表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/51

45:閑話

マルガリータ邸。

町一番の商人であるマルガリータの館には珍しい魔道具が揃っている。


石鹸で泡だらけになった体に、頭からシャワーを浴び、汚れや臭いとともに泡を落とすファム。


ブルブルブルと全身を尻尾の先まで震わせ水分を飛ばす。

「フー、」

一息ついたとたん先程の事を思い出し、体をプルプルと震わせる。

「うー!」

新しい服に着替え、マルガリータの部屋に入る。


何かの報告書を読んでいたマルガリータが顔を上げ、戻ってきた時のファムを思い出して言う。

「随分な目にあった様だね、カッカッカ!」

「モウ! あんなバケモノだなんて聞いてないよ」

「カッカッカ! 自分でとんでもない奴かもと言ってたじゃないかい」

最下層であった事がもしフジワラの仕業だったとしたらと、たしかに前に話していた。

「とにかくアイツはダメ! 大目に見てやるなんて言ったけど、あれで精神がおかしくなったのが何人かいるじゃないか」

さっき殺気で殺されたことを言っている。男の何人かが死の恐怖に耐えきれなく精神に異常をきたした。


マルガリータが一枚の報告書をファムに渡しながら言う。

「そうさね、フジワラという男は半端に手を出してはいけない男のようだね」

町長タリエリの館に賊が侵入したという報告がなされている。

「これは?」

「さあねえ、噂の域だけど、館の者全員が眠らされてたらしいよ。それにタリエリ配下の荒事専門の奴等がごっそり行方不明ときたもんだ、ヒャッヒャ!」

「もしかして、先にあっちに脅しをかけたから、こっちは大目に見てくれたって事なの?」

「どうかねえ」

「ボクはもう嫌だからね!」

ファムが体をプルプルと震わせながら言う。


その姿をジッと見つめながらため息を一つつき。


もう一つの報告書をファムに渡す。


報告書にジッと目を落とすファム。


取り急ぎと書かれた報告書には。

対象から報告のあった村は存在せず、痕跡すら発見出来ず。

名前の出た娘に関しては、死亡または行方不明となっており生存確認できた者は無し。


「なにこれ?」

「報告書だよ、もしもの時のために名前の出た、嫁というやつを押さえて置こうとね」

「もう確保してるんじゃないの?」

「していないよ」

「だって、あいつに髪の毛見せてたよね?」

「ああ、あれは聞いた髪の色と質が同じ物を揃えただけさね。そんなに早く嫁とやらを確保できるわけないじゃないか」

「でも、存在しないって...」

「困ったものさね。無いものを有ると本気で話す勇者様。こちらも一筋縄ではいかないのかも知れないねえ」

「じゃあ、存在しない人のために隷属契約をむすんだの?」

「本人はただの契約と思っているけどね。それに勇者様には存在している嫁なんじゃないかねえ、夢と現実の境が無くなっているのかもねえ」

「怖いよ...」


マルガリータは考える。


「ファム、お前は勇者様に合流しな、嫌な予感がする」

「うん、でもフジワラは...」

「そいつは保留さね。こちらから手を出さなければ何もしないと言ってくれているのだし、調べがつくまで放って置けばいいさね」

「わかった。じゃあボクはユウキに合流するね」

「頼んだよ、何か拙い状況になるようなら隷属契約を発動してしまっていいからね」

「うん、もうユウキとも一緒にいたく無いから、隷属効果を発動して必要ない時はどこかに隔離するよ」

「そうだね。それからファムでも行けるだろうが、念の為、最下層まで行ける者を連れておいき」

「うん」


部屋を出て行くファムを見送りながら思う。

商品の価値を見誤るなんて、身の丈に合わない品物に手を出してしまったのかねえ。






高級スイーツ店:

うーん、よく知らない女子の集団に男が一人というのは、なかなか辛いものがあるな。

会話についていけないと言うより、微妙に気を遣って話を振ってくれるので、ちゃんと何の話をしているか聞いておかないといけないと言う、変な意味で辛い状況になっている。

まあ、ケーキとかお茶とかそういう会話には結構詳しいから、トンチンカンな答えは返していないのも会話の輪から外されない理由だと思う、本番ではあまり役に立たない知識が何か変なところで役に立つ。


手を挙げて店員を呼ぶ。

「ギルドに残った人達のお土産はどれにする?」

「うーん、どうしよう」

「やっぱり、定番で苺のショートケーキでいいんじゃないかしら」

「そうね、ここのショートケーキは有名だもんね」

「けど、新商品のカップのフルーツゼリーも美味しかったわよ」

「たしかに、ここの新商品はまだ食べてない子もいるわね」


うーん...と、悩む女子達。


「残ったの五人だっけ?」

「あ、はい」


店員に伝える。

「じゃあ、苺のショートケーキとフルーツゼリーを十個づつ、分けて包んでくれ。それと別に全種類を五個ずつ分けて包んでくれ」

「ぜ、全種類ですか!?」

「ああ、まだしばらくここに居るから、そんなに急がなくていいよ」

はいと返事をし、足早に厨房へ向かう店員さん。


「あの...」

「ああ、残った人達には二種類ともあげてくれ、後の五個づつは任せるよ、一緒に食べてもいいしお持ち帰りにしてもいいし。別に頼んだのは俺個人のお土産だから気にしないで」

「はい、ありがとうございます!」


どうしよう、持って帰ってたべようかしら。

でも、まだお昼だから、仕事終りまで置いといたら悪くなっちゃうんじゃない?

ギルドの魔法の鞄に入れておけば...

それなら冷蔵庫の中に...

ギルド長が勝手に持って行くから...


紅茶を飲みながら会話を聞いている。

俺には関係ない会話だから、こっちに振られることないしな。






冒険者ギルド:

昼前にギルドに着き。スイーツ男子を先頭にお土産待ちの人達にケーキを渡す。

「フジワラさん、ご馳走様です」

「お土産ありがとうございます」

「ワシの酒は?」

「二種類とも食べていいんですか?」

「ああ、人数分あるだろ。定番の苺のショートケーキと新商品のフルーツゼリーだってさ、ロザリーちゃん達が選んでくれた」

「フルーツゼリー食べてみたかったんだ!」

「ワシの酒は?」

「紅茶の葉も買ったから、淹れる人いるなら渡すよ」

「あ、僕淹れます」

「おーう、ほい」

「ありがとうございます」


「じゃあ、俺は迷宮行くわ」


はい、行ってらっしゃい。と見送られる。


よし、取り合えず、五階の虚ろな影倒して最下層行くかな。

ユウキ居なくなってればいいんだけどなぁ。


「ワシのさけぇぇ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ