれないと作る気にはなりませんね。かといって片手間にやるには忙しない。


 品質上げのために作った物は、寝る前に安めに委託に流してしまいましょうか。今なら品質が死んでいても売れるはずです。お試しに使う人が絶対にいるでしょうからね。どんな物か知るためなら品質の低い安物を買うはずです。お店で買うより微妙に安くしておきましょう。



 さて、では《魔巧技師》を確認しますか。

 店員さんに聞いた話によると、武具を作る他の生産スキルとリンクが前提のスキル。私の場合は《魔導錬成》と同じく《錬金術師》がリンク先になりますね。


 《魔巧技師》はオリジナルレシピが前提です。そして武具の作成はポーションなどとは少し手順が違います。

 まずは設計図の作成からなのでロングソードや刀など、基本レシピの中から基礎となる素体を選びます。

 展開された設計図を書き換えたら、オリジナルレシピとして名前を付けて保存ができます。この際、汎用オリジナルレシピか精密オリジナルレシピで保存されます。

 設計図時点で部位ごとに素材まで細かく指定されたレシピが『精密』で、生産時に作るレベル帯を選ぶと、それに見合った素材の必要数が表示される『汎用』です。

 その2つに加えて、《魔巧技師》のスキルを使用して作られた『汎用』が魔動汎用オリジナルレシピ。『精密』の方は魔動精密オリジナルレシピで保存されるようです。

 長いのでプレイヤー間では『汎用レシピ』と『精密レシピ』、そして『魔動汎用レシピ』と『魔動精密レシピ』と呼ばれています。


 ということでまずは、銃のベースである基本レシピを……レシピ本買ってないですね。買ってこよう……。



 帝国のお店で買って来ました。

 さて問題は、オートマかリボルバーか。それぞれ利点と欠点があるでしょうから、使う場合は悩ましいところですね。

 とりあえず両方のテンプレートを見て《魔巧技師》の仕様を確認しますか。銃の構造自体は大体知っているので、魔動になって変わった部分が重要です。


 物理仕様と魔動仕様でタブが別のようですね。

 ……あれ、結構シンプル。リボルバーは【魔力炉】と【感知機構】と【信号回路】と【切り替え回路】だけですね。

 シリンダー部分が【魔力炉】で、トリガーとハンマーに【感知機構】があり【魔力炉】と【感知機構】が【信号回路】で繋がっている。

 シリンダー、トリガー、ハンマーでY字、または丁字でも構いませんか。とりあえず分岐地点に【切り替え回路】があります。

 リボルバーは『手動でハンマーを下げる』のが、カートリッジの使用方法です。ハンマーを下げる事でハンマーの【感知機構】が動き、【切り替え回路】がトリガーとシリンダーを繋いでいる【信号回路】を遮断するようです。

 そうすればリアルの銃と同じです。トリガーを引くと物理的な構造でハンマーが動き、カートリッジが使用される。ハンマーが戻った事で【感知回路】が再び動き、【切り替え回路】によってトリガーとシリンダーの【信号回路】が繋がる……と。

 これを見る限り【魔力炉】は魔力を保持しており、トリガーを引いたら【感知機構】が動いて、【信号回路】によってそれが【魔力炉】へ伝えられ、溜めていた魔力をエネルギーに変換。戦艦の収束魔動砲と違ってバレルが物理的にあるので、そこから発射される……だと思うんですよね。


 オートマはもう少し複雑になるようですね。

 えっと……チャンバーが【魔力炉】なのは同じですが、トリガーに【感知機構】が2個あります。トリガーの1段と2段にそれぞれにあるわけですか。

 そしてオートマたるブローバックするための機構が必要です。確かスプリングが入っている部分ですね。そこに【脱着機構】と【感知機構】が使用されています。

 トリガー1段目の【感知機構】とチャンバーの【魔力炉】が【信号回路】で繋がっていて、これはリボルバーと同じ射撃用ですね。

 トリガー2段目の【感知機構】がスプリング部分の【感知機構】と【信号回路】で繋がっていますね。スプリング部分にある【感知機構】と【脱着機構】も【信号回路】で繋がっている……と。トリガー2段目でスライドさせるためですね。

 そのスライドをさせるために、チャンバーの【魔力炉】とスプリング部分の【脱着機構】が、【魔力路】で繋がっています。【脱着機構】を動かすための魔力を貰っているのでしょう。

 スプリング部分の【感知機構】はファイアリングピンにも【信号回路】で繋がっています。この部分の【感知機構】は3箇所と繋がっているようですね。しかしこれ……ああ、ファイアリングピン側の信号は遅延されていますね。

 リボルバーと違ってこちらのファイアリングピンは、リアルの銃と違って物理的な構造で繋がっていませんね。

 帝国のお店で試し撃ちした通りの挙動をするようです。魔力を込めてトリガー1段目で発射。トリガーを2段目まで引くと、カートリッジを自動で装填して使用。2段目まで戻してもう一度引くと2個目のカートリッジを装填して使用。完全にトリガーを戻して1段引くと発射。

 これ絶対トリガーを1段にして、グリップ辺りにカートリッジ関連を独立した方が使いやすそうです。今回は見送りますが、試した感じ使うようならアレンジが必要そうですね。


 オートマとリボルバーを見て思ったのは、グリップと【魔力炉】が【魔力路】で繋がっていない事です。つまり、魔力を受け取るグリップと【魔力炉】を直接接触させれば【魔力路】は不要という事ですね?

 整備は楽になる……とは思いますが、効率的にはどうなのでしょう。検証が必要なので、今は置いておきますか。使うようなら考えましょう。


 さて、魔動構造の確認は終わりました。物理構造を確認しつつ弄り始めましょうか。デフォルトは魔鉄と【魔力炉】? なんでしょうこれは。えっと……要求素材が特定のクリスタル。……つまり核が必要ということでしょうが、特定とは。これは掲示板案件ですね。漁ってみますか。

 ふむ。ディナイト帝国の南西、カレスティア魔法伯領の水晶の森で採れる水晶なら、大体使えるようですね。

 委託で中サイズB級ぐらいを購入しておきましょう。


 さあ、レシピを弄り倒すとしますか。

 オートマもリボルバーも、私は銃身の長いやつが好きなんですよ。銃身の長さによる影響は……精度と威力が増減、それから反動と連射性も増減ですか。ロングバレルとショートバレルのような関係ですかね。

 悩ましいですね。利点を伸ばすならオートマでロングバレルにするより、リボルバーでロングバレルにするべきでしょう。欠点を補う意味ならオートマでロングバレルにして、リボルバーでショートバレルでしょうか。

 口径は弄れるんですかね? できるなら更に複雑になりますが……無理そうですね。カートリッジが固定だからでしょうか。

 そういえば拡張パーツ類は……レシピにありますね。

 とりあえず銃身を伸ばすとして、必要なオプションパーツは……光学サイトとレーザーサイトぐらいですか。まあ名前は違いますが、効果は同じでしょう。ホロ……いや、ドットにしましょうか。ハンドガンなら多分レーザーがメインになると思いますが。

 これは……マウントレール? グレポンにマスターキーですか。スナイパーにしか付けれない気もしますが、FPSゲームにありそうな物は一通りはあると思って良さそうですね。


 あとは素材。魔動銃なのでデフォルトである魔鉄が最低条件だとは思うのですが、別に全体が魔鉄である必要はありませんよね? 外装は耐久性重視や軽量化を図ったりしても良いと思うのですが。

 つまり銃へ魔力を流すのは手からなので、グリップの一部。バレルとチャンバーは当然として、トリガーもですか。あとはファイアリングピンもですかね。他は別に魔力適性は関係ないと思うんですよ。

 魔鉄は……30台でしたっけ。さすがに下過ぎますね。となると素材は45辺りのミスリルですか。それ以外は……軽量化を考えてライチウムにしますか。銃なら軽くて良いはずです。

 マガジンもライチウムで良いはずですね。マガジン用のクイックローダーが無いのは気になりますが、マガジンは複数作っておきましょう。とりあえず……4個で。

 初期テンプレートはライフリングがありませんね。魔力に効果あるのか知りませんが、やっておきます。見た目はシンプルで良いでしょう。ただ長いハンドガンで。

 本格的に使う場合はエルツさんに制作を頼むことになると思うので、お試しはこのぐらいでいいでしょう。合金の配合やらに手を出すつもりはありません。


 さて、とりあえずテンプレートはできましたね。ミスリルは少し青みがかっている銀で、ライチウムは白っぽい。中々見た目は悪くなさそうです。

 あとはオプションパーツのレーザーサイトとドットサイトを作って……マスターキーとグレポンも作っておきますか。おっと、ホルダーも必要でした。とは言えこの辺りはデフォルトで十分でしょう。


 では各種材料を用意しまして、早速作ってみましょうか。

 ……ん? あ、魔力炉を別途《錬金術師》で用意できるみたいですね。では先に作ってしまいましょう。

 【状態変化】で買ってきたクリスタルを液状化。不純物を【分離】で取り除き、【秘封結晶】で再び結晶化……で、完成ですね。



[素材] 魔力炉 レア:Ra 品質:B+

 魔力を溜め込む性質のある水晶の純度を高め、《魔巧技師》用に調整した物。

 溜め込んだ魔力を活性化させ、エネルギーとして周囲に発散させる機能を加えた。



 《魔巧技師》用に調整……ですか。別途用意した方が効率は良くなりそうですね。ならないのなら面倒なだけで意味がありませんし。

 お、【属性変換機構】。これは属性魔石か宝石のどちらかが必要なわけですね。サイズは……特に書かれてないので、なんでも良さそう。バレル側に付けるために小さいのにしましょうか。取り外し可能な構造を作れば、魔石で切り替えは可能にできそうです。

 ……既に掲示板で試した人がいるようですね。属性を付ければ種族の属性ボーナスが乗るようです。つまり、光か闇を作りましょう。

 使わなかった場合に売ることを考えると光にでもしますか。現状では対アンデッドの方が出番あると思いますし。

 現在は属性金属を使った属性武器と、所持属性魔法の属性を纏わせる《魔装》が発見されていましたね。それに加え【属性変換機構】。火属性金属武器に【属性変換機構】を付けて《魔装》で火を纏う。そうすれば1属性に関してかなりの特効武器になりそう。

 ……それをするだけの価値があるかは知りませんが。


 それはそうと、各種オプションパーツを作らないとですね。



〈特定の条件を満たしたため、《魔導錬成》のレシピ『グレネードカートリッジ』を覚えました〉



 ふむ。レシピが解放されたので、使わないけど作った甲斐はありましたか。

 どうやらマスターキーはペレットカートリッジで共通のようです。グレネードカートリッジはとりあえず作っておいて売りましょう。

 グレネードは他のカートリッジと比べて大きいです。アンダーマウントが必要な専用弾ですし、他と違って爆発する範囲攻撃用ですね。


 よし、早速作った物を試しに冥府軍の訓練場へ行きますか。いや、通常攻撃扱いだろう事を考えるとプリムラさんの方にしますか。冥府のカカシは強すぎる。

 始まりの町へ飛んで、プリムラさんのお店へ行きましょう。



 突撃、他人の試射場。

 トレンドだけあって試し撃ちしているのが何人かいますね。早速私も試します。

 んー……軽量カートリッジ使用時は通常使用の90%ってところでしょうか。さすがに威力は下がるようですが、連射性は上がるのでDPSは軽量の方が高そうですね。ただこれ凄まじい勢いで消費するので、自作できないと常用する場合は物凄い勢いでお金が無くなる。

 と言うか銃の構造的に軽量カートリッジの挙動は無理な気がするのですが、まさにゲームって感じですね。まあ本体も弾に合わせて作る必要が無いのは利点ですが。

 そんなことよりも、リロードが大変面倒。それはもう面倒。短期戦になる通常の狩りならともかく、長期戦になりやすいボス戦だと堪りませんね。リロードを簡易化・高速化するスピードローダーですが、スピードローダーに弾をセットしないと意味ないんですよ?

 《魔動銃》スキルに自動装填系があるとは思いますが、多分後半だと思いますし。


「姫様、その銃の挙動はなんだ?」

「空の弾倉を貸してくれればつめますよ」

「ほう、じゃあこれで」


 一度インベントリに入れた空の弾倉やスピードローダーへは、UIから弾を込められます。こっちの方が楽だし遥かに早い。

 自動的に手持ちの弾を込めてくれる専用ポーチとかベルトが欲しいですね。弾倉やスピードローダーの自動回収機能とかもあると最高です。


「軽量カートリッジ……こんなのがあるのか! テンション上がるな!」

「普通のカートリッジを作っていたら解放されたレシピです」

「うほほほほ……って、めっちゃ跳ねるな?」

「連射すると結構暴れますね。リココンしてください」

「……連射性を考えると威力低下はどうでもいいが、リココンは無視できんか」


 FPSゲームでお馴染みな、リコイルコントロール……通称リココンに関してはもう、ある程度ステータスで無視できるはずです。現に私はあまり気になりません。筋力か器用でしょう。両方の可能性もありますけど。


「そういえば姫様、以前掲示板に貼られてたSSは見たか? 住人のマシンナリーが写った背中装備のやつなんだが」

「……あの艦隊系の?」

「そうそう。弾はEPじゃないか言われてたが、作れる可能性もありそうだな」

「確かに。しかし口径が口径でしょう。スタック数は少なそうですが」

「ああ、そうな。その分威力はあるだろう。あとは人工魔石とか作れないのか?」

「……試す価値はありますね」


 カートリッジが魔力を具現化した物ですから、人工魔石が作れても不思議ではありませんね? レシピはありませんが、物は試し。

 手のひらを上にした状態で、魔力の球体を頑張ってみます。


「らせんがっ……」

「ふふっ……ちょっと」

「いやすまん」


 笑ったせいで霧散しました。当然失敗です。

 とは言え魔石という事を考えると、もう少し小さく圧縮を考えるべきですかね。

 ……おっ?


[素材] 人工魔石(極小) レア:Ep

 極小サイズへ意図的に魔力を押し固めた物。

 錬成魔石の代替品となる。


「できるんか」

「魔石の相場が下がるのは良い事ですね」

「生産しない側からすれば良くないが」

「《錬金》だと大量に使うくせにレアドロなんですよ……」

「まあ錬金品の相場が下がるのは良い事か」


 原価が下がった分なら売値を下げても稼ぎは変わりませんからね。

 それより、作れたという事はレシピかアーツがあるはずです。何個か作れば生えると思うので、何個か作りましょう。


「今は町中だからあれですが……割と消費MPエグいのでは?」

「わざわざ外で作る必要もないし、良いんじゃね?」

「それもそうですね」



〈特定の条件を満たしたため、《魔導錬成》にエクストラアーツが追加されました〉



【魔石錬成】

 人工魔石を生成する。サイズは術者の影響を受ける。


 よし、生えました。

 サイズは術者……ベースレベルかステータスかスキルレベルか。


「極小でも消費MPが最大MPの20%ですか」

「町中前提か」

「そして極大の制作がグレーアウトしていますね……」

「姫様で作れないのか? 条件キツそうだな」

「まあそんな事より銃です」

「おう! つうか使うのか?」

「それの確認がメインです。一時的に武器を切り替える事になるかもしれません」


 とは言ったものの、思ったよりダメージが低い。【属性変換機構】を搭載して、種族スキルの補正を得ているはずなのに低い。

 魔動銃のスキルを取っていないにしても低い気がしますね。逆に言えばアサメイによる攻撃のダメージが高い。そして私のアサメイは蛇腹剣にもなる。……中距離攻撃はできるんですよね。

 ううーむ……。


「アサメイつえーな?」

「そうですね……予想以上にダメージに差が」

「スキル補正のせいとしか思えんが」


 アサメイは《細剣術》《蛇腹剣》《古今無双・一刀流》《魔法触媒》《超高等魔法技能》という、5つのスキル補正を受けているからですね。レア度がGoだけはあるという事ですか。逆に言えば、隠されている補正を受けられるスキルを見つけられなければ、かなり悲しみを背負うことになりそうですが。武器本体の攻撃力……基礎攻撃力的なものは低いですからね。

 ミスリルを使用してこれだと……さらば魔動銃。私には不要です。


「……売りますか。弾、買いません?」

「お、買うぜ。出回るまで時間かかりそうだしな!」

「作るの自体は簡単ですし……このぐらいで……」

「……もう少し安くならん? あの消費を考えると……」


 大量に作って半数は委託に流しますか。作ったオプションなども手放してしまいましょう。肥やしになりますし。

 聖職者には良い武器になりそう。補正を考えると属性持ちの人外の場合はサブですかね。

 私個人の結論としては、もはや左右の武器が変わることはなさそうです。この戦闘スタイルを貫きましょう。アサメイと古き鍵の書が強い。

 この場にいた人に欲しい物は売ってしまい、残りを委託に流してから離宮へ戻り、一旦ログアウト。

 お昼を済ませるとしましょう。




 そして午後のログイン。

 うちの専属侍女であるエリアノーラに伝えておいた準備を確認します。午後に生産組が来るので、お昼で落ちる前にテーブルや椅子を置いておくように頼みました。


 クリスタルロータスは今日も綺麗に咲き誇っていますね。……軍隊魔戦蜂が今日も元気いっぱいな事からは目を逸らすとして。

 指示通り用意されていますし、問題無いでしょう。今回は場所とお茶の提供だけで、つまめる物は他の人達が持ってくるとの事ですね。マギラスさんも来るようですし、料理をする必要は無し。

 お茶の用意はエリアノーラ達がやる気満々ですし、肝心の茶葉はハウジングで勝手に増えていく。

 ……時間になるまで生産でもしていますか。スキル上げと金策が両立できるのは最高ですね。たまにスキル上げ用と需要が一致せず、ゴミを作り続けるという悲しみに包まれる事がありますが。



〈サルーテが訪問してきました〉

〈ダンテルが訪問してきました〉



 来たようですね。

 メイド達に案内されているはずなので、向かいますか。


「ようこそ。花咲き乱れ、羽音の唸る会場へ」

「唸る羽音は草なんよ」

「まさに機能を優先されたハウジングって感じですね」

「うちも4部屋ぐらい蚕に占領されてるしな」


 軍隊魔戦蜂からは色々採れますから、撤去する選択肢はありません。見た目より機能。ゲームゆえ、致し方なしって感じです。

 その後すぐ全員集まりました。


「よし、始めるか!」

「今日は大所帯だね!」


 裁縫のダンテルさん、調合のサルーテさん、木工のプリムラさん、鍛冶のエルツさん、細工のニフリートさん、料理のマギラスさん、錬金の私、そして初めましてのカラクリさんが人形。

 プリムラさんの言うように、今回は8人でのお茶会です。分類が生産スキルなのはもっとありますが、私の知り合いかつ3次持ちはこれで全員ですね。


 持ち寄ったお菓子やらをそれぞれが出して、主題が生産系の雑談お茶会開始です。


「今日の話題は昨日見つかった生産スキルですね?」

「おう。各自どんな感じよ」

「まー、調合には現状関係なっし」

「料理も関係なしですね」


 サルーテさんとマギラスさんは、今回の生産スキルは関係無さそうですね。精々調合キットや料理道具に細工するぐらいでしょうか?


「木工はまだ良く分からない!」

「杖には活かせそうなのか?」

「活かせそうではあるけど、手間と効果の釣り合いが……」


 魔法触媒に加工を施すことで魔力の効率化をできそうではあるけれど、下手に手を加えると逆に効率が下がるらしく、手間・効果・値段のバランスが微妙だとか。


「突き詰めるなら良いけどコスパ面ではゴミー」

「完全オーダーメイド用だな?」

「軽くやった感じ品種で変わるから量産は無理!」


 リアルなら素材毎になるでしょうが、ゲームなので品種ですか。まあ品種によってある程度傾向が決まっているというわけでしょう。


「金属製の杖ならどうでしょう?」

「あれは木工じゃなくて錬金の領分じゃなーい?」

「……それもそうですね。しかし金属製魔法触媒のレシピは持っていません」

「魔法触媒のレシピ無しは無理かなー」


 これは師匠案件ですね。そのうち教えて貰いましょう。

 次に話し始めたのはカラクリさん。どうやら調べスキーさんから私のドールコアが渡ったようで、人形関係です。


「人形は姫様のおかげで夢広がリング。自動人形オートマタに関してはまだまだ情報が足りんが、《魔巧技師》は人形に施せるからめちゃんこロマン溢れる」

「ほう、人形にも直接できるのか。《魔巧技師》の施された人形が《魔巧技師》の施された武器を持ったら使えんのか?」

「人形が起動できるのか?」

「人形の手に【魔力路】でも付けたらどうだ?」

「行けるかもしれんが、動力とか平気なんか?」


 カラクリさんとエルツさんが盛り上がっていますね。

 人形は魔力で動いているでしょうし、武器でも消費したら稼働時間が減りそうですよね。


「とりあえず、姫様から貰ったコア2個のうち、1個はこの子になったぞ」


 そう言って取り出されたのは、130センチほどでしょうか。球体関節の人形ですね。

 ……これは!


「「解体人形!」」

「知ってるのか雷電」


 反応したのは私とプリムラさんです。

 プリムラさんから買い取った解体用道具セットに書かれていた物。手動解体の代理が可能な人形ですね。


「やっぱ自動人形オートマタだよねー。代理解体だし」

「ますますお値段ヤバいですね。と言うか、解体用道具セットの需要は?」

「ボチボチ売れるんだよね。さすがに人形は別売りかなー」


 ドロップ品の品質アップは魅力ですか。狩人プレイの人達がこぞって買いに来たようです。

 供給も問題ですね。《錬金》は最近増えてきたけれど、《人形作製メイキングドール》は相変わらず少ないですからね。《人形魔法》自体はボチボチいるようですが。


「そんで、もう1体がこの子だ」

「……着せ替えが捗りそうだな!」


 そう言って出てきたのは球体関節ではなく、関節に違和感のない人形ですね。ダンテルさんが反応するだけはある。

 3次から作れるようになるシームレスタイプだそうです。繋ぎ目などもかなり巧みに隠されているので、パッと見では気づかないかもしれません。リアルなら青髪などにして分かるかもしれませんが、この世界はファンタジー。


「研究のためにもドールコアが沢山欲しいんだが」

「作業自体は比較的簡単ですが、あれはサイズの一致した魔石と宝石が必要です」

「コアの品質による影響も分からんし、コアのサイズによる違いも分からん。ああ、宝石の種類による違いも分からんか」

「各属性各サイズの用意となると素材の準備が大変ですね。検証なら品質も揃えたいところですが、さすがに品質の調整までは現状できません」

「んー……金出すからある程度用意できん?」

「ニフリートさんの宝石次第でしょうか。魔石のサイズは調整できますので」

「宝石の在庫自体はあるけども」


 ニフリートさんからサイズを合わせた各属性の宝石と、在庫が豊富な宝石をサイズ別で受け取りまして、錬金部屋でサクッと作ってしまいます。

 戻ったらテーブルの上に並べます。原料が宝石と魔石なので、結構綺麗なんですよね。形状は宝石のオーバルカット、楕円形です。


「ふむふむ。コアの段階でもある程度分かるな」

「どんなんだ?」

「コア属性に対しての耐性が付くようだ。それとコアと同属性魔法の魔力消費が少し減るっぽい」

「それは何で作るか悩ましいな?」

「姫様が作ったのを見るに、これは品質とサイズ両方影響ありそうだな。戻ったらこの子の同型を10体用意しないと。コアと目を同じ属性で作るか。コアサイズ別の5体はどう分けるかな……」


 エルツさんと話していますが楽しそうですね。ちなみに私は人形関係スキルを持っていないので、詳細は見れません。

 コアの検証がメインなので、できる限り体は同じ方が良い。とはいえ、ひと目でどれがどうか判断できないのは検証用として面倒ですからね。そうなると性能に影響の無さそうな髪の色や目の色、あとは服装ぐらいでしょうか。ダンテルさんの領分ですね。


自動人形オートマタって稼働時間の制限とか無いのか?」

「それ気になるー」


 私も気になります。プレイアブルであるマシンナリーや、術者と繋がる人形はありませんが、動力が必要な自動人形オートマタはあっても不思議ではないですからね。


「それはない。ただコアが拡張性に影響するようで、これがまだよく分からん」

「拡張性ですか。ドールコア以外のレシピは持っていませんが……」

「マジで?」


 誰も持って無いようですね。

 そこで、自動人形オートマタを全員に渡していった結果、私とニフリートさんでレシピが解放されました。《錬金》と《細工》系統ですね。

 ニフリートさんと確認作業をします。


「ふーん? 自動人形オートマタ用に調整された……ね」

「こちらも同じです。魔動銃用に調整された【魔力炉】と似たような感じですね」

「魔動銃にもあんのか? そんなん見たことねぇぞ」


 おや、エルツさんが見たこと無いとなると、やっぱり別途用意した方が効率が高そうですね。

 《錬金》だけではなく《細工》でも別途用意できそうなのは良いことです。


「エルツさん銃は?」

「何丁か作ったぞ」

「その際【魔力炉】は別途用意するかポップアップ出ませんでした?」

「そんなん出てないな……《錬金》か」

「《細工》系統でもそれぞれに調整した核が作れそうですね」


 《鍛冶》系統のエルツさんの確認はとれたので、ニフリートさんと【魔力炉】や【属性変換機構】などの確認をします。


「なるほど、確かに作れるね」

「またまた中間素材で稼げそうです」

「宝石の在庫が問題だよ……」

「使い道と需要だけ増え、供給は変わりませんからね……」

「どっかに宝石だけ採れる鉱脈とか無いかなぁ! 頑張ってくれファンタジー!」


 あったとしても人里近くのは間違いなく国の管轄でしょうけどね。王家か公爵の領地になるでしょう。侯爵……いっても辺境伯辺りですかね。それ以下だと管理がしきれずに持て余しそうです。

 盗掘対策の警備に横領対策に、原石の鑑定や商人と職人の手配やら……やること沢山。下が持ってると上の爵位から集られそうですし、持つなら上でしょう。


「【魔力炉】はクリスタルだから問題ないかな」

「水晶の森ですね?」

「あそこ最高よ。宝石バージョンも欲しい」


 行ったことありませんが、名前通りの場所らしいですからね。自分で採りに行くのも良いのですが、正直委託でクリスタルを買って加工して売った方が楽なんですよね。

 まあ、これは何を優先するかという選択でしか無いのですが。採集スキルを上げたいなら自分で採りに行くしか選択肢はありませんし、そうでなく生産スキルを上げたいなら購入でも構いません。

 ……儲けられるかどうかは素材の値段と加工後の値段次第ですが。


「今回のでかなり色々できるようになったわけだが……一番はマシンナリーか」

「「ああ、オプション?」」

「おう」


 エルツさんの言葉に反応した、ニフリートさんとカラクリさんの種族がマシンナリーですね。

 マシンナリーの装備できる、オプションパーツ的な物を作れるようになったようです。住人が装備しているのは目撃されていましたが、プレイヤーの場合は遺跡ダンジョンなどからのドロップ、または宝箱からではないかとされていました。


「補助腕的な物を作れないかな?」

「確かに欲しいところだな」

「腕4本なら絶対生産捗ると思うんだよねー」

「2本で固定、2本で作業できれば間違いなく捗る」

「そうそう。絶対捗る」


 確かに、固定するだけなら軽く動かせるようになるだけで十分ですからね。それだけならシステムが補助してくれると思いますし、そこまで難しくないはずです。


「生産者用の補助腕か……確かに作るのはありだな」

「武装は作ったの?」

「おう。だが物によってはエネルギー管理が必要になるようでな」


 MPの代わりであるマシンナリー固有のEP管理ですか。

 拡張パーツを追加すると、当然ながらEPの消費量が上がります。何ら難しいことではなく、消費電力が上がるようなものです。

 そういえば、EPの最大容量ってレベルで上がるんですかね? マシンナリーが2人いるわけですし、2人に聞いた方が早いか。

 ニフリートさんとカラクリさんに聞きます。


「むしろ現状レベルでしか上がらないよ」

「パッシブのMP上昇が取れない。が、胸部分に装備枠があるからアイテムがな」

「なるほど、ジェネレータ的なものがあるんですかね」

「定番どころはコア、ドライバー、リアクターとかもか?」


 まあ、何かしらある……と。問題はそんなレシピは持っていません。


「遺跡の敵からレアドロの可能性もあるけどね?」

「ありえそうですね。根幹部分ですし、レア敵からのレアドロとか」

「抹殺型とかの個体が少ない敵とかね」


 そうなってくるとマシンナリーは大変ですね。機甲種自体がオーバーテクノロジーなので、マシンナリーの心臓部などもブラックボックスのはずです。そう考えるとドロップ限定のはずですが、ゲームと考えると作れてもおかしくはありません。

 現状レシピが無い以上、作れたとしても条件付き解放ですし、いつになるやらですね。


 会話が途切れる事はなく。マギラスさんの新作の試食やらもありながら、穏やかに時間が進みます。

 生産系は話すことが多いですからね……。素材の採取場所からあの素材は加工がしやすいとか、あの素材でこうしたら失敗しただとか、他で使用している素材を自分でも活かせないかなどなど。

 お茶会だとそれぞれの生産スキル持ちが一堂に会するため、他の生産スキルで作られた生産品を使用して、更に新しい物を作れないか……と言うのが話題になりやすいですね。

 採取や解体して手に入れた生産素材を主に『素材』と言いますが、生産品を作るために必要な生産品を主に『中間素材』と言います。

 分かりやすい中間素材はインゴットです。『素材』が採掘された鉱石で、『中間素材』が鉱石を精錬したインゴットで、『生産品』が各種武具になります。

 しかし、あえて使い分ける必要があるかと言われると、別に……という感じではあります。薬草と蒸留水を混ぜてポーションを生産する。これも『素材』が薬草で『中間素材』が蒸留水で『生産品』がポーションですが、どちらも『素材』で伝わりますからね?

 『素材が足りん』だろうが、『中間素材が足りん』だろうが、結局会話は『何が足らんのよ』で変わらないんですよ。

 Wikiでレシピとかを見る場合は分けた方が若干分かりやすい……ぐらいではないでしょうか。それでも見覚えない素材が何か分かりやすくなるぐらいですが。アイテム名で大体察せることも多いですからね。なんたらインゴットの時点であっ……ってなるでしょう? なんたら薬でも《調合》か《錬金》に絞れますし。


 そして私もとある中間素材に興味があるんですよね。


「ダンテルさん。魔蚕の糸の在庫ありませんか?」

「む? もちろんあるが」

「あれも属性糸にできないかと思っていまして」

「属性金属糸か!?」

「ん、それも気になりますね。ですがまずは糸と宝石を考えています」


 私の初期の色あせた装備。あれが金属糸のような感じでしたから、属性金属と糸でできるんですかね。シンプルに【合成】だけではダメだと思いますけど。

 『糸』に属性を持たせるのか、『属性を持った金属』を『糸』にするのか、『糸』に『属性を持った金属』を練り込むのか、『金属』を『糸』にしたあと『属性を付ける』のか、結果は同じでもだいぶ変わりますよ。

 そしてこれらの方法全てで何かしらのアイテムができた場合、当然比べますよね。一番良い物を使いたいのですから当然です。だからこそ生産というのは時間がかかる。だからこそ『生産者』というのがMMOで成り立つのです。

 私のような戦闘と生産両方しているのは珍しくありませんが、『生産者』とはあまり言われないんですよね。そういう人達は基本的に自分の使用する消耗品を買わずに補充するためであったり、身内用が多いからです。

 生産はどうやって素材の確保をして、どうやって品質を上げ、どの方法が一番効率が良く、どの素材との組み合わせで……なんてしていると時間はいくらあっても足りません。

 戦闘は戦闘で同じです。自分の所持スキルで狩りやすい場所、AIを完封するにはどう動くか、どの動きが一番楽に倒せるか、楽に狩りするにはどのスキルが必要で、どのスキルが自分に合っているか、どの敵がドロップが良いのか。倒しやすい敵とドロップ品、経験値量、それら諸々を考えられたのが所謂『美味しい狩り場』です。

 つまり時間が足りない。両方している人は、PTメンバーが集まっているうちは狩りに出て、PTメンバーがいない時に集めた素材で生産する。これが多いと思います。


 まあ、話を戻します。


「基本レシピが無いとなると試行数が多くなるか?」

「糸と宝石、糸と金属、糸と属性金属で6試行ぐらいでは? インゴットを糸のように細くしても、柔軟性は皆無でした」

「ただのほっそい金属か」

「ええ。現状のスキル群では糸になにかするぐらいしか」

「俺も気になるし、完成品はこっち来るだろう? 提供しようじゃないか」

「こちらは糸とか持っていても仕方ありませんからね」


 たまにレシピの解放が試行回数だったりするので、とりあえずやってみるのは正解だったりするんですよ。

 早速受け取った糸を持って錬金室へ。付いてきたのはダンテルさんと私の専属エリアノーラ。彼女は離宮にいる間、大体後ろに控えています。プレイヤーに追従するNPCでしょうから、別に珍しくありません。


「まずはシンプルに糸と宝石を【合成】」

「失敗か」

「では糸と魔鉄を【合成】」

「ダメか」

「糸と魔紅鉄を【合成】」

「ダメだな?」


 やはりそう簡単には行きませんか。糸との【合成】は失敗。あとは【状態変化】を使用した方法ですね。


「宝石を【状態変化】で液体にして糸を浸す。そして定着させるために【合成】」

「無理か」

「魔鉄を【状態変化】で液体にして糸を浸す。そして【合成】」

「おっ!」



〈基本レシピ『金属糸』を覚えました〉



 むむ、できましたね!


「……品質低いな?」

「液体化しているとは言え金属ですし、染み込みにくいんですかね」

「それはまあ、ある」


 金属糸のレシピは……あ、素材無駄にしましたか。魔力を持った液体金属1個と魔力を持った糸6個の【合成】です。

 リアルで液体金属と言えば水銀ですね。一応他にもありますが、さて……なんでしたか。水銀と他の金属との合金の総称がアマルガムなのは知っていますが。

 まあ、このゲームなら【状態変化】で一時的に液体化できます。ファンタジーなので水銀以外にも色々見つかるかもしれませんし、色々できそうですが……。


「【状態変化】って長時間できないんだよな?」

「そうですね。浸す時間を増やすというのは無理です」

「それに液体金属となると中毒性が気になるな」

「ポーション中毒があるので、ありそうですよね。私には関係ありませんが」

「状態異常扱いなら治すのは楽だろうけどな」


 状態異常扱いになるなら状態異常を治す魔法使えば良いですからね。その辺りゲームは楽です。私の場合は一回化身を破棄すれば済む話ですからね。


 あ、浸す時間がどうしようもないなら、どっちも液体にして混ぜてしまえば良いのか。

 右手に糸を持って【状態変化】の【魔力錬成陣】。左手に魔鉄を持って【状態変化】の【魔力錬成陣】。どちらも液体化。混ぜ合わせながら錬金室の錬金台で【合成】!


「ああ、なるほど。確かにそれが正解な気がする」

「……品質上がりましたね」

「Bか。実用範囲に入ったな」

「A級は試行回数が必要でしょう」

「じゃあ次は属性金属だ。同じ品質だと最高」


 同じ方法で問題なく作れました。品質は……同じB。比べやすくて良いですね。

 糸の色合いは混ぜた金属の色になると思って良さそうです。


「うむうむ。良いな! だがこれじゃ足らん」

「ああ、そうですね。服にするのに糸何個ですか?」

「糸6個で布1枚だ。さて何作るかな……」


 作る物で必要な布の数が違うのは当然として、要所のみに使用する場合でも変わりますね。


「表に使用してデザインなどに利用するか、別の布で挟んでしまっても良いな」

「裏地は肌触りを優先できるのが良いですね」

「そうな。全身にすると軽装になるだろうし要所にするべきか」

「胸に帽子にグローブですかね?」

「パンツとかに使えりゃ楽なんだが、ステータスが無いからな……」

「ああ、金属糸でローブに刺繍するだけでも効果あるんですかね?」

「効果あるならそれが良いな!」


 金属糸による刺繍の効果があるなら、斬撃耐性は上がりそうですよね。布として使えば刺突にも多少効果ありそうですけど。

 問題は金属糸を使用した刺繍の難易度でしょうか。普通の糸よりは柔軟性ありませんから。

 とりあえず金属糸を量産しておき、皆のいる場所へ戻ります。


「時間かかったって事はできたか?」

「おうよ! とは言え細かい検証は帰ってからだな」


 エルツさんの言う通り、失敗してたらさっさと帰って来てたはずですからね。

 私のハウジングに《裁縫》関連施設はありません。まずは織りからですか。それから全身、要所、刺繍による差の確認になるでしょう。


「そう言えば、織り機を新しくしないとダメかもしれん」

「金属糸に負けそうだねー?」

「おう」


 確かに木製の織り機だと、金属糸に負けて耐久がゴリゴリ減りそうです。

 プリムラさんと消耗前提で取り替え可能にするとか話していますね……。


「そういえば姫様、魔動銃の新しい弾薬できたっぽいね?」

「自分では使わないのでその場にいた人に売って、残りは流しましたね」

「弾は《鍛冶》じゃ作れんからな」


 午前中に検証した結果やらを共有しておきます。

 弾は量産が簡単なので、金策の仲間入りする予定です。料理も錬金雑貨も弾薬も、私が売るのは全部消耗品なので実に美味しい。

 ただ、銃に関しては売るために作るには面倒です。エルツさんにも作れますから、魔動銃用に調整された内部パーツを、エルツさんに卸す方が良いでしょう。


「マシンナリー系だともっとメカメカしいの作りたいもんだがな」

「飛行用の翼と排熱用の尻尾とかな!」

「武装神姫みたいなのがいいぜ!」


 エルツさんの発言に、ダンテルさんとカラクリさんが食いついていますね。


「フレームアームズガールじゃなくて武装神姫なのか」

「アーンヴァル良いじゃん」


 フレームアームズガールも武装神姫も、《人形魔法》の方で頑張ればできませんかね? 確か両方ともAIを搭載したフィギュアだか何かを戦わせる作品だったような。

 武装は現状だと魔動銃の少ない種類しかありませんが、一応ありますし。そうなると自動人形オートマタで人の形にできるわけですから、できるのでは?

 自分の発言ですが、自分で再現できそうな事に気づいているのでしょうか、カラクリさんは。


「ニーアの飛行ユニットでも良くね? あれなら人でもワンチャン」

「あの変形機構と、何より動力と制御どうすんだよ」

「良いから乗ってみろ、飛ぶぜ?」

「ああ、飛ぶな。大事故だが」


 動力はソフィーさんも使用している、魔力を使用したグラビティコアで良いとして、制御が問題ですね。マシンナリーの拡張パーツとしてなら制御できそうですが。


「あれ? 自動人形オートマタ使えばできるんじゃね?」


 ……気づきましたか。


「「確かにな」」

「飛べるようにするには軽量化とエネルギー問題の解決が必須か……」

自動人形オートマタの仕様確認が先ですね」


 それに現状の人形は1メートルぐらいはありますから、もう少し小型化でしょうか。しかしそれをすると内部に積めるコアなどの面積が減りますからね。


「シームレスにしてパーツをメカメカしくするのもありだし、球体関節を残しても良い……。実に悩ましい問題だ!」

「人形用の翼でも作ってみっか。出力足りるのか知らんが」

「そもそも翼の飛行原理ってなんだ?」

「重力系以外だとスラスターとかしかなくないか?」

「魔力燃焼のロケットエンジンか? 【エクスプロージョン】を考えるとデトネーションロケットエンジンとかでも良いかもしれん」

「そんなところまで変えられるとは思えんが、重力系で浮いてスラスターか?」

「マシンナリーなら抹殺型の挙動ができそうだが……」

「【エクスプロージョン】だと冷却方法も考えないとダメじゃね?」


 カラクリさんとエルツさんが、飛行方法で盛り上がっていますね。

 飛び方の方式は重要です。操作感や挙動に大きく影響し、それらが違うだけで連携に影響出ますし。

 そういえば人形と考えると、あまり出力がありすぎても吹っ飛んで行く気がしますね。……槍でも持ってそれを利用しての体当たりもそれはそれで?


 ゆったり皆と話していると、建物の方で動きがありましたね。特に考えるまでもなく、離宮に滞在している客人はソフィーさんだけなので、クエストでも進行したでしょうか。

 別の事なら離宮の正門から人が来るはずですからね。離宮内部の時点で選択肢がほぼありません。


「サイアー、ソフィー様からポーションの開発が完了したと」

「聞きたいので呼んでもらえますか?」


 ソフィーさんがやってきて椅子も用意されました。


「やあ……。完成はしたけど私の手持ちと冥府の素材だけじゃ無理……」

「つまり素材でどうこうなる物ではないと?」

「そう……。通常のポーション素材を聖別してから作るか、完成したポーションをステルーラ様の立像の近くで保存するだけで良い……」

「聖別は無理だけど、立像の近くに置くだけで良いなら私も作れる!」


 ステルーラ様の立像はハウジングのミニポータルでも良いそうなので、確かにサルーテさんでも作れますね。

 私は聖別が可能ですが……ぶっちゃけ作業量的にも、ポーション放置した方が楽では?


「少なくとも、今の素材では無理だというのが分かった……」

「冥府で無理となると奈落……ああ、深淵の素材探しなどしていませんね」

「興味はあるけど、そんなの量産には向かない……」

「私もそれは面倒で嫌です」


 さすがに1人で冥府軍の消耗品を賄うとかごめん被りたいところです。作ること自体は【再現】でできるでしょうけど、素材集めが私しかできませんからね。

 ソフィーさんから報告を聞いたら、クエストが完了しました。



〈クエスト:『不死者にも効果のあるポーションの開発研究』が完了しました〉


『不死者にも効果のあるポーションの開発研究』

 思ったより話が大きくなったが、良いことなので考えるのをやめよう。

 ソフィーと宰相は知識が、異人の不死者はポーションが、幽世は軍が強化される。

 皆にっこり。

 1.ソフィー・リリーホワイト・ソルシエールと冥府の宰相を引き合わせよう。

 2.ソフィー・リリーホワイト・ソルシエールをハウジングエリアに招こう。

 3.ソフィー・リリーホワイト・ソルシエールから中間報告を聞こう。

 4.研究が終わったようだ。完了報告を聞こう。

 発生条件:不死者が不死者にも効果のあるポーション相談を魔女にする

     :冥府の宰相に魔女またはポーションの話をする

 達成報酬:不死者用ポーションレシピ

     :幽世軍へのポーションの配備開始

     :幽世拡張施設・幽世軍用魔草畑の追加

     :幽世拡張施設・幽世軍用調合・錬成施設の追加

     :幽世拡張施設・異人用ポーション販売店の追加



 施設も追加しておきましょうか。

 HP用魔草畑とMP用魔草畑の施設があり、HP用の方がコストが高い。大体こういうのって、MPの方がコスト高かったりするものですが……ああ、土地的に太陽がないからですか。

 調合・錬成施設と異人用ポーション販売店は、必要ポイントが多いけどレベルが無いタイプですか。そして畑は10段階と。

 とりあえず施設と販売店を拡張して、畑はMPの方をレベル高めにしておきますか。冥府軍はHPポーションとかあまり出番無さそうな強さしていますからね……。

 販売店のラインナップが謎ですが、畑と連動してたらどうしましょうね。



〈〈特定の条件が達成されたため、冥府軍が強化されました〉〉

〈〈プレイヤー、アナスタシアにより、常世の城に異人用ポーション販売店がオープンしました〉〉



「『お? 冥府軍の強化!』」

「まあ、あまり意味は無いというか……」

「ん、彼らの出番は無い方がいい……」


 そうですね。ソフィーさんの言う通り、彼らの出番がある=ろくなもんじゃないですからね。

 しかし異人用ポーションに触れてないということは、異人の不死者限定のシステムメッセージですかね。それ以外は知らされたところで意味ありませんし。


「で、これはなんの集まり……?」

「生産者の集まりですね」


 ソフィーさんにそれぞれ紹介しておきます。

 ソフィーさんが気になるのはやっぱりサルーテさんのようです。


「手持ちの各種ポーションを見せて……」

「各種1本ずつで良いですか?」

「うん……」


 サルーテさんのインベから、かなりの種類のポーションが並んでいきます。

 HPにMP、各種状態異常回復と耐性、更に住人用の風邪薬などイベントで作ったフレーバー薬までありますね。

 ソフィーさんはそれを片っ端から眺めていきます。


「うん……上出来……。魔女に興味はある……?」

「興味しかない」

「ソルシエールは弟子をとらない……。これを渡しておくからローラ・グラシアン・マギサに渡すと良い……」

「どこかで聞いた名前だね。どこだっけな……」

「マギサというと大魔女ですね。始まりの町に召喚体で乗り込んできた人では?」

「ああ、それか!」


 掲示板で名前が出てたはずです。

 しかしソルシエールからの推薦状ですか。サルーテさんがにっこにこですね。


「気が合わないようなら他に紹介してもらって……」

「あ、はい」

「もしくはネメセイアに伝えて……別の教える……」

「分かりました」


 きっと全員の心は一つですね。このゲームだとNPCである住人と気が合わないとかあるのか……と。

 別の人を紹介されないほど気が合わなければ、私経由ですか。そのリアルさは……いらなかったです……。何とも言えない気持ちにされました。


 ああ、そういえばソフィーさんへの報酬として、宰相を呼んだ方が良いですね。

 勝手に話してもらって、満足したら現世に帰しましょう。


「エリアノーラ、宰相を呼んでください。ソフィーさんへの報酬です」

「畏まりました」

「じゃ、私は部屋で待ってる……」


 これでこのクエストは良しっと。

 離宮へ戻るソフィーさんを見送り、再び雑談に花を咲かせるとしましょう。


「そういえば次のイベントの情報そろそろ出るかな?」

「今週じゃなーい?」


 11月の公式イベントはクリスマスイベントと言っていましたね。この世界にクリスマスなど無いので、どんな感じになるのか楽しみです。


「クリスマスとなると、キャンペーンとかも来るでしょうか?」

「また採取量アップとか来ないかなー」

「12月までお預けじゃねーか? ホイホイされると何もない時やる気にならん」


 それはそう。

 クリスマスの後すぐ年末で、大体が凄まじい事になるんですけど、このゲームはわざわざ11月にクリスマスをズラして来ましたからね。ちょっとどうなるか分かりません。


「前回のハロウィン結構暇だったぜ。次はもうちょいなんかあると良いが」

「俺も暇だったわ」

「こっちも特にやることは無かったな」

「食事は常に必要ですからそれなりに……でしょうか」

「私もそれなりに忙しかったー」

「ポーションはどうせ出番あるだろうと量産してたわ」

「私は結構暇だったかな」


 鍛冶のエルツさん、裁縫のダンテルさん、人形のカラクリさん、細工のニフリートさんが結構暇だったようですね。確かにこれと言って出番は無さそうなイベントでした。男性組では料理のマギラスさんぐらいですか。

 木工のプリムラさんはキャンプファイアーの薪不足だなんだとかでそれなり。調合のサルーテさんもラストに備えてポーションの量産ですか。

 私はそれなりですかね。立場を利用して権力者から情報を貰ったり、空き時間は生産していましたから。


「クリスマスは大きなイベントだし、ワチャワチャしたいねー」

「とは言え満遍なく忙しくとなると、キャンプみたいな状況不可避だが」

「無人島冬キャンは人の心が無さすぎるだろ」

「食材の確保で詰みそうですね」


 動物はワンチャン冬眠してるから楽まであるかもしれませんが、野菜や果実、魔草辺りも不安ですね。


「そういえば果樹も植えてみましょうかね……」

「お、何植えるのー?」

「桃と梨……桃の苗木はともかく、梨の苗木とかあるんですかね?」

「なんたらペアって名前で洋梨があったかなー」

「洋梨ですか、良いですね。まあどうせ変質するでしょうけど」


 さすがプリムラさん。果樹も把握していますか。なんたらの部分は地名か品種でしょう。そればかりは試食しない事には決められませんね。

 問題は太陽がなく気温もほぼ一定と考えると、果実は難しい気もします。とは言えゲームでのハウジングなので、試す価値はあるのですが。

 ああ、冥府の気温は勿論低めです。太陽ありませんし、そもそもここは死後の世界。気温を気にする存在はいません。


「サイアー、お邪魔しますぞ」

「ええ。部屋でソフィーさんが待っているので」


 メイドさんにソフィーさんのいる部屋へ案内するように伝え、任せます。

 後はソフィーさんが戻りたいと言った時に戻すか、最長でも持ち込んだ食料が切れる頃には言うでしょう。


「姫様は桃と梨が好きなのー?」

「そうですね。和梨か洋梨かは別にどちらでも構いませんが」

「桃も梨も、あまり食べた記憶ないなー?」

「まあ、桃は缶があるとは言え、正直手軽さはありませんからね……」

「イチゴは濯げば良いし、パイナップルは切られて売ってるもんねー」

「逆に私、イチゴやパイナップルはあまり食べないんですよ」

「そうなんだー」

「甘いのを期待して果実を食べるので、酸っぱいの引くの嫌なんですよね」

「「分かるー」」

「あの酸っぱさも良いのに」


 プリムラさんとサルーテさんはこちら側でしたが、ニフリートさんは酸っぱいのもあり派でしたか。


「そもそも完熟を見分けるのが難しいんですよね。その点洋梨は良いです。奴らは匂いで大体分かりますから……」

「分かんないよねー!」

「頻繁に買うもんでも無いしね? 結構するし、切るのめんどい」

「それはそう」


 果実はそれなりのお値段しますし、桃や梨は切らないとですからね。

 まあ、ふらっとスーパー寄った時などに自分で買うなら……という話で、親が買ってきた物などは普通に食べるんですけど。


「こう、梨を買ってきて数日放置して冷やしていざ食べた時に、なんの味もしなくてただシャクシャクした水分だった時の、何とも言えない気持ち分かります?」

「いい匂いしてたのに味微妙なのあるよねー!」

「ああ、うん。分かる分かる」

「ギャンブル感あるよね。果実」


 美味しい時は本当に美味しいだけに、果実は難しいですよ……。


「と言うか、姫様良いの食べてると思ってたんだけど」

「親が買ってくる物ならまだしも、私のお小遣いで数個数千のはキツいですね」

「ああ、なるほど理解」


 無理とは言いませんが、お金の使い道優先度はかなり下がります。それならスーパーで買って一喜一憂した方が楽しいですし、美味しい果実の目利きも磨けます。

 しかしゲームならば《鑑定》があります! 更に言えば私のハウジングなら庭師もいますからね! 実に美味しい物を食べることができそうだと期待しています!


「ふむ……果樹ですか。私も植えてみましょうかね?」

「デザート用ですか?」

「そうですね。しかし味を考えるとやはり仕入れるべきか……」


 マギラスさんのお店を考えると、仕入れた方が良い気がしますね。とは言え……リアルほど仕込みなどに時間がかからない以上、ありと言えばあり?


「シュタイナーさんとかに生産を頼んでみるとかも面白そうですね」

「確か農業プレイをしている人でしたか」

「ギルド農民一揆だね。確かに商売としては面白いかもね」

「ですよね」


 ニフリートさんが同意してくれましたが、農業プレイヤーと料理プレイヤーの取り引きとしてはありだと思うんですよね。

 シュタイナーさんのところは結構な範囲の畑を始まりの町で買っていましたし、そのうち果樹園区画が見れるやもしれません。


「確か現状は普通に野菜だけでしたよね?」

「でも考えてないとは思えないし、果樹はリアルだと年単位の時間かかるじゃん? 既に手出して成長待ちの可能性が高くない?」


 ニフリートさんの意見はもっともですね。シュタイナーさん達が果樹に手を出していないとは考えにくいところです。


「確かに……そういえばシュタイナーさんは呼ばないのですか?」

「奴は一次産業だからなぁ……畑違いってやつよ。ワハハ!」

「採取系とかはまた別で集まってるぞ」


 エルツさんのジョークはスルーするとして、ダンテルさんによると別の集まりがあるようですね。


「それなら私もシュタイナーさんから買いたいところですね……」

「ところでレディ? 蜂蜜を定期購入したいのですが」

「ああ、彼らの蜜ですか。構いませんよ」


 今も元気にブンブンしていますからね。軍隊魔戦蜂が。

 あれ、そういえばこの土地って取り引きできるんですかね? 私と言うか、冥府の不死者達はかなり特殊な環境ですが。

 確かギルドや生産者間での取り引きは、ハウジングで物を用意しておけば自動でしてくれるそうですが、馬車が移動するような演出があったはずです。

 ……掲示板の不死者板、見ますかね。


「ふむ……ハウジングで雇っている住人がちゃんと運んでくれる……と。そうなるとうちの場合、メイドさんがミニポータルから始まりの町へ行き、マギラスさんのお店まで運ぶことになるわけですか」

「……その時だけは我々が地上へ?」

「そう……なりますね?」

「それでしたら喜んで行くかと思いますが」


 私の背後に立っている専属侍女のエリアノーラによると、彼女達は喜んで運んでくれるだろう……と。

 そもそも暇だからある程度お仕事が増えるのは嬉しい。何より地上に行ける機会はまずない。地上に問題があって赴くのは冥府軍。ここにいる子達は使用人。離宮にて私と、私の連れてきた客人のお世話が役目ですからね。


「特に問題は無さそうですが、魔戦蜂の蜂蜜だけで良いですか?」

「ふむ……茶葉も全種頂きたいですね」

「アッサムもですか? 微妙では?」

「合う料理もできるかもしれませんから」

「ふむ……アビーは残念な顔をしていましたが、料理人では変わりますか」

「ああ、あの方はミルクティーがお好きですからね」



〈フェアエレンが訪問してきました〉



「おっすおっす!」

「おや、フェアエレンさん」

「このメンツは生産者会議だな! 花借りるよー」

「どうぞ」

「……なるほど、ここで安定して妖精の蜜を」


 クリスタルロータスの見事な花畑を眺めながらマギラスさんが呟いていますが、どうやらマギラスさんは、フェアエレンさんから妖精の蜜も買い取っているようです。まあ蜜は物によって味が様々ですからね。料理人としては品質が良い物なら色々欲しいのでしょう。


「あの蜂の中……勇気あるな」

「不用意に近づかなければ良いそうですが……」

「結構近くないか?」

「近いですね……」


 フェアエレンさん、魔戦蜂に同類と認識された説。

 軍隊魔戦蜂は好戦的との事ですが、戦うとなれば無事では済まない可能性があります。野生だからこそ、避けられる戦いは避けるでしょう。

 最初のうちはフェアエレンさんを威嚇していたはずなので、こいつは害がなく、自分達の餌も減らないと認識したと。

 軍隊魔戦蜂という名前からしても頭は良さそうなので、それなりに高度なAIが設定されているんですかね……。ハウジングの施設にそこまでのAIが必要か謎ですけども。

 そういえばこのゲームは、自社開発のAI搭載と公式でアピールしていましたっけ。となるとこれはデータ取りですかね。


「む、こんな時間か」

「そろそろ解散するか。戻って金属糸を検証しなければ」

「検証用の自動人形オートマタを作らないとな」

「大魔女探さなきゃ!」

「仕入れに関して、シュタイナーさんと話してみますか……」


 今回の会議で色々気になる事も増えましたから、気になってしょうがないはずです。ここにいるのはそういう集まり。

 狩りに行くには微妙な時間ですし、私も今日は生産しましょうか。



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― 新着の感想 ―
銃なら軽くて良い > あんまり軽いと反動がもろに来るんじゃないかな?
[一言] 久々の更新ありがとうございます。 銃は近接での牽制と魔法等の迎撃用として念動等のスキルや触手での発動はないかな。
[良い点] やっと更新か、長がった。 更新はもうないだろうと思っていたので嬉しいです。
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