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47:コワレモノ

部屋の中にいたのは、予想通りユウキだ。

「あ、フジワラ! 君も来たんだ」

気軽に声をかけてくる。

「ああ、今来たところだ」

「そうなんだ、フジワラもボス部屋挑戦するの?」

「まあな、ユウキも挑戦続けるのか?」

「うん、やっと調子が出てきたところなんだ」

会話するだけならこの前会ったときと変わらない、人当たりの良い好青年だ。


俺の後ろに隠れているファム。残念ながら尻尾がはみ出ていたらしい。

「あれ!? あれあれ? ファムタン?」

小声でファムに言う。

「おい、気付かれたんだから姿現せよ、変な誤解されて俺殺されちゃうじゃんかよ」

「わ、わかってるよ」


「オニイチャンが心配でキチャッタ!」

声のトーンが二つほど上がった、犬なのに猫なで声でファムが言う。

うわぁ、鳥肌が立つんだけど!

「なーんだ、そうなの。フジワラにくっついてるから寝取られたのかと思って殺しそうになっちゃったよ、アハ」

あ、なんかヤバイ。ユウキ、変なスイッチ入ってるなこれ。

「フジワラのオニイチャンには、ここまで連れてきてもらったの」

「そうなんだ、フジワラありがとね」

「お、おぅ」

会話しているだけでスゲー怖いんだけど!


ユウキ、片手に剣を持ったままなんだよな。斬ることより突く事に特化した剣。


こっから先は、あいつ等の話だから、俺は傍観する。

「オニイチャン、一緒にいた人達は?」

「ちょうどよかったよ。もしもの時用に残していたのが死んじゃってさ、ファムタンとフジワラに、あ!」

サラッと皆殺しにしたことを言い。俺の方を見る。その視線にゾワッと来る。たまらない。


「僕が挑戦している間に、ファムタンと二人っきりはダメだなあ、僕寝取られ耐性とか無いからなぁ。あぁ、そうするとフジワラも邪魔だなあ」


「うん、ファムタンだけいればいいや、ソードスキル発動、必中!」


ヤバーイね、これ絶対あの必中だよね。

稀に武器についてる必中スキル。しかも発動型とかヤバーイぞっと。

てか、人の意見聞くことも無く、友達とか言ってた相手の生死を勝手に決めてくれるよな。自己中の極みだぞ。


よし、ここは軍師としての俺の才能の見せどころだぞ!


「ファム先輩、たのんます!」


そっと、ファム先輩を俺の前に押し出す。


「チョ! マテヨ、フジワラこのクソヤロウ!」


ファム先輩、ユウキさんの前ですよ、口調口調!


「ファイナルスラス、ファムタン危ないよ?」


技を途中でキャンセルするユウキさん。上手くいきましたよファム先輩!


止めた技は、ファイナルスラストかな?

剣術の突きスキルの最高技の一つだっけか、確かに先に必中でこれを放たれたら確実に死ぬな。

ユウキは、次に自分と対峙したときどうするつもりなんだろう?


「うー! フジワラ、後でコロス!」

「雑兵ファムよ、俺の迷采配が解らぬとは...嘆かわしい」

「うー!」


うーうー唸るなよー。何か可愛いじゃないか。

いや、それより、この状況どうするの?


「ファムタン、こっちにおいで」

ユウキが手招きする。

「…………」

「ファムタン?」

「ユウキに対しボク、ファムが血の契約を発動する」


いつのまに出したのか、ファムの手にある契約書が赤く輝く。


ユウキの肌に何か赤い文様が浮かぶ。いや、違う。血管が赤く光っているのだ。


「え、ファムタンなにこれ?」

ユウキが自分の体に浮かぶ血の線を見ながらファムに質問する。

「隷属契約を発動したんだよ」

「え?」

「一緒に来た冒険者達をどうしたの?」

口調を地に戻し質問するファム。

「え?」

「答えろ」

ユウキの体に浮き出た血管が激しく躍動する。

「ナッ、グッアア、い、痛い」

「答えろ!」

「痛い痛い痛い痛い、痛いよファムタン」

「こ、た、え、ろ!」

「イダイ、よファム...全員殺した」

「なぜ?」

「死んで落ちたスキルレベルを補強するため」

「どういう意味?」

「スキル強奪でスキルを補強した」

「スキル強奪!? 聞いてないよ!」

「……話していないから」

「…………」


考え込むファムに代わって俺が質問する。

「死体はどうしたんだ?」

「フジワラもグルなの?」

ファムたちとグルだったのかという事か?

「違う。それで死体はどうしたんだ?」

「知らない。死んだ奴には興味が無いから」

迷宮に吸収されたという事か。しかし、スキル強奪があるなら...


考え込み、供の者と何か話していたファム。

「フジワラ、ボク達は一度町に戻るよ」

「ん、そうか」

ユウキがファムに対して話していた情報が、ほとんど虚言だった事が問題なんだろう。

嫁や貴族になるとかだけが嘘だったのではなく、スキルのことまで全ての事が嘘だったのだ。

一度町に戻り、隷属状態の今、全ての情報を強制的に吐かせる。それを最優先と考えたのだろう。




暗い目でこちらを見ているユウキ。



俺を睨み、ファムを見る。

「ファムタン、芝居だったの?」

「オニイチャンも全部嘘だったんでしょ? 嫁なんかいないじゃないか」

ワザワザ声を変えて、おどけてみせるファム。

「何を言ってるの?」

「調べたんだよ、村も嫁も無かったよ」

「だって、僕の嫁を人質に取ってるんでしょ?」

「あんなの嘘だよ」

「…………僕に嘘をついたの?」

「お互い様だよ」

会話が微妙にかみ合っていない。

ファムもまともな会話は不可能と思ったのか、二人の供の者にユウキを拘束するように伝える。



「僕に嘘をついたの?      アハ」



アハハと笑う、ユウキの手から剣が滑り落ちる。

「アハ、ファイナルシュート、ハハハ!」

笑い声の合間にスキル名が挟まれる。これは、先程と同じ最高峰の技の一つ、それも投擲スキルだ!


地に落ちていく剣が急に行き先を変え凄まじい速度で迫ってくる。

「まさか、必中が生きているのか!?」

ファムの腕を掴み後ろに放り投げる。

「なっ!」

驚きの声を上げるファムに向かって剣が軌道を変える。やはりファム狙いか。

「疾風!」

ファムに向かう剣を二つに斬る!


地に落ちる、切っ先から下の剣。

必中ってのはこんなにシツコイのかよ!!!


状況を理解出来ていないファムが上体を起こし文句を...

「フジワラ! なに、を」


トスッ!


切っ先がファムの胸に潜り込む。

「え?」

何が起きたの? という目で俺を見、自分の胸を見る。

カフッと血の混じった咳をして起こした上体がまた倒れる。


「アハ」


「アハ」


「犬っころ、アハ」


ザシュ、バシュ!


「そのお供、アハ」


血の文様が無くなったユウキに殺されているファムの供二人。


「アハ」


「最後は、フジワラ、アッハーン」


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