表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/51

05:受付

忍びの衣を身に着けローブを羽織る。

大地の鎧はかさばるので今回は着て行かない。ローブも緋色のローブではなく普通の旅人が羽織るものだ。


忍びの衣は装備した者の立てる音をかき消す効果がある。


部屋を出る。

盗られる物は何も無いが、一応鍵をかける。


階段を降り、受付に声をかける。

「少し出かける」

「はい。あの、お客様...」

ああ、この恰好か。

「あれは目立つからな。今後、俺の事は冒険者として接してくれ」

「はい。わかりました」


「ところで、この町の地図とかあるかな?」

スキルの迷宮の地図は冒険者ギルドにしかないだろうが、町の地図ならあるだろう。

「はい、こちらになります」

「ああ、ありがとう。幾らかな?」

「当宿ご利用のお客様にはサービスとなっております」

ニッコリ微笑まれ渡される。オゥ、プライスレス。だが男だ。


他に客らしき人が居ないのを確認し、その場で地図を広げる。

「すまないけど、簡単に説明お願いできるかな」

「はい。では...」



町は大きく五つの区画に分かれる。

一つは中央区画。後は東西南北の四区画。


中央区画。

この宿もある町の中心部分。

このブオトの町を取り仕切る町長の屋敷があり、この町の治安を守る衛兵達の管理を行う兵舎もここに存在する。


北区画。

冒険者ギルドの事務所があり。スキルの迷宮の入り口がある場所。

てっきりスキルの迷宮が町の中心にあると思っていたが、元々村が存在し、その近く、村の北側に迷宮が発見されたため、あくまで村を中心にスキルの迷宮を取り込む形で発展したと言うことなので町の中心は元村長、今の町長の家があった場所という事らしい。


西区画。

主に商人が集う区画。

俺が通ってきた道は西区画の一部だったらしい。屋台が多いはずだ。

町の中心になるほど様々な商店があるらしい。


東区画。

主に貴族の屋敷がある区画。

この町の利権に食い込もうとしている貴族や、スキルの巻物目的で迷宮に潜れる実力者を雇い住まわせる場所として貴族が住まいを提供している場という事だ。


南区画。

住宅街。スキルの迷宮目的の冒険者やならず者達が北区画に集中するため、比較的安全な反対側のこの区画を町の住人の住処と決めたらしい。



説明を聞きながら、位置を把握していく。


この地図には、おかしな点が二つ存在する。


ひとつ。

この地図には壁の外の記述が無い。

壁の外を一周してみたが、民家はもちろん商店も武具屋も存在していた。

しかし、これは大体想像がつく。中の住人からすればと言うより、ここに泊まりに来る様な者達からすれば、外の者達を人として見ていないのだろう。

人が住んでないから町の地図には載せない。ただそれだけの理由だ。


ふたつ。

冒険者ギルドの管理する迷宮が存在する町、特にこの規模の町になら必ず存在している大事な施設が見当たらない。

「魔道具屋はどこかな?」

「この町に魔道具屋は存在しません」

「ん? 未鑑定品の鑑定は...冒険者ギルドに鑑定士が居るのか」

「たしか居ないと聞き及んでます」

「んん?」

「当宿をご利用いただいたお客様のお話では、スキルの迷宮からのドロップ品に未鑑定品は無いという事です」

「え、そうなの」

「はい」


特殊な迷宮と聞いていたが、どうも予想以上の迷宮なのかもしれない。

ギルドにいく前に一般的な知識を仕入れておいた方が良いかも知れない。


受付の男を見る。

外で仕入れるつもりだったが、職業柄一般以上の知識を持つであろうこの男に聞いたほうが良いだろう。


金貨を取り出しカウンターの上に置き、弾く。

「スキルの迷宮に関して、知っていることを教えてくれ」

黙って目の前の金貨を取り、男が話し始める。



スキルの迷宮。

地下十階までの深さがあり、ソロ専用の迷宮である。


各階にボス部屋があり、ソロで侵入時のみ起動し扉が閉まりボス戦となる。

討伐後、下層へ潜る階段と脱出用魔法陣が出現し、稀に宝箱も出現するという。

討伐者が魔法陣か階段で移動後、ボス部屋の扉が開き、しばらく経った後再度挑戦可能になる。

宝箱に罠は無く、必ず何らかの巻物がひとつ入っているらしい。つまり、討伐時に宝箱が出現した時点で当たりを引いた事になる。ここで未鑑定の巻物のドロップは確認されていないということだ。


最下層の十階が制覇されると一定期間、十階の扉は開かなくなり、扉前に脱出用魔法陣が出現する。


十階は特殊で、ボスを倒しても宝箱が出現しないのがほとんどで、極々稀に宝箱が出現して、それを開けても制覇した事にはならないらしい。

噂では、特別強いボスが稀に出現し、それを倒すと特殊な宝箱が出現し欲しいスキルを選べるという。それを以って迷宮制覇とみなされるらしい。


迷宮内各層の基本構造は単純で、曲がり角は存在するが基本一本道、途中扉付きの小部屋が幾つかあるのみ。


魔物のリポップが早いため、冒険者は小部屋の魔物を掃討した後、そこを休憩室として利用しているらしい。



ふむふむ。

ソロ専用か、だから未鑑定品が出ないのか。

宝箱の罠を開けるスキルは狩人や盗賊が持っているスキルだ、パーティーで入れるなら狩人か盗賊が仲間にいれば問題ないが、ソロだとそうはいかない。

だから、迷宮が未鑑定品をドロップしなくしたのだろう。なぜ迷宮が? と思うだろうが迷宮の糧は外から宝を求めてノコノコとやってくる愚かな人間達だからな。


迷宮というのは、甘い匂いを漂わせ獲物を捕獲する食虫植物と似たようなものだ。



しかし、あれだな。一般人以上の知識どころかおそらくこれは、ギルドで聞ける情報だ。


「元冒険者?」

「はい。二流止まりでしたが」

ニッコリ微笑まれる。笑顔は一流だ。


チャリン、チャリン! と金貨を追加で二枚弾く。


結構なスピードで弾いたが、難なく受け止めて笑顔を返す受付の男。

「あんた、名前は?」

「はい。セバスチャンとお呼びください」

「え、やだ」

「は?」

「なんか出来る執事みたいでやだ。改名して」

「無理です」

ニッコリ微笑まれる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ