表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/119

112 11月アップデート

生産で稼げる事は既に触れているから、所持金の管理はもうしなくていいかなって。

本音:死んじゃう

 リビングでのんびりしていたらお迎えが来たので、行きますか。


「ごきげんよう」

「ごきげんようです!」


 妹と2人でエリーとアビーが乗ってきた車に乗り込み、学校へ向かいます。いやー楽で良いですね! 車内が暖かいのでなおよし!

「早くパッチノート出ないかなー」

「いつ頃出るのかしら?」

「いつも通りお昼頃じゃないでしょうか」

 多分山本さんが放送するでしょうし、その頃に同時公開の気がします。大体いつもそんな感じですからね。


 妹とは学年が違うので途中で別れ、エリーとアビーの2人と一緒に教室へ。

 先に来ていた一ノ宮さんなどに挨拶もしつつ、席に着きます。そしてのんびり雑談に興じます。


「防衛戦楽しかったねー」

「お船楽しかったです!」

「船内シェイクは正直ごめんなのだけれど……」

「私は空でしたが、スキルレベルが美味しかったですよ」


 4人でワチャワチャしてると時間が来たので、授業に集中しましょう。お昼休みが楽しみですね!



 終了のチャイムが鳴ると静かだった教室が、ガヤガヤと賑やかになっていきます。


「飯だー!」

「食堂行くぞー」


 傑と智大が来たのでエリーとアビーに加え、一ノ宮さんも誘って行きます。さすがにコレットさんとドロシーさんはもうついて来ていません。ただ心配だったのでしょう。そもそもエリーとアビーはやられっぱなしな性格をしていないので、自分達で張り倒していると思いますけどね……。

 食堂では妹と柳瀬さん、松兼さんと合流。9人と結構な人数です。


『やあ、偉い人だよ。ちょっと待って』


 山本さんがタブレット弄ってますね。

 9人で同じ画面を見るのは不可能なので、別々で見ます。


『おっし、じゃあ始めようか。今回はそれなりに大型のパッチになる。肝心の内容だが……まず『武器セット』の追加。これは割とよくある機能だと思う。セットした装備を一括で変えられる機能だ』


 具体例としては、属性別にしておくのが分かりやすいでしょう。対火属性とか、対水属性というセット名で登録。対火属性なら水属性武器と火耐性防具を登録して、後は狩場に合わせて切り替えるだけですね。最初にやっておけば、1個1個変える手間が省けます。


『この機能は装備枠のみか、見た目側も登録するか選べる。逆も可能で、見た目側だけ切り替えたいとかも可能さ』

「あまり使わなそうです!」

「ドレスで良いものね」


 私も装備があれなので、この機能は使いませんかね……。


『次、《投擲》系統の可能対象の追加。これ、プレイヤーをぶん投げれるようになる。勿論対象のサイズや重量、投げる側の筋力など、影響を受ける』

「投擲とか持ってないが」

「今のところ取る予定は無いな」


 智大は純魔だから取ってるわけもなく、傑はジャイアントなので活かせなくも無さそうですが……プレイスタイル的に不要ですか。

 リジィが《投擲術》ありますが、一号とか投げられるんですかね。……する意味はともかく。


『続いて《言語学》に大規模な修正が入ります』

「なんですと? せっかくカンストさせたのに!」

「お姉ちゃんカンストさせたんか……」

「あれ、途中から詰んでるはずなんだがな」


 途中から教わらないといけませんからねあれ。


『具体的に言うと、各種族の言語として分類する事になった。竜語とか、人類でも方言とかそんな感じ。より世界にリアリティが出るが、スキルを持ってないと会話が成り立たなくなる! 勿論人類に分類される種族は今まで通りだ。それで人外達なんだが――』


 人ならざるものである人外プレイヤーですが、こちらも基本的には変更なし。人外種を選んでも、人類に分類される住人の言葉は問題なく分かる。

 プレイヤー同士も問題なく会話できるが、異種族で会話していると、お互いにその相手の言語熟練度が上昇していき、その言語を覚えられる。

 これら言語は、基本的に《識別》の『科』の項目で分類されるが、例外もあり。


『前提として、どちらもスキルを持っている事。ゴブリンのプレイヤーとオオカミのプレイヤーが普通に話していると、そのうちオオカミはゴブリン言語、ゴブリンはオオカミ言語を覚える。ここで注意して欲しいのは、覚えたところで『会話できるとは限らない』』

「どういう事?」

「正しく発音できるかは別問題って事じゃないかしら?」

「ああー」


 一ノ宮さんの疑問はエリーの答えで正解な気がしますね。元々一部の人外種以外は人類とも話せませんし、人類以外でも同様でしょう。


「……これ、狩りしづらくならない?」

「そうだよね?」


 柳瀬さんと松兼さんが言ってるのは……ああ、そういう事ですか。それは確かに嫌ですね……。


『君のような勘のいいガキは嫌いだよ……と言いたいところだが、安心して欲しい。この各種《言語学》が機能するのは、意思疎通するつもりがあるものだけだ。ピンと来なかった人向けにも言うと、フィールドにいるモブ達の言葉は分からない。痛いとか言わないから安心して欲しい。そんな地獄のようなゲームにはしないとも』

「「良かった」」


 ああ、良かったですよ! レベル上げのたびに精神削られますからね!


『基本的にこのアプデ後すぐに、言葉が通じない事態にはならないから安心して欲しい。特殊な種族、特殊な立場の者に会うプレイヤーは注意して欲しいが、向こうが人類共通語を覚えている可能性も大いにある。最後に、《言語学》に大幅な変更が入るため、スキルを持っている該当者には、メールでお知らせをする予定です』


 詳細はメールが来るでしょうから確認するとして、宰相とかラーナって古い人達なので、そこがどうなんでしょうね。ステルーラ様の外なるものは《古代神語学》だと思うので、問題は無いはずです。


『ほいで次。弱点属性の倍率変更! これ人外種への影響がどでかいので、絶対に確認してください。今までは種族やらなにやらでバラバラでしたが、レベル帯である程度統一することになりました。特別な設定があったりしない限りは、大体似たような感じになるかと』


 どうやら基本的に死にづらくなるので、上方修正ですね。しかし倒しづらくもなるので、下方修正でもあります。


『レベルが上がって進化していけば弱点倍率は減っていくけど、弱点が無くなるってことはないので、そこのところよろしく。スライムは《物理完全無効》まで行くから、他より弱点倍率は高いし、プレイヤー名は言わないけど……お一人ぶっ飛んだ種族の人がいますね。あの人も弱点はしっかり残ってる。人外種である以上、そこに例外はない』

「私ですね、分かります」

「だろうな」

「お姉ちゃん弱点は?」

「裏切るから教えなーい」

「ちぃ!」


 運動会は忘れんぞ妹よ。

 いやまあ、結局弱点あのままなんですけどね。


『あと影響が大きいのは……サイズ設定の変更かな。極小と人間が入る小までは変更無しで、それ以上は変更あり。2メートルから3メートルが中。4メートルから9メートルが大。10メートルから極大になります。今までは3メートル以上が極大だったので、大雑把過ぎるだろう……ということで』


 キャパシティ集めが少し大変になりましたかね……? 地味に困ります。


『装備耐久のフィードバックオプション……つまり耐久が減ったらボロくなったりしようぜ! って話も出ていましたが、全年齢なゲームなのでボツにしました。処理も重いですからね。今までの濡れたり汚れたりするぐらいで我慢してください。はだけたり脱げたりはしません!』

「そら……そうやろな……」

「最初からボロボロなの作って貰うしか無いな」


 ボーン判定での破損とかですかね? さすがに処理も重いし、全年齢ゲームなのでボツですか。……ゾンビ欠損しますけどねぇ!


『続いて、コミュニティの追加です。とりあえず上限は100人としています。チャットは不可。PT募集やお知らせと言った連絡だけ流せます。ギルドなどより緩い感じのものですね。具体例は今後のレイドを想定して、複数のギルマスとサブマスに加え、PTのリーダーやソロの人をコミュニティに誘ったりです』

「レイドは24人だし、100人なら全員入れても余裕あるけど……ユニオンがダメかな?」

「防衛戦とかで集合考えると怪しいか?」


 妹と智大が話していますが、実際どんなもんでしょうね……。

 私のところは双子も入れれば5人。妹のところが5人。トモのところが委員長入れて6人。エリーのところが4人。セシルさん、こたつさん、ルゼバラムさん、ムササビさんPTが6人ずつ。あとはソロ組ですか。……50人いないですかね。

 一応普段組む人達なら全員入れても問題は無さそうです。ここに生産組やら、フレンド登録はしたけど普段は会わない……ゆらさんや美月さんとか、歩さんやらを入れると……どうなるかですね。


『師弟関係は11レベ以上離れているプレイヤーと結べる。初心者支援ギルドや友人相手に有効活用してくれたまえ』


 先生は経験値が貰えず、生徒達に配分される。先生は生徒より多少上ぐらいの強さになり、回復量などは変わらないが、与ダメや補助系に制限がかかる。覚えているアーツや魔法に制限はかからない。

 私は使う予定のない機能ですね。


『あと大きいのは……闘技場を解放する! 複数のモードを用意しているぞ!』


 あるのは練習モードとランキングモードの2種類。練習は1回1kでランキングが10kの参加費。練習モードは魔物かPvPを選べる。

 モンスターを選択して相手にする練習モード。ソロまたはPTでの申請。

 PvPはソロでもPTでも良いし、募集による申請も可能。

 ランキングモードは月1で切り替わる特定モンスタータイムアタック。1人のソロ、3人のハーフ、6人のフルで申請可能。


『更にユーザーイベントでも使用してくれて構わん。ソロでもPTでも、レイドやユニオン、ギルドでも可能だ。トーナメントするもよし、総当たりするもよし。特定モンスターを相手にしたタイムアタックをしてもいい。好きに使って欲しい』


 モンスター指定の練習モードは楽しそうですね。常夜の城にある施設はパリィの練習になりますが、反射の練習はこちらの方が良いかもしれません。遠距離を反射するだけで敵を倒す縛りプレイができるはずです。

 自分が、またはPTの誰かが遭遇したことのあるものしか選べないようなので、事前に戦ってから……は無理です。


『以上! じゃあ午後の勉強やら仕事やらお互い頑張ろうじゃないか。今のところアプデ作業は順調。さらばだ諸君!』


 放送が終わりましたか。


「闘技場、会ったことのあるものなら選べるようですが……どこまで選べるんですかね」

「どこまで?」

「ほら、戦闘能力のある住人なら可能なのか……とか」

「騎士とか冒険者とかかー」

「私の場合、ニャル様とかハスターの化身には会ってるし、ティンダロスの大君主とか選べるのかな……って」

「ヤバそう」

「俺らイベントでシュブ=ニグラスと会ってるんですが」


 まあ、ここで妹と話しても分かることでは無いのですが。

 智大が言うように、ハロウィンイベントの第一鯖はニグラス見てますからね。黒い仔山羊とか、キャンプのトリフィドとか、あの辺りどうなんでしょう。自由に再戦できるなら、それはそれで楽しそうです。


 授業が終わり次第帰り、メンテが終わる前の空いている時間はエリーとアビーと雑談です。のんびり紅茶でも飲みながら過ごして、メンテ終了少し前に解散です。

 パッチを当てつつ、使ったカップを洗ったりしていると時間になったので、ログイン。



〈特定の条件を満たしたため、《言語学》が解放されました〉

〈《言語学》が成長上限に到達したので《言語学者》が解放されました〉

〈《言語学者》が成長上限に到達したので《魔法言語学者》《魔物言語学者》《古代言語学者》が解放されました〉

〈《古代言語学者》が成長上限に到達したので《魔術言語学者》が解放されました〉

〈《魔術言語学者》が成長上限に到達したので《古代神語学者》が解放されました〉

〈『称号:古代言語学者』が『称号:言霊を理解せし者』へ変更されました〉

〈アップデートにより構成に変更のあったスキルツリーが存在します。現在灰色で表示されているスキルが有効ではありません。有効化されていないスキルが途中にあると、それ以降の上位スキルは性能をフルで発揮できません。SPを消費して有効化するか、リビルドが可能です〉



 ……とりあえず先に、運営からメールが来ているので、確認しましょう。



アナスタシア・アトロポス・ネメセイア様へ。

 こんにちは、FLFO運営チームです。

 このメールは11月のアップデートにより、大きな影響を受けるプレイヤーの皆様にのみ、送信されています。

 アナスタシア様が受ける影響は以下の通りです。


本体のサイズ。

 極大のサイズが変更になったため、本体の大きさが10メートル以上になりました。化身に影響は無いため、特に気にする必要はないと思います。

《言語学》に関して。

 《言語学》以降のスキル名が変更され、新しいスキルが追加されています。


名称変更スキル

変更前:《魔法言語学》《魔術言語学》《古代神語学》

変更後:《魔法言語学者》《魔術言語学者》《古代神語学者》

新規スキル

《言語学者》《魔物言語学者》《古代言語学者》


 御存知の通り、《言語学》系統スキルは他のスキルと扱いが異なっていましたが、今回で更に変更が加えられました。

 今までは言語スキルが解放され、その言語を学ぶことで理解度が上昇し、スキル効果が上昇していました。これからも一部スキルは変更ありませんが、覚えられる言語が圧倒的に増えたため、アーツとして言語が表示されるようになりました。


《言語学》

 【人類共通語辞典】

 現在の人類に分類される人間、獣人、エルフ、ドワーフ、ジャイアント、マシンナリーが使用する言語。

《言語学者》

 【各国方言辞典】

 マルカラント公国方言辞典、ディナイト帝国方言辞典など。


 となります。これ以上の詳細はネタバレにもなるので省かせていただきます。

 これに伴い言語周りのバックボーンも変更されておりますので、気になる場合は図書館をお探しください。


P.S:メンテ前の段階で《言語学》が全てカンストしているのは、アナスタシア様のみですので、このメールの内容は個別に送られています。《古代神語学》などのネタバレはされていませんので、ご安心ください。



 なる……ほど。本当にガッツリ変わっていますね。

 えっと、システムメッセージが言っているのは……《言語学》系統のスキルツリーが変わっているから、確認しろと。

 今までは《言語学》《魔法言語学》《魔術言語学》《古代神語学》の順でした。それが《言語学》《言語学者》《古代言語学者》《魔術言語学者》《古代神語学者》と、ツリーが長くなっていますね。

 灰色で持っていない事になっているのは《言語学者》ですか。これを取らないと、《古代言語学者》《魔術言語学者》《古代神語学者》にペナルティがあると。それは困りますね。私の魔法の発動キーワードは古代神語です。威力が下がる可能性大。


 システム通知から、全部有効にしますよっと。



〈消費したSPと必要なSPを計算中…………〉

〈SP13を消費する事で、全て有効化できます〉



 多いですね!?

 前回覚えたのは……3、6、10、16でしたっけ? 今回で間に1個増えたから、13が来たんですかね……。まあ、余っているので良いですけど。私の場合取らないという選択肢がありませんし。



〈アップデートによる問題が解決されました〉



 はい。《言語学》から《古代神語学者》まで繋がりました。

 それで気になるのは《魔法言語学者》と《魔物言語学者》です。この2個がスキルツリーで枝分かれしたところにあります。しかもこの2個が繋がっているわけでもなく、それぞれ別の位置で独立。

 《魔法言語学者》と《魔物言語学者》はそれぞれSP10ですか……重いですね。《古代神語学者》とは直接繋がっているわけではないので、必須では無さそうですが……どうするか。

 取っちゃいましょう!



〈特定の条件を満たしたため、『称号:多言語話者ポリグロット』を取得しました〉



 そう言えば持ってた称号も変化していましたね。確認しますか。


[言霊を理解せし者]

 遥か昔に地上で忘れられた、力ある言語を知る者に与えられる記念称号。

[多言語話者ポリグロット]

 あなたには全ての言語を覚えられる下地がある。


 特に特殊効果があるわけではない称号ですね。

 闘技場とかは後で掲示板を見れば情報が出るでしょう。となると……図書館に行ってみましょうか。図書館巡りは面倒なので、ケラエノ図書館へ。


 円錐状のケラエノ図書館管理生物に挨拶して……さて、どこにありますかね。


 少し先に進んでいくと、頭上の方で《直感》が反応しました。……飛ばないと無理ですね。この図書館スケールがおかしい。首が痛くなるレベルの高さまである壁一面の本。更に動く棚。まさに大規模ファンタジー図書館。違法建築にも程がある。

 《座標浮遊》で本のところまで行って、手に取ります。



言語の歴史と魔法に対する考察

 神々が使用していた古代神語から言葉が始まった。

 精霊達は親の真似を始めた。神々が簡単な力を使う際に使用していた特別な言葉を。魔術言語の誕生である。

 精霊は世界のどこにでもいる。姿は見えずとも、聞こえるものがいたかもしれない。一部の魔物達は精霊達の言葉を元に、独自の言語を作り出した。魔物言語の誕生である。

 精霊が見えたエルフやドワーフは、精霊に教わって言語形態を確立させた。魔術言語を元にした古代エルフ語、古代ドワーフ語の誕生である。

 時が経つにつれ言葉も変わっていく。

 始まりは伝承や神話に魅せられたのか、優れた存在に憧れたのか、魔物という脅威に対抗するためか分からない。

 だが、魔力を扱うための術を研究し始め、人々は伝承や精霊達から言語に目をつけた。

 人々は様々な方面から模索し、独自の形態を確立させた。それを神々や精霊達への憧れからか、魔法と名付けた。


 言語に目をつけた事は素晴らしいが、ただひたすらに遡るべきだったのだ、言語の歴史を。各人類の言語、そして精霊や妖精達の言語、そして神々の言語。

 とはいえ存在からして違うため、神々の言語に辿り着いたところで、同じようには扱えまい。

 そういう意味ではその種族にとって、独自の形態を確立させたのは正解なのだろう。それは今でも種が存続していることが、証明しているはずだ。


※神々の簡単な力

 神の力は強すぎる。地上において必要以上の力を抑えるために、『無駄』を行った……と、思われる。

 精霊達が力ある言葉に関して、はっきりと教えていないのもあるだろう。そのため、言葉は意思疎通をするための方法として発展を重ねていった。


 著者:シアエガ



 …………。

 著者はこの際良いとしまして、なるほど。《言語学》のツリーはこれですか。古代神語、魔術言語、古代言語……そして人類達が使っている言語へと、時を経てきたわけですね。

 あくまで《言語学》は《古代神語学者》まで遡るツリーがメイン。魔法言語と魔物言語がツリーから外れているのは、独自の発展をしているから枝分かれしたのでしょう。


 神々にとっての無駄。力ある言葉。つまり称号の言霊。古代神語での魔法の発動キーがそうなのでしょう。この時点で神々との力の差が分かりますね。

 とりあえずバックボーンは分かりました。知ったところで特に何かが変わるわけではありませんけど、バックボーンはゲームを楽しむスパイスですからね。




 本体の確認は……大きくなっただけですし、死んだ時にチラ見すれば良いでしょう。よし、帰りますか。まだ確認したい事があるので、一度離宮へ戻りましょう。

 自室でのんびりとステータスを確認。弱点倍率は物理が1.2倍のまま、変化ありませんね。当然魔法軽減も変化無し。

 武器セットはとりあえず今の装備を登録だけしておきましょう。闘技場に関しては掲示板より、動画を待った方が分かりやすいかもしれませんね。


 さてさて、どうしますか。

 【魔力錬成陣】でも弄りますか? ……そう言えばこれも言語系ですが、なにか変わったんですかね。今のやつと編集途中のやつを見比べてみますか。

 …………? なんですかね、これ。よくこれで動いていますね。魔術言語と魔法言語が混じっています。正直元からこうだったとは思えない。ということは……やらかしましたね? きっと改良しようとして色々弄っているうちに、分からなくなったんでしょうね。もしくは失敗の方だけが残ってしまった?

 師匠に渡したやつは魔術言語で統一されています。私が今やってる【魔力錬成陣】は古代神語で統一されているので、効率が良くなります。【魔力錬成陣】が終わったら、自分用に他の錬成陣も古代神語で組みましょうか。



『錬成陣の改良』

 非効率的な錬成陣を改良し、錬金業界の発展に大きく貢献した。

 発生条件:誰かしらの錬金術師に改良済み錬成陣を渡す。

 達成報酬:渡した錬金術師から、新しい錬金キットを受取可能。

       :錬金関係者の好感度・知名度上昇。

       :各国上層部の知名度上昇。

※このクエストに動画はありません。



 おや……これは……。

 やはり錬成陣はクロニクル判定でしたか。錬成陣の改良以外は住人の師匠任せだったので、動画は無いようですね。



〈〈プレイヤーにより、特定のクロニクルクエストがクリアされました。これにより錬金業界に革命が発生し、以降、錬金術関係商品の在庫量などに多大な影響を与えます〉〉



 んん? ……ああ、錬成陣の効率化によって作業スピードや魔力効率が上昇。その結果生産量が増えて、お店の在庫などが増えると。原料への影響は皆無なので、相場に影響を与える事は無さそうですが、さて……どうでしょうか。まあお店の値段も変わるようなら、掲示板で情報が出るでしょう。


 気になるのはハウジングです。ケミカルルームはどうなるのでしょう。錬成陣を部屋に刻んだ代物ですから、こちらも影響ないと少々不便ですね。

 ハウジングメニューは……おっ? 増えてますね!



[家具] 改良型ケミカルルーム レア:Le 品質:C

 ケミカルルームの錬成陣が見直された改良型。

 部屋自体に錬成陣を刻み込み、恩恵を得るための改築または増築を行う。

 錬金術品質上昇:極大



 改築80万/増築140万/改良置き換え10万……ですか。ケミカルルームより10万ほど上がっているだけのようです。

 早速部屋の置き換えをしましょう。今ある錬成部屋の錬成陣の書き換えですね。部屋へ確認しに行きましたが、見た目上の変化は錬成陣の模様が変わっているぐらい。そこの変更なので、当たり前ですけど。


 後ろを付いてきているエリアノーラに、でかける事を伝えて転移します。師匠に会いに行きたいので、始まりの町へ。

 そう言えばソフィーさんの確認をしませんでしたね……。エリアノーラ達が何も言って来なかったので、問題は無いと思いますが。


「師匠ー」

「ああ、来たかい。持っていきな。仕事が楽になると喜んでいたさね」

「それは何よりです」


 受け取ったのは改良型錬金キット。


「古い方のキットとコアは、不要なら引き取るさね」

「ではお願いします」


 今まで使っていたのはもう使わないですからね。倉庫の肥やしになってもあれですから、持っていってもらいましょう。

 少し話してから師匠のお店を後にします。



 さて、次はどこに行きましょうかね。


「あ、姫様ー!」

「ごきげんようプリムラさん」

「ごきげんよう! 今時間あるー?」

「ありますよ?」

「じゃあうち来てー!」


 何やら見せたい物があるようで、見に行きましょう。しかしプリムラさんって言うと木工系ですからね。特に私が使うような物は無いと思うのですが……。

 とりあえず後を付いて行きますか。立像のある中央広場から、プリムラさんのお店へ。ノコギリやらが置いてある作業場に通されました。


「これこれー」

「これは……」



[道具] 解体用道具セット(中) レア:Ep 品質:A

 中サイズまでの獲物を解体するのに必要な道具の揃った小道具セット。

 内包されている解体道具は全て中サイズで統一されている。

 ハウジングアイテムとしても使用可能。

 製作木工師:プリムラ

 製作鍛冶師:エルツ



 要するに手動解体に補正を与える生産キットの様な物ですね。そのため、これも位置指定からの展開タイプです。……欲しがる人そういないと思いますけど?


「これがさー? これ見てよー」



[道具] 解体用道具セット(極小~極大)

 解体するのに必要な道具の揃った小道具セット。

 使用するにはオプション以外の内包物を全て揃える必要があり、効果は1番小さい物に合わされる。

 ハウジングアイテムとしても使用可能。

 血抜き塔(極小~極大):肉・皮の品質に影響。

 血溜め(極小~極大):血の品質に影響。

 解体台(極小~極大):肉・他素材の品質に影響。

 水場(極小~極大):全体の品質に影響。

 解体包丁A(極小~極大):皮の品質と作業スピードに影響。

 解体包丁B(極小~極大):肉の品質と作業スピードに影響。

 解体包丁C(極小~極大):他素材の品質と作業スピードに影響。

 包丁差し(極小~極大):全体の品質と作業スピードに影響。

オプション

 解体人形:手動解体を展開者の《解体》スキルで代行する。人形の品質が全体に影響。

 素材棚(極小~極大):解体された各種素材の入れ物。



「解体人形?」

「そこー気になるよねー? なんか知らないー?」

「手動解体の代理なので、自動人形オートマタ関係でしょうね。そうなると人形側も《人形作製メイキングドール》の3次スキル、《人形博士ドクターデアドール》が必要かと。しかしアビーもまだ2次だと思うんですよね……」

「むぅ……」

「《錬金術師》側のドールコアレシピは既に持っていますよ」

「ほんと!?」

「まだ作るのは無理ですけどね」

「そっかー……手動解体を任せられるなら、割と需要はありそうなんだけどねー」

「一号も手動解体の代理は可能のはずですが、時間かかりますからね……。ところで、いくらですか?」

「まだ決めてないんだよー。ただ材料費だけでも結構行くー」


 レシピを見せて貰えましたが、プリムラさんの場合は木工系なので、メインとなる木材の消費が半端ないですね。

 サイズ中ということは、今回のアプデで4メートル未満まで対象です。そのサイズの解体道具達なので、セット展開時のサイズは言わずもがな。

 必要となるメイン素材は極小で10個。小で25個。中で50個。大で75個。特大で100個。極大で150個。

 そして必要素材のグレードも上がっていくので、確かに材料費だけでも相当ですね。ハウジングレベルの金額が飛ぶでしょう。


「……初期投資は痛いですが、高品質素材を狙うならありなんですかねえ?」

「私達からしたら高品質は喜んで買うけど、人形と《解体》次第じゃないー?」

「《解体》上げて手動解体の手際が良くなり、作業時間が減って品質も上がる?」

「結構稼げると思うんだよねー? 料理板に手動解体してる狩人がいるっぽいー」

「私が解体しました……的な?」

「そーそー。やっぱ品質高いらしー」


 東で狩りして手動解体してる、猟師プレイの人がいるようですね。わざわざ手動解体をしている人はかなりレアらしく、情報は全然無いとか。

 どの道これ、解体人形が手に入らないと話にならないアイテムですね。大半が自分で手動解体なんてしたくないでしょうし、私もごめんです。一号に任せても良いですが、一号の場合は……AIレベルでしょうか?


「姫様これ買わないー?」

「んー……死霊のワーカーで代理解体できるならありですけど、大半を取り込んじゃうんですよね……」

「ああー……でも他に売れそうな人いないんだよなー」


 ええ、ワーカーで代理解体できたとしても、死霊持ちは大半がキャパシティのために取り込みを優先すると思います。

 というか、さすがの私も手動解体なんてしたくはありませんが、やりそうとか思われてるんですかね? アンデッドとそれはまた別だと思いますが。


「ああでも、錬金で生体素材を使えるんですよね……」

「血とかー? サルーテさんも言ってたっけなー」


 《調合》系でも必要ですか。定番で言えば竜の血とかですかね。


「中以上は現状では難しい感じですか?」

「材料的に無理ー。検証も付き合ってくれたら次のサイズはお安くするよー?」

「……仕方ありませんね。一号が代理解体できるなら買いましょう」

「やったー! ウルフに犠牲になってもらおー」


 ルンルンなプリムラさんの後を追い、検証のために始まりの町の西門から出ます。


「あ、別に兎でも良いのか」

「まあどちらでも良いでしょう。とりあえず一号を……ワーカーですかね。呼んで……解体用道具セットを展開すると。これ、周囲へのテロになりませんかね?」

「他者はデフォルトでフィルター入ってるはずだから、大丈夫なはずー」

「とりあえず代理解体はできそうですね」


 そういえば、テイマーの人のワイバーンがバリムシャしてましたが、フィルター入ってましたね。……食べてる側はAIだから良いとして、プレイヤー側は大丈夫なのでしょうか。そこに触れてましたっけ?

 ……よし、ダメそうなら【ショートジャンプ】しましょう。視界ギリギリまでは転移できるので、範囲外に出るのはすぐです。


 兎さんを触手で倒して、そのまま解体道具前で待機しているワーカーにパス。


「では一号、手動解体を頼みますよ」

「カクン」


 ……セーフ!


「見せられないよ」

「見せられても困りますが」


 兎さんは血抜き塔に吊るされ、血溜めにダバダバしていますね。そこで皮を剥がされ解体台に移り、ゲームアイテム的なお肉のブロックに。

 もう一体兎さんを追加しますが、一号が血溜めを指差して「カタカタ」言っていますね。


「血溜めも一体ずつ片付ける必要があるみたいですね」

「同じ種でもダメかー」

「……空き瓶とか手持ちにありませんね」

「あー…………無いや」

「破棄で」


 ワーカーが【洗浄クリーン】で綺麗にして2体目の解体。

 プリムラさんは横で掲示板を確認していますね。


「何個取れたー?」

「皮が1個とお肉が2個ずつですね」

「増えてるねー。振れ幅は無いのかなー?」

「そこはもう少し倒さないと分かりませんが、品質はAと高いですね」

「とても良いねー?」


 問題は品質C以上のドロップ品やレア物の確率を上げる、《目利き》の恩恵が怪しい事ですかね。

 まあ手動解体の手間や時間を惜しむか、《目利き》の確率に賭けるかなので……両方取って状況次第が一番ですか。


 更に兎さんとウルフを追加して、試行回数を増やします。検証は数だよ兄貴。


「皮と肉確定ー?」

「そうですね。少なくともこの2体は確定です。サイズ判定も同じなので、取れる個数も同じですし、品質もA-やAですね」


 兎さんはお肉と皮。ウルフはお肉と皮と爪。


「アンガスのリブロースなどのレア品はどうなるのか、猟師の人から情報出てるんですかね?」

「そこはゲームらしく、普通にレアドロ抽選で引かないと取れないっぽいー」

「かなしい」

「ゲームお決まりの目の前に見えてるの毟り取れ現象ー」


 戦い方が悪くボロボロにしてしまったと納得するしか無いのです。リブロースがボロボロなんですよ。ええ、リブロースが。素材にならないぐらいに。


「手動解体ができるなら、とても優秀と言えるのではないでしょうか」

「その手動解体が問題なんだけどねー。いくらにしようかなー? エルツから買った額と使用素材が……」


 プリムラさんがUIとにらめっこしていますね。

 アイテム自体はとても良いと思います。アイテムは。問題は需要ですね。現状では手動解体をするというハードルが高すぎます。死霊系のワーカーと解体人形以外で、代理解体が可能なもの探しからでしょう。

 解体人形の制作を目指すのもありですが、ドールコアの素材を探さないといけませんね……。ダンジョンレベリングより、フィールド探索に切り替えるのも良いですね。


「んん~! 40万!」

「詰め合わせだけあって結構しますか」

「素材の必要個数も考えるとどうしてもねー?」

「仕方ありません。買いましょう」

「やったー」


 素材の品質が上がるなら、結果的に生産品の品質が上がって、その分お金が入って来ますからね。必要な出費と言えるでしょう。取り込みと解体で更に悩む事になりますね。遺跡ダンジョンみたいなドロップなら解体でいいのですが。魔鉄は美味しいです。


「助かったよ姫様ー」

「解体人形が来たら値段が上がりそうですし、よしとしますよ」

「作るの大変だし、もっと上がるかもー」


 オプション入れると10個の統合品ですからね。需要が増えれば多少の値段上昇ぐらいはするはずです。作るのが大変なら尚更です。


「おっと、こんな時間ですか」

「ご飯!」

「ですね。ではこれで」

「ありがとねー」


 平日なので、夕食後は消耗品の補充のため生産ですかね。

 町へ戻ってログアウトです。


《言語学》

 【人類共通語辞典】

 現在の人類に分類される人間、獣人、エルフ、ドワーフ、ジャイアント、マシンナリーが使用する言語。

《言語学者》

 【マルカラント公国方言辞典】

《古代言語学者》

 【古代言語辞典】【古代エルフ方言辞典】【古代ドワーフ方言辞典】

《魔術言語学者》

 【魔術言語辞典】

 主に高位精霊が使用する言語。

《古代神語学者》

 【古代神語辞典】

 遥か昔に失われたとされる、全ての言語の原型となる最古の言語。

 神々や外なるものだけが使用する言語。

 対話をするための言語と現象を発生させる言語に分かれている。

《魔法言語学者》

 【魔法言語辞典】

 人類独自の形態。

《魔物言語学者》

 【各種種族言語辞典】

 ゴブリン族語、ウルフ族語など。


魔物言語にアンデッド系は無い。そんな知能は無い。

各種族の言語を覚えても、知能が低い種族は単語族の可能性あり。

ついでに不死者もない。元々人類だし、普通に共通語を使う。

宰相が古代言語かもしれんが、普通に共通語も覚えているはず。


ちなみに手動解体が話題に出たのは7話とか24話のちらっとぶり。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
SP残ってなかったら、弱体化してたのか………。
[気になる点] >極小と人間が入る小までは変更無しで、それ以上は変更あり。2メートルから3メートルが中。4メートルから9メートルが大。10メートルから極大になります。 そのサイズの解体道具達なので、セ…
[一言] あれ?エルフとかドワーフのNPCってでてましたっけ...?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ